Ⅰ 地域との協働による学校づくりとは

Ⅰ
1
地域との協働による学校づくりとは
協働とは
子どもたちの健やかな成長・発達にとって、学校・家庭・地域それぞれの役割は
たいへん重要です。
完全学校週5日制や学校評議員制度の導入、また「総合的な学習の時間」の展開
など、
「 教 育 改 革 」が 進 む い ま 、こ の 三 者 の 連 携・協 力 が よ り 一 層 重 要 に な っ て き ま
した。
こ れ ま で は 、例 え ば「 い じ め 」
「性非行」
「薬物乱用」
「 不 登 校 」な ど 、子 ど も た ち
をめぐる課題が多様化、複雑化し、学校だけでは解決が困難になってきたことが、
学校・家庭・地域の連携の「必要性」が唱えられてきたことの一つの要因でした。
こうした課題を解いていくためにも、これからは、学校支援ボランティアの受入
れや様々な体験学習の実施など、いわゆる家庭・地域の教育力を活用した取組を具
体的に進めていくことが求められており、三者による連携・協力の「実効性」がよ
り求められるようになってきています。
そうした観点から、従来進められてきた学校・家庭・地域の連携のあり方を振り
返ると、多分に学校側の思いや都合が優先されてきたのではないか、との感が否め
ません。
何 か 活 動 を 行 う 際 、「 子 ど も た ち の た め に こ れ こ れ こ う い う こ と を 行 い た い の で 、
ぜひお力添えいただきたい」という学校側の提案に対して、保護者や地域の人々が
都合をつけて協力していくという場合がほとんどで、その逆のケースは稀であった
ようです。
そこで、学校・家庭・地域が一体となって子どもたちの教育を行っていくための
し く み づ く り を 目 指 し て 、神 奈 川 県 教 育 委 員 会 で は 、平 成 11 年 度 か ら 13 年 度 ま で
の 3 年 間 「地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り 推 進 事 業 」に 取 り 組 み ま し た 。
ここで取り上げた「協働」という言葉には、立場は違っても、子どもに関わるこ
とで「同じ目的を持つ者同士が、対等に意見交換して、行動を共にすること」とい
う意味を含めました。
すなわち、教職員と保護者と地域の人々が、あくまでも子どもを中心に据えた上
で、
「 子 ど も た ち の〔 生 き る 力 〕を 育 む 」と い う 目 的 を 共 有 し 、そ の 目 的 を 達 成 す る
ために、それぞれ持ち場、立場は違っても、同じテーブルに着いて、対等に意見交
換 し な が ら 、 各 々 の 持 ち 味 を 出 し 合 い 、 そ し て 共 に 行 動 す る (= 一 緒 に 汗 を 流 す )、
と い う 想 い を 、「 協 働 」 の 二 文 字 に 込 め た の で す 。
し た が っ て 、「 地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り 」 の 取 組 は 、 学 校 づ く り に 力 点 を
置きつつも、それだけに止まらず、従来の学校・家庭・地域の連携関係を「協働」
の 視 点 か ら も う 一 度 見 直 し 、 相 互 信 頼 に 基 づ い た「 新 た な 関 係 」 へ と 改 善 し て い く
こ と を 通 し て 、 言 わ ば 地 域 の 中 の 「 学 校 づ く り 」 か ら 始 め て 、「 子 ど も た ち の 教 育
を 地 域 全 体 で 担 う 」と い う 気 運 を 醸 成 し 、ひ い て は 学 校 を 拠 点 と し た「 地 域 づ く り 」
へも発展していく方向性を示しています。
2
地域との協働による学校づくり推進事業の概要
(1 )
指定校の設置
こ れ か ら の 学 校 は 、保 護 者 や 地 域 の 人 々 に 学 校 の 教 育 方 針 や 教 育 の 現 状 等 に
つ い て 、今 ま で 以 上 に 率 直 に 語 る と と も に 、子 ど も た ち が 日 常 生 活 を 送 っ て い
る 地 域 の 教 育 環 境 づ く り を 進 め る 上 か ら も 、家 庭 や 地 域 社 会 に 対 す る 学 校 と し
ての考えを、もっと積極的に発信し、対等に意見交換をする必要があります。
一 方 、保 護 者 や 地 域 の 方 々 も 、
「 子 ど も の 教 育 は 地 域 全 体 で 担 う 」と の 考 え に
立って、学校に積極的に関わっていくことが期待されます。こうしたことから
学校と家庭・地域が一体となって子どもたちの教育に当たっていくためのしく
みづくりを行うことが重要となります。
そこで、県教育委員会では「地域との協働による学校づくり」の推進を図る
ため、市町村立幼稚園、小学校、中学校及び県立高等学校、盲・ろう・養護学
校と、全校種にわたって「指定校」を置き、体系的・計画的・組織的に各種の
取組を実施することにしました。
平 成 11 年 度 に は 18 校 、12 年 度 に は 42 校 を そ れ ぞ れ モ デ ル 校 と し て 指 定 し 、
事 業 最 終 年 度 の 13 年 度 に は 、モ デ ル 校 と し て 53 校 、さ ら に 実 践 推 進 校( 後 述 )
と し て 52 校 の 合 わ せ て 105 校 を 指 定 し ま し た 。
13 年 度 指 定 校 の 内 訳 は 県 内 の 37 市 町 村 の う ち 、 33 に 及 ぶ 市 町 村 の 中 か ら 、
幼 稚 園 5 園 、 小 学 校 33 校 、 中 学 校 22 校 、 ま た 県 立 の 高 等 学 校 36 校 、 盲 ・ ろ
う・養護学校9校と広範にわたり、ほぼ県内全域をカバーしました。
指 定 形 態 も 、1 校 単 独 指 定 や 隣 接 す る 複 数 の 学 校( 幼 ・ 小 ・ 中・ 高 )の セ ッ
ト 指 定 、ま た 、3 つ の 町 で は 町 立 学 校 全 て を 指 定 す る な ど 、県 内 全 域 で 特 色 あ
る取組が展開されました。
(2 )
指定校における取組
指定校には、次の2つのタイプがありました。
〔モデル校〕
家 庭 や 地 域 の 人 材・施 設 や 様 々 な 活 動 主 体 と 連 携 し な が ら 、地 域 と 一 体 と
な っ て 子 ど も た ち の 教 育 を 行 う た め の 実 践・研 究 に 、総 合 的 に 取 り 組 む 学 校
を「モデル校」として指定しました。
モ デ ル 校 で は 、地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り を 推 進 す る た め 、校 内 に 検
討 組 織 を 設 置 し 、年 間 計 画 を 策 定 し 、学 校 全 体 で 取 組 が 進 む よ う 、体 制 を 整
備して、次の取組を行いました。
①
学校教育への地域の教育力の活用
②
学校の教育力の地域への開放・活用
③
児童・生徒、教職員と地域の人々との学習・交流・協働の推進
④
①∼③を促進するための地域の人々を含めた協議・実践組織の設置・
運営
⑤
その他、地域との協働による学校づくりに関すること
〔実践推進校〕
家庭や地域との連携・協力のもとに、上記①∼⑤のうちのいずれか一つの
取組を行う学校を「実践推進校」として指定しました。これら2つのタイ
プの指定校の先進的、特色ある取組を、広く紹介することを通して全県へ
の普及を図りました。
(3 )
普及・啓発
地 域 と の 協 働 の ね ら い は 、言 い 換 え れ ば 、子 ど も た ち の た め の「 学 校 と 地 域
と の 新 た な 関 係 づ く り 」で あ り 、こ の こ と は 学 校 側 の 頑 張 り に 期 待 す る だ け で
は達成は難しく、ここに行政の支援と地域側の協力の必要性が生じてきます。
そ こ で 、県 教 育 委 員 会 で は 、こ れ ま で に 学 校 関 係 者 の み な ら ず 広 く 県 民 に 対
し 、こ れ か ら の 時 代 に 求 め ら れ る 、学 校 と 地 域 と の 関 係 に つ い て 理 解 し て い た
だ く た め 、啓 発 ビ デ オ「 学 校 を ひ ら く ∼ 地 域 と と も に ∼ 」(平 成 12 年 2 月 )及 び
「 地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り リ ー フ レ ッ ト 」 (折 り 込 み 資 料 参 照 )を 作 成 ・
配布しました。
ま た 、 平 成 12 年 9 月 1 日 か ら 「 地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り ホ ー ム ペ ー
ジ 」 ( http://www.planet.pref.kanagawa.jp/kyo-do/index.htm 参 照 )を 開 設 し 、
指 定 校 の 取 組 を 中 心 に 実 践 事 例 を 掲 載 し た と こ ろ 、平 成 15 年 11 月 ま で に 、ア
ク セ ス 数 が 40,000 件 を 超 え 、 多 い 日 に は 200 件 を 数 え ま し た 。
(4 )
支援体制の整備
学 校 と 地 域 (家 庭 を 含 む )と の 新 た な 関 係 づ く り を 目 指 す 、
「地域との協働によ
る学校づくり」の取組は、推進する行政の側も学校教育と社会教育が一体とな
った支援が必要です。
そ こ で 、事 業 開 始 当 初 か ら 教 育 部 4 課( 義 務 教 育 課 、高 校 教 育 課 、障 害 児 教
育 課 及 び 生 涯 学 習 文 化 財 課 ) の 共 管 で 事 業 の 推 進 に あ た り ま し た が 、 平 成 12
年度からは4課及び教育事務所の社会教育主事と指導主事を構成員とする、
「 指 定 校 支 援 会 議 」を 開 催 し て 、社 会 教 育・学 校 教 育 双 方 の 専 門 性 を 活 か し な
がら、学校や地域への支援に努めてきました。
さ ら に 平 成 13 年 度 に は 、 県 立 教 育 セ ン タ ー ( 現 県 立 総 合 教 育 セ ン タ ー ) が
新 学 習 指 導 要 領 の 実 施 に 伴 い 、カ リ キ ュ ラ ム セ ン タ ー と し て の 機 能 の 充 実 を 図
り ま し た が 、同 セ ン タ ー で は そ の 一 環 と し て 、地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り
推 進 事 業 の 取 組 を 基 に 、学 校・家 庭・地 域 が 一 体 と な っ た 学 校 づ く り 研 修 講 座
を設けることになりました。
こ の 研 修 に は 、企 画 の 段 階 か ら 当 日 の 運 営 ま で 、指 定 校 支 援 会 議 の メ ン バ ー
が 深 く 関 わ る こ と に な り 、研 修 の 主 た る 対 象 を 指 定 校 と し 、各 学 校 の 希 望 に 応
じ て 「 学 校 支 援 ボ ラ ン テ ィ ア 」「 学 校 評 議 員 」「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」「 職 業 体
験 学 習 」の 4 つ の コ ー ス に 分 か れ 、そ れ ぞ れ ワ ー ク シ ョ ッ プ 手 法 を 取 り 入 れ て 、
学校や地域で直接役立つことをねらい、研修会を開催しました。
(5 )
事業の成果と今後の取組
平 成 15 年 2 月 1 日 に 、学 校 と 地 域 と の 協 働 の さ ら な る 普 及 を 目 指 し て 、
「学
校と地域との協働セミナー
拡大研修」を開催しました。
参 加 者 の 半 数 は 教 職 員 で 、あ と の 半 数 は 保 護 者 や 青 少 年 指 導 員 、学 校 支 援 ボ
ラ ン テ ィ ア 、学 校 評 議 員 や 大 学 生 な ど 、家 庭 や 地 域 で 子 ど も た ち を 支 え て い る
人々でした。
このように、
「 地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り 」の 取 組 は 、今 や 学 校・家 庭 ・
地 域 の 多 く の 関 係 者 か ら 注 目 さ れ て い ま す 。今 後 、全 て の 学 校 や 地 域 で 協 働 の
取 組 が 展 開 さ れ て い く よ う 、県 教 育 委 員 会 と し て は 、協 働 の 取 組 の ノ ウ ハ ウ や 、
各 学 校 ・ 地 域 の 実 践 事 例 の 情 報 収 集 ・ 提 供 、さ ら に は 参 加 体 験 型 の 研 修 プ ロ グ
ラ ム の 研 究 開 発 ・ 実 践 な ど を 行 い 、ま す ま す 必 要 度 を 増 す「 学 校 と 地 域 の つ な
ぎ手」となる人材の養成に努めます。
3
協働の取組に向けて
(1 )
個々の取組から学校ぐるみの展開へ
これまでの学校と地域との協働のあり方を振り返ると、いくつか考えなけれ
ばいけない点があります。
そのうちの大きなものの一つとして、たとえ協働の取組自体は行われていた
と し て も 、 そ れ ら が 教 職 員 た ち の 個 人 的 な 働 き か け で 行 わ れ 、学 校 全 体 で の 取
組として「位置づけ・認知」されていない、というケースがあります。
あ る 学 校 で は 、教 職 員 同 士 が そ れ ぞ れ 連 絡 調 整 を 十 分 に 行 わ な い ま ま 、 個 々
別々に動いていて、職員室の隣の席の人が、地域とどのような関係を築き、ど
の よ う な 協 働 の 取 組 を し て い る の か 、把 握 で き て い な い と い う こ と も 珍 し く な
いと聞きます。
し か し 、教 職 員 か ら の 相 談 や 協 力 要 請 に 応 じ る 地 域 の 人 々 に と っ て は 、
「学校
としての動き」と受け取るのが自然ですので、学校内での調整をしないまま、
個 々 に 取 組 を 行 う と す る と 、誤 解 や 行 き 違 い が 生 じ る 可 能 性 が あ り ま す 。時 と
し て 、そ れ は 学 校 側 の 足 並 み の 乱 れ と し て 、 ま た 教 職 員 間 の 意 志 の 疎 通 を 欠 く
ものとして受け取られ、地域の方の学校不信を招くもとにもなりかねません。
また、ある学校では特定の教職員だけが、地域との協働に関する職務を担当
し、その結果、関連情報や協働のためのノウハウが、担当者だけに蓄積されて
いき、他の教職員たちには、地域に関わる情報や協働の取組の実施に到るまで
の手法、課題等がほとんど認識、掌握されないという場合もあります。
こ の よ う な 状 態 で す と 、担 当 者 の 人 事 異 動 と 同 時 に そ の 学 校 の 協 働 の 取 組 が
途 絶 え て し ま っ た り 、教 職 員 が 個 々 に 築 い て き た 地 域 と の 様 々 な パ イ プ も 切 れ
て、つながらなくなってしまいます。
こうしたことを防ぐためには、教職員個々の取組を学校ぐるみの計画的・総
合的な取組へと束ねていくことが必要です。
そのための方策としては、
①
協働事業推進担当者を置く
〔効果〕窓口を明確にすることにより、地域との個々のパイプの一元化が図
れる
②
教職員を構成員とする協働事業推進検討組織を設置する
〔効果〕担当者や特定の教職員だけに過重な負担がかからないようになる
③
個 々 の 取 組 の 状 況 を 把 握 し た う え で 、学 校 全 体 と し て の 年 間 計 画 を 策 定
する
〔効果〕これまでの取組を整理、俯瞰することにより、改めて課題や可能性
を掌握できるとともに、教職員の共通理解を図ることができる
④
保護者や地域の人々を交えた協議・実践組織を設置する
〔 効 果 〕 学 校 側 の 都 合 が 優 先 さ れ る だ け で な く 、保 護 者 や 地 域 の 人 々 の 声 や
要望が組み込まれた協働の取組が展開できるなどが考えられます
(2 )
協働へのプロセス
学 校 が 地 域 と の 協 働 を 進 め る 場 合 、通 常 、段 階 的 に は「 情 報 交 換・連 絡 調 整 」
⇒ 「 相 互 補 完 」 ⇒ 「 協 働 」 と い っ た プ ロ セ ス を た ど り ま す (図 1 参 照 ) 。
「 協 働 」 は 、「 同 じ 目 的 を 持 つ 者 同 士 が 、 対 等 に 意 見 交 換 し て 、 共 に 行 動 す
る」ことです。
学 校 と 地 域 が 目 的 を 共 有 す る た め に は 、相 互 理 解 が 前 提 と な り ま す 。し か し 、
地 域 の 人 々 か ら 見 る と 、 ま だ ま だ 学 校 は わ か り に く く 、「 敷 居 の 高 い と こ ろ 」
と し て 映 っ て お り 、こ の ま ま で は 誤 解 は 生 ま れ て も 、相 互 に 理 解 す る こ と は 困
難です。
こ う し た 状 況 を 打 開 す る た め に は 、学 校 側 が 情 報 公 開 や 説 明 責 任( ア カ ウ ン
タ ビ リ テ ィ ) を 果 た す 意 味 か ら 、 ま ず 手 始 め に 地 域 に 向 か っ て「 情 報 」 と い う
ボールを投げかけることが必要です。
そ の 際 大 切 な こ と は 、 ボ ー ル を 単 に 投 げ っ 放 し に す る の で は な く 、「 学 校 」
と し て「 ね ら い 」を 定 め て 投 球 ・ 捕 球 す る こ と に 努 め 、 キ ャ ッ チ ボ ー ル を で き
る だ け 継 続 さ せ る こ と で す 。《 情 報 交 換 ・ 連 絡 調 整 の 段 階 》
「 学 校 で の 教 育 活 動 や 子 ど も た ち の 様 子 を 地 域 の 人 々 に 知 っ て も ら う 」「 地
域 で の 子 ど も を 対 象 と し た 取 組 の 様 子 な ど に つ い て 教 職 員 が 情 報 を 得 る 」と い
っ た こ と を 重 ね る う ち に 、次 第 に 学 校 ・ 地 域 双 方 の 取 組 の 厚 い と こ ろ 、手 薄 い
部分、また、それぞれの得手不得手が浮き彫りになります。
同 時 に「 学 校 」と い う と こ ろ の 特 性 に 対 す る 地 域 側 の 理 解 や 、い わ ゆ る 地 域
の 教 育 力 (ヒ ト ・ モ ノ ・ コ ト )の 把 握 も 進 み ま す の で 、 お 互 い 長 所 を 生 か し な が
ら 、 手 薄 な 部 分 、 不 得 手 な 面 を 補 い 合 う と い う 関 係 に 移 行 し て い き ま す 。《 相
互補完の段階》
従 来 、「 学 校 と 地 域 と が 連 携 し て い る 」 と い っ た 時 、 往 々 に し て こ の 相 互 補
完の段階の取組をさす場合が多くありました。
しかし、相互補完の段階では、あくまでも学校・地域がそれぞれに立てた目
的 を 達 成 す る た め に 、一 方 が 他 方 に 貢 献・協 力 す る と い う 関 係 に と ど ま り ま す 。
し た が っ て「 学 校 と 地 域 と が 同 じ 目 的 を 達 成 す る た め に 、意 見 交 換 を 密 に し
た 上 で 共 に 活 動 に 取 り 組 み 、そ の 成 果 も 互 い に 共 有 す る 」 と い う 「 協 働 」 の 段
階 は 、「 情 報 交 換 ・ 連 絡 調 整 、 相 互 補 完 」 の 各 段 階 を 経 て 、 そ の 上 で よ う や く
道 が 拓 け る も の で 、な か な か 一 朝 一 夕 に は い き ま せ ん 。 し か し な が ら 、こ れ か
ら の 学 校 と 地 域 と の 新 し い 関 係 を 築 く た め に 、到 達 の 目 標 と す べ き ス テ ー ジ な
の で す 。《 協 働 の 段 階 》
(3 )
情報の収集
「開かれた学校づくり」をより進める観点からも、学校が「総合的な学習
の時間」や選択教科の展開、あるいは地域をフィールドとした体験学習やボ
ラ ン テ ィ ア 活 動 等 を 実 施 す る に あ た っ て 、今 後 ま す ま す 地 域 の 教 育 力 (ヒ ト ・
モ ノ ・ コ ト )を 活 用 す る 必 要 性 が 高 ま っ て き ま す 。
そ の 際 、す で に 地 域 の 人 々 と の パ イ プ が 確 保 さ れ て い た り 、関 係 諸 機 関 と
の 情 報 の や り 取 り が 容 易 な 学 校 は 、そ れ ぞ れ 必 要 を 満 た し て く れ る 可 能 性 の
あ る 所 に 直 接 ア プ ロ ー チ す る こ と が で き ま す が 、地 域 と の 関 係 づ く り が あ ま
り 進 ん で い な い 学 校 で は 、当 然 の こ と な が ら 、ど の 門 を 叩 い た ら よ い か 判 断
に迷います。
そ う し た 場 合 に は 、ひ と ま ず 生 涯 学 習 ・ 社 会 教 育 行 政 セ ク シ ョ ン な ど に 相
談 を 持 ち か け る こ と も 有 効 で す 。学 校 側 の ニ ー ズ や リ ク エ ス ト に 直 接 応 え た
り 、関 係 部 署 に 間 接 的 に つ な げ た り す る こ と を 通 し て 、学 校 や 地 域 で の 協 働
の 取 組 を 支 援 す る こ と も 、教 育 委 員 会 な ど の 行 政 機 関 の 重 要 な 役 割 の 一 つ だ
か ら で す (図 2 参 照 ) 。
(4 )
学校の取組から地域ぐるみの展開へ
「総合的な学習の時間で、地域の人々が学校支援ボランティアとして活動す
る 」「 こ れ ま で 学 校 と 地 域 で 別 々 に 実 施 し て い た 運 動 会 を 合 同 で 行 う 」「 地 元
の 商 店 会 の 協 力 を 得 て 、 職 業 体 験 学 習 を 実 施 す る 」・ ・ ・ 。
学 校 が 地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り に 取 り 組 む こ と に よ り 、こ れ か ら は
保 護 者 や 学 校 評 議 員 と い っ た 限 ら れ た 人 々 だ け で な く 、地 域 の 多 く の 人 々 が
学校の教育活動に
かかわり
を持つようになります。
そ う し た 地 域 の 人 々 が 、学 校 か ら の 様 々 な 協 力 依 頼 を 受 け る 際 、現 状 で は そ
の教育活動の枠組は、すでに学校側で決められていることが多く、結果、地
域 の 人 々 が 自 身 の 予 定 な ど を や り く り し て 期 待 に 応 え ら れ る よ う に す る 、と
いう場合が多々あります。
一方、
「 校 庭 、体 育 館 、図 書 館 、特 別 教 室 等 の 学 校 施 設 を 地 域 に 開 放 す る 」、
あ る い は「 地 域 の 人 々 を 対 象 と し た 公 開 講 座 を 開 く 」と い っ た 、地 域 の 人 々
の 生 涯 学 習 ニ ー ズ に 応 え る た め に 、学 校 側 が い ろ い ろ と 工 夫 す る と い う こ と
は 、地 域 の 教 育 力 の 導 入 に 意 を 用 い る こ と に 比 べ て 、ま だ ま だ 消 極 的 と い う
実態があります。
このような学校と地域との関係は、
「 始 め に 学 校 の 都 合 あ り き 」で あ っ て 、
多分にバランスを欠いた状態と言えます。
学 校 と 地 域 が お 互 い の 立 場 や 事 情 を 慮 り 、尊 重 し 合 う と い う 方 向 で 関 係 改
善が図られない限り、早晩、地域側の協力は得られなくなってしまいます。
何 よ り も 、子 ど も た ち に 質 ・ 量 と も に 充 実 し た 教 育 の 機 会 を 用 意 す る た め
に は 、で き る 限 り 地 域 の 人 々 の 都 合 に 配 慮 す る 柔 軟 性 も 学 校 側 に は 必 要 で し
ょうし、また、地域の人々に気持ちよく学校に協力していただくためにも、
学 校 と し て で き る こ と は 何 か を 誠 実 に 検 討 し 、実 行 し て い く 必 要 が あ り ま す 。
子 ど も た ち の た め に 、学 校 は 地 域 側 に ど の よ う な こ と を 求 め る 必 要 が あ る
の か 、ま た 、 現 実 に ど ん な こ と が 求 め ら れ る の か 。さ ら に は 、地 域 側 は 学 校
に 対 し て ど の よ う な こ と を 望 ん で い る の か 、ま た 、ど ん な こ と が 応 え ら れ る
のか、といった課題への答えは、学校だけでは導き出せません。
し か し 、こ れ ら の こ と に つ い て 、日 ご ろ か ら 地 域 の 人 々 を 交 え て 話 し 合 っ
ていれば、対応は比較的容易になります。
こ の こ と か ら も 「 協 働 」 の 取 組 を 行 う 際 に 最 も 肝 心 な こ と は 、「〔 対 等 な 意
見交換〕を行える場と機会を設定すること」と言えます。
子 ど も た ち は 、日 常 生 活 を 送 る 中 で 、家 族 や 友 達 、 学 校 の 教 職 員 だ け で な
く 、地 域 の た く さ ん の 人 々 に 接 し 、様 々 な 影 響 を 受 け た り 与 え た り し て い ま
す。
学 校 週 5 日 制 時 代 を 迎 え た こ と を 契 機 と し て 、こ の 緩 や か に つ な が っ て い
た こ れ ま で の 人 と 人 と の 関 係 を 、た と え ば「 地 域 と の 協 働 に よ る 学 校 づ く り 」、
あ る い は「 学 校 と の 協 働 に よ る 地 域 づ く り 」 と い っ た 明 確 な 目 的 を 持 ち 、そ
れ を 実 現 す る た め に「 強 い 絆 で 結 ば れ た 関 係 」へ と 転 換 し て い く こ と が 必 要
で す (図 3 参 照 ) 。
こ う し た こ と を 通 し て 、従 来 の 学 校 の 取 組 は 、地 域 の 人 々 に 認 知 さ れ 、
協力も得られる
るのです。
地域ぐるみの取組
へ と 、大 き く 変 わ っ て い く こ と が で き