薬剤師の“こころ”と“かお” ~今、医療人への変貌のとき~ 2012 年 、6 年 制 の教 育 カリキュラムのもとで育 った薬 剤 師 の第 一 期 生 が誕 生 しました。 新 しい薬 剤 師 の登 場 により、「医 療 人 としての薬 剤 師 」として活 躍 する薬 剤 師 がますます 増 えることが期 待 されます。 本 コーナーの第 1~3 回 では、「薬 剤 師 が医 療 人 であること」の意 味 、医 療 現 場 で求 めら れる新 しい薬 剤 師 像 、医 療 人 たらんと奮 闘 する薬 剤 師 の声 などをご紹 介 してきました。 (※第 1~3 回 までの記 事 はこちらからご覧 いただけます。) 第 4 回 からは、福 岡 大 学 薬 学 部 教 授 ・福 岡 大 学 筑 紫 病 院 薬 剤 部 長 の神 村 英 利 先 生 に、 臨 床 現 場 の薬 剤 師 が直 面 している問 題 や今 後 の薬 剤 師 の方 向 性 などについてご解 説 いただきます。 第 9回 患者にやさしい薬剤師をめざして Let’s Try! これまでに薬 学 的 なフィジカルアセスメントやトリアージのやり方 、他 施 設 の薬 剤 師 および 他 職 種 との連 携 の構 築 方 法 、職 業 性 ストレスを軽 減 するコツについて述 べてきました。そ こで今 回 は、なぜ、これらのことが薬 剤 師 に求 められているのかを述 べて、私 のシリーズ を締 めくくりたいと思 います。 患者は心に串が刺さっています 10 年 くらい前 でしょうか、当 時 、日 本 病 院 薬 剤 師 会 の会 長 であった故 ・全 田 浩 先 生 がご 講 演 の中 で“患 者 の「患 」という字 は「心 に串 」と書 く”と仰 っておられました。私 は思 わず 膝 を打 ち、“なるほど”とつぶやきました。確 かに、「心 」という字 に「串 」を乗 せたら「患 」になります。私 は、この時 の全 田 先 生 の お言 葉 を“患 者 とは、病 気 が原 因 で心 に串 が刺 さっている人 を いう”と解 釈 しました。 体 が病 むことによって、身 内 に心 配 をかけてしまいます。入 院 す ることになれば、社 会 人 なら仕 事 に穴 を開 け、同 僚 に迷 惑 をか けることになりますし、学 生 なら勉 学 に支 障 をきたします。休 職 期 間 が長 引 けば、無 給 の中 で家 計 を維 持 し、治 療 費 を払 わなければなりません。このよ うに、病 気 になると、心 にも何 本 もの串 が刺 さる(プレッシャーやストレスがかかる)のです。 私 は口 腔 底 がん(stage 2)を経 験 したから、なおさらそのように思 うのかもしれません。そ して、「心 に串 が刺 さっている」患 者 を相 手 に仕 事 をするのが医 療 人 です。 患者にやさしくなるために 医 療 人 は患 者 が抱 える問 題 にアプローチするために、その訴 え、一 般 状 態 、検 査 値 、画 像 などから、自 らの職 能 に応 じたフィジカルアセスメントとトリアージを行 い、自 分 にできな い業 務 については他 職 種 と連 携 します。このようにして、心 の串 を取 り除 くのは無 理 とし ても、せめて体 に刺 さった串 は抜 くか、抜 けないならば痛 みを和 らげるように取 り組 みます。 薬 剤 師 も同 様 で、患 者 の薬 学 的 問 題 に向 き合 い、解 決 するための労 を惜 しまないのが、 患 者 にやさしい薬 剤 師 であると私 は思 います。また、職 業 性 ストレスが高 く、医 療 者 の心 に余 裕 がなければ、患 者 に笑 顔 を向 けられませんし、患 者 の意 を汲 み取 ることもできない でしょう。つまり、フィジカルアセスメントとこれに基 づいてトリアージする能 力 、同 業 者 や他 職 種 と連 携 する能 力 、職 業 性 ストレスを軽 減 させる能 力 は、医 療 人 が患 者 にやさしくなる ために必 要 なもので、だからこそ、薬 剤 師 にも求 められていると思 うのです。 他職種との連携 患 者 や顧 客 から“あなたが調 剤 した(または選 んだ)お薬 なら安 心 です”、“あなたが観 ていてく れるから安 心 です”と言 っていただける薬 剤 師 が最 高 (最 も信 頼 されている)と思 います。まず はあなたの家 族 から、このようなことを言 っても らえる薬 剤 師 をめざそうではありませんか。 まずは初めの一歩 フィジカルアセスメントして、文 献 を調 べ、知 恵 を絞 って処 方 提 案 したのに却 下 されたり、 処 方 変 更 後 に状 態 が悪 化 したり、結 果 的 にオーバートリアージで医 師 や患 者 から文 句 を 言 われれば凹 みますが、臨 床 経 験 を積 めたことは事 実 です。失 敗 したら、その原 因 (知 識 不 足 、コミュニケーション不 足 など)を考 察 し、改 善 するように努 力 して、次 の症 例 に向 かえばいいのです。まずは初 めの一 歩 です。Let’s Try!とまいりましょう。 予告・第 23 回日本医療薬学会年会ランチョンセミナー テーマ:“考えてみよう、この患者へのかかわり ~39 歳 乳がん患者の女性~” 第 23 回日本医療薬学会年会が平成 25 年 9 月 21 日~22 日に開催されます。 21 日に、本コラムの 1 回目~3 回目を担当された岐阜薬科大学客員教授・土屋照雄先生との 共同企画で、ランチョンセミナーを開催します。 セミナーでは、患者に薬剤師としてどのように関わっていくのか、パネリストとフロアの先生 方が一緒に考えながら、ディスカッションを展開していきます。 参加された先生方にご満足いただけるような内容を企画していますので、多くの先生のご参加 を心からお待ちしています。 神 村 英 利 (かみむら ひでとし)先 生 福 岡 大 学 薬 学 部 教 授 ・福 岡 大 学 筑 紫 病 院 薬 剤 部 長 1984 年 、福 岡 大 学 薬 学 部 卒 業 。89 年 、九 州 大 学 大 学 院 薬 学 研 究 科 修 了 (薬 学 博 士 )。 (医 )井 上 会 篠 栗 病 院 薬 剤 室 長 を経 て、2004 年 より現 職 。 2007 年 より同 院 臨 床 研 究 支 援 センター長 、2008 年 より同 大 学 薬 学 部 教 授 を兼 任 。 【所 属 学 会 】 日 本 薬 学 会 、日 本 医 療 薬 学 会 、日 本 環 境 感 染 学 会 、日 本 化 学 療 法 学 会 、日 本 社 会 薬 学 会 、日 本 クリニカルパス学 会 、日 本 TDM 学 会 、日 本 薬 物 動 態 学 会 、日 本 産 業 ストレ ス学 会 、日 本 ファーマシューティカルコミュニケーション学 会 、日 本 ジェネリック医 薬 品 学 会 、医 療 の質 ・安 全 学 会 、日 本 医 薬 品 情 報 学 会
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