I F R S に お け る 「 の れ ん の 減 損 」の 概

減損テストは毎期実施
松永 貴志
たは資産グループにおいて減損の兆
候が認められた場合に減損の有無を
判定し、回収可能価額と帳簿価額と
の比較により計上すべき減損額を測
定するという基本的な考え方におい
ては、日本基準とIFRSは類似し
ている。ただし、のれんの減損に係
る会計処理については、減損テスト
のレベル(のれんの配分)、減損損失
の認識・測定、減損損失の戻入れの
考え方など、いくつかの点で差異が
公認会計士
計額が2005年から2014年に
認められる。
IAS 号における
基本原則
かけての 年間で209%増加して
いるという結果が示されている。
計上額の増加といった傾向は、少な
I F R S 適 用 企 業 の 拡 大、 の れ ん
わが国においては、2010年3
くとも見通し得る将来において継続
わが国における
のれんの計上
PwCあらた有限責任監査法人
IFRSにおける
「のれんの減損」
の概要
はじめに
国際財務報告基準
(IFRS)を適
用する日本企業の増加とM&Aの活
日以後終了する連結会計年度よ
る事例が多くみられる。
買収に伴ってのれんを多額に計上す
次増加しており、2016年6月末
が、その後、IFRS適用企業は順
りIFRSの任意適用が開始された
いる。特に、のれんの計上額をいか
おけるのれんの重要性は増してきて
なか、IFRSに基づく財務報告に
することが予想される。そのような
で減額しなければならない。当該減
産の帳簿価額をその回収可能価額ま
に、かつ、その場合にのみ、当該資
額が帳簿価額を下回っている場合
月
IFRSにおけるのれんの会計処
日までの1年間にIFRSにより有
に評価するか、すなわち、IFRS
項)。つまり、資産は、
号は、「資産の回収可能価
理は、日本基準におけるのれんの会
価証券報告書を作成・提出した会社
額は減損損失である。」と述べている
号
る金額で計上してはならない。
貸借対照表上、回収可能価額を超え
(IAS
IFRSにおいて、のれんを含む
められる。
いても十分な理解に基づく対応が求
IAS
計処理と類似する面もあるが、特に
におけるのれんの減損の取扱いにつ
月3日に企業
社が連結貸借対照表に「のれん」を
計上している。
また、2016年
会計基準委員会よりリサーチ・ペー
価値のいずれか高い金額と規定され
号
項)が、これは、
ここで回収可能価額とは、資産の
RSにおける減損規定を解説すると
パ ー 2 号「 の れ ん 及 び 減 損 に 関 す る
が、他の資産または資産グループか
ている(IAS
資産の減損に係る会計処理はIAS
ともに、日本基準の取扱いとの差異
定 量 的 調 査 」が 公 表 さ れ て い る。 こ
らおおむね独立したキャッシュ・イ
資産の回収可能価額の測定は、合理
処分コスト控除後の公正価値と使用
について触れる。なお、文中の意見
のなかで、日経225株価指数の構
ンフローを生み出す最小単位として
的な経営者が行う可能性の高い行動
36
号「資産の減損」で定められている
にわたる部分は筆者の私見である。
成会社のうち日本基準適用会社を対
資産をグループ化し、特定の資産ま
「のれん」
の減損に焦点を当て、IF
本稿では、近年注目を浴びている
間での異なる取扱いがみられる。
社である。うち半数を超える
発化を背景として、他企業や事業の
10
は約
36
59
36
36
80
象とした調査において、のれんの合
10
50
その減損の検討に関しては、両基準
31
第1章
74
36
10
経理情報●2016.12.10(No.1465)