岐臨技 精度管理事業部 平成 25 年度 総括集 -1- 病理検査 日高 はじめに 病理検査部門における精度管理調査では、日常業 務のレベル向上や知識習得を目的として行っている。 岐臨技精度管理調査では特殊染色のレベルアップ を目的とし昨年度に引き続き本年度も特殊染色を行 うこととした。 平成 25 年度は主に粘液染色を目的とするD-P AS反応を選択した。 方法 (材料) 20%ホルマリンで固定した大腸組織、肝臓組織 (実施手順) 1 申し込み施設にパラフィンブロック1個、スラ イドガラス2枚、染色条件調査票を送付 2 薄切・染色を各施設で行い、染色標本1枚とパ ラフィンブロックおよび調査票を返送 3 評価項目を設け、病理研究斑 4 名にて評価を行 った 4 減点内容をコメントに記した (染色評価の項目) 1 ガラスの汚れ 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 2 染色ムラ 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 3 共染の有無 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 4 切片の剥離 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 5 糖質の消化状態 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 6 粘液の染色状態 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 7 核の染色状態 良(2点) 、可(1点) 、不良(0点) 以上7項目に対しての判定点を加算し、14 点満点 で評価した。 (判定・評価区分) 『判定A』評価合計点 14~12 点 目的を十分に達している 『判定B』評価合計点 11~7 点 祐二 目的に達しているが改善の余地がある 『判定C』評価合計点 6~3 点 病理診断に支障をきたす可能性がある 『判定D』評価合計点 2~0 点 病理診断に支障をきたす可能性がある 以上、判定をA~Dの 4 段階に設定した。 結果 参加施設数:17 判定 施設数 A 15 B 2 C 0 D 0 (評価減点の内訳) 今回のサーベイで評価点の減点対象となった標本 状態の不具合内容を以下に示す *ガラスの汚れ ・・・2 施設 *染色むら ・・・1 施設 *共染の有無 ・・・5 施設 *切片の剥離 ・・・5 施設 *核の染色状態 ・・・1 施設 今回のサーベイで評価の高かった施設の染色(写 真)と染色手順を以下に示す。 岐臨技 精度管理事業部 平成 25 年度 総括集 -22. 消化試験使用液 消化液 1%ジアスター ゼリン酸緩衝液 1%α-アミラー ゼリン酸緩衝液 9 施設 4 施設 総合判定評価 A判定 8 施設 B判定 1 施設 A判定 4 施設 A判定 3 施設 B判定 1 施設 消化液には 1%ジアスターゼリン酸緩衝液を 使用している施設が多かったが、消化液の種類 による消化試験の差はみられなかった。 唾液を使用している施設で拭き残りが目立つ 施設があったが、普段は当染色を行っていない とのコメントがあり染色性には問題ないが唾液 を拭きとる手順を徹底するよう心掛けてほしい。 消化液の調整は全施設、用時に調整を行って いる。 唾液 粘液を染める Schiff 試薬の赤色と核を染めるヘマ トキシリンの青紫色のコントラストがクッキリして おり良好な染め上がりである。肝組織では糖質は消 化されており、色素成分や血球成分、肝細胞が染め 分けされており観察が容易な染色性である。 施設数 4 施設 3. 酸化剤 1. 脱パラ、脱キシ 2. 流水水洗 3. 1%ジアスターゼ水溶液 1~3 時間程度 40℃ 4. 流水水洗 5. 0.5%過ヨウ素酸水溶液 15 分 6. 流水水洗 7. Schiff 試薬(武藤化学) 15 分 8. 水洗、微温湯にて色だし 15 分 9. ヘマトキシリン(ティッシュテック:マイヤー) 2 分 10. 水洗、微温湯にて色だし 10 分 11. 脱水、透徹、封入 (アンケート及び染色条件調査票より) 参加施設に D-PAS 反応に対する各条件の回答を得 たので結果を以下に示す。 1. 作製した切片の厚さ 切片の厚さ 施設数 2μm 2 施設 総合判定結果 A判定 1 施設 B判定 1 施設 2.5μm 1 施設 A判定 1 施設 3μm 12 施設 回答なし 2 施設 A判定 11 施設 B判定 1 施設 A判定 2 施設 3μmの切片厚の施設が多く、染色状態も良 好であった。 1施設では申告より厚く過染傾向にありミク ロトームの目盛りとの乖離が顕著であった。 酸化剤 施設数 総合評価 0.5%過ヨウ A判定 12施設 13 施設 素酸 B判定 1施設 1%過ヨウ素 A判定 3施設 4施設 酸 B判定 1施設 酸化剤は 0.5%過ヨウ素酸を使用している施 設が多く、1%過ヨウ素酸を使用している施設は 4施設のみであった。1%過ヨウ素酸を推奨し ている清書等も多いが、今回の精度管理調査に おいては酸化剤に 0.5%過ヨウ素酸を使用した 染色標本の染色性に問題はなかった。 交換時期は 1 月程度の施設が多かった。 4. Schiff 試薬 14 施設では調整済み試薬を 3 施設では自家性 試薬を使用していた。自家性試薬のうち 2 施設 はコールドシッフ(Schiff)ではなかったが、染色 性に問題はなかった。 5. 定着液 15 施設では亜硫酸水を数分、2~3 回行って いるが 1 施設では定着操作はなく、1 施設では 微温湯での色だしを行っていた。いずれの方法 でも今回の調査での染色性に問題はなかった。 6. 核染色 ヘマトキシリンの種類についての記載が少な く統計は困難であったが、HE染色で使用して いるヘマトキシリンを使用しているとの返答が 多かった。色だしは 10 分前後の施設が多かった。 岐臨技 精度管理事業部 平成 25 年度 総括集 7. 月間染色枚数 月間枚数 総合判定結果 A判定 9 施設 0枚 B判定 2 施設 1~3 枚 A判定 3 施設 6~10枚 A判定 1 施設 10 枚以上 A判定 2 施設 PAS 反応は多数の施設で多く行われているが D-PAS はあまり行われていない。2 施設におい ては肺、肝等の消化管材料で頻繁に行われてい る。 考察 今回の調査で染色性に問題がある施設は少なく PAS 反応を多く行っているためマニュアル化がし っかりと行われていると考えた。 まとめ 今回配布した材料はグリコーゲンが少量しか残存 しておらず、精度管理調査に使用する材料としては 適していなかった。 A判定15 施設、B判定 2 施設と概ね良好であっ た。また、B判定となった 2 施設も染色性に問題は なく、標本作製時にかかわる問題や唾液の拭き残り が原因であった。 2次サーベイが必要な施設はなかった。 文献 1) 山田正人,他.最新染色法の全て.医歯薬出版 2011:14-15 2) 標本道場(病理関連技術情報) http://www.sakura-finetek.com/doujyou.html -3-
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