皮膚がんについて

2009 年 1 月 10 日
編集・発行 県立吉田病院広報委員会
かけはし
県立吉田病院
広報誌 第18号
皮膚がんについて
ん剤などの軟膏やクリームを塗ったり、ある種の
飲み薬を内服するのも有効とされています。
皮膚科医長
須山孝雪
ところで、日光を浴びると皮膚がんになりやす
いとよく言われます。本当でしょうか?白人では
紫外線を浴びると有棘細胞癌になりやすいと考え
皮膚がんにはいくつ
か種類があります。主
な皮膚がんをあげます
と、メラノーマ(悪性
黒色腫)、有棘(ゆうき
ょく)細胞癌、基底細
胞癌、乳房外パジェッ
ト病などです。メラノ
ーマは「ほくろ」のが
んと思われているように黒いことが多いですが、
無色や赤色のこともあります。また、盛り上がっ
ていたり平らだったりと形も様々です。有棘細胞
癌はかさかさして隆起していることが多いですが、
表面がみずみずしく濡れていることもありますし、
潰瘍化(皮膚に穴が開く)していることもありま
す。基底細胞癌は黒色の腫瘍ですが、潰瘍化する
ことも多く、骨まで穴が開くこともあります。パ
ジェット病は高齢者の股や肛門、わきのしたに赤
みを生じ、湿疹やタムシに間違われることもよく
あります。いずれの腫瘍も特徴はあるものの例外
も多く、見ただけでは皮膚科専門医でも診断が困
難なものもあり、その場合は組織検査が必要にな
られていますので、日本人でも色白でシミができ
にくい人は注意が必要です。メラノーマや基底細
胞癌などほかの皮膚がんでは現在のところ紫外線
との関係は不明です。しかし、紫外線は老化を促
進し、しわが深くなったりシミができたりします
ので、皮膚がんに関係なくてもサンスクリーン(日
焼け止め)はすべきでしょう。
また、足の裏や手のひらのほくろが皮膚がん(メ
ラノーマ)ではないかと心配で、切除を希望され
る方がいます。実際、ほくろであれば切除する必
要はありません。しかし、ほくろ(良性)かメラ
ノーマ(悪性)の診断は意外に難しく、専門家で
も見誤ることがあります。日本人は足の裏にメラ
ノーマが生じることが多いのは事実です。最近で
は切除する前にダーモスコープという器械である
程度の診断ができますが、完
璧な物ではありません。メラ
ノーマは放置すれば内臓など
に転移して命を落とすことも
ありますので、過信は禁物で
す。疑わしければ、ほくろで
あっても切除することも一方法だと思います。
ります。
皮膚がんの治療法はがんの種類にもよりますが、
原則として手術をします。高齢の方や全身状態が
悪かったり、がんが進行して切除できない方には、
放射線治療や抗がん剤の治療のみを行うこともあ
ります。また、表在性の(浅い)皮膚がんに抗が
1
以上は平成 20 年 10 月 4 日、健康増進啓発事業
の一環として吉田公民館で行われた講演『皮膚が
んについて』の内容の一部でした。
2009 年 1 月 10 日
編集・発行 県立吉田病院広報委員会
ります。
シリーズがん検診の勧め
⑤
胃がんについて
日本における胃癌の診断・治療の現状
内科部長
八木一芳
現在の日本の内視鏡的早期胃癌治療
内視鏡的粘膜切除術(EMR)という方法が 1980
年代に日本で開発されました。世界中に普及し
ましたがポリープを切除する道具を使っての切
除なので 2cm を越える癌の切除は一括ではで
きないという問題点がありました。大きさの限
日本における胃癌の歴史
界を打破するために 1990 年代後半になって内
昭和 36 年に国立がんセンターが、そしてその
視鏡的切開剥離術(ESD)という方法が日本で開
後も各県にがんセンターが次々に設立されまし
発されました。内視鏡で観察しながら電気メス
た。その背景として日
で癌粘膜を剥がし取る手術です。この方法で癌
本では死亡率の高い
部を大きさに関係なく自由に切除できるように
恐ろしい疾患である
なりました。技術的には大変高度ですが、以前
胃癌があまりに多く、
は手術と考えられた胃癌のかなりの症例が内視
「国民病」とまで言わ
鏡的に切除できるようになりました。当院でも
れ、その胃癌の撲滅が
5 年前から導入しています。ただ EMR も ESD
「国家的」急務と考え
もリンパ節転移のない癌に行われるべきなので
られた事実がありま
早期胃癌の中でも分化型腺癌という種類の癌で
した。手術をすれば助
粘膜内癌または 500 ミクロン以内の粘膜下層浸
かる胃癌を早期胃癌
潤癌に適応が限られます。
とし、その発見と診断に日本の内視鏡専門医師
胃癌を発症する確率の高い人と低い人がい
たちは情熱を傾けてきました。そして今、日本
る?
では胃癌の 5 年生存率は 70%以上となっていま
胃癌は日本人の「国民病」と言われていたこと
す。しかし日本以外の国では胃癌の 5 年生存率
を書きましたが、実はアメリカ人や西ヨーロッ
は 20%以下です。これは日本の診断技術と治療
パ人には胃癌は極めて少ないのです。しかし第
技術が世界の最先端をいっているからです。今、
二次世界大戦前はアメリカでもドイツでも胃癌
日本には世界中の内視鏡専門医師たちが日本人
は多い癌でした。なぜ欧米先進国で胃癌が激減
の作り上げた胃癌内視鏡診断学と治療学を勉強
したのでしょうか。食生活が豊かになったこと
するために集まってきています。そんな日本の
などもありますが、ピロリ菌感染が欧米先進国
胃癌の内視鏡診断と治療を簡単にご紹介します。 では 20 世紀後半から大変少なくなったためと
現在の日本の早期胃癌内視鏡診断
考えられています。上下水道の完備が日本より
日常的に行っている胃内視鏡検査ですが、日本
はるかに早かったことが原因としてあげられて
の診断レベルはさらに向上しています。最近、
います。日本人の場合、60 歳以上では 80%以上
拡大内視鏡という 100 倍近い画像で胃粘膜を観
の方がピロリ菌に感染しています。ピロリ菌に
察して 3mm 程度の癌も見るだけで診断できる
感染していると胃癌になるのか、と言いますと
内視鏡が普及してきています。癌特有の毛細血
必ずしもその通りではありませんが、ピロリ菌
管や癌腺管の模様で診断するのです。もちろん
に感染したことがない方から胃癌が発生するの
最新の画像ですので施行する医師達も日々研究
は極めて稀であることはすでに胃癌の専門医の
をしなくてはなりません。当院ではすでに 10
間では常識になっています。ほとんどの胃癌は
年にわたる歴史があり、日本の先端を走ってい
ピロリ菌に感染した胃から出現しています。現
ます。特に胃癌を内視鏡的切除する時にどこま
在、日本も環境衛生が大変よくなり若い方々の
で切除するのかを診断する時に非常に有用とな
2
ピロリ菌感染は少なくなっています。そもそも
2009 年 1 月 10 日
編集・発行 県立吉田病院広報委員会
ピロリ菌の持続感染(継続的に感染が続くこと)
は乳幼児期に成立します。慢性胃炎という病気
は実はピロリ菌が原因だったことも今はわかり
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
医療相談・地域連携室の御案内
ました。すなわち慢性胃炎は乳幼児期に始まる
吉田病院は地
のです。昭和 20 年代に生まれた方と昭和 40 年
域の中核病院と
代に生まれた方では乳幼児期の衛生環境がまっ
しての大切な役
たく異なることはご理解していただけると思い
割を担っており
ます。昭和 20 年代生まれの方がはるかにピロ
ます。昨年 7 月、
リ菌に感染する機会が多かったのです。そして
住民の皆さんと、
今、ピロリ菌に感染していない、慢性胃炎もな
地域の医療機関
いまったく健康な正常の胃を持った若い人たち
や介護保険施設との連携を強化する目的で院内に
がどんどん増えてきているのです。40 歳前後の
『医療相談・地域連携室』が新たに作られました。
日本人の感染率は 30%程度と思われます。20
主な仕事は医療相談、綜合案内、病診連携、退院
歳前後は 10%以下とも言われています。30 年後
支援などがあります。
には日本でも胃癌は稀な病気になることが推測
具体的に説明しますと、『医療相談』は、医療
されます。
費に関する相談、各種制度の利用に関する相談、
さて、それではピロリ菌に感染しているか否か
入院・転院に関する相談などです。また当院に対
を知りたくなりますよね。いろいろな検査法が
するご意見、ご要望も承っております。
『 綜合案内』
ありますが、当院では内視鏡でピロリ菌感染の
では専門の看護師を配置し、病院を受診したいも
有無を判定する方法を 10 年前に開発しました。
のの、どの科を最初に受診すれば良いか分らない
ラックという特徴的な所見がある場合、ほとん
患者さんたちのご案内などをしております。
『 病診
どの方がピロリ菌の感染がないのです。このラ
連携』では、地域の開業医の先生方と連絡をとり、
ックはすでに世界中の内視鏡専門医師達に広ま
病院へ紹介された患者さんの事前予約をするなど
っています。当院で内視鏡検査を受けた方は興
して、患者さんの待ち時間を短縮する工夫をして
味があったら消化器内科の主治医に聞いてみて
おります。またこれとは別に、当院の開放型手術
ください。ラック所見があれば胃癌の発症する
室使用の受付や、院内の学術講演会、検討会など
可能性は非常に少ないと言えます。しかし皆無
の案内状を近隣の医療機関へ配布しております。
とはいえ ませんし 、食道 癌
『退院支援』では、退院される患者さんに対して、
もありま すので症 状があ る
ケアマネージャー、地域の医療機関、介護保険関
ときは内 視鏡検査 を受け 、
係施設、行政機関などとの緊密な連絡、連携によ
また機会 があれば 検診を 受
り安心して退院できるように支援しております。
けてください。
医療相談を希望される方はご遠慮なく、病院受
おわりに
付前の医療相談・地域連携室においでください。
胃癌はその疫学、内視鏡診断、内視鏡治療とい
相談は、医療ソーシャルワーカーか専門の看護師
う点から見れば、命を奪う進行した状態になる
が担当いたします。
前に容易に診断でき、治療できる癌です。是非、
受付時間は月曜日から金曜日まで毎日、午前 8 時
一度、当院で内視鏡検査を受けて胃癌になりや
30 分から午後 5 時までです。
すい状態、すなわち慢性胃炎(ピロリ菌が感染
どうかお気軽にご利用ください。
した胃)かラック所見がある正常な胃か診断し
電話 0256(92)5111(代)
てもらってください。そして慢性胃炎と診断さ
内線 医療相談 328
れたら1年に一回は胃内視鏡検査を受けること
地域連携 327
FAX 0256(92)7606 (直通)
をつよくお勧めします。
3
2009 年 1 月 10 日
編集・発行 県立吉田病院広報委員会
外
来
担 当 医 表
平成 20 年 12 月1 日∼
診 療 科
内
科
月
火
水
木
大 原
佐 藤
大 原
大 原
中
3 診
阿 部
関
原(勝 )
関
根
原 (勝 )
4 診
田 口
八
木
田 口
八 木
5 診
根
原 (勝 )/ 田 口
中
村
今 成
阿 部
阿 部
今 成
午
前
今
成
阿 部/ 大原
田 口
原(勝)
大 原
急
午
後
原 (勝 )
阿 部
田 口
今 成
前
外
原 (正 )
柳 原
松
野
原(正)
松
2 柳 原
加 藤
原(正 )
加 藤
原 (正 )
アレ ルギ ー外 来
後
外
柳 原 ・ 原 (正 )
第2 、4週
原(正)
乳検 、予 防接 種
CA PD 、移 植
アス トグ ラフ
午
前
新 田
午
後
新 田・ 柳原
1 診
田 宮
科
2 小 野
診
外
咽
産
婦
午
人
科
午
泌
尿
眼
皮
歯
喉
器
膚
河 内
岡 本
田 中
外 科 手・ うで の外 来
鼻
加 藤
第1 、3週
柳 原
第1 、3週
後
新 田
新 田
田
田 宮
宮
岡 本
小 野
大学医師
大学 医師
水曜 :第1 ・3・ 5週
金曜 :第2 ・4週
田 中
田 中
◆新 患のみ
受 付 : 1 1時 ∼ 11 時 3 0 分
大学 医師
大学 医師
受 付 : 11時 30 分 ∼ 16 時
診 察 : 14時 ∼
遠 藤
● 後藤 /遠 藤
◆ 田 中 2 診 は 10時 30 分 ∼
大学医師
後
藤
遠 藤
後 藤
大 学医 師
科
鈴 木
鈴 木
青 柳
鈴 木
鈴 木
科
◆ 須 山 須 山
◆ 須 山 須 山
須 山
大学医師
大学 医師
歯 科 口 腔 外 科
● 第1 ,3 ,5
第 2, 4 後藤
遠 藤
遠 藤
後 藤
科
科
田 中
科
前
柳 原
新 田
科
整 形 一般再来
耳
13 時 3 0 分 ∼ 1 5時 30 分
松 野
外
管
ア レル ゲン テス トは 、
不 定期 予約 制( 松野 )
松野・
原 ( 正 )/ 柳 原
肥満外来
子 ど も
の 心
診 療 科
野
来
松 野
腎外来
来
1 診
診
考
村
救
午
血
備
診
午
小
児
科
金
2 大学医師
堀
野
堀
野
堀
野
堀
野
堀
受 付 : 8 時 30 分 ∼ 11 時
野
堀
野
堀
野
堀
野
◆新 患のみ
受 付 : 8 時 30 分 ∼ 10 時
平 成 20年 12月 4日 経 営 課 医 事 担 当
受付時間は 8 時 30 分から 11 時 30 分までです。
新患の方は 11 時までとなります。
診療科によってことなりますのでご注意ください。
吉田病院の基本理念
〒959-0242
燕市吉田大保町32−14
( 地域に愛される病院 )
(1)患者さん中心の医療を提供します。
新潟県立吉田病院
(2)良質で安全な医療・看護を提供します。
TEL 0256-92-5111 (代)
(3)地域医療機関と連携し、地域医療水準の向上に努めます。
FAX 0256-92-2610
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