水槽が緑になるのはなぜ?

水槽が緑になるのはなぜ?
岐阜市立長森南中学校
1.研究の動機
家で飼っている魚の水槽がすぐに汚くなるものとな
1年
齋
藤
奏
磨
ると、藻のたね水にいた三日月型の微生物も発見で
きた。養分がなくなると、成長が止まってしまうのでは
らないものがあり、それはなぜか気になった。汚くなる
ないだろうか。また、pHを調べてみた。
ものは水が緑色になり、水槽の壁も緑色になる。緑色
養分の濃さ(%)
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
のものの正体を知ることで、汚くなる理由がわかると
pH
8.4
8.0
7.4
7.4
6.9
思い、研究することにした。
緑色が濃い
2.研究の内容
(1)水を置く条件と藻のはえ方
水槽は知らないうちに緑色になるので、水があれば
自然と緑色になると思った。そこで、どんな条件の下
この結果より、中性付近ではよく微生物が繁殖する
のかもしれない。
(5)ハイポネックスの濃度②と藻のはえ方
(4)ではどれが濃いか分かりにくかったので、もっと
で緑色になるか、9種類の場所に置き、変化を調べた。
養分の濃度に差をつけて観察してみた。結果、0%と
しかし、1週間観察しても、どれも変化はなかった。緑
1%は全く緑色にならず、0.3%はだんだん濃くなって
色になるものが少しでもないと変化はないと考えられ
いった。0%では微生物が成長するための養分が足り
る。
ず、また、1%では逆に濃すぎたのだと思う。0.3%の
(2)ハイポネックスと藻のたね水と藻のはえ方
ものを顕微鏡で観察してみると、
緑色の水と養分(ハイポネックス)を少し入れ、3ヶ
丸いものがたくさんいた。実験 4
所・養分有無の2種類の計6種類の変化を調べた。
の 0.3%のものを見てみたら、も
結果、日なたの養分有だけが緑色となった。また、顕
っとたくさんいた。ためしに藻の
微鏡で水を観察すると、微生物を発見できた。水が
たね水を観察すると、少しだが、
緑色になるのは、元と養分、日光が必要になることが
同じものも発見できた。
わかった。
(3)ラップと日の当たり方と藻のはえ方
(2)より、養分が必要ということがわかったので、養
分の量に着目し、4種類の濃度の養分を用意し、ゴミ
が入らないように、ラップをするという条件下で 1 週間
置き、変化を調べた。濃度が濃いものの方が濃い緑
になると思ったが、200mlの水に養分1mlを入れたも
のだけ、緑色ではなく、白くにごった。ラップをするこ
とにより水温が上昇し、一度微生物は増えるが熱さの
ため死んでしまったためかもしれない。
(4)ハイポネックスの濃度①と藻のはえ方
(6)ラップの有無と藻のはえ方
ラップをすると、本当に熱がこもり熱くなって、微生
物が死んでしまうのかどうかを確かめた。日なた・日か
(3)より濃度をさらに薄めの濃さ 5 種類を用意し、日
げでラップ有無、日かげのふた有の5種類を4日後観
かげにおいて観察した。結果、全部緑色になった。し
察した。すると、日なた・日かげを問わずラップ・ふた
かし、それまで 0.1,0.2%が濃かったが8日後には
有のものは全く緑色にならなかった。また、日なたの
0.3,0.4,0.5%がとても濃くなった。顕微鏡で観察す
方が濃くなった。ラップ無のものしかはえなかった理
由として、次の 3 つが考えられる。
①空気が循環しない
(9)水槽の水と藻のはえ方
水槽の水が夏になり、だんだん透明になってので、
②日かげでも温度は上がるかもしれない
この水で藻を増やすことができるか調べた。5日後、
③ゴミなどが水の中に入ることで繁殖が進むかもし
少し緑色になったが、養分を入れたときよりも変化が
れない(顕微鏡で見たとき、ゴミの周りにたくさん
微生物がいたため)
(7)ハイポネックス③と藻のはえ方
(4)では 0.1%が 1 番濃い緑色だったので、それよ
見られなかった。
また、藻をはやさない薬の効果も調べてみた。する
と、水の色は茶色がかった透明になり、緑色にならな
かった。
り濃度の薄いものを調べた。それぞれ入れて日かげ
井戸水
水槽の水
に置き、8 日後観察した。
水槽の水
(薬.01ml 入)
pH
6.5
3.4
3.6
(10)pHについて
藻が多く繁殖するほど、pHは低くなる傾向があるよ
うだ。今回の実験では初めからpHを測定していない
ので、詳しい事はわからない。また、水槽の水のpH
が 3.4 と低いことも気になる。今後の課題である。
3.研究のまとめ
水槽の水は、飼っている魚の排泄物・えさの残りか
0.1%が一番濃くなっていた。やはり、時間が経つ
すなどで汚れてくる。窒素やリン、カリウムを含むよう
と養分の濃いものには藻がたくさん増えることがわか
になり、日光が当たって藻が繁殖する。水槽を緑色
った。(4)から考えても、0.1%が一番濃くなっても不
にしていく藻は養分の濃さや日光、pH などの違いな
思議ではない。
どによって変化してくるようだ。少しでも水を汚さない
(8)藻のたね水の量と藻のはえ方
ようにするには、養分となるものの量を減らすこと、原
他の条件はすべて同じで、藻のたね水の量を変え
ることでどういう変化があるか調べた。
藻のたね水が多いほど微生物が増える量も多いと
因となる「たね」を入れないことが考えられる。水槽の
水換えをするときに、水槽内の汚れや砂の中の汚れ、
ゴミなどをきちんときれいにすることが大切である。
思ったので、藻のたね水が5mlのものが一番濃くなる
(指導者 長森南中学校理科部)
と思った。5日後には予想通りに5mlが一番濃くなり、
きれいに1mlから5mlまで順番に濃くなった。
緑色の微生物の増え方はたぶん細胞分裂だと思う。
4.審 査 評
家で飼っている金魚の水槽が、すぐに汚くなること
分裂していく条件が同じならば、分裂しても個数が増
に関心を持ち、疑問を解決するために、9つの実験を
えても、比率は初めと同じままなので、色の濃さもそ
通して追求しました。緑色になる要因は、日光の有
のまま違いになって表れるだろう。しかし、(4)でも見
無・養分の濃度・フタの有無・藻のたね水の濃度など、
られたように、養分が足りなくなると微生物は増えない、
多様な視点から仮説を立てました。実験の条件を統
つまり色が濃くなっていかないだろう。従って、さらに
一して、より確かな結論を得ようと繰り返して行ってい
日にちを置けばだんだん濃さは同じにあると思う。
るところが素晴らしいです。水槽が緑色になる原因を
3日後観察すると、藻のたね水を入れなかったもの
以外は、すべて同じくらいの濃さになっていた。
つきとめるための強い意欲がよく伝わってくる作品に
仕上げられています。