命 令 書 申立人 神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合 被申立人 神奈川県厚生農業協同組合連合会 上 記 当 事 者 間 の 神 労 委 平 成 14年 (不 )第 29号 不 当 労 働 行 為 救 済 申 立 事 件 に つ い て 、 当 委 員 会 は 、 平 成 16年 4月 2日 第 1318回 公 益 委 員 会 議 に お いて合議の上、次のとおり命令する。 主 文 1 被 申 立 人 は 、厚 生 預 金 の 利 率 の 改 定 問 題 及 び 三 六 協 定 の 締 結 問 題 について、申立人との団体交渉に誠実に応じなければならない。 2 被 申 立 人 は 、申 立 人 と の 団 体 交 渉 の 開 催 を 引 き 延 ば し 、申 立 人 の 団結権を侵害するなどして、その運営に介入してはならない。 3 被 申 立 人 は 、申 立 人 組 合 員 X1に 対 す る 減 給 処 分 が な か っ た も の と して取り扱わなければならない。 4 被 申 立 人 は 、本 命 令 受 領 後 、速 や か に 下 記 の 文 書 を 縦 1メ ー ト ル 、 横 1.5メ ー ト ル の 白 紙 に か い 書 で 明 瞭 に 記 載 し 、 被 申 立 人 の 本 所 、 伊勢原協同病院及び相模原協同病院の従業員出入口付近の見やす い 場 所 に 、 毀 損 す る こ と な く 10日 間 掲 示 し な け れ ば な ら な い 。 記 当会が、貴組合との団体交渉の開催を引き延ばし、貴組合の団 結 権 を 侵 害 す る な ど し た こ と は 労 働 組 合 法 第 7条 第 2号 及 び 第 3号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あ り 、 貴 組 合 員 X1を 減 給 処 分 に し た こ と は 同 条 第 1号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あ る と 神 奈 川 県 地 方 労 働委員会において認定されました。 今後、このような行為を操り返さないようにいたします。 平成 年 月 日 神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合 執 行 委 員 長 X2殿 神奈川県厚生農業協同組合連合会 代 表 理 事 Y1 理 由 第1 認定した事実 1 当事者 (1) 被 申 立 人 神 奈 川 県 厚 生 農 業 協 同 組 合 連 合 会 以 下 「 会 」 と い う 。 )は 、 昭 和 24年 3月 9日 に 設 立 認 可 を 受 け た 医 療 、 保 健 、 老 人 の福祉及びこれらに付帯する事業を営む法人であり、肩書地に 主 た る 事 務 所 (本 所 )を 置 き 、 ま た 、 伊 勢 原 協 同 病 院 (以 下 「 伊 勢 原 病 院 」 と い う 。 )、 相 模 原 協 同 病 院 (以 下 「 相 模 原 病 院 」 と い -1- う 。 )等 を 開 設 し て お り 、 本 件 結 審 日 (平 成 16年 1月 19日 )現 在 の 従 業 員 数 は 、 1,157名 で あ る 。 (2) 申 立 人 神 奈 川 県 厚 生 農 業 協 同 組 合 連 合 会 労 働 組 合 (以 下 「 組 合 」 と い う 。 )は 、 そ の 前 身 で あ る 伊 勢 原 協 同 病 院 職 員 労 働 組 合 (昭 和 43年 6月 頃 結 成 )と 相 模 原 協 同 病 院 職 員 労 働 組 合 (昭 和 41年 5月 結 成 )と が 合 併 し て 、 昭 和 54年 11月 24日 に 設 立 さ れ た 労 働 組 合 で あ り 、 本 件 結 審 日 現 在 の 組 合 員 数 は 、 61名 で あ る 。 組 合 に は、伊勢原支部、相模原支部がある。 2 不 当 労 働 行 為 事 件 (「 そ の 1」事 件 及 び「 そ の 2」事 件 )申 立 て に 至 るまでの労使事情 (1) 「 そ の 1」 事 件 組 合 は 、 平 成 9年 4月 25日 、 会 が 組 合 の 特 別 執 行 委 員 の X3(以 下 「 X3執 行 委 員 」 と い う 。 )を 配 転 し た こ と 、 脱 退 勧 奨 及 び 第 二 組 合づくりの支援をしたこと、組合の教宣活動や役員選挙に介入 したことなどは不当労働行為に該当するとして、当委員会に救 済 の 申 立 て (神 労 委 平 成 9年 (不 )第 12号 事 件 。 以 下 「 「 そ の 1」 事 件 」 と い う 。 )を し た 。 当 委 員 会 は 、 平 成 11年 5月 25日 、 X3執 行 委 員 の 原 職 復 帰 、 組 合 運営への介入の禁止などを命ずる救済命令を発した。これに対 し て 会 は 、同 年 6月 4日 に 中 央 労 働 委 員 会 (以 下「 中 労 委 」と い う 。) に再審査を申し立てた。 「 そ の 1」事 件 申 立 て に 係 る 労 使 事 情 は 、次 の と お り で あ っ た 。 ア 会と組合との間では協定によりチェック・オフが行われて い た が 、会 が 平 成 7年 6月 の 相 模 原 病 院 及 び 伊 勢 原 病 院 (以 下「 両 病 院 」 と い う 。 )の 病 院 運 営 会 議 で 「 組 合 員 が 会 に 組 合 を 脱 退 し た 旨 を 言 っ て き た 場 合 、会 は 組 合 に 確 認 し 組 合 よ り 脱 退 の 通 知 が あ っ た 者 だ け を チ ェ ッ ク・オ フ し な い こ と と す る 」な ど と 記 載 さ れ た「 労 組 と の 打 合 せ 結 果 に つ い て 」と 題 す る 資 料 を 配 布 し 、組 合 は 、組 合 が 合 意 し た か の よ う に 上 記 資 料 が 文 書 化 さ れ た こ と に 抗 議 し た が 、そ の 後 、組 合 に 脱 退 届 を 提 出 す る と と もに会にチェック・オフ中止依頼書を提出する者が増加した。 会 は チ ェ ッ ク・オ フ 中 止 依 頼 書 が 出 さ れ た 以 上 は チ ェ ッ ク・オ フ を 中 止 せ ざ る を 得 な い と の 考 え を 組 合 に 文 書 で 示 し た が 、組 合は会が行おうとしていることは組合への内部干渉に当たり か ね な い な ど と 抗 議 す る と と も に 、慣 行 に 基 づ く チ ェ ッ ク・オ フ の 継 続 を 求 め る な ど 、会 と 組 合 の 間 で は 、チ ェ ッ ク・オ フ の 中止問題を巡り対立関係が続いた。 イ 組 合 は 、 平 成 7年 7月 21日 に 専 従 者 と し て X4(以 下 「 X4書 記 次 長 」 と い う 。 )を 採 用 し た 。 ウ 組 合 は 、 平 成 9年 3月 3日 、 組 合 員 の 配 転 問 題 に 関 す る 相 模 原 -2- 支部と会との団体交渉に専従者を出席させたいと申し入れた が 、Y2事 務 長 (当 時 )は 、こ れ ま で 支 部 交 渉 に 専 従 者 は 出 席 し て お ら ず 、今 回 も 特 に 専 従 者 を 入 れ な け れ ば 話 合 い が で き な い と は 考 え な い 旨 を 回 答 し 、外 注 化 問 題 を 団 交 議 題 に 追 加 す る 際 に 組合が専従者の参加を拒否しないようにとの申入れをした際 も 、職 員 で な い 専 従 と は 話 し 合 う つ も り は な い と 述 べ た 。ま た 、 同 事 務 長 は 、組 合 か ら の 文 書 に よ る 質 問 に 対 し て も 、予 定 の 団 体 交 渉 に は 専 従 者 を 入 れ な い で 交 渉 し た い と 回 答 し た 。そ の 後 、 同 月 24日 に 専 従 者 を 入 れ な い ま ま 団 体 交 渉 が 行 わ れ た が 合 意 に 至 ら ず 、会 と 専 従 者 が 参 加 し た 組 合 本 部 と の 交 渉 に よ り 、当 該組合員の配転問題について合意が成立した。 エ 前 記 ア の 病 院 運 営 会 議 が 行 わ れ た 直 後 の 平 成 7年 7月 以 降 、 平 成 10年 8月 ま で に 、 組 合 へ の 脱 退 届 又 は 会 へ の チ ェ ッ ク ・ オ フ 中 止 依 頼 書 を 提 出 し て 脱 退 を 表 明 し た 組 合 員 は 、 110名 で あ り 、 平 成 10年 8月 時 点 の 組 合 員 数 は 、 1,008名 で あ っ た 。 (2) 第 二 組 合 の 結 成 ア 伊勢原病院 (ア) 「 病 院 を 守 る 会 」 の 発 足 と 解 散 平 成 11年 6月 25日 、 Y3放 射 線 室 長 ら が 発 起 人 と な っ て 「 病 院 を 守 る 会 」 が 発 足 し 、 同 年 7月 22日 に 同 会 は 、 「 病 院 を 守 る 会 か ら の 新 た な 提 案 」と 題 す る 同 日 付 け 文 書 を 職 員 に 配 布 し た 。そ の 文 書 に は 、「 … …『 病 院 を 守 る 会 』は 本 格 的 に 職 場 を 守 り 仲 間 を 守 る 為 、新 た な メ ン バ ー に て 会 員 の 理 解 と 協 力 の も と に 新 た な 会 を 発 足 致 し ま す 。上 記 の 事 で 話 し 合 い を 行 い ま す 。多 数 の 非 組 合 員 の 参 加 を お 願 い い た し ま す 。」と 記 載 さ れ て い た 。同 日 、「 病 院 を 守 る 会 」は 、会 議 室 に お け る 会 合 を も っ て 解 散 し 、続 い て 同 じ 会 議 室 に お い て 、組 合 の 元 伊 勢 原 支 部 書 記 長 で あ り 平 成 10年 5月 31日 付 け で 組 合 を 脱 退 し た X5(現 伊 勢 原 協 同 病 院 従 業 員 組 合 の 執 行 委 員 、以 下「 X5 執 行 委 員 」 と い う 。 )が 、 「 労 組 脱 退 者 へ の 提 言 」 と 題 す る 文 書 を 配 布 し 、伊 勢 原 協 同 病 院 従 業 員 組 合 (仮 称 )を 結 成 し た い旨の説明をした。 (イ) 伊 勢 原 協 同 病 院 従 業 員 組 合 の 結 成 X5執 行 委 員 は 、 平 成 11年 7月 23日 以 降 、 伊 勢 原 協 同 病 院 従 業 員 組 合 (仮 称 ) へ の 加 入 賛 同 者 に 対 す る 個 別 説 明 や 職 場 単 位 の 説 明 を 行 い 、 同 年 8月 30日 に 伊 勢 原 協 同 病 院 従 業 員 組 合 (以 下「 伊 勢 原 第 二 組 合 」と い う 。)の 結 成 集 会 が 開 催 さ れ た 。 な お 、神 奈 川 県 商 工 労 働 部 労 政 福 祉 課 発 行 の「 平 成 12年 版 神 奈 川 県 労 働 組 合 名 簿 」に は 、伊 勢 原 第 二 組 合 の 設 立 年 月 日 は 平 成 11年 6月 と 記 載 さ れ て い た 。 -3- イ 相模原病院 平 成 11年 6月 25日 、 Y4副 看 護 部 長 ら が 中 心 と な っ て 「 病 院 と 仲 間 を 守 る 会 」 が 発 足 し 、 同 年 7月 30日 の 会 合 に お い て 労 働 組 合になることが承認された。 (3) 「 そ の 2」 事 件 組 合 は 、 平 成 11年 7月 21日 、 会 が 婦 長 ら を 通 じ て 脱 退 勧 奨 を 行 ったこと、第二組合づくりに関与したこと、組合専従者である X4書 記 次 長 を 誹 謗 中 傷 し た こ と な ど が 不 当 労 働 行 為 に 該 当 す る と し て 、 当 委 員 会 に 救 済 の 申 立 て (神 労 委 平 成 11年 (不 )第 13号 事 件 。 以 下 「 「 そ の 2」 事 件 」 と い う 。 )を し た 。 ま た 、 そ の 後 3度 にわたり、審査の実効確保の措置勧告申立てをした。 当 委 員 会 は 、平 成 12年 11月 28日 、組 合 か ら の 脱 退 の 煽 り 、第 二 組合づくりへの関与などによる組合運営への支配介入の禁止な ど を 命 ず る 救 済 命 令 を 発 し た 。 こ れ に 対 し て 会 は 、 同 年 12月 4日 に中労委に再審査を申し立てた。 「 そ の 2」事 件 申 立 て に 係 る 労 使 事 情 は 、次 の と お り で あ っ た 。 ア 横 浜 地 方 裁 判 所 相 模 原 支 部 は 、 平 成 11年 6月 9日 、 組 合 を 脱 退 し た 職 員 3名 が 組 合 を 被 告 と し て 提 起 し た 組 合 費 返 還 請 求 訴 訟 に つ い て 、組 合 か ら の 脱 退 は 自 由 で あ り 、脱 退 に 組 合 の 承 認 を 要 す る と す る こ と は 無 効 で あ る と し て 、組 合 に 対 し 、書 面 に よ り 脱 退 の 意 思 表 示 を 明 確 に し た 職 員 1名 へ の 組 合 費 の 返 還 を 命 じ た 。同 月 16日 、相 模 原 病 院 の Y5婦 長 は 、そ の 判 決 文 に つ い て 看 護 婦 ら を 集 め て 組 合 加 入 の 自 由 に つ い て 言 及 し 、同 月 中 旬 、 伊 勢 原 病 院 の Y6婦 長 は 、と こ ろ ど こ ろ に 朱 線 が 入 っ た 判 決 文 を 病棟のホワイトボードに掲示した。 イ 平 成 11年 6月 中 旬 、 厚 生 省 (当 時 )に 、 会 が 相 模 原 病 院 に お い て 全 入 院 患 者 の 一 日 退 院 延 長 を 検 討 し て い る 、同 病 院 整 形 外 科 に お い て 患 者 に 保 険 適 用 外 の 薬 品 を 使 用 し 、他 の 病 名 を 用 い て 診療報酬を不正に請求した、との内部告発があった。 平 成 11年 6月 25日 及 び 同 月 26日 に 相 模 原 病 院 で 行 わ れ た 職 員 説 明 会 に お い て 、Y7院 長 は「 投 書 を し た 人 は 組 合 員 で 組 合 の 重 要 な ポ ス ト に お ら れ る 医 師 で す 」、「 組 合 が 病 院 を つ ぶ そ う と し て い る 。」な ど と 述 べ 、Y2事 務 長 は「 大 損 害 を 与 え ら れ 病 院 が つ ぶ さ れ て し ま う か も し れ な い 。会 に つ く の か 、組 合 に つ く の か 、そ れ は み な さ ん の 判 断 で す 。よ ろ し く お 願 い し ま す 。」、 「 今 回 、憲 法 の 上 で 脱 退 が 自 由 だ と の 判 決 が 出 ま し た 。」な ど と 述 べ た 。ま た 、伊 勢 原 病 院 で 行 わ れ た 職 員 説 明 会 に お い て も 、 Y8院 長 が「 告 発 し た 医 者 は 、… … 絶 対 に 許 せ な い 。そ れ に 呼 応 するようにして労組の……告発を公にするようなことを私は 絶 対 に 認 め る わ け に は い か な い 。 」 な ど と 述 べ 、 Y9事 務 長 (当 -4- 時 )が 「 告 発 文 書 が 出 た こ と 、 そ れ に 労 組 が 関 わ っ て い る 点 が … … 想 定 さ れ る 」、「 誰 が み て も 労 組 が い つ も 作 っ て い る よ う な新聞と非常によく似ている」などと述べた。 ウ 相 模 原 病 院 の Y4副 看 護 部 長 は 、 平 成 11年 6月 25日 、 組 合 の 執 行 委 員 に 対 し 、「 あ な た だ ま さ れ て い る わ よ 。組 合 は 病 院 を 乗 っ 取 ろ う と し て い る の よ 。つ ぶ そ う と し て い る の よ 。そ れ が ダ メ な ら ば 和 解 金 と し て 専 従 は 億 単 位 を 要 求 し て い る の よ 。」と 述 べ た 。 ま た 、 同 病 院 の Y5婦 長 は 、 平 成 11年 7月 、 新 人 看 護 婦 ら に 対 し 、「 病 院 が つ ぶ さ れ て し ま う の に あ な た た ち は 脱 退 し なくても平気なの」と述べた。 エ 前 記 ア の 判 決 文 の 説 明 が な さ れ た 平 成 11 年 6 月 16 日 か ら 同 月 24日 ま で の 間 に 12名 が 組 合 を 脱 退 し 、前 記 イ の 職 員 説 明 会 が あ っ た 同 月 25日 か ら 「 そ の 2」 事 件 の 申 立 日 で あ る 同 年 7月 21 日 ま で の 間 に 、 590名 が 組 合 を 脱 退 し た 。 な お 、「 そ の 2」事 件 の 結 審 日 で あ る 平 成 12年 5月 25日 時 点 に お け る 組 合 員 数 は 、 148名 で あ っ た 。 3 本件申立てに至るまでの労使事情 (1) 伊 勢 原 第 二 組 合 は 、 平 成 12年 2月 25日 に 機 関 紙 「 い せ は ら 通 信 No.(2)」 を 発 行 し た 。 こ の 機 関 紙 に は 、 「 未 組 織 ・ 非 組 合 員 の皆様へ」との見出しで、「現在、会側との労働協約が殆ど締 結されておりません。……例えば、給与振り込み、……時間外 に 関 す る 協 定 (三 六 協 定 )等 々 で す 。 … … 現 在 、 職 員 の 過 半 数 を 代表できる組織が伊勢原協同病院には存在しません。一つの提 案として、従業員組合に加入し、趣旨に賛同して頂きたいとこ ろですが、加入しないで、賛同だけということでもかまいませ ん。ともかく、給与振込関する協定、時間外に関する協定等は 結ばなければ労基法に抵触し争議問題に発展します。これ以上 争 議 問 題 を お こ し 、 健 全 な 病 院 運 営 が な さ れ る で し ょ う か ?… … 後日、従業員組合に委任していただきたく、書類を配布します ので協力お願いします。」などと記載されていた。 こ れ に 対 し て 組 合 が 発 行 し た 平 成 12年 3月 4日 付 け 機 関 紙「 神 厚 労速報」には、「『給与振り込みに関する協定』は銀行を複数 にしない点で問題ですが、しかし、職員の間から特に何か要求 と し て あ が っ て は い な い の で 、黙 認 し て き ま し た 。『 争 議 問 題 』 になるなどということはあるはずがないのです。」、「確かに 『時間外に関する協定』も二、三年結ばれていませんが、それ は私たちも残業そのものは避けられないことから『黙認する』 と述べてきましたので残業拒否戦術などの『争議問題』に発展 し た こ と は な い の で す 。従 業 員 組 合 は 、協 約 を 結 ば な け れ ば『 争 議問題に発展します』などと述べ、いたずらに危機感をあおっ -5- ていますが、それは会側の主張を代弁しているだけです。むし ろ、法違反がまだまだある中でそれらを是正させるまでは簡単 に 結 ぶ べ き で は あ り ま せ ん 。 … … 日 立 武 蔵 の 『 Z1さ ん 裁 判 』 … …残業拒否が一つの理由になって解雇された事件として有名で すが、組合が労働協約の中に『残業は労働者の合意なく、命じ ることができない』と定めておけば懲戒解雇されるようなこと はなかったのです。」、「一方の労働組合の代表者に労使協定 の締結権を持たせるようなやり方は民主的ではありません。… …もっと民主的な選出方法にさせていくつもりです。それは、 労働省も指導しているように選挙などの方法で中立、公正、透 明性が担保されるやりかたで職員全員に選択させるべきです。 その場合、誰でも立候補できること、無記名、また投票の秘密 が保証されるよう、両方の組合から同数の選挙管理人を立てる ことは最低でも必要でしょう。」などと記載されていた。 (2) 伊 勢 原 病 院 の Y10院 長 及 び 事 務 部 長 Y11(以 下 「 Y11事 務 部 長 」 と い う 。 )は 、 平 成 12年 10月 25日 、 組 合 の 副 委 員 長 兼 伊 勢 原 支 部 長 X1(以 下 「 X1副 委 員 長 」 と い う 。 )と X6副 支 部 長 に 対 し 、 同 月 13日 に 厚 木 地 区 労 働 組 合 協 議 会 (以 下 「 厚 木 地 区 労 」 と い う 。 ) が行った伊勢原市への要請行動について質問した。その内容は、 要請行動において伊勢原市に提出した要請文書に「不当労働行 為を助長するような研修をただちに止めること」との記載があ るが何が不当労働行為なのか、伊勢原市に出向く前に何故言っ てくれないのか、組合員はこういうことをすることを知ってい る の か 、こ れ は 組 合 が や っ た こ と か 、な ど と い う も の で あ っ た 。 これに対して同副委員長は、「厚木地区労の総行動として行っ た も の で 、 神 厚 労 だ け で は な い 」 、 「 (要 請 文 に つ い て は )当 日 になって、実行委員会から各参加団体に渡したもので、事前に 細かい内容まで組合員に知らせるなどということは無理なこと だ 」 な ど と 述 べ た 。 ま た 、 Y11事 務 部 長 が 「 そ れ な ら 、 他 の 執 行 委員にもこういうことをやってどう思うか一人ひとりに聞いて みよう」と述べたことに対し、同副委員長は、「一人ひとりに 話を聞いて、それで組合をやめろなんてことは言わないでほし い」などと述べた。 な お 、組 合 で は 、執 行 委 員 長 の X2(以 下「 X2委 員 長 」と い う 。) 及 び X4書 記 次 長 が 組 合 専 従 者 で あ り 、 伊 勢 原 病 院 の 職 員 と し て は 伊 勢 原 支 部 長 を 兼 務 し て い る X1副 委 員 長 が 病 院 へ の 要 請 行 動 などを行っていたほか厚木地区労の常任幹事を務めていた。 (3) X1副 委 員 長 は 、 平 成 12年 10月 30日 、 薬 局 の X7執 行 委 員 か ら 、 薬 局 長 か ら 組 合 の こ と で Y11 事 務 部 長 か ら 呼 ば れ る は ず だ と 言 われている、内容がわからないので教えてほしいと質問された -6- ことに対し、「内容については、地区労で市に要請に行ったこ とでしょう。……何か聞かれたら、知りません、支部長に聞い てくださいと言ってください」と述べ、その後、事務部長室へ 行き、同事務部長に対して「個別に呼び出して話をするのはや めてほしいとこの間も言った。これは、完全に不当労働行為で すよ」などと述べた。これに対して同事務部長は、「話をする だけだからいいだろう」などと述べた。 X7執 行 委 員 は 、平 成 12年 10月 31日 付 け で 組 合 に 脱 退 届 を 提 出 し た。 (4) 組 合 は 、 平 成 12年 11月 1日 、 会 が 西 南 医 療 セ ン タ ー 院 長 を 研 修会に呼んで講演させた内容は不当労働行為である旨、組合ニ ュ ー ス で 報 じ た 。 こ の こ と に つ い て 、 Y10院 長 及 び Y11事 務 部 長 が X1副 委 員 長 及 び X6副 支 部 長 を 呼 ん で 説 明 を 求 め た と こ ろ 、 同 副委員長は、「いま、やっておられることは組合干渉で、不当 労働行為ですよ」などと述べた。 (5) 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 の 提 起 組 合 、X4書 記 次 長 及 び X3執 行 委 員 は 、平 成 12年 12月 28日 、会 及 び 常 務 理 事 Y2(以 下 「 Y2常 務 」 と い う 。 )を 被 告 と し て 、 脱 退 勧 奨 に よ り 喪 失 さ せ ら れ た 組 合 費 相 当 分 な ど の 賠 償 (1 億 円 ) を 求 め て 横 浜 地 方 裁 判 所 に 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 (以 下 「 本 件 訴 訟 」 と い う 。 )を 提 起 し た 。 請 求 の 内 容 は 、Y2常 務 が 相 模 原 病 院 事 務 長 で あ っ た 時 に 中 心 と な っ て 行 っ た 組 合 へ の 弱 体 化 工 作 (組 合 脱 退 勧 奨 、 X3執 行 委 員 の 配 転 な ど )に 対 し 、 「 そ の 1」 事 件 の 命 令 が 出 さ れ た が 、 Y2常 務 が そ の 不 当 労 働 行 為 責 任 と 診 療 報 酬 不 正 請 求 問 題 (入 院 患 者 の 一 律 一 日 入 院 延 長 措 置 )の 責 任 を 組 合 か ら 追 及 さ れ る や 、 そ の 責 任 を と る ど こ ろ か 逆 に 厚 生 省 へ 内 部 告 発 し た の は 組 合 と X4書 記 次長であり、組合が病院を潰そうとしているとデマを振りまき、 組合をとるか病院をとるか組合員に迫るなどして、会が組合組 織 破 壊 攻 撃 (脱 退 煽 動 と 組 合 役 員 へ の 誹 謗 中 傷 な ど )を か け た た め、組合から大量の脱退者が生じて大きな打撃を受け、これに 対 し て 「 そ の 2」 事 件 の 命 令 が 出 さ れ た が 、 そ の 後 も 会 は 不 当 労 働行為を続けているので、この一連の組織攻撃で受けた組合の 損 害 (喪 失 さ せ ら れ た 組 合 費 相 当 分 な ど )と X4書 記 次 長 及 び X3執 行委員の受けた精神的損害の賠償を被告らに求める、というも のであった。 な お 、こ の 訴 訟 は 、本 件 結 審 日 現 在 、横 浜 地 方 裁 判 所 に 係 属 中 である。 (6) 組 合 は 、 平 成 13年 8月 25日 付 け の 機 関 紙 に 「 イ ン シ デ ン ト レ ポート」が懲罰的労務管理や嫌がらせに用いられている旨掲載 -7- し た 。 こ れ に 対 し 、 Y10院 長 及 び Y11事 務 部 長 が X1副 委 員 長 を 呼 んで事実関係を聞いたところ、同副委員長は、この記事は伊勢 原病院のことではなく、相模原病院で起こっている問題である と回答した。 (7) 会 は 、平 成 13年 12月 25日 の 組 合 と の 団 体 交 渉 に お い て 、市 中 金利が下落したこと、厚生労働省令で定める社内預金に関する 下 限 利 率 が 引 き 下 げ ら れ た こ と 、 平 成 14 年 度 か ら 診 療 報 酬 が 2.7%引 き 下 げ ら れ 収 入 が 減 少 す る こ と 、 赤 字 に な る と 伊 勢 原 病 院の新築移転に係る融資が受けられなくなることなどから、社 内 預 金 で あ る 厚 生 預 金 の 利 率 を 現 行 の 3%か ら 1%に 、 職 員 に 対 す る 厚 生 貸 出 金 の 住 宅 資 金 の 利 率 を 現 行 の 3%か ら 2%に 、 そ れ ぞ れ 平 成 14年 4月 1日 か ら 変 更 し た い 旨 提 案 し た 。 こ れ に 対 し て 組 合 は 、福 利 厚 生 の 大 き な 柱 で あ る 厚 生 預 金 の 利 率を代替措置や緩和措置もないまま切り捨てるのは賛成できな い と し 、 厚 生 貸 出 金 の 利 率 を 1%に す る こ と や 利 用 額 の 拡 充 な ど の代替措置を要求するとともに、時間をかけて協議してほしい 旨述べた。 こ の 提 案 に 先 立 ち 、会 は 、平 成 13年 12月 19日 の 中 央 労 使 懇 談 会 に お い て 、 伊 勢 原 第 二 組 合 及 び 相 模 原 協 同 病 院 労 働 組 合 (以 下 「 相 模 原 第 二 組 合 」 と い う 。 )(以 下 併 せ て 「 両 第 二 組 合 」 と い う 。 )に 対 し 、 同 様 の 提 案 を し て い た 。 な お 、 厚 生 預 金 の 利 率 に つ い て は 、 平 成 9年 11月 に 会 が 組 合 に 対 し て そ れ ま で の 5%か ら 1%へ 引 き 下 げ た い 旨 の 提 案 を し 、 平 成 10年 11月 ま で 労 使 協 議 を 重 ね た 結 果 、 3%と す る こ と で 労 使 協 定 が締結されていた。 (8) 会 は 、 平 成 14年 1月 、「 職 員 貯 蓄 金 管 理 規 程 」 を 同 月 1日 付 け で改正したと発表した。改正後の規程には、社内預金金利の変 更手続を行うために労働基準法で定められている「預金保全委 員 会 (会 の 規 程 で は 貯 金 保 全 委 員 会 )」 を 設 置 す る こ と 、 同 委 員 会 の 委 員 10名 の う ち 半 数 は 、 「 職 員 の 過 半 数 で 組 織 す る 労 働 組 合の代表者及び職員の過半数を代表する者の推薦を受けた者で 構成する」と定められており、会は、伊勢原第二組合から当該 委員を選出した。 な お 、会 と 組 合 と は 、平 成 10年 11月 30日 付 け で「 職 員 貯 蓄 金 管 理協定書」、「職員厚生資金貸出に関する協定書」及び「職員 貯蓄金管理・職員厚生資金貸出に関する協定にともなう合意書」 を締結しており、この合意書において、預金保全委員会の委員 は 7名 (会 側 3名 、 組 合 側 4名 )で 構 成 す る こ と と さ れ て い た が 、 同 委員会が開催されたことはなかった。 (9) 組 合 は 、 平 成 14年 2月 15日 の 団 体 交 渉 に お い て 、 「 以 前 の 労 -8- 働協約は生きているはずだ」、「神厚労と協議せずに一方的に 第二組合から選出してしまうのは協約無視ではないか」などと 述 べ た 。 こ れ に 対 し て 会 は 、 「 従 業 員 組 合 (伊 勢 原 第 二 組 合 )が 過半数になったので、労働協約は破棄しなくても事実上無効に な っ て い る の と 同 じ で は な い か 」 な ど と 述 べ た 。 ま た 、 X4書 記 次長が労働基準法上の労使協定を結ぶ場合の労働者とは労働省 の通達によればパート・アルバイトも含むこととされているた め伊勢原第二組合は過半数になっていないはずであると述べた こ と に 対 し 、 労 務 担 当 部 長 の Y12(以 下 「 Y12労 務 担 当 部 長 」 と い う 。 )は 、 「 パ ー ト ま で 含 め る と い う の は 知 ら な か っ た 」 な ど と 述べた。 (10) 会 は 、 平 成 14年 3月 13日 の 中 央 労 使 懇 談 会 に お い て 、 厚 生 預 金 の 利 率 は 厚 生 労 働 省 令 の 下 限 利 率 で あ る 0.5%に 0.5%を 加 え て 1%と す る こ と 、 厚 生 貸 出 金 の 利 率 は 財 務 省 令 の 基 準 利 率 で あ る 1.0%に 0.5%を 加 え て 1.5%(従 前 の 3%か ら の 引 下 げ )と す る こ と 、 このうち災害資金及び医療資金の利率については、財務省令の 基 準 利 率 で あ る 1.0%と す る こ と を 提 案 し 、 両 第 二 組 合 と 合 意 し た 。 そ の 際 、 Y12労 務 担 当 部 長 は 、 出 席 し て い た 両 病 院 の 事 務 長 に対し、労働基準監督署長に届け出るためにはパート職員を含 めた全職員数の過半数を代表する者との協定が必要であり、両 第二組合との協定書だけでは届出はできない旨述べた。 (11) 会 は 、 平 成 14年 3月 19日 の 組 合 と の 団 体 交 渉 に お い て 、 厚 生 預金の利率及び厚生貸出金の利率について、両第二組合と合意 した内容と同様の提案をし、また、両病院にはいずれも過半数 組合がない旨を述べた。このことについて、組合が「第二組合 と主張は違うが、みんなの福利厚生に関わる問題だから一致で き る 要 求 も 多 く あ る と 思 う の で 協 議 を 申 し 入 れ る つ も り 」、「 協 定 の 内 容 を 決 め た り 、 例 え ば 過 半 数 代 表 を 1年 交 替 に し て も い い と 思 っ て い る 」 と 述 べ た の に 対 し 、 Y2常 務 は 、 「 そ れ は か ま わ な い 」 と 述 べ た 。 ま た 、 同 常 務 は 、 X4書 記 次 長 が 「 両 方 足 し た としても過半数にならないとすれば、協定といっても問題は残 るが」と述べたことに対し、「過半数に足りないまでも二つの 労組が話合いで過半数代表者を決めるならばそれを尊重しても ら う し か な い 」 、 「 (預 金 保 全 委 員 や 労 働 安 全 委 員 な ど は )何 か を決定するための機関ではないのだから、両労組の話合いで両 方から委員を出してもらってかまわないと思う」などと述べた。 (12) 組 合 は 、伊 勢 原 第 二 組 合 に 対 し 、「 労 基 法 上 の 労 使 協 定 締 結 に あ た っ て の 組 合 間 協 議 と 共 闘 の 申 し 入 れ 」 と 題 す る 平 成 14年 3 月 20日 付 け 文 書 (以 下 「 3月 20日 付 け 共 闘 申 入 書 」 と い う 。 )を 送 付した。その内容は、組合間で主張は異なっても差し迫った職 -9- 員の要求解決を優先し、労使協定締結に当たってはよく話し合 って共闘していくことが肝要であり、「①労基法上の労使協定 締結のための過半数代表者選出の方法」、「②労使協定を締結 する場合の協定内容の検討」、「③社内預金保全委員、労働安 全 委 員 な ど の 選 出 」、「 ④ 一 致 で き る 要 求 で の 共 同 の 取 り 組 み 」 の 4点 (以 下 「 4提 案 」 と い う 。 )に つ い て 協 議 の 場 を 持 ち た い と いうものであった。 ま た 、 組 合 は 、 相 模 原 第 二 組 合 に 対 し 、 同 じ 内 容 の 平 成 14年 3 月 28日 付 け 文 書 (以 下 「 3月 28日 付 け 共 闘 申 入 書 」 と い う 。 )を 送 付した。 (13) 組 合 は 、 平 成 14年 3月 22日 の 団 体 交 渉 に お い て 、 同 月 19日 に 会が提案した厚生預金及び厚生貸出金の利率についての質問を した。これに対して会は、厚生預金の利率は厚生労働省令の下 限 利 率 で あ る 0.5%に 0.5%を 加 え て 1%と す る 、 厚 生 貸 出 金 の 利 率 は 財 務 省 令 の 基 準 利 率 で あ る 1.0%に 0.5%を 加 え て 1.5%と す る 旨 回答した。 (14) X4書 記 次 長 は 、 平 成 14年 3月 25日 、 Y2常 務 か ら 組 合 の X8相 模 原支部長に電話で前回の団体交渉で組合は会の提案に合意した と思っていいかとの質問があったことから、折り返し同常務に 電 話 を し 、 「 (組 合 の 執 行 委 員 会 で は 、 )緊 急 の 貸 出 制 度 を 創 設 し て ほ し い と い う 意 見 に な っ て い ま す 。 た と え ば 50万 と か 20万 とか退職金の範囲で貸し出しができるのではないですか」と述 べた。これに対して同常務は、「その通りに応えられるかどう かはわからないがすぐに検討させてみますよ」、「なるべく早 く 目 処 を 付 け た い 」 な ど と 述 べ た 。 ま た 、 X4書 記 次 長 は 、 「 伊 勢 原 の 第 二 組 合 の 委 員 長 の X9君 と 協 議 を し よ う と し て い る ん で す が 、休 み に 入 っ て い る の か 、な か な か つ か ま ら な い ん で す 。」、 「神厚労としても積極的に近々懇談しようとしているところで すから」などと述べた。 Y2常 務 は 、 そ の 日 の 午 後 、 Y12労 務 担 当 部 長 に 対 し 、 緊 急 貸 出 金制度の案の作成を指示した。 (15) X1副 委 員 長 及 び X4書 記 次 長 は 、 平 成 14年 3月 26日 、 伊 勢 原 第 二 組 合 の 執 行 委 員 長 X9(以 下 「 X9委 員 長 」 と い う 。 )、 X10副 執 行 委 員 長 及 び X5執 行 委 員 と 会 合 を し た 。席 上 、伊 勢 原 第 二 組 合 は 、 共 闘 の 申 入 れ に は 応 じ ら れ な い 、 4提 案 の う ち 労 働 基 準 法 上 の 労 働者の過半数代表者を交替で出すことや預金保全委員と労働安 全委員を双方から出すことは会がいいと言うなら異存はないが 執行部に諮らないと最終的には判断できないなどと述べた。ま た 、 X5執 行 委 員 は 、 個 人 的 考 え と し て 、 貸 出 金 制 度 の 拡 充 に つ い て は 、 50万 円 く ら い の 貸 出 制 度 が あ れ ば い い と 思 う が 伊 勢 原 - 10 - 第 二 組 合 と し て は 同 月 13日 の 時 点 で 既 に 会 と 合 意 し て お り 、 さ ら に 会 と 交 渉 し て い く こ と は で き な い 旨 を 述 べ た 。 一 方 、 X4書 記次長は、組合としても緊急生活貸出資金の新設を要求したと ころであり、一、二週間かけて交渉してみる、そのことを理解 しておいてほしいなどと述べた。 (16) Y12労 務 担 当 部 長 は 、 平 成 14年 3月 27日 、 組 合 に 職 員 厚 生 資 金 貸 出 要 項 の 改 定 案 (以 下 「 緊 急 生 活 資 金 案 」 と い う 。 )を フ ァ ッ クスで送信した。その内容は、緊急生活資金として退職給与金 の 範 囲 内 で 一 人 20万 円 を 限 度 と し て 貸 し 出 す こ と 、 貸 出 利 率 を 3%と す る こ と な ど で あ っ た 。な お 、フ ァ ッ ク ス 送 付 状 に は 、「 職 員貯蓄金管理規程、職員厚生資金貸出要項の改定案を送付いた し ま す 。 肉 筆 部 分 が 改 定 部 分 で す 。 尚 、 明 日 3月 28日 15時 か ら な ら団交が可能です。」などと記載されていた。 (17) 組 合 は 、 平 成 14年 3月 29日 付 け 「 神 厚 労 速 報 」 (以 下 「 3月 29 日 付 け 速 報 」 と い う 。 )に 、 同 月 26日 に 行 っ た 伊 勢 原 第 二 組 合 幹 部との会合の内容を掲載するとともに、緊急生活資金案につい て、「利子率や融資額に不満は残るので一週間くらいの間に会 側との詰めの交渉に臨みますが、どこで妥結してよいのかどう か組合員、非組合員を問わず、神厚労の執行委員にぜひみなさ んの意見を寄せていただきたいと思います。もちろん、伊勢原 従 組 、相 模 原 労 組 か ら も 意 見 を 聞 か せ て い た だ く つ も り で す 。」 と の 記 事 を 掲 載 し た 。 こ の 記 事 に 関 し て 、 Y2常 務 は 、 X4書 記 次 長 に 電 話 を し 、 「 神 厚 労 速 報 の 記 事 を 見 た け れ ど あ れ は X4さ ん と私とで話したことで提案でもなんでもない、報道されたこと でやりにくくなる、外に持ち出すならもうやめにしたっていい」 などと述べた。これに対して同書記次長は、先日の電話の中で Y2常 務 と 個 人 的 に 話 し た つ も り は な い 、 執 行 委 員 会 の 議 論 の 結 果を率直に伝えただけで誰にも隠すようなものではない、二人 だけのレベルの話とは思っていない、ましてファックスで通知 してくれば、正式の回答だと思って即刻組合員に伝えるのはい ままでの労使関係の中でやってきたことで、少しもおかしいこ とではない、などと述べた。 (18) 会 と 組 合 と は 、平 成 14年 4月 4日 に 緊 急 生 活 資 金 案 に つ い て の 団 体 交 渉 を 行 っ た 。 そ の 冒 頭 に Y2常 務 は 、 同 年 3月 25日 の 電 話 で の 話 は X4書 記 次 長 と 同 常 務 個 人 と の 話 で あ り 、 緊 急 生 活 資 金 案 も個人として案を出したものであって理事長の許可を得たもの ではないこと、たたき台として送付し、団体交渉で議論した方 が良いと考えたもので事前に公開されてしまうとできることも できなくなるなどと述べた。これに対して組合は、そのような ことならばその旨を記載しておいてほしいと述べた。 - 11 - 団 体 交 渉 に お い て は 、会 が 緊 急 生 活 資 金 案 は 精 一 杯 の 提 案 で あ る と 説 明 し た の に 対 し て 、 組 合 は 、 50万 円 く ら い の 枠 を 取 っ て ほ し い こ と 、据 置 期 間 の 設 置 、返 済 期 間 の 延 長 な ど を 要 望 し た 。 また、会が、一度この案でスタートさせてほしい、運用の中で 問題があれば今後議論していきたいなどと述べたことについて、 組 合 が 、 伊 勢 原 第 二 組 合 の 幹 部 か ら も 50万 円 の 貸 出 金 に つ い て 話が出ていることから同組合の意見も聞く必要がある、協定手 続についても同組合と協議しなければならない事情があるため 時間がほしいなどと述べたことから、会は、他の組合と話し合 った後に返事をしてほしいとして、これを了承した。 さ ら に 、組 合 は 、三 六 協 定 を 締 結 す る た め の 労 働 者 側 の 代 表 を 組合と伊勢原第二組合とが交替で行う件について、伊勢原第二 組合とは話は進んでいるが細かいことは決まっていないこと、 三六協定に本人合意事項を入れれば従前の協定を踏襲したもの でよいと考えていることなどを述べた。 な お 、 こ の 団 体 交 渉 と 平 成 14年 3月 22日 の 団 体 交 渉 に は 、 Y12 労務担当部長が出席していなかった。 (19) X1副 委 員 長 、 X4書 記 次 長 及 び X11書 記 次 長 は 、 平 成 14年 4月 11 日 、 伊 勢 原 第 二 組 合 の X9委 員 長 、 X12書 記 長 及 び X5執 行 委 員 と 2 回目の会合をした。 席 上 、X5執 行 委 員 は 、「 チ ラ シ で 共 闘 を す る よ う な こ と を 書 か れ て は 困 る 」 、 「 50万 円 の 貸 出 制 度 は あ く ま で X5個 人 の 意 見 を 述 べ た も の で す 。 X9委 員 長 は 何 も 言 っ て い な い の に … … 悪 い こ と を し て し ま っ た 」 、 「 従 業 員 組 合 と し て は 3月 に す で に 合 意 し ているので何の追加要求もない」などと述べた。これに対して 組合は、会に緩和措置を取らせたいと説明したが、伊勢原第二 組合は、共闘はしない、既に会とは合意しているので追加要求 は無い、会と組合との協議結果だけを知らせてもらえればいい と繰り返し述べた。 ま た 、 組 合 が 4提 案 の 検 討 状 況 に つ い て 質 問 し た の に 対 し 、 伊 勢原第二組合は、これから執行部で検討しようと思っていると 回答した。 (20) Y2常 務 は 、 平 成 14年 4月 中 旬 、 X8相 模 原 支 部 長 に 電 話 を し 、 伊 勢 原 第 二 組 合 の X9 委 員 長 と 相 模 原 第 二 組 合 の X13 執 行 委 員 長 に問い合わせたが何も要求していないと言っている、神厚労だ けがグズグズ言っている、そんなにグズグズ言うのなら緊急生 活資金は無しにする、もう団体交渉もやらないなどと述べた。 これに対して同支部長は、「そういうことを僕に言われても困 りますよ。団交の場でやってください」と述べた。 (21) 相 模 原 第 二 組 合 は 、 平 成 14年 5月 13日 に 会 と 両 第 二 組 合 と に - 12 - よ っ て 開 催 さ れ た 休 日 検 討 委 員 会 に お い て 、 会 に 対 し 、 「 4月 に 事務長より、神厚労と話し合うのであれば就業時間中でも配慮 するから事前に言ってきてほしいと言われたが、神厚労と話し 合 え と い う こ と で す か 。 」 と 質 問 し た 。 こ れ に 対 し て Y12労 務 担 当部長は、「神厚労より、話し合いたいが時間が合わないので 配慮してほしい、との申出があったので事務長がそのように話 したと思うが、話し合えということではない、そのようなこと を会が言うと、それこそ支配介入となる、組合の判断で決めて ください。」と回答した。 ま た 、相 模 原 第 二 組 合 は「 私 た ち は 、神 厚 労 を 無 視 す る こ と に している。私たちを散々批判しておいて今更よく言うよ、と思 っている。私たちは神厚労と会うつもりも無いし、ましてや話 し合うつもりも無い、私たちと合意した内容で早く協定書を作 ってください。」と述べ、伊勢原第二組合も「自分たちも神厚 労といっしょにやろうとは考えていない、早く協定を締結した い。」と述べた。 (22) 横 浜 地 方 裁 判 所 は 、平 成 14年 5月 21日 、本 件 訴 訟 の 第 2回 口 頭 弁 論 に お い て 、 X1副 委 員 長 の 証 人 尋 問 を 行 っ た 。 X1副 委 員 長 は 、 平 成 11年 6月 に 相 模 原 病 院 の Y2事 務 長 ら が 経 営 改善と称して入院患者の一律一日退院引き延ばしを指示し不正 に診療報酬を請求した、このことが厚生省や神奈川県に知れて 問題になった時、会はこのことを内部告発したのは組合だと決 めつけ、組合が病院をつぶすと宣伝し始めた、また、病院から 指示された管理職が組合に抗議文を突き付けるために署名を取 りに回り、現に同副委員長も上司から賛同の署名をしてくれと 頼 ま れ た 、 そ の 後 参 事 に 昇 進 し た Y2事 務 長 か ら Y9事 務 長 が 伊 勢 原病院は相模原病院に比べ脱退者が少ない、何をしているのだ と 喝 を 入 れ ら れ 、 そ の た め Y9事 務 長 が 各 所 属 長 に 組 合 脱 退 工 作 をするように指示した、不正請求に関して会はその非を認める 発言は一言もなく、院長は「こんなことはどこでもやっている んだ」などと言った、日頃から患者のためと、院長や事務長は 事あるごとに職員に言っていたのに患者を裏切るようなことを やらせたということに非常に怒りを感じた、などと証言した。 また、同副委員長は、この証言と同趣旨の陳述書を書証として 提出した。 (23) 組 合 は 、「 社 内 預 金 の 利 子 引 き 下 げ と 厚 生 預 か り 金 制 度 に つ い て の 団 交 の 申 し 入 れ 」 と 題 す る 平 成 14年 6月 10日 付 け 文 書 (以 下 「 6月 10日 付 け 文 書 」 と い う 。 )を 会 に 送 付 し た 。 こ の 文 書 に は、「社内預金の利率引下げおよびそれに伴なう厚生預かり金 制度の拡充について、他組合との調整などのための時間を頂い - 13 - ておりましたが、神厚労としての方向がまとまりましたので協 定化にむけての団交を申し入れさせていただきます。伊勢原協 同 病 院 従 業 員 組 合 (以 下 、 従 組 と 略 す )と の 話 し 合 い は 一 応 終 わ り 、 従 組 と し て は 3月 末 ま で に 基 本 的 に 合 意 し て い る の で 追 加 要 求することはない、ということがはっきりしました。相模原協 同病院労組の方にも神厚労から同じように懇談を申し込んでき ましたが、懇談は成立しませんでした。いつまでも時間をかけ るわけにはいきませんし、他の組合の態度も概ねわかりました ので、貴会と合意に向けて細部を詰めることを団交で行ない、 近々に協定化していきたいと考えています。日程のほど、よろ しくお取りはからいください。」などと記載されていた。 (24) 伊 勢 原 第 二 組 合 は 、 平 成 14年 6月 中 旬 か ら 、 非 組 合 員 に 対 し て三六協定及び厚生預金等の利率に関する協定の締結に係る賛 同署名活動を始め、その後、相模原第二組合も同様の署名活動 を始めた。 伊 勢 原 第 二 組 合 が X9委 員 長 名 義 で 作 成 し た「 伊 勢 原 協 同 病 院 で 働 い て い る 労 働 組 合 未 加 入 の 皆 様 へ (お 願 い )」 と 題 す る 平 成 14 年 6月 10日 付 け 文 書 に は 、 「 1.『 3・ 6協 定 』 締 結 に つ い て の お 願 い 現在、病院と労働者の間で早急に結ばなければならない協 約 と し て 、 超 過 勤 務 や 休 日 出 勤 に 関 す る 『 3・ 6協 定 』 が あ り ま す 。 私 は 、 『 3・ 6協 定 』 は 前 年 度 と 同 様 の 内 容 で 協 定 を 締 結 し た い と 思 い ま す 。 」 、 「 2.厚 生 預 り 金 及 び 厚 生 貸 付 金 の 金 利 変 更についてのお願い……預金の利息を現在の社会情勢に合わせ て引下げ、それに併せて貸付金の利率も引き下げる、そして今 後は行政の省令により変更するという内容であり合理的な事だ と思われます。」、「私は、この預金及び貸付金の金利の変更 は 受 け 入 れ る べ き と 思 っ て い ま す 。 私 の 『 3・ 6協 定 』 『 預 金 及 び貸付金の金利の変更』に対する考え方にご賛同戴ける方々の 署名を集めさせて戴き、早期に協約を締結したいと思っており ま す の で 、 宜 し く 願 い い た し ま す 。 」 な ど と 記 載 さ れ 、 40名 分 の署名、押印の欄が設けられていた。 ま た 、伊 勢 原 第 二 組 合 は「 従 業 員 組 合 ニ ュ ー ス 」と 題 す る 文 書 を、相模原第二組合は「相模原協同病院労働組合員皆様へ」と 題する文書をそれぞれ職員に配布した。これらの文書には、い ずれも、過半数組合がないために厚生預金及び厚生貸出金の利 率に係る協定を締結しても労働基準監督署への届出ができない こと、非組合員に両第二組合への加入を希望することなどが記 載されており、その記載方法も、一部の段落を除いて、ほぼ同 じであった。 な お 、こ の 頃 、本 所 に は 、両 病 院 の 総 務 課 か ら 両 第 二 組 合 が 厚 - 14 - 生預金の利率、厚生貸出金の利率及び三六協定について署名を 集めている旨の電話連絡があった。 (25) 伊 勢 原 第 二 組 合 の X9委 員 長 は 、 平 成 14年 6月 15日 、 伊 勢 原 病 院 4東 病 棟 の 病 棟 会 の 終 了 後 、 出 席 者 に 対 し 、 同 年 4月 1日 か ら 厚 生 預 金 利 率 が 3%か ら 1%に 変 更 に な っ た こ と 、 厚 生 貸 出 金 利 率 は 住 宅 資 金 の 利 率 が 3%か ら 1.5%に 、 災 害 資 金 と 医 療 資 金 の 利 率 が 2%か ら 1%に な っ た こ と な ど を 説 明 し た 。 な お 、 こ の 説 明 が 行 わ れ て い る 間 、 同 病 棟 の Y13師 長 が 同 席 し て い た 。 (26) 伊 勢 原 第 二 組 合 の X9委 員 長 は 、 平 成 14年 6月 20日 、 伊 勢 原 病 院 5N病 棟 の 病 棟 会 の 終 了 後 、 出 席 者 に 対 し 、 厚 生 預 金 利 率 が 3% か ら 1%に 変 更 す る 方 向 で あ る こ と 、 厚 生 貸 出 金 の 利 率 も 下 が る ことなどを説明した。なお、この説明が行われている間、同病 棟 の Y14師 長 が 同 席 し て い た 。 (27) 組 合 は 、「 社 内 預 金 の 利 子 引 き 下 げ を め ぐ る 不 誠 実 交 渉 と 組 合 間 介 入 へ の 抗 議 お よ び 申 し 入 れ 」 と 題 す る 平 成 14年 6月 25日 付 け 文 書 (以 下 「 6月 25日 付 け 文 書 」 と い う 。 )を 会 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 6月 10日 付 け 文 書 に よ る 団 体 交 渉 申 入 れ か ら 2週 間 経 っても日程調整の連絡がない、その間に伊勢原第二組合が非組 合員から署名を取り始め、管理職がこれに協力して労組と一体 で署名を集めながら同時に同第二組合への加入勧誘行為を行っ て い る こ と に つ い て 抗 議 す る 、 Y2常 務 に よ る 組 合 間 介 入 及 び 神 厚労機関紙への介入並びに同第二組合の署名活動を職制が支援 していることは不当労働行為に相当するものである、会は組合 と団体交渉をして速やかに協定化し、労働基準監督署への届出 に当たっては無記名投票による全職員の賛否を採ることを求め る、などというものであった。 会は、この文書に関して組合に回答をしなかった。 (28) X2委 員 長 は 、 平 成 14年 7月 2日 、 Y12労 務 担 当 部 長 あ て に フ ァ ックスを送信した。このファックスには、「①団交日程につい て 6月 10日 付 文 書 で 団 交 の 申 し 入 れ を 行 っ て い ま す 。 3週 間 経 過 しています。すぐに日程を入れて下さることを再度申し入れま す。」、「②三六協定について届出ているなら、両病院及びセ ンターの協定書の写しを送って下さい。」などと記載されてい た。 こ れ に 対 し Y12労 務 担 当 部 長 は 、 「 事 務 連 絡 」 と 題 す る 平 成 14 年 7月 4日 付 け 文 書 を X2委 員 長 に 送 付 し た 。 こ の 文 書 に は 、 「 1. 団 交 日 程 に つ い て 6月 は 内 部 検 査 、 総 会 等 が あ り 、 日 程 の 調 整 が つ き ま せ ん で し た 。 7月 も 役 員 の 挨 拶 回 り 、 諸 会 議 等 が 詰 っ て お り 、 現 時 点 で 、 私 、 Y9部 長 、 常 務 が 出 席 で き る 7月 の 日 程 は 、 24 日 ・ 30日 ・ 31日 で す 。 」 、 「 2.三 六 協 定 に つ い て 三 六 協 定 は - 15 - 各事業所毎に締結しております。尚、協定書の原稿は、別紙の とおりです。」などと記載されており、別紙として、「時間外 労働 休日労働 に関する協定書」と題する書式が添付されて いた。 (29) Y11事 務 部 長 は 、 平 成 14年 7月 5日 、 X1副 委 員 長 が 事 務 部 長 室 前のコピー機のところへコピーを取りに来たのを見て、同副委 員 長 を 事 務 部 長 室 に 呼 び 、 Y15総 務 管 理 課 長 と と も に 通 勤 経 路 に つ い て 事 情 聴 取 (以 下 「 本 件 事 情 聴 取 」 と い う 。 )を し た 。 本件事情聴取の状況等は次のとおりである。 ア 会 側 の 聴 取 内 容 は 、 X1副 委 員 長 の 交 通 費 支 給 申 請 書 に は 小 向停留所から平塚駅北口停留所を経由して伊勢原駅南口停留 所 ま で の バ ス 通 勤 (以 下「 申 請 経 路 」と い う 。)と 記 載 さ れ て い る が 、実 際 に は 高 村 団 地 停 留 所 か ら 伊 勢 原 駅 南 口 停 留 所 へ の バ ス の 経 路 (以 下「 直 通 バ ス 経 路 」と い う 。)を 利 用 し て い る の で は な い か 、直 通 バ ス に 乗 っ て い る と こ ろ を 見 た 者 が い る な ど と い う も の で あ っ た 。こ れ に 対 し て 同 副 委 員 長 は 、行 き の 通 勤 は 直 通 バ ス 経 路 を 利 用 し て い る が 、帰 り は 申 請 経 路 で 帰 っ て い る 、 直通バス経路で通勤するのは職場であるリハビリテーション 室 の 朝 礼 が 8時 25分 か ら 始 ま る こ と や 診 療 の 準 備 を す る た め で ある、雨の日は申請経路で来ているなどと述べた。 一 方 、 Y11事 務 部 長 は 、 申 請 経 路 が 遠 回 り で も 実 際 に そ れ を 利 用 し て い る の で あ れ ば 問 題 に し な い 、料 金 が 安 く 時 間 も 短 い 直通バス経路を利用して交通費の差額を取得していることが 問 題 で あ る と し て 、早 急 に 交 通 費 支 給 申 請 書 を 直 通 バ ス 経 路 で 提 出 す る こ と 、 2年 遡 っ て 差 額 金 を 返 金 し て も ら う が 最 終 的 な 返還金額を含めた処分は本所の指示によることなどを述べた。 こ れ に 対 し て X1副 委 員 長 は 、「 返 金 を し て も い い と は 、思 っ て いる。」と述べた。 な お 、X1副 委 員 長 は 、平 成 14年 7月 9日 付 け で 直 通 バ ス 経 路 に よ る 交 通 費 支 給 申 請 書 を 会 に 提 出 し た 。 バ ス の 3か 月 の 定 期 券 代 は 、従 前 の 経 路 に よ る と 70,540円 、変 更 後 の 直 通 バ ス 経 路 に よ る と 53,870円 で あ っ た 。 イ X1副 委 員 長 は 、 直 通 バ ス 経 路 を 利 用 す る 場 合 は 、 自 宅 か ら 徒 歩 13分 程 度 の 高 村 団 地 停 留 所 で 6 時 52分 又 は 7時 13 分 の 伊 勢 原 駅 南 口 行 き の 始 発 バ ス に 乗 り 、 伊 勢 原 駅 南 口 に は 8時 前 後 に 着 き 、 そ こ か ら 徒 歩 7~ 8分 程 度 で 伊 勢 原 病 院 に 到 着 し て い た 。 ま た 、復 路 に 利 用 で き る 伊 勢 原 駅 南 口 発 高 村 団 地 行 バ ス は 、17 時 台 が 1本 、18時 台 か ら 20時 台 が 各 2本 、21時 台 及 び 22時 台 が 各 1本 で あ っ た 。 ウ 一 方 、 X1副 委 員 長 が 平 塚 市 に 転 居 し た 平 成 5年 以 降 に 会 に 提 - 16 - 出 し て い た 交 通 費 支 給 申 請 書 は 、 自 宅 か ら 徒 歩 2分 程 度 の 小 向 停 留 所 か ら 平 塚 駅 北 口 行 バ ス で 平 塚 駅 ま で 向 か い 、平 塚 駅 北 口 で 伊 勢 原 駅 南 口 行 バ ス に 乗 り 換 え る と い う も の で あ っ た が 、本 件 事 情 聴 取 以 前 に 、こ の 申 請 に つ い て 会 か ら 注 意 や 質 問 を 受 け たことはなかった。 X1副 委 員 長 は 雨 の 日 は こ の 申 請 経 路 で 出 勤 し て お り 、そ の 場 合 の 通 勤 時 間 は 、 直 通 バ ス 経 路 よ り も 5分 か ら 10分 程 度 長 か っ た。 なお、出勤時間帯の小向停留所から平塚駅北口行のバスは、 6時 台 か ら 7時 台 は 各 5本 で あ り 、 平 塚 駅 北 口 か ら 伊 勢 原 駅 南 口 ま で の バ ス は 、 経 由 地 は 異 な る も の の 7時 台 は 概 ね 数 分 間 隔 で 運 行 さ れ て い た 。ま た 、伊 勢 原 駅 南 口 か ら 平 塚 駅 北 口 行 の バ ス は 、退 勤 時 間 帯 の 17時 台 及 び 18時 台 は 概 ね 数 分 間 隔 で 運 行 さ れ て お り 、平 塚 駅 北 口 か ら 小 向 停 留 所 に 向 か う バ ス は 、18時 台 が 4本 、 19時 台 及 び 20時 台 が 各 3本 で あ っ た 。 エ 会 は 、 昭 和 40年 6月 1日 に 制 定 さ れ た 交 通 費 支 給 内 規 (昭 和 43 年 7月 1日 、 平 成 13年 6月 28日 、 同 年 10月 1日 に 改 正 )に よ り 職 員 に 交 通 費 を 支 給 し て い た 。 こ の う ち 、 平 成 13年 10月 1日 の 改 正 で は 、 交 通 費 の 支 給 単 位 を 「 1か 月 通 勤 定 期 乗 車 券 の 額 」 か ら 「 3か 月 の 通 勤 定 期 乗 車 券 の 額 」 に 変 更 す る な ど し た 。 こ の 改 正 に 先 立 ち 、 会 は 平 成 13年 8月 中 旬 に 交 通 費 支 給 対 象 者 に 交 通 費 支 給 申 請 書 を 配 布 し て お り 、同 年 9月 7日 に は 対 象 者 全員から申請がなされた。 こ の よ う な 改 正 を 行 う 場 合 、会 は 従 前 は 組 合 に 通 知 し 組 合 と 協 議 を 行 っ て い た が 、こ の 内 規 の 改 正 に つ い て は 組 合 と 協 議 を 行 わ ず 、X1副 委 員 長 も こ の こ と に つ い て 会 か ら 説 明 さ れ た こ と はなかった。 な お 、会 は 、職 員 が 提 出 し た 交 通 費 支 給 申 請 を 認 め た 場 合 に は 、当 該 申 請 経 路 で 通 勤 し て い る 限 り 、通 勤 時 間 、通 勤 距 離 が 最短でなくともこれを就業規則違反として懲戒に処すことは な く 、ま た 、過 去 に 交 通 費 の 不 正 受 給 を 理 由 に 処 分 さ れ た 者 も いなかった。 オ 平 成 13年 10月 1日 の 改 正 前 、 改 正 後 の 交 通 費 支 給 内 規 の 規 定 は次のとおりである。 (ア) 改 正 前 「 第 1条 (略 ) 第2 条この内規による交通費補助を受けるものは、通勤 に 鉄 道 (汽 車 電 車 )及 び バ ス を 利 用 す る も の に 限 る 。た だ し 、 2キ ロ メ ー ト ル 未 満 は 支 給 の 対 象 と し な い 。 第 3条 交 通 費 補 助 の 基 準 額 (月 額 )は 、 補 助 の 対 象 と な る - 17 - 交 通 機 関 の 自 宅 に 最 も 近 い 乗 車 駅 (停 留 所 )よ り 、事 務 所 に 至 る 降 車 駅 (停 留 所 )ま で の 1か 月 通 勤 定 期 乗 車 券 の 額 とする。 第 4条 ~ 第 6条 (略 ) 第 7条 虚 偽 の 申 請 又 は 異 動 の 申 告 を 怠 り 、 不 当 に 交 通 費 の 支 給 を 受 け た 者 は 、こ れ を 返 還 さ せ 、か つ 、事 後 の 支 給は停止することがある。 (イ) 改 正 後 「 第 1条 (略 ) 第 2条 交 通 費 の 支 給 額 は 、 支 給 対 象 と な る 交 通 機 関 の 自 宅 に 最 も 近 い 乗 車 駅 (停 留 所 )よ り 、最 短 で 勤 務 地 に 至 る 降 車 駅 (停 留 所 )ま で の 、 3か 月 の 通 勤 定 期 乗 車 券 の 額 を 支給する。 ② 第 1項 の 規 定 に か か わ ら ず 、 自 宅 か ら 最 も 近 い 降 車 駅 (停 留 所 )ま で の 距 離 が 2キ ロ メ ー ト ル 未 満 は 支 給 の 対 象 としない。 第 3条 ~ 第 6条 (略 ) 第 6条 虚 偽 の 申 請 又 は 異 動 の 申 告 を 怠 り 、 不 当 に 交 通 費 第 6条 の 支 給 を 受 け た 者 は 、 こ れ を 返 還 さ せ 、 か つ 、 事 後の支給は停止することがある。 カ 会は、自動車等による通勤を届出により認めていた。この 場 合 に 、交 通 費 支 給 申 請 書 に 自 動 車 等 に よ る 通 行 経 路 及 び 公 共 交 通 機 関 を 利 用 す る 場 合 の 通 勤 経 路 を 申 請 さ せ 、公 共 交 通 機 関 を利用する場合の交通費を支給していた。 (30) Y16医 事 課 長 は 、 平 成 14年 7月 8日 夕 方 、 伊 勢 原 第 二 組 合 の X9 委員長の依頼を受け、伊勢原病院の病棟クラークらに対し、厚 生預金、厚生貸出金及び三六協定について説明し、署名を求め た。その際に、同課長は、「なんで俺が説明しなくちゃなんな いのかな」と述べた。 な お 、 Y16医 事 課 長 は 伊 勢 原 第 二 組 合 の 組 合 員 で あ っ た 。 (31) 組 合 は 、「 非 組 合 員 か ら 署 名 を 集 め て 協 定 締 結 権 を 取 ろ う と の 非 民 主 的 な や り 方 へ の 抗 議 」 と 題 す る 平 成 14年 7月 11日 付 け 文 書 を 伊 勢 原 第 二 組 合 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 組 合 と 2回 の 会 合 を持ち今後検討する課題が残されていたにもかかわらず一方的 に非組合員から署名を集め単独で労使協定を結ぼうとしている こ と は ア ン フ ェ ア で あ る 、 昭 和 63年 の 労 働 省 通 達 に 照 ら し て 非 組合員から署名を集めて過半数にするという方法は有効でない、 職制を同伴させて署名を迫ることは経営者の意向に沿っている と疑われることになるので直ちに中止するよう厳重に抗議する とともにあらためて民主的な無記名投票を行うよう申し入れる、 - 18 - などというものであった。また、組合は、相模原第二組合に対 しても同様の文書を送付した。 なお、両第二組合は、この文書に回答しなかった。 (32) X14看 護 助 手 は 、 平 成 14年 7月 12日 の 勤 務 時 間 中 、 伊 勢 原 病 院 の 5東 病 棟 に お い て 、 内 科 の Y17副 部 長 が 伊 勢 原 第 二 組 合 の X9委 員 長 に 対 し 、「 署 名 は い つ ま で 」な ど と 話 し て い る の を 聞 い た 。 また、同日、同看護助手が同委員長とエレベーターに乗り合わ せ た 際 に「 署 名 は 集 ま っ て い る ん で す か 」と 質 問 し た の に 対 し 、 同委員長は「いや、全然……見ましたか」などと述べた。 (33) 伊 勢 原 病 院 の 3N病 棟 の 看 護 助 手 ら は 、 平 成 14年 7月 18日 頃 、 X14看 護 助 手 に 対 し 、 Y18師 長 に 「 7月 8日 ま で に 署 名 し な い と 、 厚生預金がなくなってしまう」、「もう提出するんだから、い ま す ぐ し て ち ょ う だ い 」な ど と 言 わ れ て 署 名 を し た 旨 、述 べ た 。 ま た 、 同 じ 頃 、 5東 病 棟 勤 務 の 看 護 師 は 、 X14看 護 助 手 に 対 し 、 数 日 前 に 伊 勢 原 第 二 組 合 の 組 合 員 で あ る X15 看 護 師 が 署 名 を 集 め て お り 、 そ の 際 に 、 Y19師 長 が X15看 護 師 に 代 っ て 貸 出 の 制 度 について「だれでも借りられるようになるのよ」などと説明を していたと述べた。それを聞いた同看護助手が「その際に、三 六協定のことについて話がでましたか。二組と会とが結ぼうと している協定のなかには、そういうものも入っているんですよ」 と尋ねたのに対し、その看護師は、「そんなことは言ってなか ったよ」などと述べた。 こ の 話 を 聞 い た X14看 護 助 手 は 、 平 成 14年 7月 25日 、 Y19師 長 に 対し、「先日、従業員組合の署名活動に口添えなさったそうで すね。所属長がそういうことをするのは職員に圧力をかけるこ とになりませんか」、「師長さんが口添えすれば、署名しなけ ればいけないと思う人が出ますよ」などと質問した。これに対 し て 同 師 長 は 、 「 あ の と き 、 い た の は Z2さ ん と 、 … … で も Z3さ ん は し て な い し 、 … … X15さ ん が よ く 分 か ら な い と 言 う か ら 、 私 は知っていることを説明しただけよ」などと述べた。また、同 看 護 助 手 が 、 「 そ れ は Y12さ ん 、 ま た は 従 組 の 委 員 長 が 説 明 す る ことであって、師長さんの説明することではないはずですよ。 私たち神厚労は……貸出制度を新設してほしいと要求している 最中でした。従組の協定のおかげで反故になってしまうんです よ。それに、署名の際に師長さんは、三六協定のことまで説明 しましたか。」と質問すると、同師長は、「してないわよ」と 回答した。 な お 、 Y19師 長 は 伊 勢 原 第 二 組 合 の 組 合 員 で あ っ た 。 (34) 会 と 組 合 は 、 平 成 14年 7月 24日 に 団 体 交 渉 を 行 っ た 。 そ の 冒 頭に会は、「第二組合が非組合員から署名を集めており、合計 - 19 - で過半数に達したと思われる。それで協定を結ばせてもらうこ とにする」と述べた。 組合が「本当に過半数になったのですか」と質問したところ、 Y9総 務 企 画 部 長 は 両 第 二 組 合 に 電 話 を し た 後 、 「 過 半 数 に な っ た。」と回答した。また、会は、「神厚労とは難しい。」と繰 り返し述べた。 こ れ に つ い て 組 合 が「 協 定 を 結 ぶ の に 何 が 難 し い ん で す か 。ほ ぼ 妥 結 を 見 て い る で は な い で す か 」 な ど と 述 べ た と こ ろ 、 Y12労 務担当部長は、「神厚労の機関紙を読ませてもらったが、日立 の Z1さ ん 裁 判 (残 業 を 巡 る 判 決 )の こ と が 書 い て あ っ た 。 あ れ で は 会 は 絶 対 に 協 定 は 結 べ な い よ 」 な ど と 述 べ た 。 一 方 、 X4書 記 次長は、「それは違いますよ。前回の団交で……初めて三六協 定に触れたんですよ。神厚労は時間など以前のものを踏襲して も い い ん じ や な い か と 、そ こ は 柔 軟 に 考 え て い る 、し か し 、『 本 人の合意を必要とする』というような旨の協定にしてもらいた い と 考 え て い ま す 、 と 申 し 入 れ た ん で す よ 。 そ う し た ら 確 か Y2 常務が『それはいいんじやないの。前の協定書もそうなってい たんじゃないの。いずれにしても、こちらも調べてみます。』 というような会話がされているんですよ。三六協定で困難だな んて話には少しもなっていない。あなたは団交に出ていなかっ たから知らないけど、初めて三六協定の入り口に入っただけで、 それを『神厚労とは難しい』なんていう理由にするのはおかし いんじゃないですか」などと述べた。 ま た 、会 は 、緊 急 生 活 資 金 案 に つ い て も 暗 礁 に 乗 り 上 げ た と 述 べた。 (35) 伊 勢 原 病 院 長 は 、平 成 14年 8月 2日 に 三 六 協 定 を 所 轄 労 働 基 準 監 督 署 長 に 届 け 出 た 。 同 協 定 は 同 年 7月 31日 付 け で 締 結 さ れ 、 そ の 労 働 者 代 表 は 、 「 伊 勢 原 協 同 病 院 従 業 員 組 合 (平 成 14年 7月 チ ェ ッ ク・オ フ 数 181名 )執 行 委 員 長 賛 同 者 132名 代 表 X9」で あ っ た 。 また、会は、伊勢原病院における厚生預金の利率等に関し、同 様 の 労 働 者 代 表 と 同 日 に 協 定 を 締 結 し 、 同 年 11月 5日 に 所 轄 労 働 基 準 監 督 署 長 に 届 け 出 た 。 な お 、 同 年 7月 1日 時 点 に お け る 同 病 院 の 職 員 数 は 、 583名 で あ っ た 。 一 方 、 相 模 原 病 院 長 は 、 平 成 14年 7月 23日 に 三 六 協 定 を 所 轄 労 働基準監督署長に届け出た。この協定の労働者代表は、「相模 原 協 同 病 院 労 働 組 合 (平 成 14年 7月 チ ェ ッ ク ・ オ フ 数 247名 )執 行 委 員 長 及 び 賛 同 者 179名 代 理 人 X16」 で あ っ た 。 ま た 、 会 は 、 相 模原病院における厚生預金の利率等に関し、同様の労働者代表 と 同 月 19日 に 協 定 を 締 結 し 、 平 成 15年 6月 30日 に 所 轄 労 働 基 準 監 督 署 長 に 届 け 出 た 。 な お 、 平 成 14年 7月 1日 時 点 に お け る 同 病 院 - 20 - の 職 員 数 は 、 796名 で あ っ た 。 (36) 中 労 委 は 、 平 成 14年 7月 31日 、 「 そ の 1」 事 件 及 び 「 そ の 2」 事 件 に つ い て 、 X3執 行 委 員 の 配 置 転 換 や 第 二 組 合 づ く り へ の 関 与などについては初審命令を変更し、一方、組合費返還請求訴 訟の判決文を利用した婦長らの言動や診療報酬不正請求問題に 関する職員説明会における職制の発言などは脱退勧奨に当たる な ど と す る 命 令 を 発 し た 。 こ の 命 令 を 不 服 と し て 、 会 は 同 年 8月 28日 に 、 組 合 は 同 月 29日 に 、 そ れ ぞ れ 東 京 地 方 裁 判 所 に 取 消 訴 訟を提起した。これらの事件は、本件結審日現在、同裁判所に 係属中である。 (37) Y1理 事 長 、 Y20専 務 、 Y2常 務 及 び Y9総 務 企 画 部 長 は 、 平 成 14 年 8月 21日 、 本 所 に お い て X1副 委 員 長 の 交 通 費 問 題 に つ い て 協 議 し、懲戒処分の内容及び返還させる金額について決定した。同 日 、 Y2常 務 は 、 Y11事 務 部 長 に 電 話 を し 、 X1副 委 員 長 に 対 す る 処 分 内 容 を 述 べ た 上 、 同 月 23日 に 伊 勢 原 病 院 に 出 向 い て 処 分 を 通 達するので当日に同副委員長が勤務しているか確認すること、 予め処分内容を同副委員長に伝えておくことを指示した。 こ の 連 絡 を 受 け て 、 Y11事 務 部 長 は 、 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 室 に 出 向 き 、 X1副 委 員 長 に 対 し て 「 23日 は あ い て い る か 」 、 「 交 通 費 の こ と だ け ど 、 返 金 に つ い て 12、 3万 ぐ ら い だ と 思 う が 、 役 員 が来る。懲戒だ」などと述べ、同副委員長が懲戒処分の内容に つ い て 尋 ね る と 、「 譴 責 処 分 と 減 給 処 分 」、「 減 給 1、2か 月 だ 」 などと述べた。また、同副委員長が「何で減給なんだ。神厚労 だ か ら そ う す る の か 。」と 述 べ た の に 対 し 、同 事 務 部 長 は 、「 本 所で決めたことなので私に反論されても困る、言いたいことは 当日役員に直接弁明するように」などと述べた。 (38) Y2常 務 及 び Y11事 務 部 長 は 、 平 成 14年 8月 23日 、 伊 勢 原 病 院 事 務 長 室 に X1副 委 員 長 を 呼 び 出 し た 。 こ の 際 、 同 常 務 は 、 会 は 今 回 の 件 を 不 正 受 給 と 認 定 し た 、 就 業 規 則 第 76条 第 1号 、 第 4号 及 び 第 5号 に 該 当 す る 、 と し て 通 達 書 を 渡 す 旨 述 べ た 。 こ れ に 対 し て X1副 委 員 長 が 直 通 経 路 を 利 用 し た 理 由 や 交 通 費 支給内規が自動車通勤者に対して緩やかに運用されていること な ど を 述 べ た と こ ろ 、 Y2常 務 は 、 「 い ず れ に し て も 我 々 は 不 正 と認定していますので、通達をします。」と述べ、通達書を交 付しようとしたが、同副委員長が「それは受け取れません。多 分常務は組合差別だと思います。」などとして受け取らなかっ た た め 、 通 達 書 を 読 み 上 げ て 処 分 を 通 告 し 、 平 成 14年 9月 1日 よ り実施させてもらう旨述べた。 こ の と き に X1副 委 員 長 が 聞 い た 処 分 の 内 容 は 、 譴 責 及 び 減 給 ( 本 給 に 調 整 手 当 を 加 え た 額 の 100 分 の 2 で あ る 7,871 円 を 6 か 月 - 21 - 間 減 給 す る と い う も の )で あ っ た 。 会の就業規則の懲戒に関する規定は、以下のとおりである。 「 (懲 戒 ) 第 76条 職 員 が 次 の 各 号 の 一 に 該 当 す る と き は 、懲 戒 処 分 に 付する。 1 第 3章 (服 務 規 律 )の 定 め そ の 他 こ の 規 則 、会 諸 規 程 に 違 反 したとき。 2 (略 ) 3 会の名誉・信用を毀損したとき。 4 故意又は過失で、会に損害を与えたとき。 5 業務上の指示・命令に違反し、又は怠ったとき。 6~ 7(略 ) 8 部下の監督を怠り、部下が懲戒処分を受けたとき。 9~ 13(略 ) (懲 戒 方 法 ) 第 77条 懲 戒 は 、そ の 程 度 、情 状 に よ り 、次 の 区 分 に 従 っ て 行う。この場合、職員には充分なる弁明の機会が与え られる。 1 譴責 始末書を提出させて将来を戒める。 2 減 給 1回 に 対 す る 事 案 の 額 が 平 均 賃 金 の 1日 分 の 半 額 、 総 額 が 1ケ 月 の 賃 金 総 額 の 10分 の 1の 範 囲 で 行 う 。 3 出 勤 停 止 始 末 書 を 提 出 さ せ 、7勤 務 日 以 内 の 出 勤 を 停 止 し、その期間中の給与を支給しない。 4~ 6(略 ) (損 害 賠 償 ) 第 78条 職 員 が 事 故 又 は 過 失 に よ っ て 、会 に 損 害 を 与 え た と きは、その全部又は一部を賠償させる。ただし、これ に よ っ て 第 78条 ( マ マ ) の 懲 戒 免 れ る も の で は な い 。 (39) 組 合 は 、「 X1組 合 員 へ の 懲 戒 処 分 撤 回 の 申 入 れ 」と 題 す る 平 成 14年 9月 3日 付 け 文 書 を 会 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 X1副 委 員 長 は 「 交 通 費 支 給 内 規 」 の 「 自 宅 に 最 も 近 い 乗 車 駅 (停 留 所 )よ り」との規定に則り最寄りのバス停留所である「小向」から平 塚駅を経由して「伊勢原駅南口」で下車する申請をした、朝は8 時 30分 の 開 始 時 間 よ り も 30分 ほ ど 早 く 出 勤 し て 仕 事 の 準 備 に 取 り 掛 か り た い た め に 多 く は 自 宅 か ら 徒 歩 約 15 分 の バ ス 停 留 所 「高村団地」から直通バス経路を利用し、帰途は申請経路でほ とんど帰宅していた、早く出勤する都合や帰途のためのバス間 隔が開きすぎているなどの理由で申請経路と直通バス経路の両 方 の 路 線 を 併 用 し て き た に す ぎ ず 、 こ れ は 「 8時 30分 に は す ぐ リ ハビリを開始してもらいたい」という患者さんの声に応えて定 - 22 - 時より早く出動するためにとった方法である、また、自家用車 通勤をしている職員には「交通費支給内規」を運用して交通機 関に乗った場合を仮定してその定期代に「換算して」支給して おり、自家用車での通勤については「交通費支給内規」に規定 がなく細則が設けられているわけではないのに緩やかな運用が 広 く 認 め ら れ て き た 、 X1副 委 員 長 の 行 為 は 就 業 規 則 の 第 76条 第 3 号 「 会 の 名 誉 ・ 信 用 を 毀 損 し た と き 」 及 び 同 条 第 4号 の 「 故 意 又 は過失で、会に損害を与えたとき」にも当たらず、あくまで内 規にそって申請したものであること、これらのことから今回の 処分は本件訴訟で同副委員長が組合側証人に立ち診療報酬の不 正 請 求 を 指 示 し た Y2常 務 ら の 責 任 を 追 及 す る 証 言 を し た た め の 報復と考えられ、同副委員長の正当な組合活動に対する報復と し て の 不 利 益 処 分 で あ っ て 労 働 組 合 法 第 7条 第 4号 を 類 推 適 用 す る ま で も な く 不 当 労 働 行 為 で あ る 、 就 業 規 則 第 77条 に 規 定 す る 「充分なる弁明の機会が与えられる」ことなくなされた処分で 手続的にも違法である、したがって、直ちに処分を撤回するよ う求める、などというものであった。 この申入れに対し、会は、回答をしなかった。 (40) 組 合 は 、「 貴 会 が 不 誠 実 交 渉 を 重 ね て い る こ と へ の 抗 議 と 申 し 入 れ 」 と 題 す る 平 成 14年 9月 3日 付 け 文 書 (以 下 「 9月 3日 付 け 申 入 書 」 と い う 。 )を 会 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 同 年 6月 10日 付 けで組合が協定化に向けての団体交渉の申入れを行ったにもか か わ ら ず 同 年 7月 24日 ま で 1か 月 半 も 団 体 交 渉 を 引 き 延 ば し 、 そ の間に第二組合と協定を締結するべく職制をバックにして第二 組合と一体となって非組合員への署名を集めさせた、組合に対 しては過半数代表者の選出に当たって立候補の機会さえ与えず、 また、三六協定については協議が始まったばかりなのに打ち切 られたのであって組合間差別であり団体交渉拒否である、会が 不当労働行為を重ねていることに抗議するとともに、「①団交 の中で確認したことを守り、過半数代表者の選出については組 合間の交替で行なっていくこと、②緊急生活資金については、 神厚労が合意しているのであるから提案どおり新設すること、 ③過半数代表者の選出は職制のバックを受けた圧力の下では職 員の総意を正しくはかることができないので民主的に無記名投 票を行なうこと、④三六協定については、神厚労と誠実な協議 を行なうこと」などを申し入れる、この問題は団交拒否という 不当労働行為に当たる性格のものであり、会が不誠実な対応を 改めなければ第三者機関の力を借りることを念のため付け加え る、などというものであった。 この申入れに対し、会は、回答をしなかった。 - 23 - ま た 、組 合 は 、両 第 二 組 合 に 対 し 、そ れ ぞ れ「 署 名 に よ る 過 半 数 代 表 者 の 選 出 に つ い て の 再 抗 議 と 申 し 入 れ 」 と 題 す る 平 成 14 年 9月 4日 付 け 文 書 を 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 ① 過 半 数 代 表 者 の 選出について交替制で行うこと、②緊急生活資金を新設させる こと、③協定内容を明らかにして職員全員の無記名投票により 賛否を問うこと、④三六協定については無記名投票で過半数代 表者を選出して協定締結をすること、その場合、「やむを得な い事情があり、残業に応じられない場合には、残業を行わない ことができる」旨を文書に盛り込むことなどを再度申し入れる というものであった。 (41) 伊 勢 原 病 院 の Y21事 務 次 長 及 び Y15総 務 管 理 課 長 は 、平 成 14年 9月 10日 、 事 務 部 長 室 に X1副 委 員 長 を 呼 び 、 返 還 金 額 に 関 す る 同 意 書 へ の 押 印 を 求 め る と と も に 、 返 還 金 は 3年 間 遡 る 、 金 額 は 207,960円 で あ る 、 こ の 金 額 は 直 通 バ ス 路 線 の 運 賃 で 計 算 し た も のである旨を述べた。 こ れ に 対 し て X1副 委 員 長 は 、自 分 の 計 算 し た も の と 金 額 の 乖 離 が大きく納得できない、朝に直通バス経路を利用するのは職場 の申し合わせとして始業時間からすぐに患者さんを受け入れる 準 備 の た め に 30分 ほ ど 早 く 出 勤 す る た め で あ る 、 退 勤 時 は 申 請 経路で帰宅しているのが通常であり不正を行う意思は全くない、 退 勤 時 間 帯 の 直 通 バ ス 路 線 は 1時 間 に 2本 し か な く 極 め て 不 便 で あるので申請経路を利用することも合理性の範囲内である、交 通費支給内規には定められていない自家用車通勤の職員にあっ ては公共交通機関を使ったとみなして定期代に換算した交通費 を支給するというルーズな運用が行われている、行きと帰りと が別経路になるのは業務の事情、所要時間、バスの時刻表の間 合いなどからして合理性・常識の範囲である旨、述べた。 ま た 、X1副 委 員 長 が 同 意 書 に 押 印 せ ず 、コ ピ ー の 交 付 を 求 め た の に 対 し 、 Y15総 務 管 理 課 長 は 、 納 得 が い か な い の な ら 必 要 な い などと述べ、同副委員長が自分は目が悪くよく見えないのでコ ピーをもらいたいと再度述べたが、コピーを交付しなかった。 な お 、 上 記 同 意 書 に は 、 1か 月 分 の 正 規 の 交 通 費 と 申 請 額 の 差 額 5,850円 の 27か 月 分 (平 成 11年 7月 か ら 平 成 13年 9月 ま で 、 1か 月 毎 に 支 給 し た 分 )と 、 3か 月 分 の 正 規 の 交 通 費 と 申 請 額 の 差 額 で あ る 16,670円 の 9か 月 分 (平 成 13年 10月 か ら 平 成 14年 6月 ま で 、 3 か 月 毎 に 支 給 し た 分 )の 合 計 額 が 、 207,960円 と な る 旨 記 載 さ れ て い た 。 一 方 、 X1副 委 員 長 は 、 往 路 は 直 通 バ ス 経 路 、 帰 路 は 申 請 経 路 を 利 用 し た も の と し て 金 額 を 算 出 し て お り (期 間 に つ い て は 会 と 同 様 )、 そ の 額 は 39,810円 で あ っ た 。 (42) X1副 委 員 長 は 、 平 成 14年 9月 分 給 与 の 懲 戒 処 分 に よ る 減 額 分 - 24 - が 1,316円 で あ っ た こ と か ら 、 同 日 、 Y15総 務 管 理 課 長 に そ の 理 由 を 質 問 し た 。 こ れ に 対 し て 同 課 長 は 、 「 聞 い て い る の は 、 100 分 の 2 に 当 た る 7,871 円 を 6 か 月 に わ た っ て 分 割 し て 減 給 す る と いうことだ」などと述べた。 ま た 、X1副 委 員 長 は 、平 成 14年 9月 20日 、Y11事 務 部 長 に 対 し て 上記と同様の質問をした。これに対して同事務部長は、確かに Y2常 務 は 通 知 を 読 む 際 に 、 100分 の 2、 つ ま り 7千 い く ら か を 6か 月 間 に わ た っ て 減 給 す る と 言 っ た が 、 そ れ は 間 違 い で 、 100分 の 2、 つ ま り 7千 い く ら か が 全 体 の ト ー タ ル の 額 で 、 そ れ を 6分 の 1 づつ分割することだ、これは労働基準法で一日分の賃金の半分 以上をカットしてはならないという規定があることによる、な どと述べた。 な お 、 平 成 14年 10月 か ら 平 成 15年 2月 ま で の X1副 委 員 長 の 給 与 の 懲 戒 処 分 に よ る 減 額 分 は 、 い ず れ も 1,311円 で あ っ た 。 (43) 平 成 14年 9月 26日 に 開 催 さ れ た 伊 勢 原 病 院 の 病 院 運 営 会 議 に お い て 、 Y11事 務 部 長 は 、 X1副 委 員 長 の 交 通 費 不 正 受 給 問 題 に つ いて報告をした。このことに関し、各職場長に配布された「第 412回 病 院 運 営 会 議 確 認 事 項 」 と 題 す る 文 書 に は 、 「 2.報 告 事 項 (3)労 組 問 題 に つ い て Y11事 務 部 長 よ り 詳 細 に 説 明 が あ っ た 。 … …神厚労支部長の交通費不正受給が発覚しました。処分通告、 返還要請に応じない。再度話し合いますが、法的手段も辞さな い。」などと記載されていた。 そ の 後 、返 還 金 の 額 に つ い て 、会 と X1副 委 員 長 又 は 組 合 と の 間 で話合いが行われたことはなかった。 な お 、伊 勢 原 病 院 の 病 院 運 営 会 議 は 、各 部 署 間 の 意 識 統 一 を 図 り、基本的な事業運営事項の協議を通じ、業務の能率的運営と 円 滑 な 事 業 の 展 開 を 図 る こ と を 目 的 と し 、 原 則 と し て 毎 月 1回 開 催されており、その構成員は、病院長、事務部長、看護部長、 各 診 療 部 長 、 各 科 (局 、 課 、 室 、 師 )長 な ど で あ っ た 。 ま た 、 同 会議の内容については、各職場長が職員に説明するほか、同会 議の内容を記載した「病院運営会議確認事項」が各職場長の席 に備え付けられ、職員がそれを確認することができた。 (44) 組 合 は 、 「 X1組 合 員 へ の 懲 戒 処 分 撤 回 に つ い て (再 申 し 入 れ )」 と 題 す る 神 厚 労 発 第 4号 平 成 14年 10月 10日 付 け 文 書 (以 下 「 10月 10日 付 け 申 入 書 」 と い う 。 )を 会 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 ① X1 副 委 員 長 が 同 年 9月 10日 に 返 還 金 の 額 を 言 い 渡 さ れ た 際 、 9月 3日 付け申入書の趣旨を説明し、帰りは申請経路を使っているのだ からその額は返還金の計算に入らないのかと質問したことに対 し 、Y21事 務 次 長 ら か ら 納 得 で き る 説 明 が な か っ た 、② 処 分 は「 充 分な弁明の機会が与えられる」という就業規則の条文に違背し - 25 - たものであり、また、返還金の根拠を示さず、本人に検討の余 地 も 与 え ず に 懲 戒 に す る こ と は 許 さ れ る も の で は な い 、 ③ 9月 給 与 の 減 給 額 が 同 年 8 月 23 日 に Y2 常 務 か ら 言 い 渡 さ れ た 減 給 額 か ら 変 更 さ れ て お り 、 そ の 理 由 が Y11事 務 部 長 の 説 明 の と お り 労 働 基 準 法 第 91条 に よ る 制 限 に よ る も の で あ る と し て も 、 同 法 の 規 定も調べずに処分を通知したいい加減さが露呈したことになり、 ま た 、 何 故 千 円 ほ ど の 額 を 6か 月 の 長 期 に わ た り 減 給 す る の か 説 明 が つ か ず 、 と も か く も 「 6か 月 の 減 給 」 と い う 重 い 処 分 の 事 実 を作ることを意図したものとしか考えられない、④返還金の額 は Y11事 務 部 長 か ら 同 年 7月 3日 の 時 点 で 「 2年 さ か の ぼ る 」 、 同 年 8月 21日 の 時 点 で は「 12~ 13万 円 く ら い だ 」と 言 わ れ て い た が 、 対 象 期 間 が 1年 増 え 、 返 還 金 額 は 倍 近 く に な り 、 ま た 、 金 額 の 計 算根拠も渡してもらえず、処分の内容自体もそれを伝える管理 職によってころころ変わっている、⑤これらのことからすると、 X1副 委 員 長 が 本 件 訴 訟 の 証 人 と し て 横 浜 地 方 裁 判 所 で 証 言 し た ことの報復として交通費の「不正取得」を持ち出したものであ り、即刻撤回することを再度申し入れる、などというものであ った。 ま た 、 組 合 は 、 「 緊 急 団 交 の 申 し 入 れ 」 と 題 す る 平 成 14年 10 月 10日 付 け 文 書 を 会 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 9月 3日 付 け 申 入 書 及 び 10月 10日 付 け 申 入 書 に よ り 抗 議 及 び 申 入 れ を 行 っ た に も か か わ ら ず X1 副 委 員 長 に 対 す る 不 当 な 懲 戒 が 9 月 分 給 与 で 行 わ れていることから緊急に団体交渉を申し入れる、社内預金の利 率及び三六協定をめぐる団体交渉のように引き延ばすことなく 速やかに日程の調整をお願いする、などというものであった。 こ れ ら に 対 し て 会 は 、 「 神 厚 労 発 第 4号 (平 成 14年 10月 10日 付 ) へ の 回 答 」と 題 す る 平 成 14年 10月 18日 付 け 文 書 で 、「 こ の 様 な 、 懲戒処分は、団体交渉事項としては、なじまないと思っており ます。」などと回答した。 (45) 平 成 14 年 10 月 24 日 に 開 催 さ れ た 伊 勢 原 病 院 の 病 院 運 営 会 議 に お い て 、 Y11事 務 部 長 は 、 X1副 委 員 長 の 交 通 費 不 正 受 給 問 題 に つ い て 報 告 を し た 。こ の こ と に 関 し 、各 職 場 長 に 配 布 さ れ た「 第 413回 病 院 運 営 会 議 確 認 事 項 」 と 題 す る 文 書 に は 、 「 2.報 告 事 項 (3)労 組 問 題 に つ い て Y11事 務 部 長 よ り 詳 細 に 説 明 が あ っ た 。 神 厚 労 支 部 長 X1氏 の 交 通 費 不 正 受 給 問 題 に つ き 、 神 厚 労 か ら 処 分は不当であるとの抗議文が届きました。往路は直通ルート、 復路時々平塚経由で帰宅しているとのことですが、その平塚経 由で交通費申請をしておりました。本人はそれを認め経路の申 請をし直しています。本人に返金を求めていますが応じません。 今後訴訟を起こす予定です。」と記載されていた。 - 26 - (46) 組 合 は 、「 病 院 運 営 会 議 で の「 神 厚 労 支 部 長 の 交 通 費 不 正 受 給が発覚…」なる発表の不当労働行為についての抗議」と題す る 平 成 14年 11月 12日 付 け 文 書 (以 下 「 11月 12日 付 け 抗 議 文 書 」 と い う 。 )を 会 に 送 付 し た 。 そ の 内 容 は 、 「 第 412回 病 院 運 営 会 議 確 認 事 項 」 の 「 (3)労 組 問 題 に つ い て 」 の 記 述 を 受 け 職 場 長 な ど が 「 神 厚 労 の X1支 部 長 が 交 通 費 の 不 正 受 給 を し て い た こ と が 発 覚 し た 。 返 却 し な い の で X1支 部 長 を 訴 え る ら し い 」 な ど と 職 員 の 間 に 振 り ま き 始 め た 、 組 合 の 調 査 の 結 果 、 ① X1副 委 員 長 は 交 通費支給内規に則り直近の停留所から申請してきた、②直行バ ス経路での通勤は始業前の準備のためであり、退勤時は申請経 路を利用しており不正の意思は全くない、③自家用車通勤の職 員には公共交通機関を使ったとみなして定期代に換算した交通 費を支給するというルーズな運用が行われている、④総じて、 行きと帰りとが別ルートになっても、それは業務の事情、所要 時間、バスの時刻表の間合いなどからそうしている合理性・常 識の範囲であることなどの反論を既に行ってきており、むしろ 早出をすることによって病院に大きな貢献をし、早出手当の請 求の権利があるにもかかわらず請求してこなかったことを考え れば、懲戒は極めて不当であることが明らかである、などとい うものであった。 (47) 会 は 、平 成 14年 11月 21日 、X1副 委 員 長 を 被 告 と し 、交 通 費 の 返 還 を 求 め て 、 平 塚 簡 易 裁 判 所 に 訴 訟 (以 下 「 交 通 費 返 還 請 求 訴 訟 」 と い う 。 )を 提 起 し た 。 そ の 後 、 当 該 訴 訟 は 、 横 浜 地 方 裁 判 所小田原支部に移送され、本件結審日現在、同支部に係属中で ある。 4 本件救済申立て 組 合 は 、 平 成 14年 12月 6日 、 会 を 被 申 立 人 と し て 、 当 委 員 会 に 不 当労働行為の救済を申し立てた。請求する救済内容は、次のとお りである。 (1) 被 申 立 人 は 、申 立 人 と の 社 内 預 金 利 子 の 改 訂 問 題 及 び 残 業 協 定締結問題について誠実に団体交渉をしなければならない。 (2) 被 申 立 人 は 、管 理 職 ら を 使 っ て 、社 内 預 金 協 定 ・ 残 業 協 定 等 締結のために必要な労働基準法上の過半数代表者を伊勢原第二 組合等から出させるために非組合員に対し、同組合に協定締結 の委任をするように働きかける行為をさせて、申立人の組合運 営に介入してはならない。 (3) 被 申 立 人 は 、 申 立 人 の 役 員 X1に 対 す る 減 給 処 分 (以 下 「 本 件 処 分 」 と い う 。 )を 取 り 消 さ な け れ ば な ら な い 。 (4) 被 申 立 人 は 、 陳 謝 文 を 掲 示 し な け れ ば な ら な い 。 第2 判断及び法律上の根拠 - 27 - 1 当事者の主張 (1) 申 立 人 の 主 張 ア 団体交渉等について 厚生預金の利率の改定問題及び残業協定に関する被申立人 の 対 応 は 、一 旦 は 申 立 人 と 交 渉 を 詰 め て 協 定 化 し て い く こ と を 約 束 し な が ら 、突 如 理 由 も な く こ れ を 反 故 に し て 、両 第 二 組 合 が労働基準法上の過半数組合になったとしてこれらの組合と 協 定 を 結 び 、申 立 人 と は 実 質 的 な 交 渉 を 何 ら し な か っ た も の で あり、明らかに不誠実団交である。 ま た 、被 申 立 人 は 、管 理 者 ら を 使 っ て 両 第 二 組 合 に 協 定 締 結 権 を 委 任 す る よ う 非 組 合 員 に 働 き か け 、そ の 署 名 を も っ て 過 半 数組合になったと称して両第二組合の執行委員長と協定を締 結 し た 。こ れ は 労 働 基 準 法 が 予 定 し て い る 過 半 数 代 表 者 の 選 任 方 法 と は 到 底 言 え な い も の で あ り 、被 申 立 人 は 、こ の よ う な 不 公 正 な 手 段 で 申 立 人 と の 団 体 交 渉 を 拒 否 し 、申 立 人 の 協 定 締 結 権 を 奪 い 、こ れ を 無 力 化 し 、も っ て 申 立 人 の 運 営 に 支 配 介 入 し たのである。 イ 本件処分について X1副 委 員 長 に 対 す る 本 件 処 分 は 、就 業 規 則 に 規 定 す る 懲 戒 事 由 に 該 当 せ ず 、ま た 、そ の 手 続 に お い て も 同 規 則 に 規 定 す る「 十 分 な 弁 明 の 機 会 」を 与 え ら れ て お ら ず 違 法 で あ る 。こ の 処 分 は 、 横 浜 地 方 裁 判 所 に お け る 本 件 訴 訟 に お い て 、 同 副 委 員 長 が Y2 常務の過去の診療報酬の不正請求及び不当労働行為について 具体的に証言したことに対する報復行為として行われたもの で あ り 、労 働 組 合 法 第 7条 第 1号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あ る 。 (2) 被 申 立 人 の 主 張 ア 団体交渉等について 被申立人は厚生預金の利率の改定問題及び残業協定に関し て 5回 の 団 体 交 渉 を 行 っ て お り 、 平 成 14年 4月 か ら 同 年 7月 ま で 間 隔 が あ い た の は 、申 立 人 が 他 の 組 合 と の 調 整 の 時 間 が 欲 し い と の こ と だ っ た か ら で あ る 。団 体 交 渉 に お い て は 、利 率 の 下 方 改 定 に 反 対 す る 申 立 人 の 態 度 は 変 わ ら ず 、一 方 、被 申 立 人 も 利 率を下げても市中の預貯金よりは有利な制度を維持してほし い と い う 職 員 の 声 が 多 い こ と か ら 、や む を 得 ず 利 率 を 下 げ た い と の 意 向 で あ り 、交 渉 は い ず れ も 決 裂 は し た が 、被 申 立 人 は 誠 実に団体交渉したものである。 被 申 立 人 と 合 意 し た 両 第 二 組 合 は 、多 数 組 合 で あ っ た が 、い ず れ も 過 半 数 に 達 せ ず 、申 立 人 が 反 対 で あ る こ と は 明 確 に な っ て い た か ら 、非 組 合 員 の 賛 同 を 得 る 必 要 が あ っ た 。そ こ で 、こ れ ら の 組 合 の 自 発 的 意 思 に よ り 賛 同 者 を 非 組 合 員 か ら 募 り 、そ - 28 - の 委 員 長 が 代 表 者 と な っ て 協 定 を 締 結 し た も の で あ り 、決 し て 被申立人が申立人を排除したり差別扱いしたわけではない。 イ 本件処分について X1副 委 員 長 の 行 為 は 、実 際 の 交 通 費 よ り も 多 額 の 交 通 費 を 不 正 に 請 求 し 、そ の 差 額 を 取 得 し た も の で 、そ の 期 間 も 証 拠 の あ る 範 囲 で 5年 余 、現 住 所 に 転 居 し た 後 か ら 推 測 す れ ば 9年 余 の 長 期 に わ た り 、本 来 な ら 懲 戒 解 雇 に な っ て も 致 し 方 な い 悪 質 な も の で あ る が 、諸 般 の 事 情 を 考 慮 し て 減 給 に と ど め た も の で あ り 、 返 還 金 の 請 求 も 最 後 の 3年 分 を 払 え ば そ の 余 は 免 除 す る と い う 、 「 優 し い 処 分 」と し た も の で あ っ て 、被 申 立 人 が こ の 処 分 を 撤 回 す る 理 由 は な い 。ま た 、同 副 委 員 長 が 横 浜 地 方 裁 判 所 で 証 人 に 立 つ た こ と と は 無 関 係 で あ り 、証 人 に 立 つ 立 た な い に 関 係 な く不正は許されるものではない。 2 当委員会の判断 (1) 団 体 交 渉 等 に つ い て 厚生預金の利率の改定問題及び残業協定に関する団体交渉に 係る会の対応について、申立人は不誠実団交であって支配介入 にも該当すると主張し、一方、被申立人は誠実に交渉したもの であって申立人を排除したり差別扱いしたわけではないと主張 するので、以下、労働基準法上の労働者の過半数に関する会の 認識、緊急生活資金制度に係る組合からの提案と会の方針、伊 勢原第二組合と会との関係、協定締結に向けた組合からの団体 交渉申入れに対する会の対応について検討し、不当労働行為性 について判断する。 ア 労働基準法上の労働者の過半数に関する会の認識について 前 記 第 1の 3の (7)な い し (10)で 認 定 し た と お り 、 会 は 、 厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ に 関 し て 平 成 13年 12月 25日 に 組 合 と の 団 体 交 渉 を 行 っ た が 合 意 に 至 ら ず 、交 渉 は 継 続 中 で あ っ た が 、そ の 7日 後 の 平 成 14年 1月 1日 付 け で 「 職 員 貯 蓄 金 管 理 規 程 」 を 改 正 し 、こ の 規 程 に 定 め ら れ て い る 預 金 保 全 委 員 会 の 委 員 の 選 出 方 法 (委 員 の 半 数 は 、 職 員 の 過 半 数 で 組 織 す る 労 働 組 合 の 代 表 者及び職員の過半数を代表する者の推薦を受けた者で構成す る )に 従 い 当 該 委 員 を 伊 勢 原 第 二 組 合 か ら 選 出 し て い る 。ま た 、 同 年 2月 15日 の 団 体 交 渉 に お い て 、 会 側 が 組 合 と 締 結 し て い た 平 成 10年 11月 30日 付 け の 労 働 協 約 に 関 し て 「 従 業 員 組 合 (伊 勢 原 第 二 組 合 )が 過 半 数 に な っ た の で 、 労 働 協 約 は 破 棄 し な く て も 事 実 上 無 効 に な っ て い る の と 同 じ で は な い か 」な ど と 述 べ た こ と に 対 し 、X4書 記 次 長 は 労 働 基 準 法 上 の 労 使 協 定 を 結 ぶ 場 合 の 労 働 者 に は パ ー ト・ア ル バ イ ト も 含 め る こ と を 指 摘 し 、こ れ を 受 け て Y12労 務 担 当 部 長 は 、 「 パ ー ト ま で 含 め る と い う の は - 29 - 知 ら な か っ た 」と 述 べ て い る 。そ の 後 、同 部 長 は 、両 第 二 組 合 と 厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ 等 に つ い て 合 意 し た 平 成 14年 3月 13 日 の 中 央 労 使 懇 談 会 の 席 上 、両 第 二 組 合 と の 協 定 だ け で は 労 働 基準監督署長への届出ができない旨を述べている。 こ れ ら の こ と か ら す る と 、会 は 、厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ を 組 合 に 提 案 し た 時 点 で は 、伊 勢 原 第 二 組 合 が 伊 勢 原 病 院 に お け る労働基準法上の労働者の過半数を占めているとの認識の下、 同 組 合 と 協 定 を 締 結 す れ ば 、厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ に つ い て 労 働 基 準 監 督 署 長 へ の 届 出 は 可 能 で あ っ て 、組 合 と の 協 議 は 不 要であると考えていたことが窺われる。 イ 緊急生活資金制度に係る組合からの提案等について 前 記 1 の 3 の (10) 及 び (11) で 認 定 し た と お り 、 会 は 、 平 成 14 年 3月 13日 の 中 央 労 使 懇 談 会 に お い て 両 第 二 組 合 と 厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ 等 に つ い て 合 意 し た が 、同 月 19日 の 組 合 と の 団 体 交 渉 で は 、組 合 が 両 第 二 組 合 と 協 議 し た い な ど の 意 向 を 示 し た た め 合 意 に は 至 っ て い な い 。そ の 際 に 組 合 が「 第 二 組 合 と 主 張 は 違 う が 、み ん な の 福 利 厚 生 に 関 わ る 問 題 だ か ら 一 致 で き る 要 求 も 多 く あ る と 思 う の で 協 議 を 申 し 入 れ る つ も り 」、「 協 定 の 内 容 を 決 め た り 、 例 え ば 過 半 数 代 表 を 1年 交 替 に し て も い い と 思 っ て い る 」、「 両 方 足 し た と し て も 過 半 数 に な ら な い と す れ ば 、協 定 と い っ て も 問 題 は 残 る が 」な ど と 発 言 し た こ と に 対 し 、 Y2常 務 は 、「 過 半 数 に 足 り な い ま で も 二 つ の 労 組 が 話 合 い で 過 半 数 代 表 者 を 決 め る な ら ば そ れ を 尊 重 し て も ら う し か な い 」な どと述べている。 ま た 、前 記 第 1の 3の (14)及 び (16)で 認 定 し た と お り 、Y2常 務 は 平 成 14年 3月 25日 に X4書 記 次 長 か ら 緊 急 の 貸 出 制 度 の 創 設 を 要 求 さ れ た こ と に 対 し 、「 な る べ く 早 く 目 処 を 付 け た い 」な ど と 述 べ 、 同 日 、 Y12労 務 担 当 部 長 に 緊 急 貸 出 金 制 度 の 案 の 作 成 を 指 示 し 、同 部 長 は 同 月 27日 に 組 合 に 対 し て 作 成 し た 案 を フ ァ ックスで送信している。 さ ら に 、前 記 第 1の 3の (17)及 び (18)で 認 定 し た と お り 、組 合 が 3月 29日 付 け 速 報 に 緊 急 生 活 資 金 案 の 内 容 及 び 妥 協 点 に つ い て 非 組 合 員 に も 意 見 を 求 め る 旨 掲 載 す る と 、Y2常 務 は 、X4書 記 次 長 に 電 話 し て「 報 道 さ れ た こ と で や り に く く な る 、外 に 持 ち 出 す な ら も う や め に し た っ て い い 」な ど と 述 べ 、平 成 14年 4月 4 日 に 行 わ れ た 団 体 交 渉 に お い て も 、事 前 に 公 開 さ れ て し ま う と できることもできなくなる旨を述べている。 こ れ ら の こ と か ら す る と 、会 は 、厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ を 急 い で お り 、両 第 二 組 合 と 合 意 は し た も の の 、こ れ ら の 組 合 員 がいずれも労働基準法上の労働者の過半数に達していなかっ - 30 - た た め 、組 合 か ら の 代 替 措 置 の 要 求 を 受 け 入 れ る こ と と し て 緊 急 生 活 資 金 案 を 急 遽 作 成 し 、こ の 案 の 合 意 を も っ て 厚 生 預 金 の 利率の引下げについても組合と合意しようとしたものと認め ら れ る 。一 方 に お い て Y2常 務 は 、非 組 合 員 に は 組 合 と 伊 勢 原 第 二組合との話合いで合意がなされればその内容を尊重させた い 意 向 で あ っ た と こ ろ 、 組 合 が 3月 29日 付 け 速 報 に お い て 非 組 合 員 の 意 見 を 聴 取 し よ う と し た こ と か ら 、こ れ に 抗 議 す る こ と により、その動きを止めようとしたものと認められる。 ウ 伊勢原第二組合と会との関係について (ア) 前 記 第 1の 3の (15)及 び (18)で 認 定 し た と お り 、平 成 14年 3 月 26日 に 行 わ れ た 組 合 と 伊 勢 原 第 二 組 合 と の 1回 目 の 会 合 に お い て 、伊 勢 原 第 二 組 合 の X5執 行 委 員 は 、個 人 的 意 見 と し て 50万 円 く ら い の 貸 出 制 度 が あ れ ば い い と 述 べ て い る 。 ま た 、 同 年 4月 4日 に 行 わ れ た 会 と 組 合 と の 緊 急 生 活 資 金 案 に 係 る 団 体 交 渉 に お い て は 、会 が 、一 度 こ の 案 で ス タ ー ト さ せ て ほ し い 、問 題 が あ れ ば 運 用 の 中 で 今 後 議 論 し て い き た い 旨 の 提 案 を し た と こ ろ 、組 合 が 伊 勢 原 第 二 組 合 の 幹 部 か ら も 話 が 出 て い る の で 意 見 を 聞 く 必 要 が あ る な ど と 述 べ た た め 、合 意 に は至っていない。 (イ) 前 記 第 1の 3の (19)な い し (21)で 認 定 し た と お り 、 平 成 14 年 4 月 11 日 に 行 わ れ た 組 合 と 伊 勢 原 第 二 組 合 と の 2 回 目 の 会 合 に お い て 、X5執 行 委 員 が「 50万 円 の 貸 出 制 度 は あ く ま で X5 個 人 の 意 見 を 述 べ た も の で す 。X9委 員 長 は 何 も 言 っ て い な い の に … … 悪 い こ と を し て し ま っ た 」、「 従 業 員 組 合 と し て は 3月 に す で に 合 意 し て い る の で 何 の 追 加 要 求 も な い 」 な ど と 述 べ る 一 方 、 伊 勢 原 第 二 組 合 は 4提 案 に つ い て は こ れ か ら 検 討 す る と 述 べ て い る 。 ま た 、 そ の 直 後 の 4月 中 旬 に は Y2常 務 が X8相 模 原 支 部 長 に 電 話 し 、両 第 二 組 合 の 委 員 長 に 問 い 合 わ せたところ何も要求していないと言っており組合だけがグ ズ グ ズ 言 っ て い る 、そ ん な に グ ズ グ ズ 言 う の な ら 緊 急 生 活 資 金 は 無 し に す る 、も う 団 体 交 渉 も や ら な い な ど と 述 べ て い る 。 そ の 後 、 同 年 5月 13日 の 休 日 検 討 委 員 会 に お い て 伊 勢 原 第 二 組 合 は 、上 記 2回 目 の 組 合 と の 会 合 で 4提 案 に つ い て こ れ か ら 検 討 す る と 述 べ て い た に も か か わ ら ず 、「 神 厚 労 と い っ し ょ にやろうとは考えていない」などと述べている。 こ れ ら の こ と か ら す る と 、会 は 組 合 の 要 求 で あ る 緊 急 生 活 資 金案について早急に合意を得ようとしたが組合が伊勢原第二 組 合 と の 協 議 の 必 要 性 を 理 由 に 同 案 に 合 意 せ ず 、今 後 の 協 議 に も 時 間 を 要 す る 見 込 み と な っ た こ と か ら 、Y2常 務 が 伊 勢 原 第 二 組合に対して組合との協議に応じたことに抗議の意を示した - 31 - ことが窺われる。 エ 組合の団体交渉申入れに対する会の対応について 前 記 第 1の 3の (23)、 (27)、 (28)及 び (34)で 認 定 し た と お り 、 組 合 は 、 両 第 二 組 合 と の 話 合 い に 進 展 が な か っ た こ と か ら 6月 10日 付 け 文 書 に よ り 厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ や 緊 急 生 活 資 金 案 の 妥 結 に 向 け て の 団 体 交 渉 を 申 し 入 れ 、 ま た 、 6月 25日 付 け 文 書 に よ り 2週 間 経 過 し て も 団 体 交 渉 の 日 程 調 整 の 連 絡 が な い 、 伊勢原第二組合が非組合員に対して行っている署名集めを職 制が支援しているなどと抗議するとともに再度団体交渉を申 し 入 れ て い る 。さ ら に 、会 が こ れ ら の 抗 議 及 び 申 入 れ に 何 ら 回 答 し な か っ た た め 、X2委 員 長 が 平 成 14年 7月 2日 に フ ァ ッ ク ス に よ り 団 体 交 渉 の 日 程 設 定 に つ い て 督 促 を 行 っ て お り 、こ れ に 対 し て Y12労 務 担 当 部 長 は 同 月 4日 付 け 文 書 で 団 体 交 渉 の 可 能 な 日を組合に示しており、団体交渉が行われたのは申入れから1 か 月 以 上 経 過 し た 同 月 24日 で あ る 。 こ の 間 の 事 情 に つ い て 、 Y12労 務 担 当 部 長 は 、 本 件 審 問 に お い て 、通 常 総 会 、決 算 の 監 査 や 役 員 の あ い さ つ 回 り 等 が あ っ て 日 程 が と れ な か っ た こ と 、組 合 と の 団 体 交 渉 に つ い て は Y2常 務 、 Y12労 務 担 当 部 長 及 び Y9総 務 企 画 部 長 の 三 者 が 出 席 で き る こ と を 基 本 条 件 と し て い た こ と を 理 由 と し て 挙 げ て い る 。し か し な が ら 、前 記 第 1の 3の (18)で 認 定 し た と お り 、厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ 及 び 三 六 協 定 に 係 る 一 連 の 団 体 交 渉 の う ち 、 平 成 14年 3 月 22日 及 び 同 年 4月 4日 の 団 体 交 渉 に は Y12労 務 担 当 部 長 が 出 席 し て い な い の で あ る か ら 、 会 は 、 必 ず し も 上 記 の 3名 が 出 席 し なければ組合との団体交渉が行えないものと考えていたとは 認めがたい。 ま た 、 前 記 第 1の 3の (24)、 (27)及 び (34)で 認 定 し た と お り 、 会 は 、 平 成 14年 6月 中 旬 に は 、 両 病 院 の 総 務 課 か ら の 報 告 に よ り 両 第 二 組 合 が 厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ 、三 六 協 定 等 に 関 す る 署 名 活 動 を 行 っ て い る こ と を 把 握 し て い た 上 、 組 合 か ら は 6月 25日 付 け 文 書 で そ の 署 名 活 動 に つ い て の 抗 議 を 受 け て お り 、そ の 後 、 同 年 7月 24日 に 実 施 さ れ た 団 体 交 渉 で は 、 「 第 二 組 合 が 非 組 合 員 か ら 署 名 を 集 め て お り 、合 計 で 過 半 数 に 達 し た と 思 わ れ る 。そ れ で 協 定 を 結 ば せ て も ら う こ と に す る 」と 述 べ て お り 、 こ れ 以 降 、会 が 組 合 か ら の 団 体 交 渉 申 入 れ に 応 じ た 事 実 は 認 め られない。 な お 、 前 記 第 1の 3の (35)で 認 定 し た と お り 、 こ の 平 成 14年 7 月 24日 の 団 体 交 渉 の 直 後 に 伊 勢 原 病 院 長 が 伊 勢 原 第 二 組 合 の 執 行 委 員 長 を 代 表 者 と す る 労 働 者 代 表 と 三 六 協 定 を 、会 が 同 様 の労働者代表と厚生預金の利率等に係る協定を締結しており、 - 32 - ま た 、会 は 、こ の 団 体 交 渉 の 直 前 に 相 模 原 第 二 組 合 の 執 行 委 員 長を代表者とする労働者代表とも厚生預金の利率等に係る協 定を締結している。 こ れ ら の こ と か ら す る と 、会 は 、両 第 二 組 合 が 非 組 合 員 に 対 す る 署 名 活 動 を 始 め た こ と を 知 り 、こ の 署 名 が 集 ま る ま で の 間 、 意図的に組合からの団体交渉申入れに対して日程を回答せず、 組 合 と の 団 体 交 渉 を 引 き 延 ば し 、両 第 二 組 合 が 労 働 基 準 法 上 の 労 働 者 の 過 半 数 に 達 す る 署 名 を 集 め た と 判 断 し た 時 点 で 、組 合 との団体交渉を開催したものと言わざるを得ない。 以 上 の と お り 、厚 生 預 金 の 利 率 の 引 下 げ を 急 い で い た 会 は 、組 合から伊勢原第二組合が労働基準法上の労働者の過半数に達し ていないことを指摘されたことから、やむなく組合からの要求 である緊急生活資金案について検討を始め、この案の合意をも って厚生預金の利率の引下げについても組合と合意しようとし ていたところ、非組合員には組合間の話合いによる合意結果を 尊 重 さ せ た い と の Y2常 務 の 意 向 に 反 し て 、 組 合 が 非 組 合 員 に 緊 急生活資金案について意見を求めようとし、さらには団体交渉 において伊勢原第二組合との協議が必要であるとの意向を示し た こ と か ら 、 同 案 の 合 意 に も 時 間 が か か る と 考 え 、 Y2常 務 が 組 合に対しては緊急生活資金案について機関紙に掲載したことに 抗議し、伊勢原第二組合に対しては組合との協議に応じたこと に抗議する一方、両第二組合が非組合員に対して三六協定等の 締結に係る署名を募り始めたことから、組合との団体交渉を引 き延ばし、両第二組合が労働基準法上の労働者の過半数に達す る署名を集めたと判断した時点で組合との団体交渉を行い、事 実上組合との団体交渉を無意味なものにしようとしたものであ ると言わざるを得ない。 こ の よ う に 、会 の 組 合 に 対 す る 平 成 13年 12月 25日 以 降 の 対 応 に も 不 誠 実 な 点 が 窺 わ れ な い で は な い が 、 平 成 14年 6月 10日 以 降 の 対応は正当な理由のない団体交渉の拒否に該当するものといわ ざるを得ず、しかも、組合の団結権の無視にも等しいものであ り 、 労 働 組 合 法 第 7条 第 2号 及 び 第 3号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あると判断する。 (2) 本 件 処 分 に つ い て 申 立 人 は X1副 委 員 長 に 対 す る 本 件 処 分 は 正 当 な 組 合 活 動 を 理 由とする不利益取扱であると主張し、一方、被申立人は同副委 員長の行為は交通費の不正請求であり、被申立人が本件処分を 撤回する理由はなく、また、同副委員長が横浜地方裁判所で証 人に立ったこととは無関係であると主張するので、以下、労使 間の紛争の状況、同副委員長に対する会の認識、会による通勤 - 33 - 経路に関する調査、本件事情聴取の時期及び病院運営会議にお ける処分の報告の状況について検討し、本件処分の不当労働行 為性について判断するとともに、交通費支給内規に係る会の運 用状況、本件処分の手続等について検討し、本件処分の合理性 について判断する。 ア 不当労働行為性の存否について (ア) 労 使 間 の 紛 争 状 況 と X1副 委 員 長 に 対 す る 会 の 認 識 に つ い て a 前 記 第 1の 1の (2)並 び に 同 2の (1)及 び (3)で 認 定 し た と お り 、 会 と 組 合 は 平 成 7年 頃 か ら チ ェ ッ ク ・ オ フ の 中 止 問 題 や 組 合 が 専 従 者 と し て 採 用 し た X4 書 記 次 長 の 団 体 交 渉 出 席 を 巡 り 対 立 し 、組 合 は 平 成 9年 4月 25日 に 会 に よ る 脱 退 勧 奨 等 が 不 当 労 働 行 為 に 該 当 す る と し て 、当 委 員 会 に「 そ の 1」事 件 を 申 し 立 て 、当 委 員 会 は 平 成 11年 5月 25日 に 救 済 命 令 を 発 し て い る 。そ の 後 、組 合 は こ の 命 令 が 発 せ ら れ て か ら 間 も な い 同 年 7月 21日 に 会 が 婦 長 ら を 通 じ て 脱 退 勧 奨 を 行 っ た こ と 、第 二 組 合 づ く り に 関 与 し た こ と 、組 合 専 従 者 で あ る X4 書 記 次 長 を 誹 謗 中 傷 し た こ と な ど が 不 当 労 働 行 為 に 該 当 す る と し て 、 「 そ の 2」 事 件 を 申 し 立 て 、 こ れ に 併 せ て 3度 に わ た り 審 査 の 実 効 確 保 の 措 置 勧 告 申 立 て を し て お り 、当 委 員 会 は 平 成 12年 11月 28日 に 救 済 命 令 を 発 し て い る 。こ の 間 に お け る 組 合 員 数 の 変 動 を み る と 、「 そ の 1」 事 件 の 審 査 中 で あ っ た 平 成 10 年 8 月 の 時 点 で は 1,008 名 で あ っ た 組 合 員 数 が「 そ の 2」事 件 の 結 審 日 で あ る 平 成 12年 5 月 25日 に は 148名 、 本 件 結 審 時 に は 61名 に ま で 減 少 し て い る。 ま た 、 前 記 第 1の 2の (1)及 び (3)並 び に 同 3の (36)で 認 定 し た と お り 、「 そ の 1」事 件 及 び「 そ の 2」事 件 に つ い て は 、 いずれも会が当委員会の命令を不服として中労委に再審 査 を 申 し 立 て て お り 、 中 労 委 は 、 平 成 14年 7月 31日 、 当 委 員 会 の 命 令 を 一 部 変 更 し た も の の 、組 合 費 返 還 請 求 訴 訟 の 判決文を利用した婦長らの言動や診療報酬不正請求問題 に 関 す る 職 員 説 明 会 に お け る 職 制 の 発 言 な ど は 、脱 退 勧 奨 であり不当労働行為に該当する旨の命令を発している。 さ ら に 、 前 記 第 1の 3の (5)で 認 定 し た と お り 、 組 合 、 X4 書 記 次 長 ら は 、平 成 12年 12月 28日 、会 及 び Y2常 務 を 被 告 と し て 、脱 退 勧 奨 に よ り 喪 失 さ せ ら れ た 組 合 費 相 当 分 な ど の 賠 償 (1億 円 )を 求 め て 横 浜 地 方 裁 判 所 に 本 件 訴 訟 を 提 起 し ており、同訴訟は結審日現在、同裁判所に係属中である。 こ れ ら の こ と か ら す る と 、 会 と 組 合 と は 平 成 7年 頃 か ら - 34 - 対 立 状 態 に あ り 、組 合 は そ の 組 合 員 を 大 幅 に 減 少 さ せ な が ら も 、組 合 員 へ の 脱 退 勧 奨 に 係 る 不 当 労 働 行 為 救 済 の 申 立 て や 審 査 の 実 効 確 保 の 措 置 勧 告 申 立 て を し 、ま た 、本 件 訴 訟 を 提 起 す る な ど し て お り 、両 者 の 対 立 関 係 は こ れ ら を 巡 って急激にその度合いを深めていったことが認められる。 b 前 記 第 1の 3の (2)及 び (6)で 認 定 し た と お り 、 X1副 委 員 長 は 、X2委 員 長 及 び X4書 記 次 長 が 組 合 専 従 者 で あ る と い う 事 情 の 下 、伊 勢 原 病 院 に 勤 務 す る 組 合 員 と し て 伊 勢 原 支 部 長 を 兼 任 し 、病 院 へ の 要 請 行 動 な ど を 行 う ほ か 、厚 木 地 区 労 の 常 任 幹 事 も 務 め て お り 、 平 成 12年 10月 25日 に Y10院 長 及 び Y11事 務 部 長 が X1副 委 員 長 と X6副 支 部 長 に 対 し 、 厚 木 地 区 労 が 伊 勢 原 市 に 提 出 し た 文 書 に「 不 当 労 働 行 為 を 助 長 す る よ う な 研 修 を た だ ち に 止 め る こ と 」と の 記 述 が あ る が 何 が 不 当 労 働 行 為 な の か 、伊 勢 原 市 に 出 向 く 前 に 何 故 言 っ て く れ な い の か 、組 合 員 は こ う い う こ と を す る こ と を 知 っ て い る の か 、こ れ は 組 合 が や っ た こ と か 、な ど と 質 問 し て お り 、 組 合 が 平 成 13年 8月 25日 付 け の 機 関 紙 に 「 イ ン シ デ ン ト レ ポ ー ト 」が 懲 罰 的 労 務 管 理 や 嫌 が ら せ に 用 い ら れ て い る 旨 掲 載 し た こ と に 対 し て も 、同 院 長 及 び 同 事 務 部 長 が X1 副委員長を呼んで事情を聞いている。 こ れ ら の こ と か ら す る と 、 会 は 、X1副 委 員 長 が 伊 勢 原 病 院 に 勤 務 す る 組 合 員 と し て は 最 も 重 要 な 職 責 に あ り 、同 病 院における組合活動については同副委員長が中心的役割 を果たしていると認識していたことが窺われる。 c 前 記 第 1の 3の (2)な い し (4)で 認 定 し た と お り 、 X1副 委 員 長 は 、 平 成 12年 10月 25日 に Y11事 務 部 長 に 対 し て 「 一 人 ひ と り に 話 を 聞 い て 、そ れ で 組 合 を や め ろ な ん て こ と は 言 わ な い で ほ し い 」な ど と 述 べ 、同 月 30日 に X7執 行 委 員 か ら 組 合のことで同事務部長に呼ばれるとの連絡を受けた際に は 、事 務 部 長 室 に 行 き 、同 事 務 部 長 に 対 し て「 個 別 に 呼 び 出 し て 話 を す る の は や め て ほ し い と こ の 間 も 言 っ た 。こ れ は 、 完 全 に 不 当 労 働 行 為 で す よ 」 な ど と 述 べ 、 同 年 11月 1 日 に Y10 院 長 及 び Y11 事 務 部 長 に 組 合 ニ ュ ー ス の 内 容 に つ い て 説 明 を 求 め ら れ た 際 に も 、「 い ま 、や っ て お ら れ る こ と は 組 合 干 渉 で 、不 当 労 働 行 為 で す よ 」な ど と 述 べ て い る 。 ま た 、 前 記 第 1の 3の (22)で 認 定 し た と お り 、X1副 委 員 長 は 、 平 成 14年 5月 21日 に 横 浜 地 方 裁 判 所 に お い て 、 会 が 組 合員に対して脱退勧奨等をした旨を具体的に証言してい る。 上 記 aな い し cを 総 合 す る と 、 平 成 7年 頃 か ら 組 合 と 対 立 状 - 35 - 態 に あ り 、脱 退 勧 奨 に 係 る 不 当 労 働 行 為 救 済 申 立 事 件 等 を 巡 り 組 合 と の 対 立 関 係 を さ ら に 深 め て い た 会 に と っ て は 、伊 勢 原 病 院 に お い て 組 合 活 動 の 中 心 的 役 割 を 果 た し 、 Y10院 長 や Y11事 務 部 長 の 組 合 員 へ の 対 応 や 組 合 ニ ュ ー ス に 係 る 対 応 に つ い て 不 当 労 働 行 為 で あ る と 抗 議 し 、ま た 、本 件 訴 訟 に お い て 会 の 脱 退 勧 奨 等 に つ い て 具 体 的 に 証 言 し た X1副 委 員 長 は 、 好ましからざる存在であったと認められる。 (イ) X1副 委 員 長 の 通 勤 経 路 に 関 す る 調 査 、 本 件 事 情 聴 取 の 状 況等について Y11事 務 部 長 は 、本 件 審 問 に お い て 、平 成 14年 5月 中 旬 頃 に Y15総 務 管 理 課 長 か ら X1副 委 員 長 の 通 勤 経 路 に 疑 義 が あ る 旨 の 報 告 を 受 け 、そ の 場 で 事 実 確 認 の た め の 調 査 を 指 示 し 、同 年 6月 3日 か 4日 に 調 査 結 果 の 報 告 を 受 け た が 若 干 の 不 備 が あ っ た た め 再 度 調 査 を 指 示 し 、同 月 11日 か 12日 の 調 査 報 告 を 受 けて不正が明らかになったため同副委員長に弁明を聞くこ と と し た 、 そ の 後 は 4日 間 の 夏 休 み を 取 っ た り 業 務 が 忙 し か っ た た め に 事 情 聴 取 を す る 機 会 が な く 、ま た 、何 日 に 呼 ぶ と い う こ と は 決 め て い な か っ た が 、同 年 7月 5日 に た ま た ま 同 副 委員長が事務部長室前のコピー機を使用しに来たので本件 事情聴取を行った旨、証言している。 こ の こ と に つ い て 、 平 成 14年 7月 5日 に Y11事 務 部 長 ら が X1 副 委 員 長 に 対 し て 本 件 事 情 聴 取 を 行 っ た こ と は 前 記 第 1の 3 の (29)で 認 定 し た と お り で あ る 。し か し な が ら 、会 が 行 っ た 上 記 調 査 等 に つ い て は 、懲 戒 処 分 の 前 提 と し て 行 っ た と し な が ら 、本 件 審 査 を 通 じ て 、そ の 日 付 は 明 ら か に さ れ て お ら ず 、 報 告 書 等 も 証 拠 と し て 提 出 さ れ て い な い 。 ま た 、 約 1か 月 間 に わ た り 行 っ た 調 査 の 結 果 を 少 な く と も 同 年 6月 12日 の 時 点 で 同 事 務 部 長 が 把 握 し て い た の で あ れ ば 、 そ の 後 3週 間 以 上 も 同 副 委 員 長 に 対 す る 事 情 聴 取 を 行 わ な か っ た こ と は 、極 め て 不 自 然 で あ る 。し か も 、本 件 事 情 聴 取 は 、事 前 の 予 告 も な く 、た ま た ま 同 副 委 員 長 が 事 務 部 長 室 の 前 の コ ピ ー 機 の と こ ろに来たので行われたというものである。 し た が っ て 、 調 査 の 経 過 等 に つ い て の Y11事 務 部 長 の 上 記 証言は必ずしも信用し得ない。 (ウ) 病 院 運 営 会 議 に お け る 報 告 等 に つ い て 前 記 第 1の 3の (43)及 び (45)で 認 定 し た と お り 、 Y11事 務 部 長 は 、 平 成 14年 9月 26日 の 病 院 運 営 会 議 に お い て 、 労 働 組 合 に 関 す る 問 題 と し て「 神 厚 労 支 部 長 の 交 通 費 不 正 受 給 が 発 覚 し ま し た 。処 分 通 告 、返 還 要 請 に 応 じ な い 。再 度 話 し 合 い ま す が 、法 的 手 段 も 辞 さ な い 。」と 報 告 し 、ま た 、同 年 10月 24 - 36 - 日 の 病 院 運 営 会 議 に お い て は 、「 神 厚 労 支 部 長 X1氏 の 交 通 費 不 正 受 給 問 題 に つ き 、神 厚 労 か ら 処 分 は 不 当 で あ る と の 抗 議 文 が 届 き ま し た 。… … 。本 人 に 返 金 を 求 め て い ま す が 応 じ ま せん。今後訴訟を起こす予定です。」と報告している。 こ れ ら の 2回 の 病 院 運 営 会 議 に お け る 報 告 に つ い て 、Y11事 務 部 長 は 、本 件 審 問 に お い て 、平 成 14年 7月 5日 の 本 件 事 情 聴 取 時 に は 一 個 人 の 問 題 と し て 対 応 し て い た が 、 同 年 8月 23日 の 処 分 言 渡 し 時 に X1副 委 員 長 が 組 合 問 題 だ と 言 い 、組 合 か ら 本 所 に 抗 議 の 文 書 も 入 っ た こ と か ら 、労 働 組 合 と の 問 題 と な っ た の で「 神 厚 労 支 部 長 」と い う 言 い 方 を し た 旨 、証 言 し て いる。 確 か に 、 平 成 14年 8月 23日 の 本 件 処 分 の 言 渡 し 時 に X1副 委 員 長 が「 組 合 差 別 だ と 思 い ま す 。」と 述 べ 、組 合 も 同 年 9月 3 日 付 け 文 書 で 本 件 処 分 の 撤 回 を 申 し 入 れ て い る こ と は 、前 記 第 1の 3の (38)及 び (39)で 認 定 し た と お り で あ る 。 し か し な が ら 、前 記 第 1の 3の (43)、(44)、(46)及 び (47)で 認 定 し た と お り 、平 成 14年 9月 26日 の 病 院 運 営 会 議 で Y11事 務 部 長 が「 再 度 話 し 合 い ま す が 」と の 報 告 を し た に も か か わ ら ず 、会 は 組 合 が 当 該 処 分 の 撤 回 を 申 し 入 れ た 10月 10日 付 け 申 入 書 及 び「 緊 急 団 交 の 申 入 れ 」と 題 す る 同 日 付 け 文 書 に よ る 団 体 交 渉 の 申 入 れ に 対 し 、団 体 交 渉 事 項 と し て な じ ま な い 旨 の 回 答 を し て い る こ と 、ま た 、会 が X1副 委 員 長 個 人 と の 話 合 い を 行 っ た 事 実 も 認 め ら れ な い こ と 、さ ら に は 、会 が 組 合 か ら の 11月 12日 付 抗 議 文 書 に も 応 答 す る こ と な く 、同 月 21日 に 交 通 費 返 還 請 求 訴 訟 を 提 起 し た こ と か ら す る と 、 同 年 9月 26 日 及 び 同 年 10月 24日 の 病 院 運 営 会 議 に お け る Y11事 務 部 長 の 上 記 報 告 は 、組 合 の 信 用 を 失 墜 さ せ よ う と す る 意 図 の 下 、殊 更に行われたものと疑わざるを得ない。 以 上 、 (ア )な い し (ウ )を 総 合 す る と 、 平 成 7年 頃 か ら 組 合 と 対 立 状 態 に あ り 、脱 退 勧 奨 に 係 る 不 当 労 働 行 為 救 済 申 立 事 件 等 を 巡 り 対 立 関 係 の 度 合 い が 深 ま っ て い く な か 、会 が 、伊 勢 原 病 院 に お い て 組 合 活 動 の 中 心 的 役 割 を 担 い 、院 長 ら の 言 動 が 不 当 労 働 行 為 で あ る な ど と 抗 議 を 行 い 、 ま た 、 1億 円 の 損 害 賠 償 を 求める本件訴訟で会による脱退勧奨の状況等について具体的 に 証 言 し た X1副 委 員 長 を 好 ま し か ら ざ る 存 在 と し て 認 識 し て い た と こ ろ 、同 副 委 員 長 が 申 請 経 路 と 異 な る 経 路 で 通 勤 し て い た こ と を 知 り 、こ れ を 懲 戒 処 分 の 対 象 と す る こ と に よ り 組 合 に 打 撃 を 与 え よ う と 企 図 し て 、本 件 処 分 を 行 っ た も の と 推 認 せ ざ るを得ない。 イ 合理性の存否について - 37 - (ア) a 交通費支給内規の改正経緯、運用等について 前 記 第 1の 3の (29)の エ 及 び オ で 認 定 し た と お り 、 平 成 13 年 10月 1日 の 改 正 前 の 交 通 費 支 給 内 規 に は 、 交 通 費 補 助 の 基 準 額 に つ い て 「 交 通 機 関 の 自 宅 に 最 も 近 い 乗 車 駅 (停 留 所 )よ り 、事 務 所 に 至 る 降 車 駅 (停 留 所 )ま で の 1か 月 通 勤 定 期乗車券の額」と記載され、また、改正後の同内規には、 「 支 給 対 象 と な る 交 通 機 関 の 自 宅 に 最 も 近 い 乗 車 駅 (停 留 所 )よ り 、最 短 で 勤 務 地 に 至 る 降 車 駅 (停 留 所 )ま で の 、3か 月の通勤定期乗車券の額」と記載されている。 b 前 記 第 1の 3の (29)の ア 及 び ウ で 認 定 し た と お り 、 X1副 委 員 長 は 、 現 住 所 に 転 居 し た 平 成 5年 以 降 、 平 成 14年 7月 9日 付 け で 直 通 バ ス 経 路 に よ る 申 請 書 を 提 出 す る ま で の 間 、平 成 13年 10月 1日 の 交 通 費 支 給 内 規 改 正 の 前 後 を 通 じ て 、 自 宅から直近の小向停留所から平塚駅を経由する経路で交 通 費 支 給 申 請 を し て い る 。な お 、バ ス の 3か 月 定 期 券 代 は 、 従 前 の 申 請 経 路 に よ る と 70,540円 、変 更 後 の 直 通 バ ス 経 路 に よ る と 53,870円 で あ る 。 c 前 記 第 1の 3の (29)の ウ 、 エ 及 び オ で 認 定 し た と お り 、 本 件 処 分 の 以 前 に 、交 通 費 の 不 正 受 給 を 理 由 に 処 分 さ れ た 者 は な く 、X1副 委 員 長 の 交 通 費 支 給 申 請 に つ い て も 問 題 と さ れ た こ と は な い 。ま た 、過 去 に お い て 、会 が 従 業 員 に 対 し 、 交通費支給内規に則った適正な通勤経路についての説明 を 行 っ た 事 実 も 窺 わ れ な い 。 な お 、 平 成 13年 10月 1日 の 改 正時、 「 最 短 」の 文 言 が 追 加 さ れ た こ と に つ い て は 、組 合 、 X1副 委 員 長 と も 知 ら さ れ て い な い 。 以 上 の こ と か ら す る と 、確 か に 、前 記 第 1の 3の (29)で 認 定 し た と お り 、X1副 委 員 長 が 直 通 バ ス 経 路 を 利 用 し て お り 、そ のことによって交通費の差額が生じていた事実は認められ る が 、同 副 委 員 長 の 交 通 費 支 給 申 請 自 体 が 交 通 費 支 給 内 規 に 違 反 し て い る と ま で は 認 め ら れ な い 。ま た 、同 副 委 員 長 が 交 通費の差額を不正に領得する意思をもって当該交通費支給 申請書を提出していたと認めるに足りる疎明はない。 (イ) 本 件 処 分 の 手 続 等 に つ い て a 前 記 第 1 の 3 の (29) で 認 定 し た と お り 、 Y11事 務 部 長 及 び Y15総 務 管 理 課 長 は 平 成 14年 7月 5日 に 予 告 な し に X1副 委 員 長 に 対 し て 本 件 事 情 聴 取 を 行 っ て お り 、そ の 際 に 懲 戒 処 分 の前提となる弁明の機会であることは一切述べられてお ら ず 、そ の 聴 取 内 容 も 通 勤 経 路 の 確 認 と 返 還 金 額 の 話 が 主 たるものである。 こ れ ら の こ と か ら 、本 件 事 情 聴 取 は 会 の 就 業 規 則 に 規 定 - 38 - す る 弁 明 の 機 会 と し て 行 わ れ た も の と は 認 め が た く 、ま た 、 X1 副 委 員 長 に も そ の 認 識 は な か っ た も の と 言 わ ざ る を 得 ない。 b 前 記 第 1の 3の (37)及 び (38)で 認 定 し た と お り 、平 成 14年 8 月 21 日 に 本 所 に お い て X1 副 委 員 長 に 対 す る 処 分 と 返 還 金 の 額 に つ い て の 協 議 が 行 わ れ て お り 、同 日 、Y2常 務 か ら 電 話 で 連 絡 を 受 け た Y11事 務 部 長 は 、X1副 委 員 長 に 対 し て「 交 通 費 の こ と だ け ど 、 返 金 に つ い て 12、 3万 ぐ ら い だ と 思 う が 、役 員 が 来 る 。懲 戒 だ 」、「 譴 責 処 分 と 減 給 処 分 」、「 減 給 1、 2か 月 だ 」 な ど と 述 べ て い る 。 ま た 、 同 月 23日 に は 、 Y2常 務 が X1副 委 員 長 に 対 し て「 通 達 書 」を 読 み 上 げ て お り 、 その際に同副委員長が聞いた処分内容は、譴責及び減給 (本 給 に 調 整 手 当 を 加 え た 額 の 100分 の 2で あ る 7,871円 を 6 か 月 間 減 給 す る と い う も の )で あ る 。 こ の こ と に つ い て 、会 は 本 件 審 査 に お い て 本 件 処 分 に 係 る 通 達 書 を 書 証 (乙 第 14号 証 )と し て 提 出 し た が 、そ こ に 記 載された処分内容は減給のみであって譴責については記 載 さ れ て お ら ず 、ま た 、処 分 の 日 付 が 通 達 日 と は 異 な る 平 成 14年 9月 1日 と な っ て い る こ と か ら す る と 、当 該 通 達 書 が X1 副 委 員 長 に 処 分 を 通 告 し た 際 に 読 み 上 げ ら れ た も の で はないとの疑念がある。 c 前 記 第 1 の 3 の (41) で 認 定 し た と お り 、 Y21事 務 次 長 及 び Y15総 務 管 理 課 長 は 、平 成 14年 9月 10日 に X1副 委 員 長 に 対 し 、 返 還 金 額 に 関 す る 同 意 書 へ の 押 印 を 求 め る と と も に 、返 還 金 は 3年 間 遡 る こ と 、金 額 は 207,960円 で あ る こ と な ど を 述 べ て お り 、そ の 際 に 同 副 委 員 長 が 求 め た に も か か わ ら ず 同 意書のコピーを交付していない。 ま た 、 前 記 第 1の 3の (42)で 認 定 し た と お り 、X1副 委 員 長 は 、平 成 14年 9月 分 給 与 の 懲 戒 処 分 に よ る 減 額 分 が 1,316円 で あ っ た こ と か ら 、そ の 理 由 を Y15総 務 管 理 課 長 及 び Y11事 務 部 長 に 質 問 し た と こ ろ 、両 名 は い ず れ も 7,871円 を 6か 月 に 分 割 す る 趣 旨 で あ る と 回 答 し て お り 、 ま た 、 Y11事 務 部 長 は 、そ の 際 に 、労 働 基 準 法 で 一 日 分 の 賃 金 の 半 分 以 上 を カットしてはならないという規定があることによると述 べている。 以 上 の と お り 、減 給 額 、返 還 金 額 の い ず れ に つ い て も 当 初 X1 副 委 員 長 が 説 明 を 受 け た 内 容 と は 異 な っ て い る こ と が認められる。 以 上 、(ア)及 び (イ)を 総 合 す る と 、確 か に 、X1副 委 員 長 が 申 請 経 路 と 異 な る 通 勤 方 法 を 採 る こ と に よ り 、交 通 費 の 差 額 が 生 じ - 39 - た 事 実 は 認 め ら れ る が 、同 副 委 員 長 の 交 通 費 支 給 申 請 自 体 は 交 通 費 支 給 内 規 に 違 反 し て い な い 上 、同 副 委 員 長 が 交 通 費 の 差 額 を不正に領得する意思をもって当該交通費支給申請書を提出 し て い た と の 疎 明 も な い 。ま た 、仮 に 、交 通 費 の 差 額 を 得 て い た こ と が 懲 戒 処 分 事 由 に 該 当 す る 余 地 が あ る と し て も 、本 件 処 分 に 関 し て は 、就 業 規 則 に 定 め ら れ た 弁 明 の 機 会 を 与 え た も の と は 言 え ず 、か つ 、会 の 企 業 秩 序 の 具 体 的 な 紊 乱 も 認 め ら れ な い の で あ っ て 、懲 戒 処 分 の 手 続 的 、実 体 的 要 件 を 欠 く も の と の 疑 い が 強 い 。し か も 、あ ま り に 杜 撰 な 処 分 内 容 の 変 更 過 程 か ら し て 、処 分 そ の も の が 真 摯 に 検 討 さ れ た も の で あ る か 否 か 疑 わ しい。よって、本件処分に合理性を認めることはできない。 ウ 不当労働行為の成否 前 記 ア 及 び イ で 見 た よ う に 、 本 件 処 分 に つ い て は 、 平 成 7年 頃 か ら 組 合 と 対 立 状 態 に あ り 、不 当 労 働 行 為 救 済 申 立 事 件 等 を 巡 り 組 合 と の 対 立 を 深 め て い た 会 が 、伊 勢 原 支 部 に お い て 組 合 活 動 上 重 要 な 役 割 を 果 た し 、職 制 の 言 動 が 不 当 労 働 行 為 で あ る な ど と 抗 議 を し 、本 件 訴 訟 に お い て 会 の 脱 退 勧 奨 等 に つ い て 具 体的に証言するなど会にとって好ましからざる存在であった X1副 委 員 長 の 交 通 費 申 請 経 路 と 実 際 の 通 勤 経 路 が 異 な っ て い た こ と を 奇 貨 と し て 、同 副 委 員 長 を 殊 更 に 懲 戒 処 分 の 対 象 と し た も の で あ る と 推 認 さ れ る と こ ろ 、こ の 懲 戒 処 分 の 合 理 性 は 認 め ら れ ず 、し た が っ て 、労 働 組 合 法 第 7条 第 1号 に 該 当 す る 不 当 労働行為であると判断する。 3 救済の方法について 以上のとおり、厚生預金の利率の改定問題等に関する団体交渉 に係る会の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否であり、さら には、組合に対する支配介入にも該当すると認められるので、主 文 第 1項 及 び 第 2項 の と お り 命 ず る こ と と す る 。 ま た 、 不 当 労 働 行 為 と 認 め ら れ る X1副 委 員 長 に 対 す る 本 件 処 分 に つ い て は 、 こ れ を な か っ た も の と し て 取 り 扱 う こ と が 相 当 で あ る の で 、主 文 第 3項 の とおり命ずることとする。さらに、今後同様の行為が繰り返され る 虞 れ な し と し な い の で 、 主 文 第 4項 の と お り 命 ず る こ と と す る 。 よ っ て 、 労 働 組 合 法 第 27条 及 び 労 働 委 員 会 規 則 第 43条 の 規 定 を 適 用 し、主文のとおり命令する。 平 成 16年 5月 20日 神奈川県地方労働委員会 会長 小西國友 ㊞ - 40 -
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