地域保健医療計画と保健所の在り方に関する研究 分担事業者 岡 事業協力者 荒田吉彦 惠上博文 助 大前利市 澁谷いづみ A.目 言 者 紳爾(山口県宇部環境保健所) 大神貴史 角野文彦 小林良清 西口 裕 拝野貴之 仲宗根正 的 手法や評価方法の提示等の対策を講じていく必要 厚労省で検討が進められてきた「地域保健医療 がある。 計画」において、保健計画部門では地域における 一方、各処理過程を担うべき機関として、「健康 健康課題への資源配分の方針を提示するための「健 課題抽出」は保健所とするものの、「資料の収集保 康課題の抽出」と「課題の優先度判定」、医療計画 管 」、「指標算出」では他機関で概ね代替が可とす 部門では医療連携体制の構築に資する「医療情報 る回答が多くなっていた。このため、国が求めて の収集提供」と「医療連携体制の調整」の各機能 いる水準で「 健康課題の抽出」機能を担うには、 「指 が保健所に求められている。 標算出」などの一部の処理過程を他機関で担うな そこで、保健所の各計画で求められる機能を更 に向上させるため、計画の策定・推進の視点から ど役割分担を進めるとともに、具体的分析技術の 提示が必要であると考える。 その方策を検討した。 (2)医療計画:「医療情報の収集提供機能」について B.方 法 保健統計はほとんど経由事務・入力で終わっている。 各計画に求められる機能のうち「健康課題の抽 医療安全では、医療相談、医療事故・院内感染情報の 出機能」及び「医療情報の収集・提供機能」に関 利用がいずれも1∼2割程度であり、 保健所の入手で する現状について、郵送法により全国 549 保健所 きる医療関連情報が地域に還元されているとは言 にアンケート調査を行った。 い難い状況である。 (1)保健計画:「健康課題の抽出機能」に関する 調査 この要因の一つは、医療関連情報を含む保健統計 活用の業務としての目的・位置づけが曖昧であり、デ 調査項目は、統計資料の利用・分析状況、統計 ータを活用するという認識が低いためと推察される。更 資料の収集保管・指標算出・課題抽出という各処 に 、自由記載において、統計情報は 法令等に基づ 理過程を担うべき機関、死亡統計の活用状況、等。 いて国が収集しているものが大半で利用制限があるこ (2)医療計画: 「医療情報機能の収集・提供機能」 とも一因との指摘があった。 に関する調査 健康危機管理情報については個別の医療機関情 調査項目は、保健統計(患者調査、衛生行政報 報が含まれ医療機関等との調整が求められることか 告、病院報告等の医事統計・医療関連報告)の活 ら、収集提供の目的、保健所と県の役割分担の明確 用状況、医療安全(医療相談、事故及び院内感染 化が必要である。 に関する情報)及び健康危機管理情報(医療機関 これらの点については、新しい医療計画策定の のライフライン情報、透析施設数、化学物質や感 中で、保健所の医療連携体制への関与とそのため 染症に関する専門家リスト等)の収集、利用状況。 の評価指標としてのデータ活用と必要なデータ項 目、収集提供における県と保健所の役割が明確と C.結果及び考察 なっており、医療計画を通して業務としてデータ 432 保健所から回答(回収率 79%)。 の収集提供の必然性が出てくることから当該機能 (1)保健計画:「 健康課題の抽出機能」について が向上していくと考えられる。 統計資料の分析や事業化までの利用については ただ、本来の医療連携に必要とされる個別医療機 2∼4割前後であることから、当該機能について 能情報の収集とその際の県との役割、またこれを 国の求める機能水準に達している保健所も同程度 どの様に医療連携に生かすかについては、今後の と考えられる。 課題である。この点については、もう一つの機能 また、保健所が集約はしていないが、健康課題 である「医療連携体制の調整」に積極的に関与し の抽出に有用な介護保健事業や国民健康保険事業 ている事例を通して、医療情報の活用と医療連携 情報の利用は低調であり、その利用促進には解析 体制構築との関連を調査していく必要がある。 -1-
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