「自然再生∼身近な自然のつくり方∼」講演報告

平成 16 年度
国土文化研究所
第 2 回セミナー開催
「自然再生∼身近な自然のつくり方∼」講演報告
国土文化研究所企画室
はじめに
平成 16 年度の第 2 回セミナーを 25 名の参
加を得て開催しましたので概要を報告します。
講演概要
日 時:平成 16 年 10 月 5 日(火)15 時∼17 時
演 題:自然再生∼身近な自然のつくり方∼
講 師:藤本和典先生
(シェアリングアース協会代表)
司 会:伊藤一正(国土文化研究所企画室長)
1.藤本先生の著書
「自然観察ガイド
&スキル」は、幼稚
園児や小学校低学
年を対象にしており、
自然の入り口を知っ
てもらうために執筆
しました。現在では、
「身近な自然の作り 写真 1 藤本和典先生
方」は、古本屋でし
か手に入りません。
「都会の生物」は、タウンウォッチングをしてい
る時に出会える植物・昆虫・動物に関する情報
をまとめたものです。
「週末自然観察」は、大人向けで自然観察を
行う時に必要なことを書いております。
「庭に鳥をよぶ本」は、餌付けではなく、水や
土や緑を用意して環境作りを行うことによって
鳥をよぶことを解説しています。
2.身近な生物と自然のつくり方
(1)自然観察会
毎月、第二週の日曜日に自然観察会を行っ
ている。これは明治神宮で 30 年継続している
活動であり、大体 40∼50 人程度が参加してい
る。一年を通して楽しむことができるが、特に
秋から春先までがお勧めである。毎年のように
十月下旬から四月初旬にオオタカが来る。
代々木の近くの北池はオシドリの群れが越冬
に来る。御苑の池と行き来をするカワセミは年
中見ることができるようになった。
(2)庭に生物を呼ぶ方法
清水ハウス(株)リフォーム・リニューアル事業
部と提携して、生物が集まる庭造りの図鑑をつ
くっている。個人の庭を、その地域の在来植物
を植えて鳥が来るための庭の仕組みづくりを
行っている。餌の少ない冬には餌付けを行い、
昆虫から鳥、様々な生物がやってくる庭造りを
提案している。日本経済新聞社からは、環境
創造活動を通して、地域の環境に貢献してい
ると評価を受けている。
私は「五本の樹」の植栽を提案しており、三
本が鳥が来る 実のなる樹 、二本が 蝶々や
昆虫が来る樹 としている。そしてどんな木を樹
林すれば、どんな鳥や生物が来るかを分かり
やすく示して 100 本の木のセレクトブック図鑑
を作った。全国を五ブロックに分け、その地域
毎に植える樹木リストを作った。
生物が集まる環境要素を全て盛り込んでおり、
モデルハウスとして、低
木中木の落葉樹を中心
とした、浅い水辺がある
庭をつくった。すると一年
後にカワセミが来て、水
面にはギンヤンマが飛ん
でおり、水生昆虫も多く
現れた。コゲラやシジュウ
カラ、メジロも必ず見るこ
とができるようになった。
写真 2 自然共生型住宅
(3)給餌台と巣箱
私が普及している物に牛乳パックやペットボ
トルを使った給餌台がある。デパートで木製の
巣箱を買うと 2∼3 千円かかる。
鳥の繁殖期は、3∼6 月のためにその時期に
巣箱をつける人が多いが、冬に付けて頂きた
い。鳥は寒い冬には隙間に潜り込み寒さを凌
いでいる。冬にスズメが真っ黒になっているが、
黒くなるスズメは札幌で一番多い。寒さを凌ぐ
ために煙突に入ってしまうからである。
理想的な巣箱の巣穴は直径 28mmであり、
小さな鳥がスポッと入る。カラスや蛇が足場に
するため巣箱の手前に止り台を付けてはなら
ない。
写真 3 牛乳パックを使った巣箱の作り方
(4)庭造り
ピーナツの両端を切って針金に通して庭に
つるすと、シジュウカラなどいろいろな鳥が喜
んでやってくる。
住宅が密閉構造になり、屋根が軽量瓦にな
ると、屋根の隙間がなくなり、スズメが巣を作れ
なくなっていなくなってしまった。外国でも同じ
ような現象があり、各地でスズメが消えている。
イギリスでは、その原因が分かれば懸賞金が
出ると聞いている。行き場を失ったスズメは、日
比谷公園のイチョウ並木に巣を作った。鳥たち
は住宅難である。
私は、軽井沢のホテルの庭園に鳥が来るよう
に植栽を行った。カワセミの巣箱も設けている。
庭園は宿泊客が、庭に来たキツツキやシジュ
ウカラを見ることができるような設計となってい
る。
(5)鳥の糞
鳥の糞は非常に重要な要素をもっている。糞
を拾い、茶こしでこすと種がとれる。糞の中から
とれた種を植えると、そのまま雑木林ができて
様々な植物が育つ。
叔母の家の庭には、糞でできた雑木林があり、
サンショ、ヤツデ、シュロ、そしてヤマザクラが
育った。このように鳥は自分の好きな木を植林
しながら移動している。
(6)バードウォッチングの仕方
バードウォッチングの基本は、スズメである。
あとは、ムクドリ、キジバト、カラスくらいである。
まずは、歩き方の違いで覚える。歩き方にはホ
ッピングとウォーキングがある。スズメは足をそ
ろえてホッピングをする。ハトはノコノコ歩きウォ
ーキングをする。
私は 40 年近く鳥を見ているため、歩き方を全
部頭にインプットしている。
次に飛び方を見る。波状飛行は、波形に飛
ぶ場合と一直線に飛ぶ場合がある。キツツキ、
セキレイ、ヒヨドリなどは、波状飛行をしている。
飛び方も違う。覚えていけば、この季節にこの
場所で、このような飛び方をする鳥は、1∼2 種
類しかない、というようなことがわかってくる。
3.コスタリカという国とケツァール
(1)コスタリカ
コスタリカのことを多くの人に知って頂きたい。
軍隊のない国で、警察隊もない。昔、主婦や
子供や男性を含めて取材をしたときに、一番
大切なものを聞いたら、「コミュニケーション」と
「緑」と答えた。この国はエコツーリズムのメッカ
となっている。
電気は隣国に売電している。自国でも水力、
火力、風力の自然エネルギーを使い、余剰電
力を売電している。
看板は 1 つもなく、ゴミもない。鳥が美しい。
コスタリカは「豊かな海岸」という意味である。
(2)ケツァール
ケツァールは、世界で一番美しい鳥といわれ、
手塚治虫さんの火の鳥のモデルになったとい
われている。日本では、この鳥が住むことがで
きる森を守るために様々な活動をしている。ケ
ツァールが好むイトデアボカ
ドという実のなる木を増やす
ための植林活動を行ってい
る。苗の絵はがきやバッジを
売って、実費分を引いた残り
をコスタリカにもっていくと国
から立派な感謝状と使用内
容について文書が送付され
てくる。このようにコスタリカは、
国自体が自然保護をしっかり
と行っている。
写真 4 ケツァール
(記 今西由美)