日本維新の会女性局による社会福祉関係の視察レポート

日本維新の会女性局による社会福祉関係の視察レポート
と
き:平成 25 年 8 月 28 日(水)
視察地:大阪府大阪市及び堺市
視察者:日本維新の会女性局
・三木 圭恵
・上西小百合
・清水 貴之
同
(衆議院近畿比例)
(衆議院近畿比例)
(参議院兵庫選挙区)
行:上西小百合事務所
・山本秘書(東京)
・家城秘書(大阪)
大阪府東京事務所 盛尾課長補佐
大阪市東京事務所 大西係長
行 程:
10:30~12:45
〇大阪市西成区役所
西成区岸里 1-5-20 電話:06-6659-9986
・制度説明及び質疑・意見交換
福祉局生活福祉部保護課より制度の概要・大阪市の実態・支援施策など説明
・申請窓口、あいりん地区周辺等視察
↓
【移動 15 分】
↓
13:00~13:45
〇昼食(大阪市本町)
↓
【移動 15 分】
↓
14:00~15:30
〇大阪府母子福祉センター
大阪市中央区谷町 5-4-13 電話:06-6762-9995
・ひとり親家庭相談について説明
・視察(30分)
現地同行者
大阪府福祉部子ども室家庭支援課
家庭自立支援グループ 浮舟課長補佐
【移動
↓
1時間 20 分】
↓
16:50~18:00
〇大阪府立女性自立支援センター
【集合:大阪府立子どもライフサポートセンター正門】
大阪府立女性自立支援センターは、DV被害からの一時保護機能を有していることから、設置
場所等は完全非公開とされている。
今回の視察では、大阪府立子どもライフサポートセンターで現地同行者である大阪府の担当者
と合流後、府担当者が現地へ案内するなど、タクシードライバー等にも詳細な住所地や電話番号
を教えられない厳重さ。実際には堺市内に設置されているが、堺市であることさえシークレット
であった。
・DV 被害支援相談について説明
・視察
現地同行者
大阪府福祉部子ども室家庭支援課
家庭福祉グループ 中井課長補佐
【移動
19.:30~
○意見交換会
大阪府吹田市内
↓
1 時間半】
↓
はじめに
第一回目となる行政の現場の実態調査地として、我々三名は、福祉施策の分野を選
び、大阪府下にある以下の 3 施設を選択した。
① 大阪市西成区役所
② 大阪府母子福祉センター
③ 大阪府立女性自立支援センター
① の西成区役所は、西成が生活保護者の代名詞で、リストラや傷病等で生活困窮に
陥り、やむなく生活保護を受給する者達が集結する地区と称しても決して過言で
はない現況から、公的扶助の現況を知るため訪問を決めた。
② の母子福祉センターは、近時急増したシングルマザー家庭の実態と、行政の施策
を調査することができそうだったので、社会保障制度の現況を知るため訪問を決
めた。
③ の女性自立支援センターは、元々売春防止法の要保護女子の収容保護施設である
が、昨今は配偶者や恋人等からの DV(domestic violence=近親者からの暴力)
に悩んだ末に逃げ出したいと思う女性の駆け込み寺化しているとの話を側聞し、
また所謂、『ストーカー防止法』の改正があったばかりでもあるので、その実態
を掌握し、社会保障制度の現況を掌握すべく視察地に選んだ。
憲法 25 条は、我々には別け隔てなく「健康で文化的な最低限度の生活」をする権
利があり、国は「すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向
上及び増進に努め」る義務を負う旨を規定する。斯かる「生存権」を確保するため
に、現況を正確に理解し、進めるべきものは、より推進し、改廃すべきところは改
廃し、足りないところは制度を創設していかなくてはならない。
具体的には、未成年者、高齢者、心身などの障がい者で何等かの支援や介助がなく
ては生活がスムーズに送れないとか、経済的困窮者・ホームレスなど、
『弱者』に対
して、生活の支援をして、その質を維持・向上させるためのサービスを社会的に提
供したり、或いはその目的を達成するために、制度や設備を整備する必要性は常々
感じてはいるが、なかなか現場に足を踏み入れるチャンスはなかった。
この度の視察では、障がい者や様々な暴力等により心神耗弱に陥った被害者や一人
親家庭など、社会的・経済的ハンディキャップがあると考えられる国民の生活実態
を認識し、その方々に対して公的な支援を行う制度が、どのように、且つどの程度
機能しているかを認識し、今後の議員活動に反映していくべきかを学びたいと考え
ていた。
なお、
「一人親家庭」には、通称シングルマザーの他に、シングルファーザーも含ま
れ、育児・教育のために父親の就労時間の制約等が生じて職場で不利な立場に追い
やられたり、収入減に繋がっている実例も頻繁に伺うところだが、今回はシングル
マザーの実態調査にとどめ、父子家庭の関係は次回以降に回したいと思う。
大阪市及び大阪市西成区の生活保護行政の調査
説明者…大阪市福祉局
川勝保護課長
川崎生活保護調査担当課長(総務局行政部法務調査課長兼務)
大阪市西成区
藤井保健福祉部長
岸保健福祉課長
【概況説明】
・大阪市の直近の国勢調査(2011 年)による人口は約 267 万人、世帯数は約 125
万軒。同市西成区は人口約 12.2 万名、世帯数約 7.9 万軒である。
・大都市に多く見られるように、大阪市の一世帯平均家族数は 2.14 名と大きくな
く、学生や婚姻前の独居者及び配偶者を亡くした高齢者など独居者の比率が高いこ
とが、平均家族数をおしなべて下げているものと考えられる。
・大阪市には 24 の区があるが、今回訪問した西成区の平均家族数は 1.54 名と異
常なまでに低い。これは現代の世相を反映して、前述の独居者が殊更西成区に結集
したのに加え、この地域の歴史的背景もあり、急なリストラ、疾病などにより生活
困窮に陥った者達が、債権者の追及を逃れるために離婚をしたり、日雇い労働者の
求人の多い「あいりん地区」へ単身出てきたなど、他地域の者が定住していること
が大きいと言われている。
・比率が他の市町村に比べて非常に高いと言われている生活保護受給者は、大阪市
は今年度速報値で約 11.8 万世帯、約 15.1 万人であるから、世帯数は全国 47 都
道府県全体の生活保護世帯の約 7.5%、人員は同じく約 7.0%が大阪市へ集まって
いる計算になる。
・生活保護の動向には「失業率」、「離婚率」、「高齢化率」が大きくかかわると言わ
れているが、大阪市はおしなべて全国平均より遥かに高く、加えて全国最大の日雇
い労働者の街のイメージが定着していることは既述の通りであり、それが大阪市の
保護率が高い要因であり、取り分け西成区へ偏る傾向が従前よりあったことが西成
区の保護率アップに直結していると称しても決して過言ではない。
・あいりん地区の労働者の出身地を調べたところ、大阪市出身者約 30%、その他
の大阪府下の自治体出身者約 15%、他の都道府県出身者は約 55%というデータも
ある。
・あいりん地区の労働者は、大抵の場合生活保護を受けている。
・他の都道府県の申請窓口では、
「うちの町ではどうしようもありませんが、大阪へ
行けば何とかなるかも知れませんよ」と大阪行きを促し、大阪までの片道切符を手
渡して送り出すと言う、笑うに笑えぬ現実もある。まずその困窮者が暮らしていた
自治体(都道府県、市町村)が、初期対応すべきであるのに、それが現実である。
取り分けホームレスの受け入れ施設がない自治体には、その傾向が顕著に見られる。
・生活保護者のウエートが大きい現実は、当然大阪市の財政にも大きな影響を与え
る。
・近時、毎年大阪市では生活保護費が約 3000 億円に達し、その額は市の一般会計
の約 17~18%を占めている。
・その中でも西成区では顕著にその傾向を示している。
・
「バブル崩壊」と言われる昭和から平成への移行期前後から、生活保護申請者数は
高い値で安定していたが、2008 年 9 月のリーマンショック以降急増し、その後も
年々増加傾向にある。
・全国的には、急な失業、離婚、傷病等により生業を失い、預貯金が底をついたも
のが生活保護申請するケースが多く、申請の段階では、まだ所謂「パンと牛乳を買
えるだけのお金はある」人が多いが、西成区を筆頭に、大阪市での申請者の殆どは、
「今日の生活費もない」状態である。
・申請から許可が下りるまで、通常 2 週間を要するが、その期間も待てない状態の
者が大半である。弁当を配布したり、炊き出しをする NPO 法人などのボランティ
アが多くあり、それに頼るのが現実である。
・前掲の諸団体の多くは、大阪市の委託を受け、ボランティアで飲食物、衣類等を
ホームレスを中心にした生活困窮者、生活保護受給者へ配布している。
・大阪市へ到着するなり住民票の「転入手続き」をすると同時に保護申請をする者
が多いので、同一自治体へ三ケ月以上定住することを要件とする「選挙人名簿」登
載者の数と住民の数が合致しないのが恒常化している。
・却下率は約一割で推移しているが、全国の率に比べると極めて低いと思われる。
却下の理由の多くは、保護すべき家族と同居していたり、僅かながらでも蓄えを有
していることが明らかになった場合が多い。
・西成区内には約 1000 床の『無償宿泊施設』があり、前述のように炊き出しや弁
当や衣類の無償配布などをする NPO 法人、ボランティアグループ、シェルターと
称する施設が多い。生活困窮者が集まる要因の一つでもある。
・
『貧困ビジネス』業者が、リーマンショック以降目立つところにまで出没するよう
になった。
(例)ホームレスに生活保護申請をさせ、自分の所有のアパートへ住まわせ、
保護費が支給されると、いち早く家賃を抜く etc.
・就労や結婚、親近者との同居等で生活が改善して保護を辞退したり、他人名義で
乗用車を所有していたのが発覚した等々の理由で保護を取り消された者でも再び保
護を必要とすれば、
「再申請」は可能であり、新規と同様の手続き・調査を経て保護
が開始されることとなる。
・一度生活保護を受け始めた者の受給がストップする例は、殆どが死亡や、
「突然の
失踪」によるケースであり、前掲のように保護の効果が出て、生活が安定した事に
よって保護を辞退する者は一割に満たない。
・大阪市の生活困窮者を対象にした「就労支援」効果は確実に出ていると思われる。
しかし、近時の傾向として、鬱病など精神疾患者や、一度も就労したことのないま
ま出産をし、未婚のままであったり、早期に離婚をした女性など、所謂「ヤンママ」
が非常に多く、効果を発揮していない部分も見られる。
・生活保護を受けている外国籍の者は大阪市全域に約1万名いるが、殆どが高齢者
であり、長年大阪へ居住していた者の例が多い。
・家族数が多くなれば生活保護を受けやすいのが現行制度であり、家族全員が就労
していない実例を目の当たりにすることもしばしばある。
・生活保護費が飲酒やギャンブルに使われないように、生活上必要な「現物給付」
や特定の商店で使えたり、特定の物が購入できるクーポン券の支給も提案されてい
るが、反対が強い。
・長年まじめにコツコツ働いた者がもらう国民年金と生活保護者の自由に使える年
金が同額になるなど、現行では矛盾点もはらんでしまった。
【大阪市の取り組み】
大阪市では、真に生活に困窮し、保護を必要とする方のための生活保護制度が、最
後のセーフティネットとして持続できる制度とするために様々な生活保護制度の抜
本改革を提言している。
平成 24 年 7 月 20 日、大阪市は国に対し、国がまとめた『生活支援戦略』の中間
まとめに対し、
「その内容では現場の負担が増大する一方で、効果がほとんど見込め
ず、抜本改革にはならないと申し入れ、別添の『生活支援戦略』の中間まとめを表
明している。
≪提案の主な柱≫
1. 生活保護制度により保護すべき者の範囲
1. 生活保護費のあり方
1. 生活保護の適正化
要するに、保護費の適正化を図るためには、自らで生活設計のできる
扶助方式として、現行の扶助支給ではなく、一括支給(ワンバスケット
方式)に変更し、併せて医療機関等への受診や介護サービスを受ける際
に自己負担を導入することが効果をあげる、とする立場である。
【受けた要望】
・国が行う生活保護制度の見直しについて、地方自治体の意見が取り入れられる様々
なチャンスを確立して欲しい。
・殊に、平成 24 年 7 月、大阪市が策定した『生活保護制度の抜本的改革にかかる
提案』の具現化を求める。
・失業が生活保護に直結し、生活保護受給者が抱える自立阻害要因が多様化してい
る現状などを直視して対応策を練って欲しい。
・一生懸命働く勤労者と保護者の自由に使えるお金が同額であることなどの矛盾点
を早期に解消すべし。
・ジェネリック薬品の原則使用など支出を抑える方策は多々あるはずなのに、措置
が取られていないことなどの現実掌握し前期改革提言の早期立法化を期待する。
【総論】
福祉国家政策を展開した日本は、
「社会福祉」については、社会保障と公衆衛生の政
策を含んで理解や定義がなされ、社会保障とは、本来は個人的リスクである、老齢・
病気・失業・障害などの生活上の問題について、貧困の予防や生活の安定などのた
め社会的に所得移転を行い、所得や医療を保障し、社会サービスを給付することと
解されてきた。
その基本は、憲法第 25 条に記された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利
(生存権)」であるが、戦後の動乱期に、空襲で家屋や職場を焼かれ、大黒柱を戦場
で亡くした未亡人や戦災孤児救援のために制定された生活保護の制度が、延々60
年以上、殆ど改正されないまま存続しているのは異常でさえある。
自ら進んで生活改善を目指し、辞退を申し出るまでに元の生活を取り戻す者の比率
が余りに低いことも、現況が法の趣旨から若干外れてきたと指摘されても仕方ない
側面を呈していると言えなくはない。
奨学金制度のように、生活改善をする手段の一つとして、貸し付け制度として運用
し、後々給付金の返還義務を課すなども考えなくては、障がい者や疾病者を除き、
延々「貰い続ける」状態を解消できないのではないかと思えてならない。
一人親家庭、取り分け母子家庭の実態と施策の調査
視察及び概要説明を受けた場所
大阪府母子福祉センター(大阪市中央区谷町 5-4-13)
説明者…大阪府福祉部子ども室
中井家庭支援課課長補佐(家庭福祉グループ)
浮舟家庭支援課課長補佐(家庭自立支援グループ)
一般社団法人全国母子寡婦福祉団体協議会
鉄﨑副会長
社会福祉法人大阪府母子寡婦福祉連合会
柴田所長
傘谷副会長
滝本副会長
原事務局長
石川相談員
吉原総合施設長
大阪府立女性自立支援センター
河野施設長
【概況説明】
・昭和 25 年(1950 年)、市町村を単位にした『母子福祉会』が全国に 41 団体
できた内の一つであり、
「わが幸はわが手で」をスローガンに、父親はなくとも自立
できる母親を目指して互いに切磋琢磨する交流の場としてスタートした。
・当時は戦後の動乱期で、戦争未亡人や婚姻外で出産した女性がスポンサーを失っ
たなどで集まる傾向が強かった。
・社会福祉六法の 1 つである『母子及び寡婦福祉法』が高度経済成長期で東京五輪
が開催された年でもある昭和 39(1964)年 7 月 1 日に施行された。同法は、母
子家庭等及び寡婦(子供が成人した後の呼称)の福祉に関する原理を明らかにし、
併せて、母子家庭等及び寡婦に対し、その生活の安定と向上のために必要な措置を
講じて母子家庭等及び寡婦の福祉を図ることを目的としていた。
・それを契機に児童扶養手当(通称;母子手当)制度が確立し、離婚、死別、非婚
など要因は問わず、国から経済的援助が受けられるようにはなったが、決して十分
ではない。
≪現行支給額≫
•児童 1 人につき
全額支給 41,720 円
•一部支給 41,710 円~9,850 円
•児童 2 人目
5,000 円加算
•児童 3 人目
3,000 円加算
•児童 4 人目以降は、3.000 円ずつ加算
・子供が一人で、4 万円少々支給されても十分ではないのに、子供が増えれば増え
る程支給率が低下するのが現状で、裕福な家庭がこども手当を受けても感謝
している様子もないことに憤りを感じる。
・近時、一番多い相談は就労に関することであり、その他の相談も年間約 300 件
ある。夫の暴力、働かない、ギャンブル狂、借金、不倫などで離婚を考えている者
や未婚のままで妊娠或いは出産した者の相談が約半数。母子家庭となった者の生活
相談、育児や就学の相談が約半数となっているが、概ね「経済的相談」である。
・離婚の理由として、以前は配偶者(夫)の前掲した悪事がもとであるケースが殆
どだったが、最近は妻側の借金、異性関係等が原因となるケースが急増している。
また夫が鬱病等精神疾患になり、支えきれないで相談に来るケースが急増している。
平成 20 年の調査結果では
◎シングルマザーになった理由
1 離婚
80%
2 死別
10%
3 未婚のまま出産 10%
◎離婚理由
1 性格の不一致
2 経済的要因
3 異性関係
4 配偶者の DV
5 その他
31.4%
27.5%
14.5%
12.8%
13.8%
・子供を取り巻く環境は大きく変化しているのに、法や制度が時代の趨勢にマッチ
していない。
(例)大半の同級生が放課後塾へ通っているのに、母子家庭の児童、生徒には、
そのような余裕がないので学力低下につながったり、友人もできなかった
り、ついには不登校になる、或いは非行に走るなどのケースも見られる。
真面目に通学しても、進路先に差がでて、成人後の就労先にも差異が生じ
ている。
→塾へ通うことなど、支給側は想定していないから、行政を相手に
このような話をしても聞く耳を持ち合わせていない。
・学資が乏しいと行政に訴えると、判で押したように、
「奨学金制度がある」と言わ
れるが、高額の奨学金を受けるには、成績が芳しくない子が多く、また奨学金は
所詮貸付金なので返還の義務がある。給付型学資制度を希望する。
・不況の波、シワ寄せを一番に受けるのが母子家庭である。
育児の関係で休暇等を取りやすいように、非正規雇用者が多いので不況に
なると最初に時短を告げられ、時給カットされる例も少なくない。
・母子家庭になった母親は、早婚であったり、避妊に関する知識などが未熟で若年
令で出産したり、一度も就労したことがないまま母親になったケースが少なくない
ので、就労スキルが乏しく、単純軽作業にしか就けない者が多い。従って収入も極
めて低いのが現実である
・
「貧困の連鎖」がみられる。現実、母子家庭の 25%以上が、子供の頃、家庭が生
活保護受給家庭であり、その傾向は従前より現在に至るまで変わっていない。
・母子家庭に顕著な傾向として、親戚はもちろん、町内会、同窓会等々外部との接
触が極めて薄く、「孤立した人」であることが多いことが挙げられる。
・現行の児童扶養手当制度では、同一住所地に親、兄弟姉妹など親族が住んでいる
と、生計を全く別にしていても、同一所番地の者の所得(収入)が合算され、支給
がなくなることがある。
・支援を求めてセンターに相談に来所した女性の最年少は 17 歳、最高齢者は 84
歳であり、17 歳の少女は婚姻外出産、84 歳の女性は障がいを持つ長男と二人で暮
らし、経済的不安を抱えている状況だった。
【大阪府の取り組み】
・数年前、大阪市内の繁華街で、子供を 2 人抱えるヤンママが育児放棄して新しい
恋人の元に走り、二人とも餓死したという悲しいニュースがあったが、民生委員を
中心に、各家庭訪問を充実させ、再発防止に努めている。
・毎年、別紙のとおり「母子寡婦福祉連合会事業計画」推進、実践のため財政支援
をはじめ支援している。
・さまざまな就労支援活動を推進している。
【受けた要望】
・児童扶養手当を生活実態に合わせたものに見直しして欲しい。
① 所得制限の収入認定額を緩和し、同居親族の所得要件を廃止すべき。
② 第二子以降の支給額を増額すべし。
③ 現行法では支給は子供が 18 歳で打ち切られるが、進学をする場合
や高校在学中などには 18 歳になった後の年度末まで支給延長をす
べし
・離婚時などに、養育費の話し合いをしていても強制力がないので支払われないケ
ースが増えている現況に鑑み、支払いを義務化する法整備を求める。
・給付型奨学金制度など、学資の助成制度を新設して欲しい。
・高等技能訓練推進給付金を、全就学期間給付されるよう改正すべし。
※看護師、ヘルパーなどの特定の専門学校生 23 年度入学者までは、就学期間
の全期間給付が受けられていたが、24 年春の入学者からは給付金 の額はそ
のままなのに、支給期間が、就学期間の後半 1/2 の期間になった。
ちなみに、給付額は、非課税世帯の場合 141000 円、課税世帯の場合 70500
円である。
・所得税、地方税において、扶養親族のいない生別寡婦にも寡婦控除をし、併せて
未婚の母にも同様の控除策を望む。
【総論】
近時、急激な離婚率の上昇と、社会経験の乏しい内の異性との付き合いで低年齢で未
婚のまま結婚したり、婚姻をしても長続きしないなどの世相を反映し、シングルマザ
ーが急増しているのは誰の目にも明らかであるが、ほぼ全員が、経済的に困窮し、且
つ貧困の連鎖がみられるのは驚きである。
離婚時、元夫から養育費の約束を取り付けながら、離婚理由自体が夫のリストラや借
金による生活苦が元であったが故に、回収が難しい例が殆どである現実を憂いながら
も、女性側も、養育費の支払いがないと元夫と子供を会わせることを拒否するなどの
行動をする傾向が強く、いづれにしても子供の精神的ストレスが心配になるありさま
だ。
また、所得税等の「寡婦控除」について、死別によるシングルマザーの場合、永遠に
控除が受けられるのに、離婚を因とする者は子供が成人した段階で控除が得られない
点、未婚の母親ならば、子供の年齢に関係なく最初から控除が得られないのが現行法
であるが、喫緊に改められる事案であると考える。
母子家庭同様、最近では母親の不倫や育児放棄による離婚も増し、
「父子家庭」も多い。
その対策も併せて考えなくてはならないと痛感したところである。
要望をいただいた案件を全て早急に実現できるよう真摯に取り組みたいと思う。
大阪府の女性自立支援行政の調査
訪問先…大阪府立女性自立支援センター
説明者…大阪府福祉部子ども室家庭支援課
家庭福祉グループ 中井課長補佐
その他の現場の職員は、家族等からの脅迫等の恐れがあるため、本名を
伏せる、所在地、電話番号を非公開にするなどの措置のもと働いているの
で、役者苦闘を含めて明らかにされなかった。
【概況説明】
・平成 9 年 4 月 1 日、売春防止法 36 条に規定される、「要保護女子」の自立支援
施設として設立された。
・その後、配偶者等からの暴力に泣かされる妻の実態が社会問題化し、斯かる
DV(domestic violence)被害女性の急増を受けて平成 13 年(2001 年)4 月 13
日に制定された『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律』第 5 条
に基づき、DV 被害「対象者」も収容する必要が生じ、また、国際結婚が増える中で、
フィリピン、タイなど東南アジア諸国と中心にした外国人妻の被害急増を受け、
『人
身取引対策行動計画』によって保護された者も収容するようになっているが、ここ
数年は殆どその例が見られない。
・
『売春防止法』は昭和 33 年(1958 年)の制定以来一度も改正がなされていない
ため、時代にそぐわない規定も多く、同法の拡大解釈により、暴力被害者、生活困
窮者など安寧な日常生活を送れぬ女性及び同伴者を保護し、自立支援を行っている。
・従って視察当日(8 月 28 日)現在 20 名にのぼっていた収容女性(子供は 33
名)の多くは、直接売春に関わっていた者ばかりではなく、夫のリストラ或いは、
それに伴う離婚により、経済的に困窮した女性及び子供達もいれば、DV や他の強
要・脅迫を逃れるために当施設へ逃げ込んできている者、またパトロンだった日本
人男性の援助が突然打ち切られて路頭に迷って駆け込んだ外国人女性なども以前は
いたらしく、まさに理由はさまざまである。
・施設は滞在期間、子供の有無によって建物が異なり、単身者の場合6畳の部屋を
二人利用するのが原則であったが、プライバシーがなくなると嫌がられるようにな
り、また収容人員が減ってきているので、近時は個室で生活する者が殆どになった。
・子供同伴の者でも、与えられる部屋は6畳程度であるが、自炊も可能である。自
炊をしない者には給食が提供され、しっかりした栄養士や調理員が確保されている。
また各種アレルギーにも対応したメニューを個別に考えるなどの配慮も見られる。
・風呂は共同浴場と個別風呂があるが、他人との入浴を嫌がるものが多く、取り分
け、入れ墨のある配偶者等から DV を受けた経験のある者が、入れ墨のある女性と
一緒になり、騒ぎ出した例が生じて以降、共同浴場は使われる機会がなくなった。
・収容された者も、希望すれば外の企業に働きに出掛けられるが、刑務所の作業場
のように軽作業のできる施設がセンター内へある。実際、紙袋折り、パッキンのカ
ット作業、段ボール組立をしている作業場を見学し、実際に働いている女性にも出
会えた。
・収容される女性の多くは高等教育を受けておらず、識字率は非常に低い。案内板
をはじめ、電子レンジや洗濯機などの使用上の注意等を書いた用紙には全ての文字
にルビがふられている。シングルマザーのケース同様に、このセンターへ掛け込む
女性の多くも児童期に家族が生活保護受給者であったり、就学の機会を逸していた
者が多く、「負の連鎖」が見られる。
・子供達に関しては、たとえ義務教育年次の者であっても、外部との接触により、
母親の所在が配偶者等に見つけられないように、普通の小学校へ通うことはできな
い。
従って、過疎地の複式学級のように限られた先生が全ての適齢期の子供達に授業を
することになる。しかし、小学生もいれば中学生もいるのに、教師は限られるので
午前午後に分けて授業するなど困難な点は枚挙に暇がない。
・事業の内容は下記の通りである。
① 婦人保護
② 一時保護
③ 退所者自立支援
・前掲の内、
「婦人保護」事業は主に売春に起因するものであるが、温泉街、歓楽街
で逮捕された後に収容されるケースが殆どで、このカテゴリーの女性は概ね帰る家
も面倒を見てもらえる親族等もいない。元来罪の意識も薄く、出所しても同様のこ
とを繰り返す傾向が見られる。
「一時保護」で収容された者の多くは、所謂 DV 被害者のことが多いが、配偶者
に限らず、恋人、親族、兄弟姉妹からの例も多い。その被害者の多くも行き場がな
く、結局もとの住居へ戻り、再び DV 被害にあうことを繰り返す例も少なくない。
「退去者自立支援」は、物価の現状を掌握させる、料理が自分でできるようにす
るなど、箸の上げ下げのようなことまで指導をしているが、常時 20 名から 30 名
程度の女性が自立、自活を目指して頑張っている。
・DV で一時保護された女性の20歳代から40歳代が中心であるが、最若年は、
17歳、最高齢は85歳である。
・退所する者の多くは「母子生活支援施設」への移転か生活保護法に基づく住宅設
定による者であり、全社が約 35%、後者が約 20%で双方合わせると過半数となる。
実家等へ帰る者は約 11%、収容する前に住んでいた家に帰る者も約 8%いるが、
その中でも 2 週間以内に帰る者が、その中の約 20%いる。
・無断退所する者も珍しくないが、その殆どは自宅へ帰っている。
・センターの運営は平成 18 年度から指定管理者制度が採用され、社会福祉法人四
天王寺福祉事業団により運営されている。
【大阪府の取り組み】
・
「妻子を隠していた」等々の理由で夫等が押し掛け、脅迫や暴行を受ける可能性も
ゼロではないので職員の中には恐怖心をいだき、ビジネスネームを使い、センター
の住所や電話番号も一切非公開であるが、施設長など事務方、支援員、看護師、心
理士、保育士、学習指導員、栄養士、調理員、清掃員、心療内科や婦人科の意思な
ど充実したスタッフで自立が困難な女性が生活自立や社会自立できるように支援し
ている。
・清掃等の軽作業には大阪府の『エルチャレンジ事業』に登録した労働者を雇用し
ている。エルチャレンジ事業とは各種障がい者雇用促進をはかるプランである。
・随時センターと本庁担当セクションが連携を密にし、女性が女性であることの理
由で不利を受けないよう、相談や情報提供の事業を行い、女性福祉向上を図るとと
もに、このような支援が必要になる前段階でDV 等の被害が未然に防げるための施
策に努めている。
【受けた要望】
・このような支援施設があることを知らず、DVや債権者からの脅迫、配偶者や恋
人からの性的暴力等に泣き寝入りする女性が、まだまだ数知れずいるので、大阪府
が取り組む自立支援施策やセンターの存在を啓発するとともに、運営がスムーズに
いき、効果が発揮できるような法整備を随時お願いしたい。
・収容される女性の多くが、貧困が原因と思われるのが現実であるし、自立の精神
的自身はできても、経済的な裏付けができない例が少なくない。各種社会保障の充
実を期待する。
【総論】
実際に入所者の女性を何名もお見かけし、夏休み中なので大らかに遊んでいる無邪
気そうな子供達にも接することができたが、どこか影のある顔をしている方ばかり
だったのが実に印象的だった。
子供の就学等のためには早く社会復帰しなくてはならないと判っていても、DV被
害等々のトラウマで自立を躊躇しているのが、あからさまに読み取れた。
単身の方でも、やはり施設を出た後の生活不安は拭いきれない模様である。
要望でもいただいたように、自立を支援することも大事であるが、それ以前にDV
被害者を生じさせないよう、このセンターを必要とする女性を皆無にすることが更
に重要であることは言うまでもない。
先般、いわゆる『ストーカー防止法』の付きまとい要件として、実際の付きまとい
の他、しつこい電話のみが対象であったものが、時勢を反映して、メールも加わり、
改正前の法では構成要件に該当してないため、おらず、処罰ができなかったメール
による脅迫等々で検挙される例が漸く見られるようになったが、そのように、立法
府に身を置く我々は、恒常的に UP TO DATE な法改正を心掛け、被害者を最
小限に食い止め、万が一の場合には即座に問題が解決できるように努めなくてはな
らないことを痛感した。
視察を終えて
かつて、連続射殺犯で死刑が執行された永山則夫氏は、その著書『無知の涙』
(1971 年
出版)の中で、父親のギャンブル狂、母親や姉の精神疾患、別の姉からの虐待、ゴミ箱を
漁って飢えを凌いだ幼少期を経て、各地で不登校や非行を重ねた挙句、通りすがりの人間
を 4 名も射殺した根本原因が「貧乏」だと決めつけ、貧乏であるが故に充分な教育が受け
られず、人の温かみを知ることもできず、無知なまま成長し、貧乏ゆえに 19 歳で 4 名も
の殺人をしたと述懐した。要するに全国を震撼させた連続殺人事件の要因が貧乏であると
主張したのだ。その論理は、高度経済成長に沸き、国民のほとんどの者が「中流意識」を
いだき始めた、出版当時の世の中を騒然とさせたと聞く。
今回の視察地3ヶ所全てで、
「貧困の連鎖」、
「負の連鎖」、
「貧困ビジネス」などの言葉が連
続して耳に入ってきたのも印象的であり、またショックであった。
仮に貧困でなくなれば、シングルマザーも、VD 被害女性もなくなるのだとしても、その
解決策は、世の中の平均水準の生活が確保できるだけの資金援助をするというレベルの話
であるわけがない。
現在の生活保護支給の実態を、今回改めて目の当たりにしたが、現行制度ではコツコツ長
年に渡って国民年金を掛け続けた方が年金を受け取ったり、困窮した中でも労働をして対
価を得ると生活保護費がその収入分カットされ、無年金者や就労しない者と一ヶ月に使え
る金額が同等になる現実や多人数世帯の生活保護氏が際限なく高額化するのもおかしい。
反対に、シングルマザー家庭では扶養する子供の数が増えても、手当の支給額は殆ど変ら
ず、子供を多く抱える一人親家庭ほど生活苦が進むのと、同じ福祉政策の中で相反する現
実がどうしても理解できない。
また、長年生活保護を受け続けている者は、医師と結託しているケースも多いようである。
生活保護法に基づいて不正請求などした不当な医療機関を処罰しても、あくまでそれは医
療機関の処罰であり、医師そのものではないから、当該医師は別の医療機関へ身を移せば、
またリセットされてしまう矛盾点がある。
不正受給者の存在、貧困ビジネスで利を得ようと虎視眈々と狙いを定める輩等々、まだま
だ問題点は山積している。前掲のように、現物支給やクーポン券での支給方式を導入して、
ギャンブルや飲酒などの遊興費に生活保護費が使われるのを防いだり、奨学金のように貸
付制度にして、やがては返還を求めるようにしなくては、ひとたび生活保護の支給が始ま
ると延々受け続ける者が増え、母子手当等との整合性が、ますます説明しにくくなってし
まうと考える。
いずれにしても精査を重ね、指摘を受けたり、見聞をした現況の問題点を、即座に解消で
きるよう今後の国会活動に反映させる所存である。
以上
衆議院議員 三木 圭恵
衆議院議員 上西小百合
参議院議員 清水 貴之