社会科(歴史的分野)学習指導案 11月19日(月)第3校時 2年3組 場所 2年3組教室 指 導 者 教諭 伊藤和裕 1 2 単元名 日清・日露戦争 指導にあたって (1)単元について 本単元は学習指導要領〔歴史的分野〕2内容(5)「近現代の日本と世界」のウ・エを受け たものである。 江戸時代末期から明治にかけて,幕府・新政府内ではロシアのアジアへの南下に対する危機 感が少しずつ高まってきた。明治初期には,武力を用いてでも朝鮮を開国させて近代化しない と,日本の独立が危ういとする「征韓論」が,政府内で強く主張されるようになった。以後, 日本は開国後の朝鮮に対し,軍制改革など近代化のために積極的な支援を行うこととなる。 朝鮮の宗主権を主張する清,不凍港を求めて朝鮮に南下しようとするロシアと日本の対立が, それぞれ日清・日露戦争という形で表れた。 この2つの戦争は単に日本の勝利に終わったということだけではない。明治維新諸改革の成 果でもあり,日本の国際的地位の向上,東アジアにおける中華秩序の打破,民族運動への影響 など,世界史的な意義を様々な視点から考えさせるのに適した題材であると考える。 (2)生徒の実態(在籍:男19名,女20名,計39名) ① 授業に対する実態 本学級の生徒は,授業に対し真剣に取り組む生徒が多い。社会科の学習に対しても同様で ある。これまでの社会科の授業では様々な授業形態を試みてきたが,一般的な講義形式より は視聴覚教材を活用した学習や課題解決型学習(調べ学習)を好む。 また,毎週火曜日に社会科の自主学習ノートを提出させている。学習内容の多くは授業の 復習であるが,「これを覚えよう」「これを理解しよう」などと,目的をもって学習する生 徒は少ない。さらに本単元の指導に際し,以下のアンケートを実施した。 ○ あなたは歴史の学習が好きですか。 ○ 絵や写真を読み取る活動は得意ですか。 男 女 男 女 全般的に好き 10 1 得意なほう 6 4 時代による 7 11 不得意なほう 13 15 全般的に嫌い 2 7 ○ 次の語句をどの程度知っていますか。 征韓論 領事裁判権 関税自主権 日清戦争 日露戦争 韓国併合 説明できる 16 15 17 9 12 1 説明できない 17 20 19 29 25 20 初めて聞いた 5 3 2 0 1 16 ○次の人物を知っていますか。 陸奥宗光 小村寿太郎 伊藤博文 与謝野晶子 東郷平八郎 乃木希典 安重根 孫 文 後藤房之助 説明できる 6 5 30 21 5 0 2 3 0 名前だけ 20 18 8 17 24 7 6 6 0 初めて聞いた 12 15 0 0 9 31 30 29 38 (10月30日実施 回答者38名) アンケート結果を見ると,男子の歴史学習に対する関心が高いことが分かる。また,本単 元の学習に際しては,小学校での既習内容と幕末~明治初期の対外関係が基本となるが,既 習事項の定着という点では不十分な状態である。 (3)指導の着眼 ○校内研究テーマ「主体的に学び,確かな学力を身につける生徒の育成」 ○社会科研究テーマ「資料活用の力を高めるための指導法の工夫」 本単元の学習を進めるうえで,生徒の実態と上記2つの研究テーマをふまえ,以下の点に留 意して指導する。 ①学習資料として,地域の史実を取り上げること 地域の話題や事例・史料などの身近な題材は,生徒の学習意欲を喚起し,理解を深めるう えで効果が高い。本単元にかかわる身近な史料は少ないが,以下の史実を取り上げ,地域の 歴史に関心をもたせたい。 ・陸軍伍長後藤房之助氏:1902年の八甲田山雪中行軍遭難事件の英雄として。 ②歴史的事象を多面的にとらえること 明治以降の日本の歴史を学ぶうえで,アジアを中心とした諸外国とのかかわりをつかむこ とが非常に重要になってくる。この単元では日清・日露戦争の意義を当事国としてだけでな く,アジア史上,世界史上における意義としてとらえさせたい。 ③史料を読み取る力・考える力を育成すること。 日清・日露戦争前後の国際情勢について,フランスのビゴーらによる風刺画が多数描かれ ている。また,日露戦争後にはアジアを中心とした民族運動の指導者が,その結果に対する 感想を述べている。これらの史料を読むことで資料読解力を養い,②で述べたことにも迫り たい。 3 単元の目標 (1)19世紀後半の国際情勢に興味をもち,関連づけながら日清・日露戦争が起こった理由を調 べようとする意欲をもつことができる。 【社会的事象への関心・意欲・態度】 (2)日清・日露戦争における欧米各国の利害関係や国内の様子,戦争の影響について,様々な角 度から考察することができる。 【社会的な思考・判断】 (3)日清戦争から日露戦争までの国内の様子を,政治・産業・社会の面から年表にまとめること ができる。 【資料活用の技能・表現】 (4)国際的な地位の向上と大陸との関係のあらましを,日清・日露戦争,条約改正の視点から説 明することができる。 【社会的事象についての知識・理解】 4 評価規準と指導計画 (1)評価規準 社会的事象への関心・ 意欲・態度 ①条約改正に至るまで の過程について,政 府の努力や国際情勢 と関連させながら, 関心をもって意欲的 に追究している。 社会的な思考・判断 資料活用の技能・表現 ①日露戦争について, 国際関係での日本の 立場の面と,国内の 反応の面から考察し ている。 ②韓国併合について, 様々な研究結果から 考察し,公正に判断 している。 ①日清戦争から三国干 渉までの経過を簡単 な年表にまとめ,説 明している。 ②日本を取り巻く当時 の国際情勢について 史料を読み取り,説 明している。 社会的事象についての 知識・理解 ①日清戦争に至るまで の背景としての,欧 米諸国の植民地獲得 競争に気づき,東ア ジアの情勢を理解し その知識を身につけ ている。 ②韓国併合の進展や辛 亥革命のあらましを 理解し,その知識を 身につけている。 (2)指導計画(4時間扱い) 時数 題 材 主な学習内容 1 欧米列強の侵略 日清戦争に至る背景 と条約改正 条約改正に至る過程 観点 関① 知① 1 日清戦争 日清戦争の原因と結果 三国干渉 資① 1 日露戦争 (本時) 日露戦争の原因と結果 日露戦争の世界史的意 義 思① 韓国併合までの過程 辛亥革命 思② 1 韓国と中国 資② 知② 5 評価規準 条約改正に成功するまでの過程を,意欲 的に追究することができたか。 日清戦争に至るまでの過程を,東アジア の情勢をふまえて理解できたか。 日清戦争の原因を風刺画から読み取り, また,三国干渉に至るまでの過程を説明 することができたか。 日露戦争の意義を,国内外の反応から考 察することができたか。 日露戦争をめぐる国際関係を,風刺画を もとに説明することができたか。 韓国併合までの過程,及び併合後の施策 について客観的に考察し,判断できたか。 韓国併合や辛亥革命のあらましを理解す ることができたか。 本時の指導 (1)題材名 「日露戦争」 (2)ねらい ・ 日露戦争をめぐる国際関係を,風刺画をもとに説明することができる。 【資料活用】 ・ 日露戦争の意義を,国内外の反応から考察することができる。 【思考・判断】 (3)準備物 ・ 教師側:教科書,歴史資料集,学習プリント①・②,正露丸,OHP,世界地図 ・ 生徒側:教科書,歴史資料集 (4)学習過程 別紙 (5)評価の観点 ・ 日露戦争をめぐる国際関係を,風刺画をもとに説明することができたか。 ・ 日露戦争の意義を,国内外の反応から考察することができたか。 (6)板書計画 ③日露戦争 ○原因と経過 ロシア 不凍港を求めて南下 対立 1904 年 1905 年 日英同盟 ロシアを警戒 日露戦争開戦 ポーツマス条約締結 ・韓国での日本の優越を承認 ・樺太の南半分を割譲 ・賠償金はゼロ ○日露戦争の意義 国内では・・・ 独立を維持 講和内容への不満から,暴動発生 海外では・・・ 植民地下のアジア・アフリカ諸国 に,独立への希望を与えた (4)本時の学習過程 段階 学 習 活 動 1 前時までの学習内容を 導 振り返る。 入 5 分 教 師 の 支 援 1 朝鮮の内政改革の必要性から日清 戦争が勃発し,三国干渉でロシアと の対立が決定的になったことを確認 する。 2 本時の学習課題を把握 一斉 2 日露戦争の原因と結果,及びその する。 意義を学習することを知らせる。 日露戦争は,どのような意味を持つ戦争だったのか 3 日露戦争直前の国際関 係をつかむ。 ・日英 対 露仏独 形態 一斉 個別 一斉 展 4 日露戦争の経過を知る。一斉 開 3 ビゴーの風刺画を提示し,以下の 資:学習プリ 点について読み取らせる。 ント② ・登場人物はどの国を表しているか。評:風刺画を読み 取ることがで ・日本人とロシア人の表情はどうか きたか。 ・登場人物にどのようなセリフが入 るか (プリント) 風刺画を読み取ることで,日露間 だけの戦争ではないことに気づかせ る。 4 戦費や死傷者数を日清戦争時と比 資:正露丸 較し,大規模な戦いであったことを 学習プリ 理解させる。戦闘については旅順攻 ント② 防戦,奉天大会戦,日本海海戦を取 り上げ,簡単に説明する。また,戦 争のエピソードとして正露丸の話, 八甲田山雪中行軍遭難事件の話を紹 介し,関心を高める。 5 教科書・資料集を使ってポーツマ 資:教科書, ス条約の内容を確認させる。特に第 資料集 1条と賠償金がないことに着目させ, 幕末以来の宿願であったロシアの南 下を阻止したこと,賠償金を獲得で きなかったことによる不満・負担増 となったことを理解させる。 6 アジアを中心とした民族運動指導 者の回想録を読み,日本の勝利が植 民地支配下のアジア人に独立への大 きな希望を与えたことを理解させる。 5 戦争がもたらした国内 への影響をつかむ。 ・ポーツマス条約の内容 ・日本の安全を確保 ・賠償金0による負担増 個別 一斉 6 戦争の世界史的意義を 考える。 ・民族運動指導者から見 た日露戦争 ・アジア人がヨーロッパ 人に勝ったことの意義 一斉 7 本時の学習内容をまと める。 個別 7 学習プリントに本時の学習内容を 記入させる。また, 次時の学習内容を知る。一斉 8 日露戦争後の韓国併合について学 ぶこと,どのようなことをしたか予 習してくることを伝える。 35 分 終 結 10 分 8 評価・資料 資:学習プリ ント① 評:日露戦争の意 義・影響を考 察することが できたか。 (プリント) 日清・日露戦争学習プリント② 日露戦争の意義 ~ 1 日本にとって,どんな意味を持つ戦争か 日露戦争をめぐる国際関係を読み取ろう ( ) ( ) ( ○手前の3人は,どの国を表しているか。また,後方の2人は? ○3人には,どんなセリフが入ると考えられるか。 2 ~ 日露戦争が与えた影響・意義を考えよう ○ポーツマス条約第2条 ロシアは,日本が韓国に絶対的な利権を持つことを認め, 日本政府が韓国に必要と認める措置を妨げたり干渉しない。 ○戦病死者11万6千人 戦費15億円(大半が借金) ロシアからの賠償金は0 ○「日本がロシアに勝った結果,アジア民族が独立に対する大い なる希望を抱くに至ったのです。」(辛亥革命の父 孫文) 「もし日本が,最も強大なヨーロッパの一国に対して,よく勝 利を博したとするならば,どうしてそれをインドが成し得な いと言えるだろう?」(後のインド首相 ネルー) 「日本人こそは,ヨーロッパに身のほどをわきまえさせてやっ た唯一の東洋人である。」 (エジプト民族運動の指導者 ムスタファー・カミール) ) コラム ~ 1 身近にある日露戦争 ~ 八甲田山雪中行軍遭難事件(1902年1月) 日露戦争開戦が濃厚となった1902年,ロシア艦隊によって津軽海峡が占領された場合,東 北の太平洋側と日本海側をうまく移動できるか確かめるために雪山を歩いて横断するという訓練 が行われた。 しかし冬の八甲田山は豪雪地帯・猛吹雪地帯であり,訓練に参加した兵士の多くは宮城・岩手 の農家出身者で,雪山に関する知識が乏しかった。 1月23日に訓練が始まったが,猛吹雪に行く手をさえぎられ,訓練はたちまち大混乱に陥っ た。寒さに凍死する者,発狂して衣服を脱ぐ者,川に飛び込んで帰ろうとする者が続出し,訓練 に参加した210名のうち,199名が凍死するという大惨事となった。この訓練に参加した兵 士の中に小野寺熊治郎伍長(栗駒松倉三丁出身),後藤房之助伍長(栗駒姫松出身)がいた。 小野寺伍長は死を覚悟した際,自分の死をもって遭難を知らせようとし,自ら川に飛び込んだ。 自分の遺体が下流に流れ着けば,気づいた人が探しに来るだろうと考えたのである。発見された 遺体は完全に凍りつき,直ちに東北本線で石越駅に運ばれた。凍りついた遺体と対面した父親は 「熊,よく帰ってきたな。」と声をかけた。すると,凍りついた遺体から鼻血が噴き出した。こ れを見た人たちは親子の不思議な縁を感じたという。 吹雪が止んで,救助隊が捜索したところ,胸まで雪に埋もれて立ったまま失神している兵士を 発見した。これが後藤伍長であった。捜索隊の目印になるようにと,立ったまま気絶していたの である。後藤伍長は凍傷のため,両手両足を切断せざるを得なかった。しかしその責任感は軍人 の手本であるとたたえられ,後に発見された時と同じ姿の銅像が現地に建てられた。また,皇后 陛下から義手・義足を賜った。 後藤伍長が発見された大滝平に建てられた看板 遭難し,直立したまま仮死状態で 発見された後藤房之助伍長の像
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