- 1 - 東京、平3不52、平8.3.19 命 令 書 申立人 全関東単一労働組合

東京、平3不52、平8.3.19
命
令
申立人
全関東単一労 働組合
申立人
全関東単一労 働組合武 谷病院分会
被申立人
武谷病院こと
被申立人
医療法人
主
1
書
Y1
レ ニア会
文
被申立人 武谷病院 こと Y1は、 申立人全 関東単一労働 組合武 谷 病院分会の
組合員である X1およ び X2に対し 、平成3 年8月 15日付解雇がな かったも
のとして取り 扱い、解 雇の日から平 成5年 11月30日までの 間に両名 が受ける
はずであった 賃金相当 額および一時 金 を支払 わなければな らない。
2
被申立人 医療法人 社団レ ニア会 は、 X1 およびX2に 対し、 平 成5年 12月
1日からその 雇用する 労働者( X1 は視能訓 練士、 X2は 看護婦) として取
り扱い、同日 から同レ ニア会に就労 するまで の間に両名が 受けるは ずであっ
た賃金相当額 および一 時金を支払わ なければ ならない。
3
被申立人 医療法人 社団レニア会 は、本命 令書受領の日 から1週 間以内 に、
55セン チメー トル ×80センチ メート ル( 新聞 紙2頁 大)の 白紙 に、 下記内容
を楷書で明瞭 に墨書し て 、医療法人 社団レニ ア会武谷病院 の正 面玄 関入り口
および裏門入 り口の従 業員の見やす い場所に 、10日間掲示 しなけれ ばなら な
い。
記
年
月
日
全関東単一労 働組合
執行委員長
X3
殿
全関東単一労 働組合武 谷病院分会
分会長
X1
殿
医療法人社団
理事長
レニア 会
Y1
全関東単一労 働組合が 、平成3年8月 29日に 武谷病院に申 し入れた 、X1
およびX2の解雇問 題 を議題とする団体交 渉 を武谷病院 が拒否したことは、
不当労働行為 であると 東京都地方労 働委員会 において認定 されまし た。今
後このような ことを繰 り返さないよ う留意し ます。
(注;年月日 は文書を 掲示した日を 記載する こと。)
4
被申立人 らは、前 各項を履行し たときは 、すみやかに 当委員会 に文書 で報
告しなければ ならない 。
- 1 -
理
第1
由
認定し た事実
1
当事者等
⑴
申立人全 関東単一 労働組合(以 下「組合 」という。)は、昭和 47年2月
に結成され関 東地方に おける各種産 業に従事 する労働者を もって組 織す
る個人加盟を 原則とす る労働組合で あり 、組 合員数は約 60名である 。
⑵
申立人全 関東単一 労働組合武谷 病院分会(以下「分会」とい う。なお、
上記組合と併 せて「組 合」というこ ともある 。)は、平 成3年2 月 6日 に
結成された労 働組合で あり 、現在分 会員は本 件被解雇者で ある X1 (以
下「X1」という 。)と X2(病院勤 務時「 X2」姓であっ たが、本件申
立て後の平成 6年 12月に「X2」に 改姓した 。本件では 以 下「X2 」と
いい、主文の み「 X2 」と表記する 。) の2 名である。
⑶
被申立人 武谷病院 こと Y1「以 下「院長 」という。)は、昭 和25年4月
に診療所を開 設、同 40年に武谷病院(以下「 病院」とい う。)と改 称して
開設時から院 長の職に あった。 そし て、平成 5年7月 27日に医療法 人社
団 レ ニ ア 会 ( 以 下 「 レ ニ ア 会 」 と い う 。) が 設 立 さ れ 、 病 院 は 、 同 年 12
月1日以後は 、医療法 人社団レニア 会武谷病 院となった。 その際レ ニア
会は、従来の 病院の敷 地、建物、設 備および 同病院が雇用 していた 従業
員をそのまま 引き継ぎ 、武谷病院の 院長であ った Y1は、 同会の理 事長
として引き続 き代表者 に就任してい る。
現在、レニア会 武 谷病院の診療 科目は眼 科、内科 、小児科 等8 科目で、
病床数は102床 、従業 員数は約 140名である 。
なお、平 成6年4 月 12日、申立 人らは、 同会を当事者 として追 加する
よう申し立て 、当委員 会は、同年5 月 31日被申立人として 追加する こと
を決定した。
⑷
病院には 、申立外 東京医労連武 谷病院労 働組合(平成 3年2月 に東京
医労連武谷病 院分会を 改称 、以下「武 谷 労組 」という。)があり、本件 申
立当時の組合 員数は約 20名であった 。
2
X1、X 2の労働 組合加入と職 場活動等
⑴
X1は、 昭和 57年4月、病院に 視能訓練 士として採用 され、院 長の診
療科である眼 科に配属 となり 、専ら 院長の指 示の下に両眼 視機能の 回復
のための矯正 訓練や検 査を行う業務 に従事し ていた。そし て3年後 の 60
年4月には視 能訓練士 部門の主任に 昇格し た 。
⑵
X2は、 昭和 59年4月、病院に 看護婦と して採用され 、眼科外 来に配
属された。そ して 63年11月から第2 子出産の ため産休に入 り、平成 元年
3月1日から の復職に 際し て処置室 に配置替 えとなり、採 血、注射 、点
滴などの業務 に従事し ていた。
⑶
X1は、 採用され て以来眼科に おいて、 休暇申入書に 院長の承 認をと
る等有給休暇 や生理休 暇がとり辛い 職場の実 態に不満をも っていた 。そ
して昭和58年年末ころ には武谷労組 の存在を 知り 、組合長 に眼科の 実情
- 2 -
を訴え、同労 組として その改善に取 り組めな いかを相談し たが、 X 1の
意見は取り上 げてもら えず 、その後 、眼科の 時間外労働が 恒常化し てい
る実情も話し たが 、こ れも取り上げ てもらえ なかった 。このた め X 1 は、
60年2月、眼 科の時間 外勤務が恒常 的になっ ているのを 改 善しよう と眼
科の同僚職員 に呼びか け 、全員が午 後5時半 に帰宅できる ようにす るこ
と、再診受付 終了時間 を午後4時半 に切り上 げることを内 容とする 「眼
科の時間外勤 務につい て申し入れ」 書を作成 し 、X1以下12名の署 名を
して院長宛に 提出した 。その後、こ の件につ いて眼科部会 において 話し
合いがもたれ たが 、結 局院長は申入 れを聞き 入れなかった 。
このよう なことも あり X1は労 働組合の 必要性を痛感 し 、61年組合に
加入した。そしてX2もX1に誘 われて同 年 年末ころに組合 に加入 した。
⑷
その後、 組合は分 会結成に向け て病院内 での取り 組み を開始し た。そ
こでX1は、 分会結成 のた めには特 に教宣活 動が必要と考 え、組合 と相
談して、63年3月8 日 昼休み時間 、病院内 の 各職場を回っ て「『職 場の 新
聞・武谷病院 ・ネット ワーク』(以下「 ネッ トワーク」と いう 。) No.1、
発行・X1(眼科 )」を配布したの を初めと して、5月 12日には「 ネット
ワーク」No.2、8 月13日には「ネット ワー ク」 No.3をそれ ぞれ 昼休み
時間に各職場 を回って 配布した。
「ネット ワーク」 No.1の冒頭には 「喜 び、悩みを語 りあい、 交流し、
そしてともに 歩もう」 との見出しの もと、生 理休暇は権 利 であるか ら取
得しようと呼 びかけた 。「ネッ トワーク 」 No.2には、有給 休暇は権 利で
あり、休暇を 許可制度 とすることは 違法であ ると記載され 、さらに 「権
利はどの労働 者にも平 等にあるもの ですから 、労働者同士 お互いの 権利
を大切にして だれでも とれる職場に していか なければなり ません。 労働
者間の信頼を そだて 、 労働者の団結 の力とな るなにものに もかえが たい
ものとして、権利はあ ります」と訴 えた。
「 ネットワーク 」No.3には「有
休は“もらう もの”で はなく 、“と るもの( 権利) ”」と の見出し で、
有給休暇の取 得を呼び かけ、さらに 不透明な 賃金実態・賃 上げ基準 を批
判して「賃上 げは全労 働者にたいし て平等に 、おなじだけ 引き上げ られ
るべきです… そのよう にたたかうこ とによっ て労働者の団 結がつく られ
るのではない でしょう か」と記載さ れていた 。
⑸
このよう ななかで 、6月ころ、 Y2事務 長(以下「 Y 2事務長 」とい
う。)が、X1に対 し「ネットワー ク」の配 布は院長の許 可を受け るよう
にと注意した ところ、X1は武谷労 組のビラ 配布には何も 言わず 、
「ネッ
トワーク」の 配布にだ け言うのはお かしいと 抗議した。 そ の際、 Y 2事
務長はX1に 対し 、こ の件について は後日説 明すると約束 し たが、 この
約束は果たさ れなかっ た。 このころ から、院 長は X1を避 けるよう にな
り、院長 と一緒の車で行く院外の眼科検診 にX1を同行 させなくなった。
⑹
その後も X1 は、 10月8日、11月21日、12月9日、同 月 12日、同人の
昼休み時間に 各職場を 回ってそれぞ れ「ネッ トワーク」 No.4から No.7
- 3 -
を配布した 。「ネ ット ワーク」 No.4では「 労働組合はど うあるべ きか、
ともに考えよ う」と の 見出しで、武谷労組 が 発行した組合 ニュース で「個
人に対する攻 撃 や中傷 ではなく …」 とネット ワークの記事 を批判す る武
谷労組の姿勢 を問題と し 、労働組合 は職場の 意見を出し合 って自由 に討
論していくも のだと訴 えた。ま た、8 ページ 建ての「 ネットワ ーク 」No.
5では「冬季 一時金( ボーナス)を 大幅獲得 しよう」との 見出しで 、一
時金は賃金の 一部であ ると述べ 、病 院の賃金 実態の不透明 さ、さら に休
暇取得に際し その前後 に上司に挨拶 すること や、仕事の終 了後、院 長が
一人ずつに手 渡すボー ナスの支給方 法などを 批判した。そ して武谷 労組
の一時金交渉 を批判し て「これまで の交渉は 、い つ団体交 渉が開か れて
いるのか明ら かでなく 、その逐一の 報告もあ りません。せ いぜい妥 結後
の報告がある だけです 。 組合活動は 一部の幹 部だけが請負 的にやる もの
ではありませ ん。大衆 的、民主的な 活動こそ 組合活動の基 本だと思 いま
す。また、今 年の賃上 げ闘争では経 営内容の 説明をもとめ 、病院も それ
にこたえると いうこと であったのに 、そのま まにされてい ます。こ の一
時金闘争のな かでなる べく多くの労 働者が交 渉に参加でき るような 交渉
日時の設定に 組合は努 力すべきです 」と訴え た。
⑺
12月13日、病院は 、試用期間中 の眼科看 護助手M(女 性)に解 職通告
をした。組合 は、同人 の組合加入を 受けて同 月 14日病院に 、Mに対 する
解職を撤回す ることな どの申入書を 手渡し、 団体交渉を申 し入れた 。同
日団体交渉が 行われ 、 X1も組合の 団交メン バーとして出 席した。 この
団体交渉にお いて 、Y 2事務長 と組 合執行委 員長 X3との 間で、解 職 通
告書はいった ん留保す ること 、2、 3日後に 組合と交渉す ること、 その
間Mは自宅待 機とし、 賃金は補償す るとの確 認書を取り交 わした。 そし
て、同日配布 された「 ネットワーク 」
(通 し 番号の記載な し)に、上 記申
入書の全文が 転載され ていた。 同月22日、組 合は X1と連 名による 抗議
文で、確認書 が取り交 わされた 13日夜、病院 の意を受けた 職員が、 Mの
自宅に電話を かけて組 合を中 傷誹謗 し、Mを 退職に追い込 んだとし て、
病院に対し、 その責任 を明らかにす るよう申 し入れた。
⑻
X1は、12月 27日の始業前、病 院の裏門 付近で「全関 東単一労 働組合
武谷病院・眼 科・ X1 」名で、前記 Mの「解 雇撤回闘争の とりくみ の報
告、女性労 働者の労 働 権確立、無 資格労働 者 への差別撤廃 に向けて 」
(20
ペ一ジの冊子 )を出勤 する職員に配 布し、翌 元年1月8日 の始業前 と、
2月23日の昼休み時間 に、天皇の国 家葬に反 対するビラや 「ネット ワー
ク」を職員に 配布した 。
(以後「 ネットワ ー ク」の発行は、約 10か 月中断
された。)。
このころ から院長 は 、視能訓練 士である X1への指示 を直接行 わない
など、忌避す る態度を 示すようにな った。
そして、 同年 12月の一時金支給 の際、院 長は他の職員 には一時 金を直
接手渡したが 、 X1に は直接手渡そ うとせず 、 Y3総務課 長が手渡 すと
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いうことがあ った。
12月18日、X1 は 、一時金を院 長が直接 手渡すという 取扱いを 改善し
たいとして 、
「一時 金 は院長からの 手渡しを やめて、毎月 の賃金と おなじ
に支給を 」との見 出し の「ネッ トワーク 」No.9を、昼休み 時間に 各職 場
を回って配布 した。こ の「ネット ワーク」No.9から、発行者 名が「ネッ
トワーク編集 委員会」 となった。
ところが 同月 25日、病院内のド アや壁に 「ネットワー クって何 がいい
たいの?」と 題する、 発行人「Ey e-Wi tness」 によるビ ラ数
枚が貼り出さ れた。そ のビ ラには「 X1さん は長年にわた って最低 のボ
ーナスしかく れない病 院に勤務して いるのは なぜなのでし ょうか、 そん
なにいやな病院ならいつでもトラバーユでもしたらよい」
「 院長先 生 がX1
さんを嫌うの ももっと もです …私も 嫌いです 」
「 …X1 さんのグ ルー プが
金目当ての過 激派だと 噂されている からです 。本当のこと なんです か、
X1さん」と 記載され ていた。
⑼
翌2年1 月 29日付「ネットワー ク」No.11には、X1が、3 日 前までに
院長に届け出 る有給 休 暇の請求の改 善方を 、 院長宛に申し 入れた記 事が
掲載されてい た。4月 14日付「 ネットワ ーク 」No.12には、4月 4 日に有
給休暇を当日 申請した が、病院は認 めなかっ たとの X2名 義の記事 が掲
載され、こ のころか ら X2も「ネ ットワー ク 」を配布す るように な った。
また、院長は 、 X2が 患者への指示 を確認に 行くと「私の 出した指 示に
文句があるの か」 と言 って話を聞こ うとしな かったり、院 長が処置 室で
の診察のとき にカーテ ンをピ シャリ と閉める とか、退室す るときに X2
を睨みつけて 出ていく ような態度を とるよう になった。
⑽
X1およ びX2 は 、その後も、 前記 X2 の有給休暇申 請が認め られず
欠勤扱いとな って 、精 勤手当がカッ トされる ことの不当性 や、賃上 げや
夏季一時金要 求に関す る記事などを 掲載した 「ネットワー ク」を 、 月に
1ないし2回 、昼休み 時間や勤務時 間外に配 布し続けた。
⑾
5月18日、X1 お よびX2は、 病院の給 料支払日(毎 月 26日)が土、
日曜日にあた る場合に 、給料が遅れ て支払わ れているのを 、前日( 金曜
日)支払いに するよう 要求する X1 、X2ら 4名が署名し た「申入 書」
を病院に提出 した。 ま た、7月4日 には、夏 季一時金支給 と夏季休 暇な
どを要求する X1 、X 2ら3名の署 名に「外 19名」と記し た「申入 書」
を8月4日に も5月 18と同文の「申 入書」に X1、X2ら 4名の署 名に
「外31名」と記して 、 それぞれ病院 に提出し た。
⑿
この間の 5月 26日、病院と武谷 労組は、 本人や家族の 病気など の特別
の事情による 欠勤を 、 当該欠勤日よ り3日以 内に有給休暇 に振り替 える
特別措置を講 じるとい う協定を締結 した。
7月5日 病院は、 前記協定の実 施につき 一部に誤解を 招くよう な発言
および私文書 の配布が あるとして「 協定書三 項目に該当す る欠勤の 有給
休暇への振替 を希望す るものは 、3 日以内に 所定の用紙に 理由を明 記の
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上、各所属長 に提出す ること。 以上 の手続を 経ない者は、 これより 例外
なく欠勤と致 します」 との通達書を 掲示した 。
さらに7 月 7日、 病院は、年次 有給休暇 の時季変更権 は、使用 者の権
利と考えられ るので 「 有給休暇制度 の健全な 発展のために も、労働 者の
権利と使用者 の権利の 調和を図るこ とが必要 であり 、使用 者の権利 を認
めようとしな い労働者 は 、雇用され ることを 止めて独立独 歩するの が賢
明である」と 記載され た「 職員の皆 さんへ」 の文書を掲 示 した。 こ れに
対して、8月 4日 X1 は、有給休暇 に理由は いらないとし て、労働 者の
権利等を解説 し 、病院 の考え方に反 論した 12べ一ジ建ての 「ネット ワー
ク」No.18を、終業後 に病院の裏門 付近で職 員に配布した 。
3
Y4総務 部長就任 以後の労使関 係
⑴
院長の次 男 Y4 は 、海外留学を 終えて帰 国し、平成2 年1月 15日から
支配人(Y2 事務長 ) 付として病院 に勤務し た。そして病 院は、同 年8
月1日付で従 来の事務 室を総務部に 改編し、 総務部に第一 課、第二 課、
第三課を設置 して三課 体制としたう えで 、Y 4を総務部長 兼副支配 人(以
下「Y4部長 」という 。) に就 任させた 。
なお同人 は 、海外 留学中に何度 か「ネッ トワーク」を 入手して いた。
⑵
X1らは 、Y4部 長 就任以後も 「ネット ワーク」を配 布し続け 、同月
7日付「ネッ トワーク 」No.19には「みん な の署名( 35人分)で8 月の給
料は、25日(土)に支 給されるよう になった !」と記載さ れていた 。
⑶
このようななか、8月4日からX1の自宅に無言電話がかかりはじめ、
また、X1の 名を騙 っ て結婚相談所 へ再婚相 手の紹介依頼 が申し込 まれ
ていることが 、9月 16日に判明する などのこ とがあった 。
また、8 月16日から9月25日にかけて、 武谷病院職員 有志ある いはネ
ットワークな んかいら ない編集委員 会の名義 で「職場破壊 のネット ワー
クなんかいら ない! 」「X1グルー プから、 職場を守ろう 」「 速や かにこ
の病院から出 ていって 下さい」「 X1さ ん人 間として疑問 だよ! 」「3つ
の注意、1つ 話しかけ られても口を きかない 。1つ何か言 われても まに
受けない。1 つ誘われ てもついて行 かない」 などと記載さ れた5 な いし
7ページ建て のビラが 、女性職員の ロッカー に挟み込んで あったり 、靴
入れの中に置 かれたり した。
また「 X1立入 禁 止 」
「 No
X 1」と 記したポスタ ーが貼り 出された
が、配布者や 貼付者は 不明であった 。
これに対 し X1 ら は、9月19日「悪質、 下品、女性差 別にみち た妨害
ビラに抗して 断固たた かいます。! 」との見 出しで、前記 の組合中 傷ビ
ラ等への反論 を記載し た 10ページ建 ての「 ネ ットワーク 」No.20を、昼休
み時間に各職 場を回っ て 、職員に配 布した。
⑷
こうした 事態に、 病院は 10月2日、文書 、図画の配布 について は就業
規則第41条第4 号( 職 員が当院施設 内におい て講習、集 会、演 説放 送し、
又は文書、図 画を配付 掲示しようと する場合 )に従っ て、 所属長を 通じ
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院長の承認を 求めるこ と、院内にお ける怪文 書の配布・掲 示などは これ
を行わないこ ととの通 達を掲示した 。しかし 、 X1らは、10月31日から
11月2日の間 にも年末 一時金要求等 を内容と した8べ一ジ 建ての「 ネ ッ
トワーク」No.21およ び「ビラ配布 の権利を 守ろう」との 見出しの No.22
を、昼休み時 間や勤務 時間外に職員 に対して 、院長の承認 を受けず に配
布した。そのた め病院 は、Y5検査科 長(以 下「 Y5検査科 長 」と いう。)
らが、職場内 を回って 「ネットワー ク」を職 員から回収す るととも に、
11月2日X1 および X 2に対し、就 業規則に 従って服務規 律を守 る よう
にとの業務命 令を発し 、これに従わ ない場合 は「譴責処分 」とし、 始末
書の提出を求 めると警 告した(ただ し病院の 就業規則には 譴責処分 の定
めはない 。)。
また同日 、病院は 、 X1対し、 同人が前 日 Y4部長に 呼び出さ れ、同
部長から「ネ ットワー ク」配布につ いての質 問を受けた後 、職場に 戻る
よう指示され た際 、病 院が「ネット ワーク」 を回収したこ とに抗議 する
などして部屋 から退去 せず、部屋を 出ようと した同部長の 前に立ち はだ
から、5分間 にわたり 付きまとい、 同部長の 業務遂行を妨 害したこ と、
10月31日レントゲン室 で検査中の Y 5検査科 長 に詰め寄り 、退去の 要請
を聞き入れず 、業務を 妨害したこと を理由と して「譴責処 分」とし 、始
末書の提出を 求めた。 さらに同日、 病院は、 院内における 無届け文 書は
回収する旨を 記載した 「職員の皆さ んへ」の 文書を掲示し た。
11月5日、組合は 、病院に対し 、業務命 令および譴責 処分の撤 回、年
末一時金要求 等も含め て 、団体交渉 を申し入 れたが、同日 病院は、 文書
で、業務命令 および譴 責処分の撤回 の件は、 団体交渉の対 象ではな いと
回答した。
そのため 組合は 、 団交拒否、前 記 10月2日付通達の撤 回、 ビラ 配布妨
害、業務命令 および「 譴責処分」の 撤回等に ついて、 11月8日、当 委員
会に、不当労 働行為の 救済を申し立 てた(都 労委平成2年 不第 61号)。
一方病院 は 、 11月15日、当委員 会に、団 交促進のあっ せん(平 成2年
都委争第60号)を申請 し、当委員会 のあっせ んによって団 体交渉が 行わ
れるようにな った。
⑸
11月13日、X1 お よびX2は、 始業前に 裏門付近にお いて、出 勤する
職員に「病院 はビラ禁 止の業務命令 ・ 懲戒処 分を撤回せよ !」との 大見
出しの19ページ建て「 ネットワーク 」No.23を配布したが 、そこに は「ワ
ンマン体制を 支える天 皇制の思想」 との小見 出しのもとに 「 …労働 者が
院長、婦長な どの批判 をすれば、あ らゆるい やがらせをか けてそれ をつ
ぶし、その労 働者を職 場からたたき だすこと をくりかえし てきまし た。
あるときには 『精神分 裂症』の診断 書を出さ せて依願退職 においこ んだ
り、所属長ば かりか院 長が直々に呼 び出して 絞り上げたり 、仕事干 し、
仕事へのいち いちのチ ェックやあら さがし 、 そして『ネッ トワーク 』と
労働者の離反 のための 配転攻撃等な ど …。そ して日常的な 『つげぐ ち』
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等の監視体制 という風 に、日本の戦 前から続 いている支配 権力のフ ァッ
ショ的人民管 理とみま がう体制を武 谷病院は この四十年間 つづけて きた
のです」との 記載があ った、この「 ネットワ ーク」の記事 の大半は 、組
合活動やネッ トワーク 配布に対する 病院の対 応を批判する 記事と 、 要求
書や回答書等 の文書の 写しであった 。
同月19日、病院は 、組合との団 体交渉の 席上(前記当 委員会の あっせ
んによって行 われた団 体交渉)、上記精 神分 裂症の診断書 を提出さ せて、
職員を依願退 職に追い 込んだとの記 事の部分 についての根 拠を明ら かに
するようにと 求めたと ころ 、組合は うつ病で あったと訂正 した。さ らに
12月10日の団体交渉の 際、 病院が、 依願退職 に追い込まれ たという 者の
名前などを明 らかにす るようにと要 求したの に対して 、組 合は個人 のプ
ライバシーに 関わるの で明らかにで きない旨 回答した。
病院は、 翌3年2 月 21日付でX 1、X2 それぞれに 、「ネ ット ワーク」
No.23の記載内容 のう ち、前記で病院 が問題 であると指摘 した記事 につい
て、事実を特 定し根拠 を明らかにし た報告文 書を提出する ようにと の業
務命令書を内 容証明郵 便で送付した か 、X1 、X2はこれ に従わな かっ
た。
⑹
ビラ配布 の問題を めぐっては、 2年 11月19日以降も、 同月 26日、 12月
3日、同月10日、同月 13日と団体交 渉が行わ れたが、組合 は、前記 10月
2日の通達で 、組合ビ ラの内容につ いて事前 に承認を得な ければな らな
いとすること は、病院 による組合ビ ラの「検 閲」にあたる ので撤回 する
よう求めた。 しかし病 院は、ビラは 1回ずつ 事前に内容の 承認を得 るこ
と、承認を得 ないビラ は病院敷地内 での配布 を禁止するこ と、また ビラ
配布禁止の業 務命令や その違反によ る懲戒処 分は撤回しな いと述べ たた
め、話し合い は進展し なかった。
このよう ななかで 、11月27日、X1が、 同月 26日の年末一時金 につい
ての団体交渉 の経過を 報告す る「ネ ットワー ク速報」を、 昼休み時 間に
職場を回って 職員に配 布したところ、病院は 、X1に対し、12月5 日「譴
責処分」を発 し始末書 の提出を求め た。 この 件について組 合は、翌 3年
1月29日「譴責 処分」 の撤回を求め 、前記不 当労働行為事 件に追加 申立
てをした。
これ以降 も X1 お よびX2は、 本件解雇 処分を受ける までに 「 ネット
ワーク」など を、病院 の許可を受け ることな く 30数回にわ たって配 布し
続けた。なお 、 X1ら が、組合文書 を配布す る場所は、始 業前およ び終
業後は病院の 裏門付近 であり、昼休 み時間( 病院では午後 0時から 午後
2時までの間 に適宜 45分間休憩時間 をとるよ うになってい る。)に は、各
診療科の職場 や女性休 憩室 、保育室 等を回っ て、職員に配 布した。
また病院 は 、組合 が要求した年 末一時金 について、2 年 11月19日の団
体交渉で検討 中と回答 し 、11月26日の団体交 渉で、有額回 答し、こ れを
最終回答であ るとした が、組合はこ れを不満 として再度交 渉を申し 入れ
- 8 -
た。その後、12月3日 の団体交渉を 経て、 12月10日に再度 団体交渉 が開
かれ、その際 病院は、 同日が武谷労 組と妥結 している年末 一時金の 支給
日であったた め「 今日 が支給日なの で受け取 る意思があ る なら渡し ます」
と言ったが、 X1 、X 2は年末一時 金を受け 取らず、組合 は病院の 組合
間差別、組合 無視であ ると抗議した 。しかし 組合は、結局 12月13日の団
体交渉で年末 一時金に ついて武谷労 組と同一 内容の協定書 を病院と 交わ
した。
このよう な経過の なかで 、組合 は、病院 の上記組合ビ ラ配布の 禁止や
業務命令、懲 戒処分に 関する強硬な 姿勢と年 末一時金要求 の対応に 抗議
するために、11月21日、12月8日お よび同月 15日にX1、 X2を対 象者
として半日ス トライキ を行った。
⑺
11月21日の半日ス トライキの際 、組合は 、患者らにも 組 合ビラ を配布
していたとこ ろ 、病院 の正面の玄関 前路上で Y6総婦長( 以下「 Y 6総
婦長」という 。)が患者 から組合ビラ を受け取 っているのを 組合員 ら が目
撃した。そこ で組合員 がその場で抗 議したと ころ、同総婦 長は 「患 者さ
んがビラはい らないと 言ったので受 け取った までです」 と 答えた。
同月24日、X1 ら は、
「 Y6婦長 の患者 さんからのビ ラ回収弾 劾!」と
の見出しで「 Y6婦長 は、あろうこ とか私達 が患者さんに 手渡した ビ ラ
を路上に出て 回収(し た)…」と記載 されて いる「ネット ワーク」No.25
を、終業後に 病院の裏 門付近で職員 に配布し た。
⑻
12月1日、X1 お よびX2らは 、病院の 最寄りの駅で ある西武 池袋線
清瀬駅頭で
「武谷病院 は組合ビラ配布禁止の業務命令・処分を撤回 せよ!」
との見出しの 組合ビラ を通行人 に配 布した。 このビラには 「病院は 8月
1日から総務部を新設し、部長に院長の息子であるY4氏が就任した」
「その直後の 8月はじ めから、組合 員(既婚 女性)の自宅 に深夜、 明け
方を中心に無 言電話が かかりはじま りました 。 また、組合 員の名前 をか
たって結婚相 談所に再 婚希望の登録 がされた り 、ゴルフ会 員券やワ ープ
ロ講習会の申 し込みが されたりして いること が明らかに な りました 」、ま
た前記第1、 3 ⑶の組 合を誹謗、中 傷するビ ラの配布やポ スタ ーの 貼付
のあったこと に関して 「これらのこ とについ て 、病院がま ったく無 関係
であるなどと 到底考え られることは 出来ませ ん」との記載 があった 。
⑼
X1およ びX2 は 、12月29日の昼休 み時 間に各職場を 回って職 員に「賃
金・労働 条件の改 善民 主的職場づく りに邁進 します! 」との見 出し の「ネ
ットワーク」No.30を 配布した。全 12ページ 建てのうち9 ページは 年末一
時金等に関す る団体交 渉の経過を説 明したも のであったが 、その 10ペー
ジ目には「清 瀬教育っ て何だろ う会 の通信 No.34」からの転載と 断 ったう
えで「一陣の 風」と題 する文章が掲 載されて おり、そのな かに 「最 近 、
武谷病院では 高額で “ 労務ゴロ”( 組合用語 ?!)を雇い 入れたそ うで
ある。赤ら顔 の、三癖 ぐらいもあり そうな、 刀傷でもあれ ば極 道の 世界
にりっぱに通 用する感 じの初老の男 …この時 とばかりに出 て来 たの が 、
- 9 -
くだんの“労 務ゴロ ” 。やたらよく 喋る」と 、また2ペー ジ目 には 「病
院はY7(Y 7 )顧問 を雇い入れて 、全関労 対策(組合つ ぶし) と して
きた」と記載 されてい た。
⑽
病院は、 翌3年1 月 24日から同 月 26日までの間の勤務 時間 中に 、全職
員に対して、 仕事・職 場に対する満 足度を調 べるアンケー ト調査( 意識
調査)を任意 参加とし て実施した。 X1およ びX2は、こ のアンケ ート
調査は任意参 加である との病院のお 知らせが 掲示されてい たため調 査会
場に行かなか った。
しかし、 その後 X 1およびX2 は、同人 らの上司であ る Y6総 婦長 と
Y3総 務第一課 長から、アンケート調 査を受 けるよう強く言 われたため、
2月5日、8 ページ 建 ての「労働者 の声は労 働者自身がま とめ、労 働者
が直接、経営 者にぶ つ けよう」との 見出しの 「ネットワー ク」 No.31を、
昼休み時間に 各職場を 回っ て職員に 配布した 。 そのなかに 「経営者 がす
るアンケート は、労働 組合の要求書 にこめた 労働者の意志 をねじま げ、
否定すること であり 」
「今後も武谷 病院では 、この種のア ンケート などが
ひんぱんにや られるこ とでしょう 」
「 武谷 病院 は息苦しい職 場になっ てい
くことでしょ う。資本 がまるごと労 働者の考 えていること をつかみ 、 操
作していくよ うになる でしょう。経営者の 行 うアンケート 調査は 、企業・
職場秩序の網 の目を作 り上げそこか らはみで るものを許さ なくなる でし
ょう」との記 載と、労 働者の要求は 労働組合 として要求し ようと呼 びか
ける記載があ った。
⑾
病院は、 2月1日 付で機構改革 を行い、 視能訓練士を 検査科の 所属と
したため、X 1 の直属 の上司は Y5 検査科長 になった。
一方組合 は 、同月 6日に分会を 結成し、 X1が分会長 に就任し 、これ
を病院に伝え た。
⑿
病院は、 病院の今 後の充実、発 展のビジ ョン作りのた め業務調 査とし
てのインタビ ュー(面 接調査)を2 月中に行 うことを計画 して、調 査専
門会社にその 実施を依 頼した。 2月 7日 Y5 検査科長 は、 X1に対 し、
インタビュー 形式の業 務調査を行う ことを告 げ 、日程表を 渡し2月 7日
から15日までのうちで 、インタビュ ーを受け るのに都 合の よい日時 を選
択するよう指 示した。
X1は 、一旦 は2 月 14日の午後 2時を選 択したが 、同月 12日に 組合が、
インタビュー の目的、 調査内容を具 体的に明 らかにし説明 するよう 病院
に申し入れた ことから 、組合として 病院の対 応をみたいの で2月 14日の
予定は留保す る旨伝え た。
2月14日、同 検査 科長は 、
「イン タビュ ーについて 」との 表題 で、病院
の今後の成長 ・ 発展に は、新しいビ ジョン作 りが必要で、 ビジョン を策
定するにあた って、現 状の仕事につ いて把握 しておく必要 があり、 イン
タビューによ って、各 人が担当して いる仕事 について 話を してもら い、
それをまとめ ていきた いと考えてい る旨記載 された 、同検 査科長名 によ
- 10 -
る書面を、X 1 に手渡 しながら説明 し、イン タビューに応 ずること は業
務命令である と付け加 えた。
さらに病 院は 、X 1に対し、同 月 20日付内容証明郵便 で、イン タビュ
ーに応じない 業務命令 違反と、主任 でありな がら上司に対 して反抗 的態
度をとったこ とを反省 して、別送の 反省書( 病院が起案し たもの) に署
名捺印し提出 すること 、本件インタ ビューに 応ずるように との業務 命令
書を自宅に送 付した。
組合は、 後記3月 6日の団体交 渉を経て 、 X1がイン タビュ ー に応じ
る旨を同検査 科長に伝 え、 X1は同 月23日にインタビュー を受けた 。し
かしその後、 病院は、 X1宛に、イ ンタビュ ーに応じたが まだ業務 命令
の一部しか遂 行してい ないとして 、 別送で主 任でありなが ら上司に 反抗
的態度を示し、1か月 にわたり調査 を滞らせ たとの反省書( 病院が 起案)
を送付し、そ の提出を 求めたが、同 人は提出 しなかった。
⒀
病院は、 2月 21日付で前記アン ケートに 非協力的な態 度を非難 する文
書を内容証明 郵便で X 1、X2の自 宅に送付 した。
⒁
2月25日、組合は 、病院に対し 、病院が 進めている「 ビジョン 作り」
のためのプロ ジェクト の全貌などを 議題とす る団体交渉を 申し入れ た。
そして3月6 日団体交 渉が行われ、 病院はそ の席で、この 団交議案 は経
営権の問題で あるとし て具体的な説 明を拒否 し 、アンケー トやイン タビ
ューに関する 組合の申 入れや団交要 求は、経 営権の侵害で あり、団 交の
濫用であると の Y4部 長 名の文書を 読み上げ 団体交渉を打 ち切った 。
また、上 記団体交 渉において、 組合は、 病院に休日出 勤の代休 問題に
ついての改善 を要求し たが、病院は これに応 じようとしな かった。 そこ
で、組合は 、4月 13日、三鷹労働基準 監督署に 労働基準法違 反を申告 し、
同署は、5月27日、病 院に対し改善 を指導し た。
⒂
3月30日、組合は 、病院に対し 、賃金増 額、労働条件 改善等の 要求書
を提出したと ころ 、4 月8日病院は 、文書で 一律 1,500円の賃金増 額等 の
回答を行った 。
4月15日に団体交 渉が行われ、 この席上 で、組合の X 4書記長 が要求
書の内容に沿 って 、病 院の差別賃金 のありよ うについて説 明してい たと
ころ、病院の 団交責任 者である Y4 部長 は「 なんだ、この やろう 」
「ふざ
けんじゃねえ 、てめえ 」と発言した 。同書記 長がこの発言 の謝罪を 求め
たところ、同 部長は「 ばかやろう 」
「こ んな のやって られ ねぇよ」なとど
発言して一方 的に席を 立ってしまっ たため 、 団体交渉は打 ち切りと なっ
た。
なお、こ の団体交 渉に先立って 、病院は 「労働組合文 書の配布 及び掲
示に関する協 定書案」 を組合に手渡 した。
4月19日、組合は 、前記4月 15日の団体 交渉での Y4 部長 発言 の撤回
と謝罪、さら に武谷労 組とは組合よ りも5日 前に団体交渉 を行って いな
がら、組合と の団体交 渉は引き延し ているこ とを、抗議す る申入れ を行
- 11 -
った。
⒃
X1およ びX2 は 、5月1日か ら6月3 日までの間の 就業時間 中、組
合の春闘行動 の一環と して 、ま っ赤な生 地に 黒色の マジッ クインク で「生
活できる賃金 を! 」な どのスローガ ンを書い たリボン(長 さ 10cm乃至
15cm、幅2.5cm乃 至 3.5cm)を着 用し た。また、5 月 24日の昼休み
時間、X1 および X 2 は「ネット ワーク 」No.34を各職場を回 って 配布し
た。その際X 1 は、白 衣の上に赤い 腕章を着 用していた。
一方、武 谷労組の 組合員は、4 月 24日から5月31日までワッペ ンおよ
び黄色いリボ ンを着用 し、そのワッ ペンには 「 91春闘医労 連、賃上 げ、
看護婦増員、 医療守れ 。湾岸戦争反 対・医療 団派遣阻止」 とのスロ ーガ
ンが記されて いた 。な お、黄色 いリボン は非 組合員も多数 着用して いた。
病院は、武谷 労組のリ ボン着用につ いては、 その着用者が 、全関労 は支
持せず、武谷 労組を支 持するという 気持など から着用して いると認 識し
て、リボン等 の着用中 止命令を公示 すること による影響を 考えそれ を公
示せずにいた 。しかし 病院は、5月 8日、両 組合に対し、 就業時間 中に
職場内でリボ ンなどを 着用するのは 不法な組 合活動であり 、職場秩 序を
乱すので、即 刻中止す るよう通告し た。
同月17日、組合は 、その通告の 撤回と Y 4部長 ら病院 管理職に よる組
合員らに対す るリボン 取り外しの強 要行為の 中止等に つい て、前記 不当
労働行為事件 に追加し て申し立てた 。
同月18日、病院は 、リボン着用 禁止の通 達を貼り出し 、 Y5検 査科長
やY6総婦長 が 、X1 やX2に対し 、リボン 着用中止と名 札の着用 を指
示し、さらに 5月 28日付でX1、X 2の前記 の行為は、就 業規則に 違反
するとの「通 知及び警 告」書を 、そ れぞれの 自宅に内容証 明郵便で 送付
したが両名は これに従 わなかった。
なお、病 院は武谷 労組の組合員 らには、 この件で何ら の処分も 行って
いない。
⒄
Y4部長 は、5月 2日の団体交 渉で、次 回の団体交渉 の期日を 5月7
日に返答する と述べた が 、組合に何 の連絡も しなかった。 このため 組合
は、同月8日 以降度々 団体交渉の日 程を問い 合わせた。同 月 11日、 X1
は、Y4部長 と団体交 渉の日程の確 認をしよ うと総務部に 赴いたが 、同
部長が不在で あったた め 、Y8総務 第一課副 課長と折衝し たが団体 交渉
の日程は決ま らなかっ た。 その後、 X1は食 堂にいる同部 長を見つ け、
暫く待って午 後2時 半 ころ、食堂を出 てきた 同部長に会っ た。そこ で X1
は、同部長に 団体交渉 の日程のこと で話がし たい、同月 18日に団体 交 渉
を行いたいが どうかと 聞いたが 、同 部長は 18日は都合が悪 い、 13日に連
絡するとだけ 言ったの で 、X1が、 上記の団 体交渉の期日 を5月7 日 に
返答すると言 っておき ながら何の連 絡もしな か ったことに 抗議する と、
同部長は忙し かったか らだと言って 立ち去ろ うとした。 そ こでX1 は、
誠意がない、 ちゃんと 説明しなさい 等と言い ながら同部長 の後を追 い、
- 12 -
職務に戻るよ う指示し た同部長の腕 を 摑んだ ところ、ズボ ンのポケ ット
に手を突っ込 んでいた 同部長がこれ を強く振 りほどこうと したため 、ポ
ケットの縫い 目が約 10cmにわたっ て裂けた 。 さらにX1 は、同部 長の
前に立ちはだ かって団 体交渉の日程 の説明を 要求したが 「 どけよ」 と言
って前に進も うとした 同部長と接触 し、 X1 は後方斜めに 同部長の 足の
上にのしかか るように 転倒した。
⒅
5月13日、組合は 、病院に対し 、団体交 渉を引き延ば したこと および
X1を転倒さ せたこと 等に抗議し 、 同月 18日に団体交渉に 応ずるよ う文
書で申し入れ たが 、病 院は、同日付 でこの様 な不当な文書 は受け取 りか
ねますとの内 容の文書 を同封して組 合事務所 に返送した。
⒆
5月8日 、病院は 、賃金制度や 諸規程( 就業規則)の 改善・整 備、機
構・組織図の 整備等総 合的な人事制 度確立を 目的とする人 事制度に つい
ての諮問委員 会を設け るために、手 始めとし て「 賃金・就 業規則改 正・
整備委員会」 を設置す ることとした 。
この委員 会は 、各 職場・職種か ら選出さ れた代表者と 職場長で 構成す
ることとし、 病院は、 前記委員会の 設置のた め各職場・職 種からの 代表
者選出を呼び かけると ともに、第1 回委員会 を同月 17日午後6時か ら開
催することを 全職員に 周知した。
これに対 し組合は 、6月15日付申入書で 諮問委員会が 病院の主 導で作
られたこと 、管理 職が 参加している ことから 、労働基 準法の趣 旨に 反し、
労働者の集団的 意思を正確に反映する組織たり得ないので中止すること 、
就業規則改訂 案を組合 並びに全 労働 者に提示 することを求 めたが 、 病院
は、この申入 書を返送 した。
⒇
武谷労組は6月 24日から、M組合長を三 六協定締結と就 業規則 の作成、
変更に関する 「労働者 代表」に選出 するため の署名活動を 開始し、 ビラ
および署名用 紙を配布 した。 そこで 、組合は 、武谷労組に 対し、 三 六協
定の内容や就 業規則改 訂案が示され ていない 段階での代表 選出は 、 事実
上の白紙委任 になるの で署名活動中 止を申し 入れたが 、聞 き入れら れな
かった。
(21)
⒄、⒅の ような団 体交渉申入れ 等の経緯 の後、病院 が5月 15日 付回答
書 で 、 同 月 18日 の 団 体 交 渉 は 中 止 ・ 延 期 し て ほ し い と 申 し 入 れ た た め 、
組合は、同日の団 体交 渉は行われな いものと 考えて、団体交渉 の会 場に
行かなかった ところ 、病院は、5月 23日付で「全関労の団 交スッポ カシ
に抗議します 」 との見 出しの文書を 職員に配 布した。
また、病院は 、同 月 29日付で「『 生理休 暇をとって遊 びに行っ てもかま
わない! 』と全関 労が 発言( 5.24団交から)」との見 出しの公 報を 、職員
に 配 布 し た 。 こ れ に 対 し て 組 合 は 、 6 月 5 日 付 「 ネ ッ ト ワ ー ク 」 No.35
のなかで「生 理は病気 ではありませ ん …その 時、職場の義 務的・管 理 的
な労働から離 れて精神 的・ 肉体的に 伸び伸び と快適に過ご すのが母 体 保
護にとって一 番よいの です。 …そし て『散歩 』や 『買物』 や 『音楽 を 聴
- 13 -
く』ことが『遊び 』のひ とつであると 言っても 間違いではな いでしょ う。
病院は、生休 中の『散 歩』や『買物 』などを 『遊んでいる 、権利の 濫用
だ』とでも言 うつもり なのでしょう か」と反 論した。
病院は、 組合が提 出した6月 12日付から 7月 11日付までの抗議 並びに
申入書など8 通の文書 を組合に返送 または返 却した。
(22)
6月19日、組合は 、病院に夏季 一時金等 を要求したが 、同月 21日の団
体交渉は 、以前か ら継 続していた賃 金増額等 についてだけ 行われた 。こ
の団体交渉で 病院と組 合は、賃金 増額につ い ては妥結した が、病 院 提案
の新賃金表をはじめと する未解決の事項は 継 続協議とすることで双 方が
確認した。
また、こ の団体交 渉のなかで、 組合が日 曜・休日出勤 の扱いに ついて
詳しい説明を求めた際、Y4部長が、X1とX2に対し「やめちまえ」
「二人がいな くても病 院はちっとも 困りませ ん」などと発 言した。 この
ことについて 、組合は 、6月 28日付文書で抗 議するととも に謝罪を 要求
し、一方病院 は、6月 26日、組合が 「ネット ワーク」で人 事制度改 善諮
問委員会を解 散せよと 主 張し、病院 を非難し ていることを 、病院運 営に
対する敵対・ 妨害行為 と捉え、病院 の考えを 示した総務部 長名文書 「全
関労は妨害行 為をやめ るべきです」 を、職員 に配布した。
(23)
組合の前記 6月 19日の夏季一時 金要求( 月額 ×3.5か月+一律10万円)
に対して、病 院は、6 月 25日付文書 で、方針 はまだ未決定 であると しな
がら「貴組合要 求につ きましては … 非現実的 でふまじめと もいえる もの
であるという 評価を致 しております 」と回答 した。
7 月2日 、一 時金 につい ての団 体交 渉が 行われ たが、 病院 は、 本給 ×
1.25+一律2 万円を回 答し 、次回団 体交渉の 日程を決めな いうちに Y4
部長が席を立 ってしま った。
そして翌 3日 、病 院は、武谷労 組との団 体交渉では夏 季一時金 につい
て、本 給 ×1.45+一律 4万5 千円を 回答 した が、組 合に対 して は、 武谷
労組への回答 と同じ内 容のものを4 日 正午前 に提示した。
(24)
6月21日、X1は、病院看護婦 Nの6歳の男児の視力 検査を行った際、
同看護婦との 会話のな かで「こ の子 、弱視じ ゃない」とか「 この子 、お
く目じゃない 」とか発 言したため、同看護婦 は、Y6総婦 長 に対し 、X1
にひどい対応 をされた と話した。
Y4部長 らはこ れ を問題とし 、 7月10日、X1に対し 、約1時 間余り
にわたり 、
「視能訓 練 士として、主 任として 病院に対する 責任をど うとる
のか考えて答 えをだせ 」等と迫っ た。し かし 、X1は 、Y4 部長 ら が X1
の弁明を一切 無視し 、 同看護婦に対 する発言 そのものを拒 否してい る部
分までも、すべて事実であると断定した上での責任追求であったとして、
病院に対して 何も報告 しなかった。
なお、数 日後、 X 1は、看護婦 Nと食堂 で会った際、 同看護婦 から、
視力の診察を 受けた結 果 、男児がメ ガネをか ければ大丈夫 と言われ たと
- 14 -
聞かされた。 また、同 月 17日X1は 、帰宅し ようとした同 看護婦に 直接
子供のことで 話がした いと伝え、同 月 21日にも自宅に電話 で謝罪し たい
と伝えたが 、
「そ のこ とは病院に言 ってある から、私と は関係な い 」と 話
し合いを拒否 された。
(25)
病院は、処置室の 業務の改善を 意図して 、専門業 者に調査 を依 頼して
いたが、その業 者から 予め処置室勤 務者に業 務内容を書き 出させて おく
ことを求めら れ 、6 月 24日Y6総婦 長 は、X 2に同月26日までに調 査用
紙 〔 質 問 事 項 と し て 、 現 状 の 流 れ ( シ ス テ ム )、 現 状 の 問 題 点 、 改 善 案
の 3 項 目 が 記 載 さ れ て い る 。〕 に 担 当 す る 職 務 の 内 容 を 記 入 し て 、 提 出
するよう指示 した。
同月27日、X2 は 、同総婦長に 調査用紙 の提出を求め られたが 、目的
も趣旨もわか らないの で書けない旨 述べると 、同総婦長は 処置室の 業務
内容や動線の 調査をす るためである とその趣 旨を説明した 。 X2 が さら
に調査用紙が どのよう に使われるの かと質し たところ、同 総婦長が 書け
ばよいと言う のみであ ったため、 X 2は「趣 旨はわかりま したが書 きま
せん、協力し ません」 と言った。
(26)
7月4日、Y 6総 婦長 は、別記 の処置室 の業務調査と あわせて「7月
9日にビデオ を使用し て看護婦の動 線等を調 査する」と X2 に伝え たと
ころ、X2は、患者の プランバシー の侵害に なると反対し た。これ に対
し、同総婦長は 、患者に は判らないところにカメラを置くなどと答えた。
7月6日 同総婦長 は、ビデオ撮 影調査の ことで話があ ると X2 を総婦
長室に呼び出 し 、音声 は断った、患 者への説 明は貼り紙す る、隠し 撮り
などはしない 、具 体的 なことは 、7月9 日に ならないと判 らない旨 述べ、
調査用紙に記 入し7月 10日までに提 出するよ う命じた。
7月6日 、組合は 、病院に対し 、一時金 回答における 病院の態 度に抗
議するととも に 、同月 9日に予定さ れている 処置室におけ るビデオ 撮影
調査に関して 、隠し撮 り等の問題点 を指摘し たうえで、中 止するよ う申
し入れ、同時 に「夏季 一時金ならび に夏季休 暇、LCA調 査 -ビデ オ撮
影調査につい て」を議 題とする団体 交渉を、 同月8日に行 うよう申 し入
れた。
一方病院 は 、7月 6日付で「全 関労は、 病院への敵対 ・妨害・ 中傷を
すぐやめるべ きです 」と題する文書 を職員に 配布した。このなか に は「武
谷病院がそれ ほど嫌い で嫌いでイヤ でしょう がなく 、全て を自分達 の思
い通りにしな ければ気 がすまないの なら、 Y 2支配人 の言 葉の通り 『雇
用されること をやめて 独立独歩』 し た方がす っきりす るの ではない でし
ょうか」との 記載があ った。
8日の団 体交渉で 、病院は、夏 季一時金 および夏季休 暇に関す る議題
のみを取り上 げ 、組合 の要求したビ デオ撮影 調査の件は、 Y4部長 が団
交議題として 取り上げ ること自体拒 否したう え、
「 プライバ シーとは 関係
ない、正当な 業務なの で実施する」 と述べた だけで団体交 渉を打ち 切 っ
- 15 -
た。
また7月 8日 Y6 総婦長 は、X 2を総婦 長室に呼び出 し、ビデ オ撮影
調査のことでのやり取 りがあった後 、Y4部 長 名による警告書 を渡 した。
この警告書に は、組合 は7月9日に 処置室業 務調査に対す るあから さま
な妨害行動を 予告して いるが、病院 は断固た る対応をする との記載 に続
き「あなたが 当該組合 の教唆のもと 妨害行動 を行った場合 は退場を 含む
断固たる処置 を行いま す。さらに、 その不法 行為の度合い に応じ、 貴殿
に対し譴責、 出勤停止 、減給、降格 、さらに は雇用契約の 破棄を含 む処
分・処置を行 いますの で、その由こ こに警告 いたします」 との記載 があ
った。また病 院は、 X 1にも、同日 付で同文 の警告書を渡 した。
(27)
翌9日組合 は、夏 季一時金低額 回答・組 合間差別、処 置室ビデ オ撮影
等に抗議し 、午前9 時 から午後5時 30分まで 全日ストライ キを行い 、始
業時からの集 会には X 1、X2も参 加した。
組合は、 このスト ライキ中「武 谷病院は 人権侵害をや めろ!」 との大
見出しのもと に「本日 病院は、外来 処置室に ビデオカメラ を設置し 、看
護婦の動きを 一日中撮 影記録すると いってい ます。私たち は、看護 婦と
患者への基本 的人権( プライバシー )の侵害 であるから中 止するよ う申
し入れてきま したが、 病院は交渉を 拒否し、 現場の声を無 視して今 日の
ビデオ撮影を 強行しよ うとしていま す。 私た ちは、病院の 組合つぶ し 攻
撃、夏季一時 金低額回 答への抗議、 さらに、 医療労働者( 人間)と して
の責任と誇り をかけ、 病院の人権侵 害に抗議 し、ビデオ撮 影の中止 を求
めて本日スト ライキに 入りました」との記事 のほか、
「 患者さん の 人権が
踏みにじられ る」との 小見出しのも と「処置 室看護婦の仕 事ぶりを 撮影
するというの に『患者 が写らない』 なんて、 ありえないこ とです。 しか
も処置室では 浣腸や心 電図、おしりの 注射な どもするわけ ですから 、
『顔
を写さない』 とか『ビ デオを乱用し ない』な んて言い訳で すむ問題 では
ありません。 それを平 気でやろうと いうので すから、これ は常日ご ろか
ら病院がとれ だけ患者 さんの基本的 人権(プ ライバシー) を無視し てい
るかを示すも ので す」 また「これが 病院の『 人権』理解! 」との小 見出
しのもと「人 権侵害だ 、という私た ちの抗議 に対して、Y 4部長 は 、
『そ
んなこと言え ばテレビ で働いている 人なんか 、みんな写さ れている 』と
まで言いまし た。病院 は、患者さん の人権( プライバシー )を守る ため
に、特に慎重 さと厳密 さが要求され るところ です。それを ビデオに 写さ
れることを仕事にしている人と混同して、人 権侵害を拒否するとは! Y4
部長はいみじ くもいい ました。『これは 人権 に関係ない! 』。 そし て『交
渉議題でもな い』と言 い 、一方的に 交渉をう ちきったので す」との 内容
のビラを、病 院の玄関 前で、来院す る患者や 通行人 に配布 した。
一方病院 は 、同日 「患者さんへ 」とのお 知らせを来院 した患者 に配布
したが、これ には「こ の団体に所属 している 当院職員は2 名のみ」 とか
「本日この団 体が不法 に配布してい るビラは 全く事実と異 なったも ので
- 16 -
あります 」「当院 は妨 害に屈しませ ん」と記 載されていた 。
なお、病 院が行う 予定であった 当日のビ デオ撮影調査 は行われ なかっ
た。
(28)
組 合 は 、 こ れ よ り 先 の 6 月 24日 に 東 京 都 知 事 お よ び 当 委 員 会 に 対 し 、
ビラ配布禁止 の業務命 令および懲戒 処分 、3 年度夏季一時 金等、新 賃金
体系に関する 問題を争 議行為の目的 とし 、同 年7月5日以 降問題解 決の
日まで、病院 において 、全部または 一部の組 合員によるス トライキ 、怠
業その他あら ゆる形式 の争議行為を 実施する 旨の通知を行 った。
(29)
X2は、Y4部長 に対し、7 月8日の 団 体交渉打切り への抗議 と処置
室業務調査等 についての7月 11日付団 体交渉 申入書を提出するとともに、
調査用紙を返 却した 。
一方、Y 6総婦長 は、7月10日および11日、仕事のこ とで話が あるか
らと総婦長室 に来るよ う再三、X2に電 話を 入れた。これに対 して 、X2
は、同総婦 長に具体 的 な用件を 質し たところ「来てから 話します 」
「来れ
ばわかります 」などと 繰り返すのみ であった ため 、前記7 月9日の スト
ライキに対す る嫌がら せの呼び出し ではない かと考え、組 合の指 示 に従
って呼び出し に応じな かった。
そこで、 病院は、 X2の自宅に 翌 12日付内容証明郵便 で、「あ なたは、
7月10日および7月 11日Y6総婦長 から業務 上の指示があ るので、 婦長
室に来るよう 再三にわ たる命令を受 けたにも かかわらず 、
『 用件 がは っき
りしなければ 行けない 』
『組合 のことな ら行 きません』などと発 言 し、命
令を無視し続 けた。 あ なたは、勤務 時間中は 総婦長 をはじ め上司の 命 令
を、用件がは っきりし ないというこ とだけで 正当な理由な く拒否す るこ
とはできませ ん。今後 は、上司の命 令に従い 、業務のため の指示を 忠 実
に守ってくだ さい」 と いった内容の 「注意お よび警告」書 を送付し た。
さらに翌13日の夕方に も同総婦長は 、 X2を 呼び出したが 、 X2 は 同室
のY9副主任 に 「行っ てきます」と 伝えて処 置室を出たが 、結局総 婦長
室には行かな かった。
(30)
7月13日、病院は 、組合に対し 、玄関前 のストライキ は一切行 わない
ように、また、当日 X 2が白衣を着 たまま玄 関前のトラッ クの上で 足を
組んでアイス クリーム を食していた のは 、病 院の看護婦の 名誉と誇 りを
傷つける恥さ らしの行 為であるとの「抗議と 申し入れ」書 を送付し 、さ
らにその同文 を拡大コ ピーし、前記の看 護婦 の名誉と誇り を傷つけ る恥
さらしの行為であるとの部分を赤いマジックの傍線を付し同日から2 週
間程、食堂内と 廊下の 2か所に貼り 出した。これに対し、組 合は、7月
22日病院に、 この貼り 紙を撤去する よう文書 で申し入れた 。
(31)
7月11日、組合は 、病院に対し、前 記 (29)の団体交渉打 ち切りの 抗議と
処置室業務調 査等につ いての団体交 渉申入書 で 、夏季一時金 等につ いて
も7月12日か13日に団体交渉を行う よう申し 入れた。
一方病院 は 、7月 11日武谷労組 との間で 夏季一時金交 渉が妥結 したの
- 17 -
で、翌12日に武谷労組 組合員と非組 合員に対 し夏季一時金 を支給す ると
の「お知ら せ」を掲 示 し、
「公 報7・上期賞 与支給にあた って」と 題する
文書を職員に 配布した うえ、 X1、 X2以外 の全職員に夏 季一時金 を 支
給した。
また武谷 労組は 、 同月11日「組合速報」 を就業時間内 に配布し 、一時
金が妥結した ことを報 じるとともに 、病院が 秋に臨時昇給 を行うこ とを
約束したこと 、妥結に いたる交渉経 過として 10日夜の交渉 で第3次 、第
4次の回答が なされ、 翌 11日昼の交 渉で提示 された第5次 回答で妥 結し
たこと、妥結 額は正社 員について 1.51+54,300円であるこ とを報じ た。
同月13日の団体交 渉で、病院は 、武谷労 組との間で病 院の存続 と発展
についての理 念的合意 の確認事項を 「覚書」 として交わし たので、 組合
がこの「覚書 」と同内 容で合意しな いかぎり 武谷労組と同 一の回答 はし
ないと述べた 。
この「覚 書」には 、
「組合 と病院は、武 谷病院の地域 医療ニー ズにより
一層応えられ る病院と しての存続と 発展、医 療労働者の社 会的役割 にふ
さわしい生活 と 権利・ 福利厚生の向 上、診療 報酬の大幅引 き上げ、 お よ
び全社会的な 看護婦不 足の解消につ いて積極 的に意見交換 し、それ ぞれ
の立場で取り 組む」と 記載されてい た。
そこで組 合は 、こ の「覚書」に ついて検 討する旨を表 明し休憩 に入っ
たが、休憩後 の交渉で 、病院は、夏 季一時金 支払いの条件 として、 組合
がこれまで病 院の信用 や名誉を傷つ けた行為 を謝罪するこ とを付け 加え
たため、組合 がこれに 反発し、交渉 は決裂し た。
(32)
7月15日、組合は 、病院に 対し前記 13日 の団体交渉を 決裂させ たこと
に抗議し、同月 18日か 19日に団体交 渉を行う よう申し入れ たところ 、同
月17日病院は 、組合に 対し、改めて 組合が撤 回・謝罪する 具体的内 容を
列挙し、その 末尾に「 貴組合との団 体交渉の 再開には、貴 組合が当 院よ
りの当然の条件を誠 実 に検討する意思を持つ ということが必要と考 えま
す」と記載さ れている 「通知書 」(同月 15日 付)を手渡し た。
この件に ついて組 合は 、上記7 月 15日付通知は差し違 え条件に よる団
交拒否である として 、 同月22日に当委員会に 不当労働行為 の救済を 申し
立てた(都労 委平成3 年 不第32号事件)。
(33)①
7月18日、X2 は、患者 に注射を しよ うとしてい た 午前9時 15分こ
ろ、処置 室に立ち 寄っ た Y6総婦長 から 、内 科へ応援に入 るよう指 示
された。そこ で X2は「注射をして から行き ます」と答え たのに対 し、
同総婦長が「私がやります、すぐ内科へ行くように」と言ったため、
「 何 故 、 内 科 に 入 ら な け れ ば な ら な い の か 」「 内 科 に 行 っ て も 何 も わ
からないのに 」などと 言いながら内 科へ向か った。
②
7月22日、 X2は 、患者が途切 れた午前 11時30分ころ、Y6総 婦長
か ら 、 今 の う ち に 包 布 を 替 え る よ う に と 指 示 さ れ た の に 対 し 、「 大 丈
夫です、後で 充分でき ますから」と 述べた。 同総婦長はそ れ以上の 指
- 18 -
示をせず、自 らこれを 行ったが、 X 2は午後 になって同総 婦長のや り
残した包布替 えを行っ た。
③
8月3日 、 X2は 、Y10病棟婦長から内 科へ応援に入 るよう指 示さ
れたが、同日 午前 10時から処置室業 務調査に 関する説明が 実施業者 に
より行われる 予定であ ったので、内 科に入っ てもすぐ調査 に呼び出 さ
れるがよいの かと指示 を仰いだとこ ろ、同病 棟婦長は、内 科が忙し く
なったら声がかかるから、その時に内科へ入って下さいと指示した。
(34)
7月24日、Y6総 婦長 は、X2 を総婦長 室に呼び出し たうえ「 今日は
なぜ来たので すか 」「 あなたの看護 観 を言い なさい」「看護 科のチ ーム の
一員として看 護につい てどう考えて いるので すか」な どと質問 した 。こ
れに対してX 2 は「い ろいろな看護 婦が患者 に関わるので 個人プレ ー で
は良い看護は できない と思う」「チー ムの一 員として考え ている 」「看護
観については うまく答 えられない」等と述べ た。しかし、同 総婦長 は「そ
うではなくて、わたし の質問に答えなさい」というばかりであったため、
X2は「これ 以上答え られません」 と言って 退出した。
(35)
7月24日、X1 は 、視力検査 を行うた め カルテ記載の 患者の名 前を呼
んだところ別 の患者が 入室して きた のに気づ かず 、カルテの 患者と して
視力検査を行 い、その 検査結果をカ ルテに記 載した。
X1は、 Y11眼科看護主任から 、カルテ の患者が視力 検査をま だ受け
ておらず、視力検査 を受ける必 要のない患者 を検査したことを指 摘 され、
カルテに過誤 の記載を したことに気 づき 、視 力検査を受け る必要の なか
った患者に謝 罪しよう と捜したが既 に立ち去 っていた。そ の後 X1 は、
視力検査を受 けるべき 患者に事情を 説明して 謝罪し 、改め て屈折検 査を
行った。
Y5検査 科長 が同 月26日、X1 にカルテ の過誤の経緯 について 事情を
聴取したが、 X1 はま ともに対応し なかった 。
(36)
同月26日、組合は 、病院に対し「去る 7 月 19日病院医 局会は『 全関労
スト反対決議 』をあげ 、同日、医事 課管理職 …ら三名の呼 びかけに よる
『全関労スト 反対署名 』なるも のが開始 され た …このよう な重大な 法違
反・権 利侵害行 為が … 貴病院の指示 もしくは 意を体して行 われてい るこ
とは明らかで ある 」と の抗議とスト 反対決議 の撤回および スト反対 署名
の中止・破棄 を申し入 れた。
(37)①
7月26日、X1 は、Y5検査 科長 から 、6月 21日に病院看護 婦Nの
6 歳 の 男 児 の 視 力 検 査 に 際 し 、「 こ の 子 弱 視 じ ゃ な い 。 こ の 子 お く 目
じゃない」など と発言 し 、同看護婦を 傷つけ たことについ て、その 責
任の取り方等についての事情聴取のため、電 話で呼び出しを受けたが、
電話口で自分 の考えを 述べただけで 、呼び出 しに応じなか った。
その後X 1 は、同 検査科長が事 情聴取の ため眼科に出 向いてき た折
に も 、「 何 も 話 す こ と は あ り ま せ ん 」 と 言 い 、 同 検 査 科 長 が 立 ち 去 っ
た後、眼科に 勤務して いるパートの 医師に対 し「今のチャ ンバラ面 白
- 19 -
かったでしょ う」等と 言った。
②
7月25日、病院は 、新しい名札 (名 前、 職種、所属の 他に新た に職
位が加えられ たもの) ができた旨を 職 員に知 らせた。そし て Y5検 査
科長が新しい 名札を配 布して着用を 指示した 。 その際、X 1は「考 え
ておくわ 」と言っ てそ の場では着用 せず 、翌 26日午後5時半こ ろに も、
眼科職員の休 憩室で同 検査科長が 、 昨日渡し た名札をどう して着け な
いのかと聞い たところ 、 X1は「い ま、考え ているところ です。い ろ
いろあるので 」と答え た。
また 、Y6総 婦長 は同日、処置室で X2 に名札の着用 を指示し たが、
X2は「いま、組合として考えています」と述べ、着用しなかった。
組合の名 札に係る 検討結果を踏 まえ 、X 1、X2は同 月29日から名
札を着用した 。 なおこ の間の 27日(土曜)に は X1とX2 は休暇を 取
り、28日(日曜)は休 日であった。
X1およ び X2は「『名札 』に『職位』はいらない! 」との 見 出しで
「患者さんと の関係か らいえば、名 札はつけ るべきだと考 えるが、 職
位は自分が役 職につい ていることを 他人 に誇 り、そのこと で患者さ ん
から信頼されると思い違いしている。患者さんにとって重要なのは、
病院や医療労 働者が 、もっと権威主 義的でな くなることだ と思いま す」
等 と の 内 容 の 8 月 5 日 付 「 ネ ッ ト ワ ー ク 」 No.43を 昼 休 み 時 間 に 配 布
した。
(38)
9月3日 、X 2は 、ビデオ 撮影調査 につ いて業者から の説明を 受けた
際、ビデ オ撮影は 人権 侵害になるの で、患者 の立場にたっ て調査す るよ
う業者に申し 入れた。
同月6日 、X 2 は 、Y6総 婦長 の指 示( 前記第1 、3(25)に記載)どお
り処置室業務 の一日の 流れなどを記 載したレ ポートを提出 したとこ ろ、
Y6総婦長か ら今まで 拒んでいたの に何故協 力しようと思 ったのか と執
拗に質問され たため 「
、 あなたに私の 考えなど わかって頂か なくても 結構
です」と大き な声で言 い、制止を聞 かず総婦 長室を飛び出 し、その 後の
呼び出しにも 応じなか った。
(39)
8月13日、病院は 、X1には 正午過ぎ 、 X2には午前11時過ぎ に、そ
れぞれ「通 知書」を手 渡した。 こ の通知書 に は「別紙記 載事項に つ いて
の事情説明及 び意見陳 述を得たいの で、下記 により出席し て下さい 。 あ
なたの自己の行為について弁明する機会を持つことができます。 なお、
あなたが定刻 に来室し ない場合は 、弁 明の機 会を放棄した ものとな りま
す」と記載 されてお り 、X1には 、当日午 後 1時、X2 には、当 日 午後
3時30分の呼び出し時 刻が記載され ていた。
なお、別 紙には、 主として両名 に対する 解雇の理由と なった項 目を列
記し、質問あ るいは釈 明を 求める内 容が記載 されていた。
組合は、 この別紙 に記載されて いる内容 が、組合活動 に係わる 事柄で
あるので、組 合として 対応すること とし、同 日午後0時 40分ころ、 X1
- 20 -
は分会長とし て Y5検 査科長 に対し 「この内 容は組合に関 すること なの
で、組合に申 し入れて 下さい」と伝 え、 X1 、X2とも呼 び出しに は応
じなかった。
(40)
Y4部長 、Y5検 査科長 らが翌14日午後 4時半過ぎ 、X1の 職 場に来
て要件も言わ ずに文書 の入った封筒 を手渡そ うとしたため 、同 人が 受取
りを拒否した ところ 、Y4部長は「 8月 15日付で解雇する 。明日か ら来
なくてよい」 と口頭で 通告した。
Y4部長 らは 、そ の後処置室に 行き X2 に対しても同 じ内容を 口頭で
通告した。
病院は 、同日付 解 雇通知書を 、X1 、X 2の自宅にそ れぞれ郵 送した。
それによると 、 13日に弁明の機会を 与えたが 出席しなかっ たので、 後記
解雇理由(追 加解雇理 由は除く)が 懲戒処分 事由に該当す るので、 就業
規則第26条により懲戒 解雇するとい うもので あった。
なお、病 院の就業 規則には、懲 戒処分の 規定はない。
(注)就業規 則
第25条
次に 掲げる各 号に該当する 場合は、 30日前に予告 するか又 は
予告せず 30日分の平均 賃金を支払い 解職を命 ずる。
但し解職 決定に際 しては 、所属 長及び関 係員の意見を 充分聴
取する。
①
精神若し くは身体 に障害を生じ 、又は虚 弱、老年、傷 病の
ため業務に耐 えられな いと認めた場 合
②
無届け又 は正当な 理由がなく欠 勤が 30日に及んだ場合
③
著しく技 能が劣り 、上達の見込 みなく、 又は勤務怠慢 で成
績不良であり 職員とし て不適当と認 められた 場合
④
天災事変 、その他 やむを得ない 事由の為 事業の継続が 不可
能となった場 合
⑤
事業の縮 小又は合 理化の必要に より冗員 となり他に適 当な
配置箇所がな い場合
第26条
次に 掲 げる各 号の一に該当 する場合 は労働基準監 督署長の 認
定を得た上で 、予告期 間なしで解雇 する。但 し当事者には 弁明
の機会を与え る。
①
職務を著 しく怠っ た者
②
病院の命 令、規定 に反した者
③
病院の品 位を傷つ けた者
④
業務上の 機密を他 にもらし、又 はもらそ うとした者
上記解雇者に は退職金 は支給しない 。
但し、情状に より一部 支給すること がある。
第40条
職員 は服務に あたり次の事 項を守ら なければなら ない。
①
当院内外 を問わず 職員とて品位 を保ち、 秩序を守り当 院の
名誉信用を傷 つけたり 風紀を乱して はならな い。
- 21 -
②
就業規 則 それに付 属する諸規定 、上司の 職務上の指示 に忠
実に従うこと 。
③
勤務時間 中は職務 の遂行に専念 すること 。
④
常に研究 に励むと ともに事前に 綿密な計 画を立てて業 務に
臨み 、患者の 心情を理 解し、公私と も言動に 注意し患者及 び
近親者の安心 と信頼を 得るように努 めること 。
⑤
就業に際 しては所 定の服装を正 しく着用 し、名札をつ ける
こと。
(以下略)
(41)
8月29日、組合は 、病院に対 し、X 1、X2の解雇問 題を議題 とする
団体交渉を申 し入れた が 、病院はこ れに応じ ていない。
なお、このこと に ついて、本 件申立て 後 も組合は、団体交渉 を 拒否し、
団体交渉の申 入書の受 け取りすら拒 んでいる 病院の対応に 抗議する とと
もに、東京地 裁や当委 員会で X1、 X2の解 雇の件につい て「審理 中」
であることを もって 、 病院の団体交 渉等によ る自主的解決 にむけた 努力
を払う義務は なんら軽 減されないと して団体 交渉を申し入 れたが 、 病院
はこれにも応 じていな い。
4
X1に対 する解雇 通知書等
病院がX 1に対し て発令した 、 平成3年 8月 14日付解雇通知書 および懲
戒処分事由は 次のとお りである。
〔解雇通知書 〕
「当院は 平成3年 8月13日、あなたにた いし、平成3 年8月 13日付通
知別紙記載事 項につい ての弁明の機 会を与え ましたが 、あ なたは、 これ
に出席しませ んでした 。よって、別紙『 X1 視能訓練士の 懲戒処分 事由』
記載のとおり 、あなた を就業規則 26条、第1 号、2号、お よび3 号 に基
づき平成3年 8月 15日付で解雇いた します 。(以下略 )」
〔懲戒処分事 由〕
「処分 」として 、
「 就業規則第 26条に基づ き懲戒解雇す る」と記 載され、
懲戒の理由と して次の 各項を挙げて いる。
⑴
ビラ(ネ ットワー ク 23号7頁下 段)に精 神障害に関す る虚偽の 事実を
書いて配布し 、この件 に関して、事 実を特定 して根拠を明 らか にせ よと
いう病院より の命令に 従わなかった。虚偽で ないこと(真実 である こと)
の証明ができ ず 、且つ 虚偽事実を記 載したビ ラを配布した ことに対 する
反省がない。 実質的に は病院の名誉 ・信用の 毀損であり、 手続的に は業
務命令違反で ある。
⑵
平成2年12月1日 、あたかも病 院が組合 に対する攻撃 のビラを 配布し
たり、職員に いたずら 電話等の嫌が らせをし たという内容 の虚偽の 事実
を掲載したビ ラを 、清 瀬駅頭で配布 し、病院 の名誉・信用 を毀損し た。
しかるに、本 人 に全く 反省がみられ ない。
⑶
Y6総婦 長 が患者 から組合ビラ を回収し たという虚偽 の 事実を 書いた
- 22 -
ビラを配布し 、病院 管 理職にたいし ての誹謗・中傷を行 って病院 の 名誉・
信用を毀損し 、職場秩 序を乱した。 しかるに 、本人 に全く 反省がみ られ
ない。
⑷
当院のY 7顧問を 「労務ゴロ」 などと誹 謗中傷し、当 院の名誉 ・信用
を傷つけた。
⑸
病院が、 勤務時間 中に行った職 員の意識 調査(仕事・ 職場に対 する満
足度を調べる アンケー ト) を、正当 な理由な く拒否したの みならず 、妨
害宣伝をおこ なったこ とは 、職場秩 序攪乱で ある。しかる に、本人 に全
く反省がみら れない。
⑹
業務調査 のための インタビュー を、正当 な理由なく拒 否し、最 終的に
はインタビュ ーに応じ たとは言え、 1か月以 上にわたり調 査をとど こお
らせ、病院に 損害を与 え、何等の反 省もなか った。上司に たいし反 抗的
態度で、業務 命令を無 視し続けた。 しかるに 、なんら反省 がない。
⑺
1ヶ月以 上にわた り、明らかに 患者に嫌 悪感をいだか せる真っ 赤なリ
ボンを着用し 、再三に わたる取り外 しの命令 を拒否した上 、上司に 対し
て、下品で 反抗的態 度 を示した。さらに 、白 衣の上に赤い 腕章を着 用し、
患者も居て、 他の職員 が業務遂行中 の院内を 徘徊し、無許 可のビラ を配
布した。これ らのこと は職務専念義 務や服装 について定め た服務規 律 違
反および業務 命令違反 であることが 明らかで ある。しかる に、本人 に全
く反省がない 。
⑻
Y4総務 部長 に大 声をだしなが ら つきま とい、腕をつ かんだり 、通行
を妨害し、体 当たりを し、それによ り同人の ズボンのポケ ットが破 けた
り足を捻挫し たりの被 害・障害を与 え、同人 のその後の職 務に支障 をき
たさせた。こ の行為は 、職場秩序攪 乱および 業務命令違反 である。
過去にも 二度にわ たり類似の行 為を行い 、譴責処分を 受けてい るにか
かわらず、同 様の行為 を繰り返しな んら反省 がない。
⑼
「常日頃 から、病 院が日頃から 患者の基 本的人権(プ ライヴ ァ シー)
を無視してい る」 とい う虚偽の事実 を掲載し たビラを、無 許可で患 者に
配布し、病院 の名誉・ 信用を傷つけ た。
⑽
Nさんの 子供の眼 科検査を行っ た際 、「 この子弱視じ ゃない 」「この 子
おく目じゃな い」
「 こ の子何をする にもいい 加減なんじゃ ない」な どと患
者と母親を前 にして発 言し、親子と もひどく 傷つけた。こ の件に関 して
の責任のとり 方につい ての上司の指 示を無視 し 、患者親子 に対して も、
病院に対して も何等責 任をとらなか ったこと は服務規律第 4号およ び第
2号違反(就 業規則第 40条第2号お よび第4 号)にあたり 、無責任 で職
務怠慢で職員 と して不 適格である。
⑾
カルテに 別人のデ ータを記載す るという 重大なミスを 犯したに もかか
わらず、事後 処理もず さんで、反省 もなく無 責任であり、 かつ服務 規律
第4号違反( 就業規則 第 40条第4号 )および 職務怠慢であ る。
⑿
以下の① から ③は いずれも平成 3年7月 26日のもので あり、上 司より
- 23 -
の指示命令違 反、上司 への反抗、ま たは病院 の名誉・信用 の毀損の いず
れかまたは全 てに該当 する。
①
上記9項 、 10項について事情を 聞こうと した上司の呼 出を二度 にわ
たり拒否し、わざわざ出向いた上司に対し、反抗的態度をとった上、
最後には無視 した。
②
再三にわ たる名札 着用の命令を 無視し続 けてきた上、 新しい名 札が
職員全員に配 布された ときも 、すぐ に着用せ ず、上司から の着用の 指
示にも「考え てる」等 と言い 、正当 な理由な くこれを拒否 し、反抗 的
態度を示した 。
③
さらに、 同日、上 司が立ち去っ たあと眼 科にパートで 勤務して いる
医師に「今の チャンバ ラ面白かった でしょ」 などと上司お よび上司 よ
りの指示を愚 弄する発 言を行った。
⒀
以上の各 事実は、 それぞれ重大 な服務規 律違反行為で あり、全 体を総
合評価すると 懲戒解雇 せざるをえな い。
なお、懲 戒に先立 ち、平成3年 8 月13日、午後1時よ り本人 に 弁明の
機会を与えた が 、1時 20分になって も来室し ないで弁明を 拒否した 。 13
日正午、本人 に Y5検 査科長 より弁 明の機会 についての通 知を渡す 際、
科長のところ までとり にくるよう告 げたにも かかわらず 、 本人が拒 否し
たため、科長 が眼科外 来に手渡しに 行くと、 本人が通知書 を一読し て、
部屋に戻ろう とした科 長を呼び止め 、外来で 大声で、
「 これ全部 組 合に 関
することじゃ ない」 と 述べた。科長 は場所を 変え本人 に真 意を確か める
と「全て組合 に関する ことだから行 かない」 と明言した。
5
X2に対 する解雇 通知書等
病院がX 2に対し て発令した 、 平成3年 8月 14日付解雇通知書 および懲
戒処分事由は 次のとお りである。
〔解雇通知書 〕
「当院は平成 3年8月 13日、あなた にたいし 、平成3年8 月 13日付通知
別紙記載事項 について の弁明の機会 を与えま したが、あな たはこれ に出
席しませんで した。 よ って、別紙『 X2看護 婦の懲戒処分 事由』 記 載の
とおりあなた を就業規 則 26条、第1 号、2号 、および3号 に基 づき 平成
3年8月15日付で解雇 いたします 。(以 下略)」
〔懲戒処分事 由〕
「処分」とし て 、「就 業規則第 26条に基づき 懲戒解雇する 」と記載 され、
懲戒の理由と して次の 各項を挙げて いる。
⑴
ビラ(ネ ットワー ク 23号7頁下 段)に精 神障害に関す る虚偽の 事実を
書いて配布し 、この件 に関して事実 を特定し て根拠を明ら かにせよ とい
う病院よりの 命令に従 わなかった。 虚偽でな いこと(真実 であるこ と)
の証明ができ ず 、且つ 虚偽事実を記 載したビ ラを配布した ことに対 する
反省がない。 実質的に は病院の名誉 ・信用の 毀損であり、 手続的に は業
務命令違反で ある 。
- 24 -
⑵
平成2年12月1日 、あたかも病 院が組合 に対する 攻撃 のビラを 配布し
たり、職員に いたずら 電話等の嫌が らせをし たという内容 の虚偽の 事 実
を掲載したビ ラを 、清 瀬駅頭で配布 し、病院 の名誉・信用 を毀損し た。
しかるに、本 人に全く 反省がみられ ない。
⑶
Y6総婦 長 が、患 者から組合ビ ラを回収 したという虚 偽の事実 を書い
たビラを無許 可で配布 し、病院管理 職にたい しての誹謗・ 中傷を行 って
病院の名誉・ 信用を毀 損し、職場秩 序を乱し た。しかるに 、本人 に 全く
反省がみられ ない。
⑷
当院のY 7顧問を 「労務ゴロ」 などと誹 謗・中傷する ビラを無 許可で
配布し、当院 の名誉・ 信用を傷つけ た。
⑸
病院が勤 務時間中 に行った、職 員の意識 調査(仕事・ 職場に対 する満
足度を調べる アンケー ト )を、正当 な理由な く拒否したの みならず 、妨
害宣伝をおこ なったこ とは職場秩序 攪乱であ る。 しかるに 、本人 に 全く
反省がみられ ない。
⑹
1ヶ月以 上にわた り明らかに患 者に嫌悪 感をいだかせ る真っ赤 なリボ
ンを着用し、 再三にわ たる取り外し の命令を 拒否した上、 上司にた いし
て反抗的態度 を 示した 。さらに、白 衣の上に 赤い腕章を着 用し、患 者も
居て他の職員 が業務遂 行中の院内を 徘徊し 、 無許可のビラ を配布し た。
これらの ことは職 務専念義務や 服装につ いて定めた服 務規律違 反 、上
司への反抗 、およ び業 務命令違反で あること が明らかであ る。しか るに、
本人に全く反 省がない 。
⑺
処置室業 務改善の ための調査用 紙記入を 命令されたに もかかわ らず、
正当な理由な くこれを 拒否し 、上司 に対して 反抗的態度を 取り続け 、1
ヶ月にわたり 調査を滞 らせ全く反省 がない。 業務命令違反 であり、 職務
怠慢であり、 拒否理由 は職員として 不適格で ある。
⑻
「常日頃 から、病 院が患者さん の基本的 人権(プライ ヴァシー )を無
視している」 という虚 偽の事実を掲 載したビ ラを、無許可 で患者に 配布
し、病院の名 誉・信用 を傷つけた。
⑼
総婦長よ り業務上 の呼出を受け たにもか かわらず、正 当な理由 なく、
3日続けてこ れを拒否 した上、呼出 に応じる よう指示した 副主任に たい
し、呼出に応 じるふり をして、結局 行かなか ったことは業 務命令違 反、
および職務怠 慢にあた る。 しかるに 本人 に全 く反省がない 。
⑽
総婦長より業務上 の指導のため質問を受 けたが、
「 答 えたく有 りません」
の一点ばりの 反抗的態 度で、指導を 拒否した ことは、上司 への反抗 、 業
務命令違反 、およ び職 務怠慢にあた る。しか るに本人 に全 く反省が ない 。
⑾
総婦長よ り名札を つけるよう指 示された 際、命令に従 わず反抗 的態度
を示し続けた ことは 、 上司への反抗 、業務命 令違反、およ び職場秩 序攪
乱にあたる。 しかるに 本人に全く反 省がない 。
⑿
本人に対 し、総婦 長が業務上の 指導をし ている途中、 突然大き な声を
だし、制止も きかず総 婦長室を飛び 出し、そ の後も呼出に 応じなか った
- 25 -
ことは上司に 対しての 反抗、業務命 令違反、 および職務怠 慢にあた る。
しかるに本人 に 全く反 省がない。
⒀
次の①か ら③ まで は、いずれも 上司への 反抗、業務命 令違反、 および
職務怠慢にあ たる 。
①
平成3年 7月 18日、Y6総婦長 より内科 に応援に入る よう指示 され
たにもかかわらず、速やかに従わず、患者の前で反抗的態度を示し、
業務を滞らせ た。
②
平成3年 7月 22日、Y6総婦長 からの包 布替えの指示 に従わな かっ
た。
③
平成3年 8月3日 、総婦長、内 科主任不 在の際、 Y10病棟婦長 より
の内科への応 援の指示 に、速やかに 従わず、 反抗的態度を 示し、業 務
を滞らせた。
⒁
以上の各 事実は、 それぞれ重大 な服務規 律違反行為で あり、全 体を総
合評価すると 懲戒解雇 せざるをえな い。
なお、懲 戒に先立 ち、平成3年 8月 13日午後3時30分より本人 に弁明
の機会を与え たが、3 時 45分になっ ても来室 せず、その後 20分待っ ても
連絡がなかっ たことか ら 、弁明を拒 否したこ とは明らかで ある。 13日午
前、本人にY 6総婦長 より、弁明の 機会につ いての通知を 手渡した 後、
一読して、同 僚の前で 「なによこれ 」等と言 いながら、大 笑いをし た事
実もある。
6
病院は、 6年1月 12日提出の準 備書面4 において、 X 1および X2 の解
雇理由として 、次の事 項を追加した 。
⑴
3年7月 9日、申 立人らが実施 したスト ライキは、労 働関係調 整法第
37条の事前予 告を欠く 違法な争議行 為であり 、これに主体 的に参加 した
両名の行為も また違法 行為であり 、 分会長と して X2を参 加させた X1
の行為は、二 重の違法 行為である。 また組合 からの具体的 日時の争 議予
告は争議開始 後に 、病 院に対してだ けなされ たものであり 、この争 議予
告は不適法で あって 、 争議行為も違 法である 。
⑵
X1は、 病院内で の文書の配布 について 、 ①昭和63年8月13日より前
に、Y2事務 長 から院 長の許可をと るよう指 示されたのに 、この指 示に
従わず、②平 成2年 10月2日、病院 が院長の 承認を得るよ う通達し たの
に、この通達 に従わず 、③平成2年11月2日 、病院から X 1に直接 業務
命令をだした のに 、こ の命令に従わ ず、 ④平 成2年 12月5日譴責処 分を
受けても態度 をあらた めず、昭和 63年8月13日から平成3 年8月5 日ま
での長期間に わた り、 院長の承認を 得ないで 病院内におい て、多数 回に
わたり文書を 配布した 。この行為は 、就業規 則第 41条第4号に違反 し、
同第26条第2号に該当 する。
⑶
X2は、 病院内で の文書の配布 について 、 ①平成2年10月2日 病院が
院長の承認を 得るよう 通達したのに 、この通 達に従わず、 ②平成2 年 11
月2日病院が X2 に直 接業務命令を したのに 、この命令に 従わず、 平成
- 26 -
2年4月14日から平成 3年8月5日 までの長 期間にわたり 、院長の 承認
を得ないで病 院内にお いて 、多数回 にわたり 文書を配布し た。この 行為
は、就業規則 第 41条第4号に違反し 、同第 26条第2号に該 当する。
⑷
X2は、 平成元年 3月、第2子 出産後復 職し、処置室 勤務とな った。
処置室には患 者用のベ ッド2 台が配 置されて おり、処置室 の入り 口 ドア
ーは常時 開放 しておいて、患者 の出入 りを容 易にすることになっていた。
これは、X2 が昼休み 時間中であっ ても、他 の者が処置室 で患者の ため
に処置業務を 行うこと ができるため のもので ある 。
しかるに X2 は、 平成2年2月 頃から同 年 12月末頃ま での間、 婦長の
指示に従わず 頻繁にベ ッドの内一台 を 、急患 用と称して通 常の患者 の処
置用に使用せ ず 、かつ 自己の昼休み 時間と称 して、 入口ド アーを閉 鎖し
て病院の業務 を阻害し 、職務を著し く怠った 。この行為は 、就業規 則第
26条第1号に 該当する 。
第2
判断
1
当事者の 主張
⑴
申立人の 主張
X1は昭 和63年12月看護助手解 雇問題以 降、組合活動 の先頭に 立ち、
後に分会を結 成して分 会長となり 、 X2も平 成2年4月以 降は、組 合員
としての立場 を明らか にして 、積極 的に組合 活動を行い、 両名とも 病院
における労働 条件改善 に取り組んで きた。
しかし病 院は 、特 に平成2年8 月に Y4 部長 が就任し て以降は 、かか
る組合活動を 嫌悪敵視 し、様々な手 段を講じ て組合活動を 抑圧しよ うと
したが、目的 が果たせ なかったため 、分会を 壊滅させる意 図で、両 名を
病院外に放遂 するため 懲戒解雇した もので 、 労働組合法第 7条第1 号お
よび第3号に 該当する 。
また、こ の解雇問 題を議題とす る団体交 渉を拒否した ことは、 同法同
条第2号に該 当する不 当労働行為で ある。
⑵
被申立人 らの主張
X1およ びX2 の 解雇は 、いず れも職員 としての言動 が、病院 の就業
規則第26条に該当する ことによるも のであっ て 、いずれも 合理的な 理由
が存在する。 そもそも 職員は病院が 雇用して いるのであっ て、その 職員
の職務行為に ついて 、 病院に指揮・ 命令権が あるのは当然 である。 この
指揮・命令権が 、労働組 合活動の口実 のもとに 制限されるも のではな い。
しかるに 、両名は 、労働組合活 動の名の もとに、日常 的に上司 に対し
反抗的態度を 示し 、上 司の指示にこ とさら反 発し、病院の 名誉と信 用を
傷つけ、ひい ては病院 の職場秩序を 混乱に陥 れる行動を繰 り返し、 反省
の態度が見ら れなかっ た。 また、解 雇決定前 の弁明の機会 すら、自 ら放
棄したのであ る。
また、病 院は、両 名を解雇した 後は、病 院に組合員が おらず病 院と申
立人との関係 はない。 したがって、 病院が申 立人の団体交 渉要求を 承 諾
- 27 -
する義務はな い。
2
当委員会 の判断
病院は、 X1およ び X2に対し 両名の行 為が就業規則 第 26条の解雇事由
に該当すると し、譴責 処分あるいは 懲戒解雇 処分に及んで いるが、 病院の
就業規則には 懲戒処分 事由および懲 戒処分の 種類を定めた 規定はな く 、解
雇に関しては 通常解雇 (病院就業規 則第 25条)のほか、一 定の事由 に該当
する場合につ いて退職 金の全部又は 一部を支 払わないで即 時解雇す る旨を
定めた第26条があるの みである。 従 って、 X 1およびX2 は、即時 解雇さ
れたものとみ るべきで ある。
よって、以下即時 解雇理由(以 下「解雇 理由」という 。)と さ れた申立 人
らの行為につ いて判断 する 。
[1]X1お よび X2 に対する解雇 通知書の 解雇理由につ いて
⑴
X1の解 雇 理由第 1、4 ⑴・X 2の解雇 理由第1、5 ⑴
病院は、 病院が職 員に精神分裂 症の診断 書を提出させ 、依願退 職に
追 い 込 ん だ 旨 記 載 し た 「 ネ ッ ト ワ ー ク 」 No.23を 配 布 し た 申 立 人 ら の
行為(第1、 3 ⑸)は 、病院の名誉 ・信用毀 損にあたると いう。
これに対 して 、組 合は精神分裂 症との病 名は誤りで、 事実はう つ病
であったと訂 正したが 、いずれにせ よ、病院 が職員に精神 分裂症に 関
する診断書を 提出させ て依 願退職に 追い込ん だと認めるに 足る疎明 は
な く 、 組 合 の 発 行 し た ネ ッ ト ワ ー ク No.23の 右 記 載 内 容 は 、 病 院 の 名
誉・信用を毀 損 するも のと認められ る。 確か に右ビラは病 院職員の み
に配布された もので病 院職員以外の 者の目に 触れる機会は なかった も
のと認められ る。 その 限りでは右ビ ラの記載 内容により、 病院が被 っ
た社会的評価 の低下の 程度は軽度の ものであ ったといえな いことは な
いが、職員の 病院に対 する不信の念 を故なく 醸成する行為 と評しう る
のであって、 正当な組 合活動の範囲 を逸脱し たものといわ ざるを得 な
い。
組合は平 成2年 12月、病院との 団体交渉 において右ビ ラの記載 内容
について根拠 を明らか にすることは できない 旨病院に回答 をしてい る
が、もとより このこと をもって右判 断を左右 しうるもので はない。
⑵
X1の解 雇理由第 1、4 ⑵・X 2の解雇 理由第1、5 ⑵
病院は、 組合が清 瀬駅頭で配布 した前記 認定(第1、 3 ⑻)の ビラ は
虚偽の内谷を 記載し 、 病院の名誉・ 信用を毀 損するもので あり、こ のよ
うな行為につ いて本人 らに反省がな いという 。
しかし、 当時 X1 、X2を非難 する匿名 のいわゆる「 怪文書」 が病 院
内にしばしば 貼り 出さ れるなどした ことは事 実であるから 、X1 、 X2
がこれに抗議 すべく 、 ビラの配布活 動に及ん だことは正当 な組 合活 動と
いうことがで きる。 X 1らを非難す る匿名の ビラ等につい て、 病院 がま
ったく無関係 であるな どとは到底考 えること は出来ません との記載 も 、
誤解を誘発す る虞がな いとはいえな いが正当 な組合活動の 範囲を逸 脱し
- 28 -
たものとまで 解するこ とはできない 。
⑶
X1の解 雇理由第 1、4 ⑶・X 2の解雇 理由第1、5 ⑶
病院は、組 合が前 記認定(第1、3 ⑺)の「ネットワー ク」No.25を配
布し、同ビラ において 申立人らが半 日ストラ イキの際に配 布したビ ラを
Y6総婦長が 回収した と記載し、管 理者たる 総婦長らを誹 謗・中 傷 する
ことによって 職場秩序 を乱したとい う 。
Y5検査 科長 が職 場を回って「ネック ワ ーク」No.21・
「ネッ ト ワー ク」
No.22を回収した こと (第1、3 ⑷ )、 また Y6総婦長が 、患者か らビラ
を受け取った こと(第 1、3 ⑺)は 、事実で あるから、組 合が、組 合ビ
ラの回収とみ たとして も無理からぬ ものがあ る。従って「ネッ トワ ーク」
No.25の内容は虚 偽を 記載したとま ではいえ ず、正当 な組合 活 動の 範囲内
であると認め られる 。
⑷
X1の解 雇理由第 1、4 ⑷・X 2の解雇 理由第1、5 ⑷
病院は、X1 、X 2が病院のY 7顧問を「労務ゴロ 」
「刀傷 で もあれば
極道の世界に り っぱに 通用する」などと記 載 した「ネッ トワー ク 」No.30
を配布したこ と(第1 、3 ⑼)は病 院の名誉 ・信用を傷つ けたとい う。
同ビラの 内容は 、転載と断って はいるが 、病院の 交渉担当 者を 揶揄 し、
人格を傷つけ るはなは だ不 穏当かつ 下品な表 現と言わざる を得 ず 、 この
「ネットワー ク」の配 布はとうてい 正当な組 合活動という ことはで きな
い。
⑸
X1の解 雇理由第 1、4 ⑸・X 2の解雇 理由第1、5 ⑸
病院は、 X1 、X 2が職員の仕 事・職場 に対する満足 度を調 べ るア ン
ケート調査( 意識調査 )
(第1、3 ⑽)を正 当な理由なく 拒否し、妨害宣
伝を行ったこ とは 、職 場秩序を攪乱 したとい う。
しかし、 病院の右 調査は、任意 参加とし て実施したも のであり 、参 加
しないからと いって責 任を問うこと はできな い。 また「ネ ットワー ク」
No.31の内容は、仕 事・職場に対する 労働者の 声は労働者自 身でまと めよ
うとの趣旨の 一般的な 呼びかけをし たものと いうことがで き、 また 同ビ
ラを配布した のは調査 終了後のこと である( 第1 、3⑽) から、調 査を
妨害したとは いえず、 職場秩序を攪 乱したと まではいえな い 。
⑹
X1の解 雇理由第 1、4 ⑹
病院は、 X1 が業 務調査のイン タビュー に応ずるよう にとの Y 5検査
科長の業務命 令に対し 、反抗的態度 を示し、 1か月余にわ たり調査 を 滞
らせかつ反省 書を提出 しなかったこ とは業務 命令違反であ るとい う 。
前記第1 、3 ⑿で 認定のとおり 、 X1は インタビュー 形式の調 査につ
いて、病院と 組合との 団体交渉の後 にこの調 査に応じては いるが、 Y5
検査科長がイ ンタビュ ー調査の目的 、内容を 記載した書面 を手渡 し て、
説明した後も 、格別の 理由もなく拒 否し続け 、調査を1か 月余 遅ら せた
のであり、こ のことに ついて何ら反 省の 態度 を示さなかっ たことを 併せ
考えると、X 1 の行為 は業務命令違 反という べきである。
- 29 -
⑺
X1の解 雇理由第 1、4 ⑺・X 2の解雇 理由第1、5 ⑹
病院はX 1および X2が3年5 月1日か ら同年6月3 日までの 間就業
時間中、リ ボン等を 着 用したこと(第1、3 ⒃)は、職 務専 念 義 務 違 反 ・
服務規律違反 および業 務命令違反で あるとい う。
X1、X 2が組合 の春闘行動の 一環とし て真っ赤な生 地に黒字 で「生
活できる賃金 を!」と 標記したリボ ンを着用 し、また X1 が、白衣 の上
に赤い腕章を 着用した ことは、病院 において は患者に与え る視 覚的 ・ 心
理的影響等の 点から決 して好ましい ものとは いえない。し かし、リ ボン
の形、大きさ 、書かれ た文言にはと りたてて 問題はなかっ たこと、 病院
は同じ頃の4 月 24日から5月31までワッペン 、リボンを 着 用してい た武
谷労組に対し ては 、あ たかもこれを 擁護する ような姿勢を 示し、武 谷労
組組合員らに 対しては 何らの処分も 行わなか ったこと等を 勘案する と、
病院は組合間 の差別的 取扱いを行っ たもので あって、 X1 、X2 の リボ
ン着用だけを 職務専念 義務違反等と すること は著しく権衡 を失する と言
わざるを得な い。
⑻
X1の解 雇理由第 1、4 ⑻
病院は、 組 合との 団体交渉の日 程をめぐ り X1がY4 部長 に大 声を出
しながらつき まとい、 腕を 摑んだり 、通行を 妨害し体当た りをし、 それ
により同人に 被害・傷 害を与えたこ とが職場 秩序攪乱およ び業務命 令違
反であるとい う。
前記第1 、3 ⒄で 認定のとおり 、 X1が Y4部長の腕 を組んだ 際にポ
ケットが裂け たこと、 同部長の前に 立ちはだ かったり、接 触して同 部長
の足の上に転 倒した事 実は認められ るが、同 部長に体当た りをした 事実
は認められな い。しか し、これら一 連の X1 の行為は、Y 4部長 が 組合
の団体交渉の 申入れに 対し 、日程を 返答する 旨約束をしな がら 、返 答せ
ず誠意をもっ て応じな いので、その 説明を求 めた際の事で あり、 X 1の
行為は些か執 拗な面が なくもないが 、同部長 の対応にも 不 誠実さが みら
れるのである から 、一 方的に職場秩 序攪乱お よび業務 命令 違反とき めつ
けることは問 題がある 。
⑼
X2の解 雇理由第 1、5 ⑺
病院は、 X2 がY 6総婦長 の処 置室業務 改善のための 調査用紙 記入命
令 に 従 わ な か っ た こ と ( 第 1 、 3 (25)) は 、 業 務 命 令 違 反 で あ る と い う 。
X2は同 総婦長か ら調査用紙を 公布され た際、調査目 的を質問 したと
ころ、同総婦 長は処置 室の業務改善 のために 業務内容およ び 看護婦 の動
線調査をする ものであ ると応答した 。 これに 対し X2は「 趣旨はわ かり
ましたが書き ません、 協力しません 」と答え ている。その 後、 Y6 総婦
長はX2に処 置室の業 務調査にあた りビデオ 撮影をするこ とを伝え たた
め、X2は同 総婦長に 患者のプライ バシー侵 害を理由に反 対した。 これ
に対し同総婦 長は、音 声を断ち、患 者へは貼 紙をして説 明 すること 、隠
し撮りはしな いことな ど調査実施の 方法につ いて一応 の説 明をした 。 組
- 30 -
合はこの同総 婦長の説 明に納得せず 、病院に 対しビ デオ撮 影の問題 点を
とりあげて団 体交渉を 求めたが 、病 院はこの 問題 について は 団体交 渉事
項 と す る こ と を 拒 否 し た ( 第 1 、 3 (26))。 そ の 後 、 X 2 は 病 院 の 調 査 用
紙の提出命令 に対し、 団体交渉申入 書の提出 と合わせて調 査用紙を 返却
し た ( 第 1 、 3 (29))。 X 2 の 右 調 査 不 協 力 行 為 は 、 病 院 が 処 置 室 の 業 務
改善のために 業務の流 れや現状の問 題点 等具 体的な質問事 項を記載 した
調査用紙を 、
「 趣旨は わかりました が 書きま せん 、協力 しません 」と述べ
て拒否し、調 査用紙の 返却に及んだ ものであ り、病院が処 置室の業 務改
善のために本 件調査を 実施し、 X2 に対し調 査に応ずるよ うに指示 した
ことに特段不 当な動機 、目的が存し たとは認 められない。 加えて、 この
ことにX2が 右調査用 紙の 返却から 1 か月も 経って、同総 婦長の再 指示
を受けて拒否 当時と異 ならない事項 に関し調 査用紙に記入 し、提出 して
いること(第1 、3(38))を併せ 考えると 、X 2が調査用紙 記入を拒 否し、
同用紙を返却したことに正当 な理由 は見出 し難く業務 命令違反 にあたる。
⑽
X1の解 雇理由第 1、4 ⑼・X 2の解雇 理由第1、5 ⑻
病院は、 X1 、X 2が「常日ご ろから病 院がどれだけ 患者さん の基 本
的人権(プラ イバシー )を無視して いるかを 示すものです 」と記載 した
ビラを無許可 で患者に 配布したこと( 第1、3 (27))は、虚偽の記 事 を掲
載したもので 、病院の 名誉・信用を 傷つけた という。
同ビラは 、3年7 月9日組合が 夏季一時 金低額回答、 組合間差 別、 処
置室ビデオ撮 影調査等 に抗議して全 日ストラ イキを実施し た際 、患 者等
に配布したも のである 。 確かに処置 室におけ るビデオ撮影 調査が、 その
実施方法に適 正を欠く ときは患者の 人権を侵 す恐れが全く ないとま では
言えないとし ても 、病 院は Y6総婦 長 を通し てビデオ撮影 調査 実施 にあ
たり、人権侵 害になら ないように配 慮する趣 旨で、具体的 実 施の方 法を
X 2 に 説 明 し て お り ( 第 1 、 3 (26))、 併 せ て 病 院 が 日 ご ろ か ら 患 者 の 基
本的人権(プ ライバシ ー)を無視し ていると の事実は認 め られない 。
従って、 組合は右 ビラ配布によ って、病 院の名誉・信 用を傷つ けたと
いうことがで き、組合 の正当な表現 活動とは 認め難い。
⑾
X2の解 雇理由第 1、5 ⑼⑽
病院は、 X2 がY 6総婦長 の呼 び出しに 組合の指示に 従って応 じなか
ったり、看護観を 答え なかったこと(第 1、3 (29) (34))が業務命 令 違 反お
よび職務怠慢 という 。
同総婦長 が X2 を 呼び出した目 的は 、業 務との関連性 が漠然と してお
り業務命令の 必然性を 首肯できない 。ま た、 X2は同総婦 長の質問 に一
応 の 答 え を し て お り ( 第 1 、 3 (34))、 同 総 婦 長 の 意 図 す る 看 護 観 に 答 え
られなかった からとい って業務命令 違反およ び職務怠慢と までいう こと
はできない。
⑿
X1の解 雇理由第 1、4 ⑽
病院は、 X1 が視 能訓練士の職 務遂行中 に看護婦N親 子の心情 を傷つ
- 31 -
ける発言をし 、その後 の病院の指示 に従わな かったことが 服務規律 違反
という。
前記第1 、3 (24)で認定のとおり 、X 1の 問題となった 発言は患 者であ
る看護婦N親 子の面前 で「この子、弱視じゃ ない」
「 この子、お く 目じゃ
ない」と述べ たことで あり 、同僚と いう気安 さがあったに しても医 師の
指示無く直接 患者に対 し病名等を告 げること は視能訓練士 として越 権行
為であり、見 過ごすこ とのできない 発言であ る。しかも、 X1は 、 Y4
部長らからこ の件に関 し事情聴取を 受けた際 、責任の取 り 方を考え るよ
うに指示され 、数日後 看護婦Nに電 話をした 折、同人 から 「そのこ とは
病院に言って ある」と 申し向けられ ていたに もかかわらず 、病院に 対し
何らの報告も しないま ま放置した。 このこと は、 患者(看 護婦N親 子)
の心情を傷つ けた自己 の軽薄な行為 に対し真 摯 な反省を欠 き 、怠慢 で不
誠実であると のそしり を免れる もの ではない 。
⒀
X2の解 雇理由第 1、5 ⑾
病院は、 X2 がY 6総婦長 から 名札を着 用するよう指 示された が、 従
わず、反抗的 態度を示 し続けたこと は、上司 への反抗、業 務命令違 反お
よび職場秩序 攪乱にあ たるという 。
X2が名 札を着け なかったこと(第1 、3(37)②)は業務命 令違 反と評
しうるが 、着用し なか った期間は2 日間であ り、その 程度は軽 微で ある。
また、「 ネットワ ーク 」 No.43に名札へ の職 位記載に反対 するとの 見解を
示したことを もって 、 病院への非難 、上司へ の反抗、職場 秩序 攪乱 など
に該当すると 解するこ とはできな い 。
⒁
X1の解 雇理由第 1、4 ⑾
病院は、 7月 24日X1が、カル テに別人 のデータを記 載したこ と (第
1、3(35))は、呼 び出 した患者が本 人である かどうかの確 認を怠 っ たた
めであり、患 者の病院 に対する信頼 を損なわ せる職務怠慢 行為 であ ると
いう。
X1の右 行為は、 検査前にカル テに基づ き患者の氏名 を確認す ること
を怠るという 初歩的、 基本的ミスを 冒したも のであり、視 能訓練士 とし
て弁明の余地 のないも のといわ ざる を得ない 。 もっとも、 X1はそ の直
後視力検査を 受ける必 要のなかった 患者に謝 罪すべく病院 内を 捜し 、ま
たカルテに記載された患者に事情を説明して謝罪している。したがって、
その事後処理 が無反省 、無責任であ ったとま でいうことは できない 。
⒂
X2の解 雇理由第 1、5 ⑿
病院は、 X2 がY 6総婦長 の指 示に基づ き処置室業務 調査のた めの レ
ポートを提出 した際 、 同総婦長に対 し「あな たに私の考え などわか って
頂かなくても 結構です 」と大きな声 で言い、 制止もきかず 総婦長 室 を飛
び出し、そ の後の呼 び 出しにも応じ なかった こと(第1 、3 (38))は、上
司への反抗、 業務命令 違反、職務怠 慢にあた るという。
しかし、 X2 が右 のような行為 に及んだ のは 、同人の レポート の提 出
- 32 -
に対し同総婦 長が何故 協力しようと 思ったの かと 、執拗に 質したた めで
ある(第1、3 (38))。総婦長として、何 故協 力する気にな ったの か と X2
に問い質した こと自体 は別段不合理 ではない が 、同総婦長 が X2 に 対し
「あなたの看 護観を言 いなさい」など 質した(第1 、3(34))数日後 の出
来事であるこ とに鑑み ると 、X2が 同総婦長 の言辞を嫌が らせと感 じて
退室したのも あながち 無理からぬ面 もあり、 X2のみを責 めるのも 酷と
いうべきであ って 、同 人の言動のみ をとらえ て上司への反 抗とか職 務怠
慢とまではい えない。
その後の 同総婦長 の呼出しにつ いても 、 業務上の理由 を告げて 呼び出
したとの疎明 もなく、 X2がこれに 応じなか ったからとい って業務 命令
違反とまでき めつける ことはできな い。
⒃
X1の解 雇理由第 1、4 ⑿
病院は、 ①X1 が 病院の看護婦 Nの6歳 の男児の視力 検査に際 し、 視
能訓練士の職 分を逸脱 する発言をし て看護婦 Nを傷つけた こと 、お よび
処置室の業務 改善調査 に反対して「 常日ごろ から病院がど れだけ 患 者さ
んの基本的人 権(プラ イバシー) を 無視して いるか」等を 記載した ビラ
を病院玄関前 で患者お よび通行人 に 配布した ことに関し、 X1が Y 5検
査科長の電話 による呼 び出しを拒み 、その後 出向いた同検 査科長に 「何
も話すことは ありませ ん」などと述 べ、同検 査科長が立ち 去った後 、パ
ートの医師に 対して「 今のチャンバ ラ面白か ったでし ょう 」と言っ たこ
と、②再三に わたる名 札着用の命令 を無視し 続けて きてう え、新し い名
札が全員に配 布された ときもすぐに 着用せず 同検 査科長か らの着用 指示
に「考えてい る」と言 ったまま数日 この指示 を無視したこ とが業務 命令
違反、職場秩 序攪乱に 該当すると主 張する。
①につい て 、同検 査科長は X1 に対し事 情聴取という 具体的用 件を告
げて呼び出し を行っ て おり、(第 1、3(37)①)、同検査科長 が X1 か ら事
情聴取を行お うとした のは、 X1が その業務 遂行に際して 患者であ る同
僚の看護婦N 親子に対 し軽薄な発言 をし、そ の心情を傷つ けたこと に関
係してしたも のであっ て、 X1はこ のことに 関し、かえっ て自ら上 司に
顚末を話し、 看護婦N に対し反省の 意を伝え るべく誠実に 事後対応 をと
るべきであっ た。しか しながら X1 は同検査 科長に対し自 分の考え を電
話口で述べた だけで事 情聴取 に応え ず 、剰つ さえ、 右電話 の後直接 眼科
に出向いてき た同検査 科長に対し「何も 話す ことはありま せん 」と 述べ、
同人が立ち去 った後同 室の医師に対 し「今の チャン バラ面 白かった でし
ょう」等 と発言し たこ と(第1 、3 (37)①)は 、到底正 常な業務 態度 とい
うことはでき ず、反抗 的態度といわ ざるを得 ない。
②につい て 、 X1 、X2は、病 院が全職 員に配布した 新名札を 着用 せ
ず、Y5検査 科長 の注 意に対し「い ま、考え ているところ です。い ろい
ろあるので」 といって 、2日間これ に従わな かったこと、 約1週 間 後組
合の「名札に 職位はい らない。 !」 とのビラ を配布したこ とは前記 認定
- 33 -
第 1 、 3 (37)② の と お り で あ る 。 病 院 が X 1 、 X 2 を 含 む 全 職 員 に 対 し 、
新しい名札の 着用を指 示したことは 正当な業 務上の指示と いうこと がで
き、X1、X 2 が同検 査科長の注意 を無視し 着用しなかっ たことは 、上
司への反抗的 態度を示 すものとして 、職場秩 序維持上 問題 となりう るも
のである。し かしなが ら、不着用期 間が7月 25日、26日と短期間で あっ
たこと、両名 としては 組合としての 対応を考 える 時間的余 裕を必要 とし
ていた等の事 情を併せ 考えると 、右 不着用を もって職場秩 序攪乱と まで
は評し難い。
⒄
X2の解 雇理由第 1、5 ⒀
病院は、 ①X2 が Y6総婦長か らの内科 への応援指示 に速やか に従 わ
ず「内科に入 っても何 もわ からない のに」 な どと述べたこ と、 ② 包 布替
えの指示に速 やかに従 わず「後 で充分で きま すから」などと答 えた こと、
③Y10病棟婦長 からの内科への応援指 示に速 やかに従 わなかったことが、
上司への反抗 、業務命 令違反、職務 怠慢とし て解雇理由 に 当たると 主張
する。
しかし、前 記第1 、3 (33)で認定のとお り 、①については X2は 、内 科
への応援の指 示を受け たとき患者に 注射を行 おうとしてい たところ であ
り、その旨Y 6総婦長 に述べたが速 やかに指 示に従ってお り、その 際の
言辞も上司へ の反抗と 解するほどの ものでは ないこと、 ② について は、
即時包布替 えの命 令に応じなかったことは一 応問題ではあるが、その後、
X2はY6総 婦長 のや り残した包布 替えを行 ない、その 言 辞も反抗 的と
まではいえな いこと 、 ③については 、 X2は 処置室業 務調 査の説明 を受
ける予 定のあることをY10病棟婦長に伝え、その指 示を仰 いだに過 ぎず、
反抗的態度を 示したと までは認めら れないこ となどから、 病院の主 張は
採用できない 。
[2]追加解 雇理由
⑴
病院は、 組合が実 施した3年7 月9日の ストライキは 特定日時 を明 示
していないの で事前予 告を欠く違法 な争議行 為であるとい う 。
しかし右 争議行為 は前記認 定(第1 、3 (28))のとおり 、東京都 知事 お
よび当委員会 に争議行 為を実施する 旨の通知 をしており 、 労働関係 調整
法および同法 施行令に 違反するもの ではない 。
⑵
病院は、 X1 およ びX2が、病 院内でビ ラを配布した ことを解 雇理 由
として追加し ている。
確かに、 両名によ る組合ビラの 配布は勤 務時間外の昼 休み時間 を利 用
して行われた ものであ るが 、他職員 のなかに は勤務時間中 の者もお り、
また患者もい る診察室 に組合ビラを 配布して 回る行為を当 然に正 当 な組
合活動という ことはで きない。
しかし、 病院は、 両名による組 合のビラ 配布につ いて 、一回毎 に、 事
前にその内容 の承認を 受けなければ ならない ものとし 、承 認を得な い以
上配布を禁止 し、懲戒 処分に処する との方針 で臨み、この 件につい て、
- 34 -
組合との交渉 協議の余 地なしとの態 度をとっ た。病院が組 合ビ ラの 配布
時間、場所、 回数等に 合理的な規制 を設ける ことは、当該 ビ ラが病 院施
設内で配布さ れるもの であるかぎり において 相当といい得 ても 、そ のビ
ラの内容につ いて事前 に承認を得な ければな らないとし、 かつビラ 配布
の時間等 についても組 合との間に一切交渉 協 議の余地 なしとしたことは、
組合活動の自 由を不当 に制限するも のとのそ しり を免れな い。X1 、X2
両名がしばし ば病院内 での組合ビラ の無断配 布 に及んだこ とは 、決 して
当然には正当 というこ とはできない ものであ るが、病院側 のこうし た頑
な態度にも責 められる べき点がある といわな ければならな い。また 、ビ
ラ配布の方法 を本件審 査の段階で解 雇理 由と して追加した ことを考 える
と、病院が真 にビラ配 布の方法を問 題 にして いたのか疑わ しい。
さらに病 院は 、X 2が元年3月 に処置室 勤務とな って 以後のベ ッド 使
用について業 務阻害が あったという が 、具体 的な疎明はな い。
[3]不当労 働行為の 成否
⑴
組合とX 1、 X2 の職場活動等 と病院の 対応について
①
昭和58年末から平 成2年8月1 日 Y4部 長 就任まで
X1、X 2 の職場 活動等は前記 認定(第 1、2 ⑶~⑿ )のとお り、
有給休暇や生 理休暇取 得についての 取り組み を武谷労組へ 申し入れ た
り 、「 眼 科 の 時 間 外 勤 務 に つ い て 申 入 れ 」 書 を 院 長 に 提 出 す る な ど の
活 動 を し て い た 。 そ の 後 病 院 内 で 分 会 結 成 に 取 り 組 み 、「 ネ ッ ト ワ ー
ク」を配布し 、前記申 入れ事項や一 時金など の要求をかか げ て労働 者
の団結を呼び かけた。 また、看護助 手Mの解 雇撤回につい て、組合 と
ともに病院と の団体交 渉に参加した 。こうし た、 X1の活 動の活発 化
に合わせるよ うに 、院 長は、視能訓 練士であ る X1へ直接 業務指示 を
することを止 め 、忌避 する態度を示 すように なった。 また 、元年 12月
の一時金は、他の 職員 に対しては院 長が直接 手渡したが、X1 には Y3
総務課長から 手渡すと いったことが 行われた 。 こうしたこ とがあっ た
直 後 、「 ネ ッ ト ワ ー ク 」 や 「 X 1 」 に 対 す る 批 判 の ビ ラ 数 枚 が 貼 り だ
されたが、病 院は何ら の対応もしな かった。 またX2が組 合員であ る
ことを病院が 知りえた 2年 4月ころ 、院長 は X2の話を聞 こうとし な
かったりする などの態 度を示すよう になった 。
さらに 、病院は 、組 合の年次有 給休暇取 得問題等の要 求に対し 、
「使
用者の権利を認めようとしない労働者は、雇用されることを止めて、
独立独歩する のが賢明 である」とい った内容 の「職員の皆 さんへ」 と
の文書を掲示した。この文書掲示と前記院長の態度を併せ考えると、
病院はX1に 対しては 元年2月ころ から、ま た X2に対し ては病院 が
同人の組合加 入を知る にいたった2 年4月こ ろから、 その 組合活動 に
強い嫌悪感を 表し始め たことが窺え る。 しか し、両 名の組 合活動に 対
する病院の対応は未だそれほど緊迫した状態には至っていなかった。
②
Y4部長 就任以降 について
- 35 -
院長の次 男である Y4は、2年 8月1日 付で総務部長 に就任し た。
同月4日以降 X1の自 宅に無言のい やがらせ 電話があった 。同 月16日
から9月25日にかけて 武谷病院職員 有志等に よる X1を非 難するビ ラ
やポスターが 数回配布 、貼付された が、病院 はこのビラや ポスター を
回収するなど の対応を しなかった。 もっとも 、 10月2日に 病院は 、 就
業規則に従っ て文書・ 図画などの配 布につい て、院長 の承 認を求め る
よう通達した 。
しかし、 X1 らは 院長の承認を 受けずに 10月31日から11月2日 の間
「 ネ ッ ト ワ ー ク 」 No.21、 22を 続 け て 配 布 し た た め 、 病 院 は 同 「 ネ ッ
トワーク」を 回収し 、 X1、X2に 対し服務 規律の遵守を 命令し、 従
わない場合に は処分が ある旨の警告 を発した 。これに対し X1 は、 病
院が「ネット ワーク」 を回収したこ とに抗議 したが、病 院 は抗議の 際
にY4部長や Y5検査 科長 の業務妨 害をした として 、X1 を「譴責 処
分」とし、始 末書の提 出を求めるな ど、病院 の両名への対 応は厳し さ
を増していっ た。
さらに、 組合が業 務命令および 「譴責処 分」の撤回、 年末一時 金等
の団体交渉を 申し入れ たのに対し、病 院は業 務命令および「 譴責処 分」
の撤回の件が 議題にな っていること を理 由に 団体交渉の対 象でない と
拒否するなど 組合と病 院の対立は エ スカレー ト していった 。
組合は、 この団交 拒否等につい て当委員 会に救済申立 てを行っ た。
一方、病院は 団体交渉 促進のあっせ んを当委 員会に申請し 、団体交 渉
が行われるよ うになっ た(第1、3 ⑷)。
しかし、 次に見る ように病院の 団体交渉 における姿勢 には誠実 さが
欠けていた。
3年4月15日賃金 増額・労働条 件改善を 議題とする団 体交渉で は要
求内容につい て組合が 説明していた ところ、 Y4部長が「 なんだ、 こ
の や ろ う 」「 ふ ざ け ん じ ゃ ね え 、 て め え 」 と の 暴 言 を 発 し た こ と が 契
機 と な っ て 紛 糾 し 、 更 に 同 部 長 は 「 ば か や ろ う 」「 こ ん な の や っ て ら
れねぇよ」などと放言 して一方的 に席を立 ち団体交渉が打 ち切られた。
その後も、病 院は武谷 労組との団体 交渉には 応ずるが、 組 合との団 体
交渉は引き延 ばしたり 、さらにリボ ン着用等 に対し差別的 意思をも っ
て武谷労組と 異なった 対応をした。 そして、 3年6月 21日の団体交 渉
の席上におい て組合が 日曜、休日出 勤の取扱 いについて説 明を求め た
と こ ろ 、 Y 4 部 長 が X 1 、 X 2 に 対 し 「 や め ち ま え 」「 二 人 が い な く
ても病院はち っとも困 りません」な どと発言 し、両名の組 合活動を 殊
更嫌悪し、忌 避する姿 勢を示した。
同年の夏 季一時金 交渉時に 、病院は武 谷 労組と合意し た「覚 書 」に、
組合が合意し ないこと を理由として 、武谷労 組と同一の回 答を出す こ
とを拒否した 。組合は この「覚書」 を検討す る旨表明した にもかか わ
らず、病院は 、組合が これまで病院 の信用と 名誉を傷つけ た行為を 謝
- 36 -
罪することを 、夏季一 時金支払いの 条件とし て付け加えて 、交渉を 決
裂 に 至 ら し め た ( 第 1 、 3 (31))。 ま た 、 団 体 交 渉 の 再 開 に 際 し 、 組 合
の 2 年 11月 13日 付 「 ネ ッ ト ワ ー ク 」 No.23に 病 院 が そ の 職 員 を 「 精 神
分裂症」の診断書 を出 させて 依願退 職 に追い 込んだとの記 載内容や「ネ
ッ ト ワ ー ク 」 No.25に お い て Y 5 検 査 科 長 が ビ ラ を 回 収 し た と の 記 載
内容が事実無 根のいい がかりであり 、 侮辱的 行為であると して、そ の
謝罪および撤 回を条件 にするなど、 組合との 交渉を一層困 難にし 、 対
決する姿勢を とること によって武谷 労組と 較 べて組合との 対応に差 別
的態度をもっ て臨むよ うになった ( 第1、3 (31) (32))。
以上のよ うに 、Y 4が総務部長 に就任し てからの組合 と病院と の関
係は極度に緊 張した。 たしかに、同 部長が X 1、X2両名 を個 人的 に
嫌悪するに至った事情のうちには無理からぬものもないではないが、
病院の組合に 対する団 体交渉の対応 姿勢から みて、病院は 両名の属 す
る組合そのも のを否認 しあるいは軽 視し 、嫌 悪していたこ とが明ら か
であると判断 せざるを 得ない。
⑵
X1、X 2に対す る解雇の当否
①
病院は、 X1 およ びX2の各懲 戒理由に は合理的理由 があり、 就 業
規則第26条の即時解雇 事由に該当す ると主張 する (同就業 規則第 26条
が即時解 雇自由 を定めたものであることは前 記判断のとおりである)。
ところで 、組合活 動としてのビ ラ配布に 関する X1の 前記第1 、 4
⑴⑷⑼、X2 の前記第 1、5 ⑴⑷⑻ の解雇理 由 は、その配 布した ビ ラ
の内容が穏当 ・ 適切を 欠くなど正当 な組合活 動の範囲内と は認 める こ
とができない もので 、 このビラを配 布した X 1、X2が何 らかの不 利
益処分をされ たとして もやむを得な い。
また、X 1 の前記 第1、4 ⑹⑽ ⑾⑿①③ は病院主張の ように業 務 命
令違反および 業務上の ミスに当たる ことは明 らかであり 、 不利益 を 科
せられたとし てもいた しかたない。 またX2 の前記第1、 5 ⑺ の処 置
室の業務改善 のための 調査用紙記入 拒否およ び調査用紙返 却は業務 命
令違反であり 、不利益 を科されても やむを得 ない。
もっとも 、 X1、 X2の前記第 1、4⑺ 、前記第1、 5 ⑹の就 業 時
間中のリボン 着用等の 組合活動は就 業規則違 反ではないと まではい え
ないものの、病 院の対 応に明らかに組合 間の差別的取扱いが認 められ、
同人らに対し てのみ就 業規則違反を 問うこと は相当でない 。
②
一方前記 判断のと おり、 Y4部 長 が就任 する以前は、 組合や X 1、
X2の組合活 動は 、労 働条件の改善 といった 範囲に止まっ ており、 ま
た院長がこう したこと から X1、X 2に次第 に不快感を示 すように な
ったが、それ 以上に対 立することは なかった 。しかるに、 Y4部長 就
任後は状況が 急変した 。 すなわち病 院は、同 部長就任 直後 から1か 月
余にわたって 数回 X1 を非難するビ ラやポス ターが病院内 に配布・ 貼
付されたにも かかわら ずこれを放置 し、他方 では 急遽就業 規則を掲 示
- 37 -
し、文書、図 画等の配 布については 、事前に 院長の承 認を 受けるよ う
に通達を発し た。 病院 がいわゆる「 怪文書」 の長期 間にわ たる配布 ・
掲示に何らの 措置もと らなかったこ とに鑑み ると、 病院の このよう な
措置は、組合 あるいは X1、X2の 組合活動 を牽制するこ とだけを 目
的としたもの と判断せ ざるを得ない 。
また、平 成2年年 末一時金、3 年賃金増 額および同年 夏季一時 金 の
支給をめぐる 組合との 団体交 渉に関 する病院 の対応をみる と 、武 谷 労
組には交渉日 程を引き 延ばしたり 、 交渉姿勢 において不誠 実な 態度 を
示すこともな かったが 、組合に対し ては、武 谷労組との交 渉 結果を 性
急に強要する 態度を示 した。 前記⑴ ②で判断 のとおり、病 院は 、お よ
そ交渉に誠実 に応じよ うとする姿勢 を示すこ となく、かえ って Y4 部
長は病院経営 の重責を 担う一員とし て著しく 不相応かつ冷 静さを欠 く
発言を再三行 う有様で あって、組合 との間に 交渉を 円滑に 進めて行 こ
うとするより も 、敢え て挑発的言辞 を投げか けることによ って交渉 を
決裂させんとした意図が明白であると認めざるを得ない対応をした。
さらに、 平成3年 の賃金増額等 にかかわ る武谷労組の 組合活動 であ
るリボン闘争 について 擁護するよう な姿勢を 示したり、組 合員には 就
業規則違反を 追及して いるのに、武 谷労組組 合員には不問 に付 すな ど
組合間の差別 的取扱い を行っている 。
③
以上のよ うに、 X 1に対する解 雇理由前 記第1、4 ⑴ ⑷⑹⑼ ⑾ ⑿①
③、X2に対 する解雇 理由第1、5 ⑴⑷⑺⑻ について、病 院の主張 に
理由があり、 同人らの 就業規則違反 は明らか であり、何ら かの不利 益
な取扱いを受 けてもや むを得ないも のがある 。しかしなが ら他方、 病
院は、殊にY 4 が総務 部長に就任し て以降は 組合および X 1、 X2 へ
の嫌悪を強め ていった こと、病院に は懲戒規 定が存 在せず 、就業規 則
も未整備のま ま両名に 対し懲戒処分 である「 譴責 処分」を 発してい る
こと、武谷労 組の組合 活動と組合の 組合活動 とを差別的に 取り扱っ て
いること、且 つ病院の 就業規則の規 定上労働 者にとって最 も重い処 分
の解雇をして いること 、不利益処分 の理由 と しては到底合 理性の認 め
られない種々 の理由を 上記即時解雇 理由と合 わせ一体のも のとして 主
張しているこ と等を総 合判断すると 、病院が X1、X2を 解雇した こ
とは、このこ とによっ て病院の正常 な業務の 運営を回復し 、その円 滑
な遂行を確保 すること を目的とした というよ りもかえって 、2名か ぎ
りの分会員を 病院外に 放遂し分 会の 消滅を図 ろうと意図し た 、組合 否
認の不当労働 行為と解 さざるを得な い(この ように本件即 時解雇を 不
当労働行為で あると解 したからとい って、 X 1およびX2 の上記解 雇
理由に掲げら れた第1 、4⑴⑷ ⑹⑼⑽ ⑾ ⑿① ③および第1 、5 ⑴⑷ ⑺⑻
の諸行為が決 して正 当 化されるもの でないこ とはいうまで もない )。
[4]救済の 方法につ いて
⑴
レニア会 への帰責 について
- 38 -
Y1が申 立人組合 員 X1、X2 の両名を 解雇したこ と は前記認 定のと
おりであり、 この解雇 が不当労働行 為に該当 することは前 記判断の とお
りである。と ころで、 レニア会は、 従来の病 院の 敷地、建 物、設備 およ
び雇用してい た従業員 を引継ぎ、病 院の院長 であったY1 がレニア 会の
理事長に就任 している ことからみて 、レニア 会は、病院と 実質上同 一性
を有する法人 として継 続しているも のである 。
従って、 本件にあ っては、レニ ア会に対 しても必要に 応じ、病 院 の不
当労働行為責 任を問い 得るものと解 すべきで あるから 、レ ニア 会に 対し
ても不当労働 行為責任 を負わせるこ ととする 。
⑵
解雇に対 するポス ト ・ノーティ ス等につ いて
X1、X 2両名に は組合活動の 面につい て正当と認め 難い種々 の 言動
が見られ、他 方 X1は 視能訓練士と して、ま た X2は看護 婦として 、業
務遂行上真摯 に反省を 要する少なか ら ざる逸 脱行為が存在 したこと は繰
り返し認定判 断したと おりであるこ とに鑑み 、本件救済命 令は主文 の程
度にとどめ、 バックペ イに年6分の 割合によ る金員を付加 して支払 うこ
とおよびポス ト・ノー ティスを命ず ることは いずれもしな い。
[5]X1及 びX2 の 解雇に係る団 体交拒否 について
病院は、 組合が申 し入れた X1 およびX 2の解雇問題 につい て の団 体
交渉には応じ る義務が ないという 。
しかし、 組合が組 合員の解雇問 題につい て団体交渉を 申し入れ たとき
は、応ずべき 義務があ ることは自明 のことで あるから、病 院が組合 の団
体交渉申入れ を拒否し たことは不当 労働行為 である 。
なお、申 立人は解 雇問題を議題 とする団 体交渉に関し て、団交 応諾 と
ポスト・ノー ティスを 求めているが 、本件の 場合、 X1、 X2の就 労を
レニア会に命 じている のであるから ポスト・ ノーティスに とどめる 。
第3
法律上 の根拠
以上の次 第である から 、病院が 、 X1お よび X2を解 雇したこ とは労 働組
合法第7条第 1号およ び第3号に該 当し、組 合が平成3年 8月 29日付で申し
入れた解雇問 題を議題 とする団体交 渉に 、病 院が応じなか ったこと は同法同
条第2号に該 当する。 また、病院を 承継した レニア会は、 病院と実 質上同一
性を有する法 人と認め られるのであ るから 、 同法同条第1 号、第2 号および
第3号の責任 を負うも のとする。
よって、 労働組合 法第 27条および労働委 員会規則第 43条を適用 して主 文の
とおり命令す る 。
平成8年3月19日
東京都地方労 働委員会
会長
- 39 -
沖野
威
㊞