15. CAPM批判とマルチファクターモデル

FinanceIII2007#011.nb
15. CAPM批判とマルチファクターモデル
à アノマリー:説明できない謎
anomaly : 説明できない謎
ü 企業規模効果
小型株:時価総額の小さい株式
小型株のパフォーマンスが高い
ベータで計測したリスクの違いでは説明できない
ü E/P比率効果
E/P比率=PERの逆数
E/P比率の高い割安株(低PER銘柄)のパフォーマンスが高い
ベータで計測したリスクの違いでは説明できない
ü 未解決
企業規模とE/P比率の間には負の相関関係がある.
どちらがより重要なのかはわかっていない.
ü カレンダー効果
1週間のなかでは月曜日のリターンが他の曜日よりも低い.
「月曜日効果」
・ブラック・マンデー 1987/10/19
・週末にはマーケットがしまっている事も1つの原因
米国では1月のリターンがCAPMのベータでは説明できない.
「1月効果」
・税金対策
à CAPMの妥当性と市場の効率性
ü CAPMは否定されたか?
アノマリーの原因はどこにあるか?
・市場の効率性:資産価格の形成過程
・CAPMの妥当性
à ファクター・モデル
アルバイトの時給を決定する要因
・しんどさ
・勤務時間帯
シングルファクター・モデル
・説明変数が1つ
・CAPM∫各証券のリターンをマーケット・リターンで説明
1
FinanceIII2007#011.nb
2
マルチファクター・モデル
・説明変数が複数
マルチファクター・モデルとは
k -th ファクター
Fk
誤差
ei
k -th 感応性
bi,k
Ri = ai + bi,1 F1 + bi,2 F2 + ∫ + bi,L FL + ei
以下の条件を満たさないといけない
ei ~ NH0, s2 L
CovHei , e j L = 0
CovHei , Fk L = 0
CovHFk , Fb L = 0
ファクターの候補
・DOW工業株平均株価
・S&P500指数
・TOPIX
・日経平均株価
・為替レート
・業種固有のファクター
・財務関連ファクター
à APT:マルチファクターモデルから出発
ü フレームワーク
Ri = ai + bi,1 F1 + bi,2 F2 + ei
k -th ファクター
Fk
誤差
ei
k -th 感応性
bi,k
以下の条件を満たさないといけない
ei ~ NH0, s2 L
CovHei , e j L = 0
CovHei , Fk L = 0
CovHFk , Fb L = 0
期待リターン
E@Ri D = ai + bi,1 E@F1 D + bi,2 @F2 D
(*1)
(*2)
(*1)–(*2)
Ri - E@Ri D = bi,1 f1 + bi,2 f2 + ei
fk := Fk - E@Fk D
リスク
s2 @Ri D = bi,1 2 s2 H f1 L + bi,2 2 s2 H f2 L + s2 Hei L
s2 H f1 L, s2 H f2 L systematic risk
unsystematic risk
s2 Hei L
FinanceIII2007#011.nb
ü 十分に分散したポートフォリオの構築
n 種類の証券でポートフォリオ P を構築
ポートフォリオのリターン
RP
ポートフォリオ P に占める証券 i の投資比率
wi
充分分散化しているï大数の法則により
n
wi ei º 0
⁄i=1
RP = ⁄ni=1 wi ai + H⁄ni=1 wi bi,1 L F1 + H⁄ni=1 wi bi,2 L F2
このポートフォリオが裁定ポートフォリオであるとする.
裁定ポートフォリオとは
・初期投資資金
0
・リスク
0
・将来時点で確実な利益
裁定ポートフォリオより
n
wi = 0
初期投資金額=0
⁄i=1
n
⁄i=1 wi bi,1 = 0 リスクなしの裁定(ファクターの systematic risk =0)
⁄ni=1 wi bi,2 = 0
する.
・上の3条件
・均衡においては裁定機会は消失
ï均衡において各証券の期待リターンは次のようにかける.
E@Ri D = l0 + l1 bi,1 + l2 bi,2
無リスク資産 F の導入
bF,1 = bF,2 = 0
l0 = RF
E@Ri D - RF = l1 bi,1 + l2 bi,2
第1ファクターに対応するファクター・ポートフォリオ P1
bP,1 = 1.0, bP,2 = 0.0
E@RP,1 D = RF + l1
l1 = E@RP,1 D - RF
ファクター1に対応するリスク・プレミアム
第2ファクターに対応するファクター・ポートフォリオ P2
bP,1 = 0.0, bP,2 = 1.0
E@RP,2 D = RF + l2
l2 = E@RP,2 D - RF
ファクター2に対応するリスク・プレミアム
E@Ri D = l0 + l1 bi,1 + l2 bi,2
E@Ri D = RF + HE@RP,1 D - RF L bi,1 + HE@RP,2 D - RF L bi,2
一般にファクターがL個の場合
E@Ri D = RF + l1 bi,1 + l2 bi,2 + ∫ + lL bi,L
3
FinanceIII2007#011.nb
4
ü 数値例(証券投資論より)
リスク証券
予想収益率
A
B
C
5%
50%
40%
反応度
ファクター1 ファクター2
0.8
2.5
1.2
1.5
1.6
0.5
裁定ポートフォリオの構築
wA + wB + wC = 0
bP,1 = 0.8 wA + 1.2 wB + 1.6 wC = 0.0
bP,2 = 2.5 wA + 1.5 wB + 0.5 wC = 0.0
wB = 1.0 とする
wA = -0.5
wB = -0.5
t=0
t=1
反応度
ファクター1 ファクター2
A
100
–100(1+0.05)=–105 –0.5×0.8
–0.5×2.5
B
–200
200(1+0.5)=300
1.0×1.2
1.0×1.5
C
100
–100(1+0.4)=–140
–0.5×1.6
–0.5×0.5
裁定ポートフォリオ 0
55
0
0
※裁定ポートフォリオの nonsystematicは近似的に 0 になっている.
裁定機会が存在
ï裁定ポートフォリオを構築する投資家
ï裁定機会は消滅へ(均衡状態へ)
期待リターン
A
5%
51%
B
50%
47%
C
40%
43%
RP = -0.5 H51 %L + 1.0 H47 %L - 0.5 H43 %L = 0
均衡において
0.51 = l0 + l1 H0.8L + l2 H2.5L
0.47 = l0 + l1 H1.2L + l2 H1.5L
0.43 = l0 + l1 H1.6L + l2 H0.5L
EHRi L = l0 + bi,1 l1 + bi,2 l2
à (memo)
ü シングルファクター・モデルでの理解
シングルファクター・モデル
Ri = ai + bi,1 F1 + ei Hi = 1, 2, ∫, nL
n 種類の証券から十分な証券を選んで3つのポートフォリオ A,B,C を
期待リターン
E@Ri D = a + bi,1 F1
FinanceIII2007#011.nb
ü 具体例
3種類の証券
証券1R1 = a + b1,1 F1 + e1 = 8 + 0.9 F1 + e1
証券2R2 = a + b2,1 F1 + e2 = 8 + 3.0 F1 + e2
証券3R3 = a + b3,1 F1 + e3 = 8 + 1.8 F1 + e3
期待リターン
E@Ri D = a + bi,1 F1
à APTの活用方法
ü APT の特徴
ファクター・ティルト戦略を可能にする.
APTは近似的に成立する線形関係
unsystematic risk は近似的に消去
ü 問題点
ファクターの決定の仕方
5