地球時代の音の文化、耳のデザイン 外苑PD講座12月:Key Note 2011年12月1日 竹 村 真 一 1.“人間のマルチメディア化”にむけて ~視覚偏重文化の再考、ことばの原風景 2.世界の調律 ~”Life-Design”としての音環境(サウンドスケープ) 3.地球大の耳のデザイン ~”Planetary”なサウンドスケープ、聴覚経験の可能性 1.視覚偏重の現代文明 “人間のマルチメディア化”にむけて 我々の世界経験は 本来もっとマルチモーダル だったのではないか? (“耳鼻科系”文化) “DID”; Dialogue in the Dark ブラインド・ウォーク・・ 視覚以外のマルチモーダルな 経験チャネルの発見 ↓ (健常・障害とは何か?) かつて世界はもっと“アコースティック”だった・・。 (audible で tactileな世界経験) ・ホイジンガ「中世の秋」 ・マクルーハン「グーテンベルグの銀河系」 ・オング「声の文化、文字の文化」ほか かつて世界はもっと“アコースティック”だった・・。 (audible で tactileな世界経験) 「神」も可視的でなく、可聴的なものだった。 (“音連れ”、“神鳴り”、預言者・・) ことば(言語空間)も“耳鼻咽喉科系”だった。 ・文字以前のことばの再発見 川田順造「口頭伝承論」、アイヌ口承、マクルーハン、オング・・ ・文字文化でも「音読」が基本 (~黙読は近代の発明) cf 中世僧院の音読ブース ・現在も西欧以外の高度な文字文明の多くが 「声の文化」を重視する cf イスラーム:クルアーン朗詠する子どもたち ヒンドゥ、仏教の「マントラ」(真言) では、なぜ我々の世界経験は かくも「視覚偏重」になってしまったのか? その歴史的・文化的経緯を振り返ると・・ ことばの視覚化・脱身体化(=離人化) ~普遍化した西欧近代の言語空間 1)アルファベット;表音文字革命、 <メディア革命、社会革命、人間革命> 母音表記によりテクストの自立 2)プラトン“詩人の追放” 3)グーテンベルグ革命 ・活版印刷 + とじ本革命 (パッケージ化、大量複製) ・目次、索引、ページ化 (分類・検索・俯瞰性・一覧性) ・透視図法、地図、座標系(数値化) 最も分析的な感覚:「視覚」の優位 # 眼と耳;言語空間の分離 (→「黙読」「孤読」の発明) # 教会(シアター型) →聖書(パッケージ型) # 宗教改革、科学革命、 国語・国民国家(方言標準化) 「個」の自立と議会制民主主義 西欧近代の言語空間~歴史的に編制された世界経験のモード 1)視覚偏重、脱身体化 ことばが耳と口を経由せず、 ひとの身体を必要としない 「離人的」なテクストとして自立 2)脱コンテクスト化 パッケージ化、時空の超越、 出来事の文脈から切り離され 分類・標準化・一覧化 (博物館・博覧会、百科事典) 3)人間中心vs人間不信 数値化・座標・地図=“神の視点” デカルト:感覚経験より数値重視 → 「黙読」「孤読」の言語空間 → ウォークマン、ケータイ文化 → 声の文化、言語多様性の危機 → 蓄音器(レコード)で音声も 写真・映像で視覚情報も パッケージ化(脱コンテクスト) → デジタル統合でそれが更に加速 → 科学技術信仰 身体性と声の復権を叫びつつも 眼と耳、頭とからだが分裂? 文字・活字文化は ことばの生態学、言語空間の本質を大きく変えた。 ・反復、冗長性 視覚化・一覧化の情報エコノミーに反する ・擬態語、擬声語(オノマトペ) ・自然音との連続性 (コエガ・ブーレ、日本人の脳) 耳のことば、 眼の活字空間 聴覚的「言霊」OS、 視覚的「漢字」OS 聴覚的に生きられた日本語空間、 ことばの世界経験・・ ・日本語の「言霊」感覚 サクラ、ヒコ/ヒメ、イノチ・・ 英語でも・・(gn/kn;ことばの樹) “人間のマルチメディア化”と 言語空間のマルチメディア化 “第二次;声の文化”? 音楽文化の隆盛・・ 電子文明と五感の復権・・ 人間に与えられた 最大の“Gift”としての「声」 の再発見? しかし一方で 「耳の危機」? サウンドスケープ (聴覚環境)の汚染 (cf ルドルフ・シュタイナー) 視覚優位、聴覚経験軽視の表れ? 2.世界の調律 2.世界の調律 “サウンドスケープ” “イヤークリーニング” (マリー・シェーファー) もうひとつの「環境汚染」を指摘; ・ハイファイ→ローファイな音環境 (S/N比低下、フラット化、遠近感喪失) ・現代人の聴覚と脳の危機 ・音の政治学(cf。ヒトラーとラジオ) ・「沈黙」と環境音 J.ケージ「4分33秒」 武満徹「沈黙と測りあえる音」 エミリー・カー:沈黙で満たされた森 ・音のデザイン、耳のデザイン BGMでなく、聴覚経験のデザイン (ex.橋の袂に “触媒としての音”) バウハウスが工業機械製品(マスプ ロダクト)と芸術を統合したように、 ・日本の伝統文化OS ししおどし、水琴窟、風鈴 いま「聴覚環境のデザイン革命」が 必要なのではないか?(MS) “世界の調律”という旧くて新しいテーマ・・。 しかしその本来のパースペクティブはもっと広かった。 ・「天球の音楽」 (ピタゴラス、プラトン、R.フラッド、 ケプラー、ニュートン・・) 地球・太陽系を一弦琴とみなし、 整数比=調和音で構成される 音楽的なシステムとして捉える。 音の調律 環境デザイン 宇宙の調和 世界の調律 ・グレゴリオ聖歌 ポエティウス音楽論とピタゴラス理論 ・平安京;音の宇宙 鐘の音と風水(都市計画) 人間の調律 心身の調整 世界の調律 ∞人間の調律 の現代的次元 ・音楽療法、マントラ・・ 心拍調律?としてのドラム (アフリカ;M.グレイブス) “Life-Design” (生命・生活・人生 の調律・デザイン) としての “サウンドスケープ” デザイン ・超可聴域の顕著なガムラン音楽 (大橋力氏:脳への影響研究) ・「タンパク質の音楽」 (なぜ牛にモーツアルトなのか?) “Vibration Medicine”新領域医療 ・”Note”:香りと音(耳鼻科系) 色と薬、化粧(”cosmetics”)、服薬 アロマテラピー、植物療法 3.地球大の耳のデザイン 真に”Planetary”なサウンドスケープ、聴覚経験の可能性 3.地球大の耳のデザイン 真に”Planetary”なサウンドスケープ、聴覚経験の可能性 前史としての; ・「無線想像力」(イタリア未来派) ・”Global Village”(マクルーハン) ↓ ・1996: “Sensorium” 地球大の神経系の可視化・可聴化 1)地球の裏側の人の「気配」 つながりの実感値?? “online presence”“context awareness” (cf. 朝のリレー、見守りホットライン) ・2005:地球回廊@愛・地球博 collection万博→ connection万博 2)“人間界に閉じないデザイン” 異種間communication, Phyto-therapy としての音楽の可能性(坂本龍一) 地球の胎動・リズムの可聴化 いまやインターネットで世界は “flat””connected” “synchronized” しかし、それは人間世界の中での事。 我々は本当に地球大にconnnected? 「地球とsynchronizeしているか?」 情報回線のブロードバンド化、 経験と想像力のブロードバンド化 地球は磁力線を弦とした宇宙弦楽器 ~”St-Giga”、太陽風鈴、ネムの木? 3)シアター型→パッケージ型メディア →いま「ネットワーク型」メディアへ 再び“現場経験”“再コンテクスト化” 1)地球の裏側の人の「気配」 つながりの実感値?? “online presence” “context awareness”の視点 (cf. 朝のリレー、見守りホットライン) 地球的想像力のブロードバンド化 2)“人間界に閉じないデザイン” 異種間communication, Phyto-therapy としての音楽の可能性(坂本龍一) 地球の胎動・リズムの可聴化 ~太陽風鈴、気候レジームシフト・・ 3)シアター型→パッケージ型メディア →いま「ネットワーク型」メディアへ 再び“現場経験”“再コンテクスト化” そういう課題を集約した 社会実験デザイン・プロジェクトとしての Forestscape:地球聴診器 “Air” JVCケンウッド+Aquascape 1)パッケージ(録音)音源でなく “Live”で森につながるスピーカー ~今その場所に「再コンテクスト化」 2)森の呼吸、動物や鳥や人の気配 を感じるためのセンスウエア (日本の森、世界の森・・) 3)森を聴きながら、森を育てる ~収益が森に還元(moretrees等)、 人間界と植物界のインターフェイス 我々は“Planetaryな耳”を持ちうるか? 結び Musu-hi 1. 情報空間の「再身体化」、五感と声のGiftの再活性化 “人間のマルチメディア化”という可能性 そして“Life-Design”(世界の調律=人間の調律)としての サウンドスケープ・デザインという仕事 2.世界経験の「再コンテクスト化」 (シアター型→パッケージ型→ネットワーク/ユビキタス型) アレクサンドリア、グーテンベルグに続く、第3の人類史的メディア革命 3.我々は“地球大の耳”を持ちうるか? ~Planetaryな世界経験のメディア、 感覚と想像力の真の意味での「拡張」(ブロードバンド化)
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