ケナフの茎芯(コア)を活用した商品開発のための試作トライアル 同志社大学 研究開発推進課 奥平有三 1999 年から 2012 年にかけ、パナソニック電工においてケナフ靭皮繊維を使用した建築用ケナ フ繊維ボードを開発、製造、販売を行ったが、並行してケナフコア(芯部)の有効活用商品の試 作開発を実施した。ケナフコアは乾燥重量として靭皮繊維の約 3 倍、重量分率で全体の約 70%を 占め、ケナフコアを活用した商品開発は、資源の有効利用およびケナフ繊維ボードのコスト低減 の観点から重要な課題であった。当時を振り返り、取り組んだ順に試作トライアルの内容を簡単 に記す。ケナフコアは軽量、気孔率が高い、色が白いなどの特徴があり、これらの性能を活かす ことにより様々な商品が考えられる。 (1) パーティクルボード 2000 年、上海近郊の常熟市のパーティクルボード工場を一週間借り切り、ケナフコアを用いた パーティクルボードを試作した。設備はドイツの BISON 社のもので、約 200m2 試作し評価を実施 した。製造面で大きな改修は必要なく、試作したボードは強度面で既存のボードにやや劣るもの の軽量、色が白い、表面平滑性が高いなどの優位点がある。 (2) 断熱ボード パーティクルボードの熱圧プレスによる製造時、圧縮率を低減することによって比重 0.15 から 0.25 程度のボードが得られる。これらのボードは同密度のロックウールボードと同程度の断熱性 を有し、曲げ強度はやや高い。 (3) ケナフ備長炭 ドイツのパールマン社の粉砕機でケナフコアを 1-2mm の粒径にまで粉砕したあと、ブリケット プレスでオガライトを製造した。これを焼くと非常に高密度で硬い炭が得られる。マレーシアの 炭工場の協力を得て試作した。大阪市の工業試験所で燃焼熱量を計測したが、木材粉を用いた従 来品と同程度の熱量であった。ただ着火しやすいという長所がある。これはケナフコアには多く の K(カリウム)成分が含まれていることによる。 (4) 燃料用ペレット ケナフコアを 1-2mm 以下の粒径にまで粉砕したあと、韓国製のペレタイザーでペレットを試作 した(直径 8mm、長さ 10~20mm) 。材料の大きさ、水分含有量によってペレットの製造条件が大き く異なり、最適条件を求めるのに時間がかかった。熱量は通常の木材ペレットとほぼ同等であっ た(16~17MJ/kg) 。 (5) アニマルベッド 燃料用のペレットをそのまま使用した。尿の吸収性能が高く、適度な弾力性が評価され安定供 給が保証されれば牛、馬の牧場用として商品化の可能性が高いと思われた。また、病院用のモル モットのベッド材料を扱っている業者からは非常に適した材料であるとの評価を得た。 (6)セメントボード充填材 セメント系外装材には軽量化のため高価な樹脂製中空球(マイクロスフェア)が充填されてい る。その代替材料として検討した。混和性がよく混入重量比が 5%以下であれば、硬化阻害が起 こることはなかった (7)吸油材料 植物のなかでは、トップクラスの吸油性能がある。機械工場の床やテーブルに落ちた機械油を 吸収する粉末材料や、粉末を袋に封入することによって洋上の油を吸収する吸油マットなどの商 品が想定される。 以上のように、またこれ以外にも様々な有効活用が考えられるが、ケナフ産地と消費地との距 離、供給量などを考慮し、少なくても確実に商品の流れができるところから始めるのが賢明であ ろう。興味のある方はメールでご連絡をいただければ幸いです。メールアドレスは rs-oy6* mail.doshisha.ac.jp です。*を@に変換して利用してください。
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