他者実現 校 長 佐 藤 修 一 他者実現 この言葉は、中学生時代の教頭先生 から、教員に採用されたお祝いにいた だいた色紙に書かれていたものだ。離 任式で、「どんなに音信不通になって も、就職したときや結婚したときなど、 人生の大きな岐路には葉書一枚でいい から教えてくれ」とお話しになり、連 絡したところ、いただいた色紙だった。 「他者実現」-教員として子どもた ちのために一生懸命働け-そうおっし ゃりたかったのかな、と受け止めていた。ある時、オー・ヘンリーの「賢者の 贈り物」という小説に出会い、こんなことを他者実現というのかな、と考え直 した。次のようなストーリーだ。 貧しい夫妻が相手にクリスマスプレゼントを買うお金を工面しようとする。 妻のデラは、夫のジムが祖父と父から受け継いで大切にしている金の懐中時 計を吊るす鎖を買うために、自慢の髪を切って売ってしまう。 一方、夫のジムはデラが欲しがっていた鼈甲の櫛を買うために、自慢の懐中 時計を質に入れる。 クリスマスの夜、帰宅したジムを待っていたのは、長い髪をばっさりと切っ たデラの姿だった。そしてデラもまた夫が懐中時計を手放してしまったことを 知る。 二人のプレゼントは結局無駄になってしまった。しかしその時、二人はそれ ぞれに最高のプレゼントを得たことに気付く。相手を深く思う心-深い愛情と いうものをクリスマスプレゼントとして得たのだ、と。 一中は温かい善意で包まれている 2学期の終業式で「一中は温かい善意で包まれている」と話した。この冬休 み、玄関の雪かき、廊下や用具室の清掃、トイレットペーパーや全ての教室の 灯油を補充してくれた人たちがいた。女子バスケットボール部、陸上競技部、 サッカー部、バドミントン部の部員たちだ。やらされているのではなく、率先 して自主的にしてくれたことだった。学校や生徒のために役立とうとする心や 他者を思いやる心が形になって表れている。ありがとう。君たちは一中の誇り だ。 外は寒くても体育館の中は穏やかだった 始業式開始の5分前には、全校生徒が静かに座って待っていた。外は吹雪。 体育館はジェットヒーターが朝早くから作動してはいるが、まだまだ冷気が漂 っている。しかし、ジェットヒーターの前で暖を取る生徒はいない。8時 40 分ちょうど、穏やかな雰囲気の中で始業式を開始した。
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