四肢専用 MRI 関節リウマチ診断および予後予測への有用性

GE Healthcare
四肢専用 MRI
関節リウマチ診断および予後予測への有用性
Leiden University Medical Center (Netherland)
関節リウマチは、手や足などの小さな関節に発症する慢性炎症性の自己免疫疾患です。まず関節の滑膜表層
に発症し、痛みを伴う腫れを引き起こします。そして次第に、骨びらんや骨変形に進展する疾患です。このような
関節の症状に加え、関節リウマチは様々な臓器にも悪影響を与える全身性疾患でもあります。発症頻度は、男
性に比べ女性の方が 2~3 倍高く、一般的に 40 代~60 代が発症しやすいと言われています。
しかし、ここ数十年間で治療の選択肢は目覚ましく広がりました。ただ症状を抑えるというよりむしろ、早期に
治療を行うことで、さらなる損傷を防ぐという方向に変わりつつあります。この傾向の原動力となっているのが、
ここ 10 年間で広く使われるようになってきた TNF-α阻害剤の適用です。しかし唯一この早期治療の足枷になる
のが早期診断であり、数多くの関節症の患者群の中から、関節リウマチ患者をいかに早期に見つけるかが重要
となります。MRI は関節リウマチに関しても非常に感度の高い画像診断技術で、関節リウマチの早期発見におい
ても重要な役割を担うことが期待されています。
長年、関節リウマチの画像診断には、単純 X 線写真が用いられてきました。しかしながら単純 X 線写真では、構
造上の骨の損傷を検出しているため、関節リウマチにおいては後期の症状である骨びらんしか見つけることがで
きないという欠点がありました。しかし、MRI は骨びらんに加え、関節リウマチの代表的な特徴である滑膜炎、腱
滑膜炎( 腱を取り囲む滑膜の炎症)、軟骨下の変化なども検出することが可能です。さらなる利点として、MRI は
骨びらんに対しても、単純 X 線写真に比べて感度が高いことがあげられ[1,2,3,4]、MRI で骨びらんが見つからなか
った場合の、進行性関節リウマチの陰性的中率は 80%と高い値を示すことが報告されています。[5,6,7]
Leiden University Medical Center( オランダ)のリウマチ外来クリニックで
は、非特異的な早期関節炎に対する MRI の有用性を検証する研究を行ってお
り、早期関節炎専門クリニックに来院する患者に協力依頼をしています。2 年
の間、関節リウマチの診断が可能な患者に、何度かインターバルをあけて MRI
検査が行われます。現在初回の患者グループが 1 年間のフォローアップ検査
を受けている最中です。
そして、私たちは、GE ヘルスケアが販売する四肢専用 1.5T MRI を導入しま
した。この装置のヨーロッパ 1 号機導入施設として、シーケンスの最適化、画質
向上、そして撮像時間の最適化に尽力してきました。我々が導入した四肢専
用 1.5T MRI で撮像される画像のクオリティは非常に高く、時に全身用 1.5T
MRI の画質を凌ぐほどの実力に驚かされることさえあります。これまで私たち
の施設では、全身用 MRI で検査枠が限られるという問題を抱えていました。し
かしこの四肢専用 MRI を導入したことで、患者を待たせず同じ週のうちに
同院に導入されている四肢専用 MRI の
後継機、Optima MR430s 1.5T
販売名称 オプティマ MR430s 1.5T
認証番号 223ACBZX00003000
四肢専用 MRI カスタマーボイス #03
Leiden University Medical Center in Netherland.
( 多くの場合、初回訪問で来院したその日のうちに)検査できるようスループットが改善されました。
また、患者に対する快適な検査環境ももう一つの重要なポイントであると考えています。関節炎患者は痛みを
抱えており、関節の腫脹を伴っています。このような患者にとって、時に全身用 MRI で求められる不自然な体勢を
維持することは非常に辛いことです。一方、この四肢専用 MRI では、検査中に患者はリクライニングチェアに快適
に腰かけているだけで検査を受けることができ、非常に快適です。
MRI による関節リウマチの画像診断では、手根骨や MCP 関節( 中手指節関節)に対してコロナル断面の T1
強調画像、T2 強調画像、そしてコロナルとアキシャル断面での脂肪抑制併用 T1 強調画像など、いくつかのシーケ
ンスで撮像を行っています。そしてそれらの画像から、骨びらん、骨髄浮腫、滑膜炎そして腱滑膜炎の有無などの
評価を、OMERACT RAMRIS( Outcome Measures in Rheumatology Clinical Trials / Rheumatoid Arthritis
Magnetic Resonance Imaging Score)のスコアリング基準に沿って行っています。
以下に実際の臨床例を紹介します。これらの画像を見ていただければ、四肢専用 1.5T MRI の臨床有用性や画
質の高さをご理解いただけるはずです。患者への快適性と、高画質を兼ね備えたこの四肢専用 1.5T MRI に、私
たちは大変満足しています。
症例紹介
■ 症例 1
患者病歴
足、右肩、第 4 指 PIP 関節( 近位指節間関節)の痛みに苦しむ、病理学的早期の患者。オルソテックおよ
びセレブレックスでの治療が行われています。検査では第 4 指 PIP 関節に腫れと痛みが確認され、関節リウマ
チ、反応性関節炎、未分類関節炎( UA:Undifferentiated Arthritis)の鑑別診断が行われました。まず単純
X 線検査( 図 1)が行われ、第 1 指 手根中手骨関節と舟状骨大菱形骨にごくわずかのびらん性変化が認
められました。
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MRI 所見
コロナル T1 強調画像( 図 2A)と、コロナル( 図 2B)、アキシャル(図 2F)2 断面の脂肪抑制 T1 強調画像
が撮像されました。MRI 画像から、手根骨に複数の骨びらんが、有頭骨に大きな骨びらんが確認されましたが、
MCP 関節の MRI 画像( 図 2C)では特筆すべき所見は確認されませんでした。足関節のコロナル T2 強調画
像( 図 2E)では、骨髄浮腫が近位と遠位の第 1 指 MTP 関節( 中足骨指関節)に認められました。
■ 症例 2
患者病歴
滑膜炎、骨髄浮腫を認める、
血清反応陰性の多発性関節
炎。関節リウマチが疑われ、痛
風かリウマチ性多発筋痛かの
鑑別診断が行われました。ア
ルコクシアによる治療が行わ
れ、メトトレキサートの投与が開
始されています。検査では手
首、第 1 指、2 指、3 指の MCP
関節および第 3 指、5 指の PIP
関節に腫れや痛みが確認され
ており、単純 X 線検査では骨
びらんは確認されず正常であ
ると診断されています。
MRI 所見
コロナル( 図 3A)とアキシャル
( 図 3B)断面での脂肪抑制併用 T1 強調画像で、橈尺関節、橈骨手根関節、手根間関節、手根中手骨関節
に滑膜炎が確認され、屈筋腱に腱滑膜炎が認められました。また、いくつかの小さな骨びらんも手根骨に認
められています。MCP 関節( 図 3E)には異常は認められていません。足関節のコロナル T1 強調画像( 図 3C)
および T2 強調画像( 図 3D)では、第 3 指 基節骨にて骨びらんが認められましたが、その他の異常は認めら
れませんでした。
■ 症例 3
患者病歴
末期の結成反応陽性、びらん性の関節リウマチ。患者は 15 年間症状を訴えており、単純 X 線検査では、MCP
関節に広範囲の関節破壊が認められます。2010 年 9 月よりメトトレキサートによる治療が行われており、検査
では第 2 指 MCP 関節に腫れが認められています。
MRI 所見
コロナル( 図 4E-H)およびアキシャル( 図 4A-D)の脂肪抑制併用 T1 強調画像が撮像され、手根骨および第
1 指、2 指、3 指、5 指 MCP 関節、第 5 指 PIP 関節に関節破壊を伴う滑膜炎が広範囲に認められました。
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四肢専用 MRI カスタマーボイス #03
Leiden University Medical Center in Netherland.
リファレンス
1. Chen T S, Cruess III JV, Ali M, Troum O M. Magnetic Resonance Imaging Is More
Sensitive Than Radiographs in Detecting Change in Size of Erosions in Rheumatoid
Arthritis. HYPERLINK “http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16881098” ¥l “#” ¥o
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Aug 1.
2. Duer-Jensen A, Vestergaard A, Dohn U M, et al. Detection of rheumatoid arthritis
bone erosions by two different dedicated extremity MRI units and conventional
radiography. Ann Rheum Dis 2008;67:998-1003 doi:10.1136/ard.2007.076026
3. Ejbjerb B J, Vestergaard A, Jacobsen S, Thomsen H, Ostergaard M. Conventional
Radiography Requires a MRI-estimated Bone Volume Loss of 20% to 30% to Allow
Certain Detection of Bone Erosions in Rheumatoid Arthritis Metacarpophalangeal
Joints. Arthritis Research & Therapy. 2006;8(3):R59 © 2006 BioMed Central, Ltd.
Posted: 04/07/2006
4. Haugen I K, Boyesen P, Slatkowsky-Christensen B, et al. Comparison of features by
MRI and radiographs of the interphalangeal finger joints in patients with hand
osteoarthritis. Ann Rheum Dis doi:10.1136/annrheumdis-2011-200028.
5. McQueen F M, Benton M, Crabbe J, et al. What is the fate of erosions in early
rheumatoid arthritis? Tracking individual lesions using x rays and magnetic
resonance imaging over the first two years of disease. Ann Rheum Dis
2001;60:859-868.
6. McQueen F M, Dalbeth N. Predicting joint damage in rheumatoid arthritis using MRI
scanning. Arthritis Research & Therapy 2009, 11:124 (doi:10.1186/ar2778)
7. Ostergaard M, Ejbjerb B, Szkudlarek M. Imaging in early rheumatoid arthritis: roles
of magnetic resonance imaging, ultrasonography, conventional radiography and
computed tomography. Best Practice & Research Clinical Rheumatology
2005.19(1):91-116.
本カスタマーボイスはお客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。
著者紹介
Professor Johan (Hans) L. Bloem, MD
Leiden University Medical Center 放射線科の主任教授であり、研修医プログラムのディ
レクターを務める。また、様々な学会( ESR, RSNA, ISS, ESSR, ISMRM, ESMRMB, EMRI 他)
のコアメンバーでもある。研究分野は、腫瘍学や、変性・ 炎症性の関節疾患における、筋
骨格系放射線画像診断分野。数々の助成金を受けており、国際学会での講演経験も豊
富である。11 冊の書籍、9 つの教育マテリアルを発行しており、147 本の論文執筆がある。
Wouter Stomp, MD
Leiden University Medical Center 放射線科の研究員。博士課程では MRI を用いた関節
リウマチの早期発見についての研究を行っている。Rijksuniversiteit Groningen にて医学
学 位 を 取 得 し 、 Deventer Hospital の 放 射 線 科 で イ ン タ ー シ ッ プ を 終 了 し た 。 ま た
Wilhelmina Children’s Hospital にて小児外科のインターシップも終了している。
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