NAMI 声明:ドイツ機の悲劇 Mary Giliberti NAMI 理事の声明

NAMI 声明:ドイツ機の悲劇
Mary Giliberti NAMI 理事の声明
NAMI は、この度のドイツ機 9525 便の事件に関し世界の方がたと悲しみを共にするもの
です。この理不尽な悲劇で命を失われた方がたのご家族に対して、深くお悔やみを申し
上げます。
今回の事件に限らず、何か問題が起きると往々にしてマスコミの過熱報道が生じ、ある
程度の時間が経過した後になって正確な情報が徐々に出てきます。よって、事件や事故
の原因について早い段階で憶測するのではなく、事実関係が明らかになった上で判断を
するべきだと思います。
今回、マスコミの報道が進むにつれ、今回の事件で飛行機を墜落させた副操縦士はうつ
病の病歴があったことが分かってきました。先日はドイツの検察官が、「副操縦士はか
なり長期にわたって精神療法を受けたことがあり、その際、自殺傾向が確認されていた」
と発表しています。一方航空会社によれば、副操縦士は2009年の時点で「かつて重
度のうつ病エピソードがあった」と会社側に報告していたということですから、治療を
受けていたのはパイロットのライセンスを取得するより前だったようです。
また副操縦士は他にも病気を抱えていたようですが、こうしたことが今回の事件と何ら
かの関係があるのか否かはまだわかっていません。
私たちが今回の事件に関して分かっているのは、副操縦士が飛行機を墜落させ、149
人の乗客を巻き添えにして自殺を図ったということ。
一方、一般的に言ってほとんどの自殺が精神疾患と関係していることも私たちは知って
います。
米国では、毎年約4万人の人が自殺しています。自殺予防にはほど遠い状況にあること
は明らかです。
自殺というのは本人が自らの中に心理的問題を抱え、そうした問題との葛藤に苦しむこ
とで自らの命を絶ってしまうというのが殆どであり、他人を巻き添えにした自殺という
のは非常に稀です。ましてや民間航空機のパイロットが乗客を道連れにして自殺をする
など、あり得ないことと言ってよいでしょう。だからと言って、これが今回の事件の犠
牲者、ご家族、ご友人には何の慰めにもなりませんが。
精神疾患を抱えて生きている人が暴力的であることは珍しく、暴力的な事件が起きた場
合、精神疾患は複数ある要因の1つにすぎません。
今回のドイツ機の副操縦士に関し、彼の今までの人生について全てが分かっているわけ
ではありません。今後も分からないままになるかもしれません。うつ病の正確な病歴が
明らかになったとしても、結局、うつ病は他の要因に比べて余り重要な要因ではないと
いうことになっているかもしれません。
「精神疾患のある人を特定の職業や仕事に就けて良いのか?」という議論が世界中で沸
き起こっている中、どうぞ上のことに心を留めてください。精神疾患は治療可能です。
回復するのです。
理不尽な事件が起きたからと言って、「精神疾患の病歴がある人は暴力的」というよう
な偏見に満ちた思い込みを復活させてはいけません。もし今回のドイツ機事故の結果、
精神疾患の受診歴のある人が不公正な差別を受けるような「魔女狩り」が始まるとした
ら、それは更なる悲劇と言わざるを得ません。
この1年、アメリカでは 1600 万人の成人(人口の7%)が大うつ病エピソードを少な
くとも 1 回、経験しています。抑うつの症状が起きた場合、医師を受診して包括的な診
察を受けてください。
「うつ病エピソードに似た症状を生み出す医学的疾患」
「薬物の副
作用」「その他の医学的理由」がないのかをまず確認し、その後でうつ病の治療計画を
立てる必要があるでしょう。
社会としては、問題が精神疾患であろうと他の疾患であろうと、必要な助けを求めるこ
とを奨励するような文化的環境を生み出さなければなりません。病気があるのに「職を
失う」「社会から笑いものにされる」といったことを恐れて病気を隠さなくてはいけな
いというようなことは、あってはならないのです。
私たちは、人間一人ひとりの命の価値を肯定する社会を希求しています。だからこそ、
今回、ドイツ機の墜落により多くの尊い命が失われたことに対して心からの哀悼の意を
表するものです。
下記のサイトもご覧ください。
https://www.nami.org/About-NAMI/NAMI-News/NAMI-Statement-The-Germanwings-Trag
edy#sthash.XnnwJaKt.dpuf
(注)以上の翻訳には NAMI の許可を得て行ったものです。NAMI へのコンタクトは下記
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