TM S 3 Reference Turntable

1989 年にはオリジナル RADIUS、1991 年オリジナル TMS(トラージ・モグハダム・シグネチャ
ー)を発表。1995 年 XERXES-X、2002 年 TMS2、2003 年 RADIUS5、2005 年
XEXRES20 発表。その製品開発の歴史は、デジタル時代を迎えたオーディオ製品群に一
石を投じる以上に意味を持つものでした。
それはアナログレコード再生における進化そのものにほかなりません。まさしくアナログレコー
Original XERXES 1985
ド再生が円熟期を迎える前にデジタルオーディオが登場し、おおよそのアナログレコード再生の可能性を否定してしまったの
です。しかし、アナログレコードにはまだ再現出来得ていない音楽情報が存在する、そう信じてそれを実現に近付けようとし
ているのが、ROKSAN のトラージ・モグハダム氏なのです。
デジタル音源によるオーディオ再生もある意味では鑑賞に堪えうるレベルに到達してきました。しかし、ひとたびデジタル音
源からアナログレコード音源に切り替えると、その差はあまりにも歴然と現出します。耳に届く音以上に大事な音楽性、演
奏家の感情表現、空間表現能力、そして何よりも大切な感動を与えてくれる音楽がそこには
確実に存在していることを教えてくれるのです。
カテゴリーの一つとしてアナログレコード再生とくくってしまうことは簡単なことかもしれません。し
かし、アナログレコードに刻み込まれたすべての情報を再現すること、心地よい音楽を再生する
ことは我々人類が出来うる文化遺産の後進への伝達と言えるかもしれません。
Original TMS 2002
アナログレコード再生にできて、デジタル音源再生にできないことは何か。アナログレコード再
生にできなくて、デジタル音源再生にできることは何かを見極め、アナログレコード再生の可能
性を追求し続けるトラージ氏の最新作、TMS3、・・・2008 年春登場です。
TMS3 に課せられた命題はいたって簡単です。アナログレコード再生をより高い次元にすること。そのために労を惜しまな
かったトラージ氏は過去のプレーヤーでの問題点の把握をし直し、その問題解決方法をひとつずつ見極め、いかに製品と
して完成させてゆくか。一言で言うと単純な作業に思えるかもしれませんが、何度も試行錯誤を重ねた結果やっと TMS3
として結実しました。
今回、TMS3 で採用された数々の新たな特徴は一つ一つを取り出してみても音楽を奏でてはくれません。ひとつのレコ
ードプレーヤーとして音楽を奏でたときに始めてその構成要素が意味をなし、音楽をより魅力的なもの…芸術へと昇華さ
せてくれるのです。演奏会で実際に感動を与えてくれる音楽を溝に刻まれたレコード盤は何の変哲もないビニール盤です。
しかし溝に刻まれた情報を漫然と再生するのでなく、より演奏された音楽に忠実な再生をする。それを目指しているのが
TMS3 であり、ROKSAN 社のフィロソフィーなのです。
TMS3 Reference Turntable
英国 ROKSAN の歴史は 1985 年オリジナル XERXES の発表にさかのぼることができます。
アナログレコードに刻まれた音楽信号の溝は、一見すると只の溝が並んでいるようにしか見えません。しかしその只の溝には演奏
家が心を込めて演奏した音楽のニュアンスが刻まれています。
作曲家が意図した音の羅列に過ぎない一つ一つの音が絶妙に絡まり合い、影響し合い、互いを引き立てあって一つの音楽とし
て完成させられた音楽には作曲家の生活していた社会背景、風土そして環境までが織り込まれています。そして何よりもその作曲
家の意図したものが一つの音楽として完成しているのです。
その作曲家の意図を十分に理解し音として再現し、音楽芸術として演奏すること。それが演奏家に与えられた使命かもしれま
せん。演奏家の深い理解力と巧みな再現努力=演奏がすべて刻まれているのがレコードの溝となって残されているのがレコードで
はないでしょうか。
そのレコードを再生することは簡単なようで、すべてのニュアンスを再現することは ROKSAN のトラージ氏にとって永遠の命題かも
しれません。1985 年の初代 XESXES はスタートにしか過ぎなかったのです。
その理想は中空をレコードが完全に水平で一定の速度で回り続けること、レコードには何の負荷もかけずにです。その回転し続
けるレコードをカートリッジがトレースできれば、それこそが理想だとトラージ氏はレコード演奏の究極の形を提案してくれました。その
レコード演奏の究極の形に積極的にアプローチしているのが、XERXES であり TMS なのです。
レコード演奏における最も重要な要素はレコード盤を一定の速度で回転させる際に生じるモーターの振動であり、モーターノイズ
です。モーターノイズの問題はモーターを極力小さく設計し、交流電源を一度直流電源に変換し、交流
電源で発生しがちな不安定な要素を排除し、再度交流電源に変換することで解決に近づけました。そし
てモーター振動の排除は TMS3 においてはモーターをマウントするモーターブロックを振動吸収力のきわめ
て強いアセタール樹脂から削りだし、カスタマイズすることで振動排除の実現に近づけ、なおかつ
ROKSAN のターンテーブルすべてにおいて特徴的なトッププリンスのカットアウトによってモーター振動が直
接レコード面に到達することを抑制しました。
モーター振動の排除には TMS3 の構造が大きな役割を果たしています。外観を見ると、大きくは 3 層
構造に見えます。しかし後述するようにサブプリンスをも数えると 4 層構造が TMS3 の基本構造です。4 枚のプリンスはボトム、ミド
ル、トップそしてサブプリンスの構成でお互いのプリンスが支え合う構造をなしています。各プリンス
を支えているのはいずれも特注されたデカプラーと ROKSAN パテントのブロボスサスペンションで
す。サスペンションと言っても不安定なバネは使用していません。世界最速の自転車モールトン
や古くは MINI に採用されていた半円球形状のゴムベースのデカプラーの採用で効率的に外来
振動を抑制してくれます。
もう一つのモーター振動の排除にはフロント部 2 カ所と後部 1 カ所のクロームタワーが重要な要素を担っています。モーター振動を
レコードに伝えないための工夫です。一目見るとただの飾りにしか見えないかもしれませんが、プレーヤー内部で発生したモーターの
振動を打ち消すために存在しています。要は共振点を増やすことで振動を排除しているのです。
トッププリンスのカットアウトにはサブプリンスと呼ばれるもう一枚のプリンス(ボード)が存在します。このサブプリンスはモーター回転時
にモーター軸とレコード回転軸との間で発生している引っ張り合う力を利用しセルフセンタリングベアリングという発想をもたらしました。
すなわち引き合う力によってレコード回転軸とベアリングハウジングとの接点を積極的に限りなく単接点に近づけたのです。
そのサブボード上には交換可能なトーンアームボードが取り付けられています。このアームボードもアセタール樹脂を削り出すこと
で飛躍的な振動抑制に一役買っています。そしてまたトーンアーム交換をも容易にしてくれました。
サブボードはまたコンピュータ解析によって考えられ得るターンテーブル上での不要な力を排除す
る役割も担っています。サブボードにはレコードを単に回転させ続けるためだけにあり、不必要なも
のは一切存在しません。アームボードによって支えられたトーンアームとカートリッジが司るレコードの
音溝のトレースと言う単純な作業を可能な限り補助するためだけに存在します。その究極の形を
実現したのが、ROKSAN のベーシックモデルである RADIUS5 なのです。RADIUS5 は言わば
XERXES や TMS から不要なパーツを取り去った ROKSAN のトラージ氏が考えるレコード再生の
究極の完成型といえるかもしれません。
トラージ氏が同時に取り組んだのが、レコード回転軸の明確化です。レコードのセンターホールは
およそ 7mm です。ほとんどすべてのレコードプレーヤーの回転軸はその 7mm を基準とし、その 7mm
の回転軸が回転してレコードを回しています。ROKSAN のターンテーブルのもう一つの大きな特徴
である細い回転軸・・・、これは回転時に発生する摩擦の低減を実現しています。細い軸を安定し
て回転させることによって回転軸の明確化が計られているのです。そしてスピンドルキャップの採用、
回転軸が発生する摩擦や金属のこすれる擦過音によるレコード演奏への悪影響は考えるよりも
遙かに大きなものです。ためしに演奏中の ROKSAN のターンテーブルにスピンドルキャップを載せた
ままにしておき、演奏中にそのキャップをそっと引き抜いてみてください。驚くべき事に S/N は確実に向
上します。スピンドルキャップを付けたり外したりすることは、確かに面倒なものです。ですがキャップを外
したときの S/N の向上は音楽を鑑賞する喜びを確実に高めてくれることでしょう。
回転軸を明確化すると同時に回転する軸の素材にもこだわりました。従来の ROKSAN の
XERXES や初代 TMS の回転軸(スピンドル)はブロンズを採用していました。しかし TMS2 から採用
されたのはレアメタルのタングステンカーバイドです。ブロンズより比重が重くより精密に加工できるため飛躍的に回転精度が向上し
ました。タングステンを採用したことでの再生音に与える影響は全周波数帯域におけるエネルギー感の向上です。レコードに刻まれ
た音楽信号をより忠実に再生できるようになりました。
タングステンの採用は回転軸と接触するボールベアリングにも及びます。このためボールベアリングの精度も向上し、より明確な回
転軸を獲得、回転軸の究極の単接点化を実現しました。これら回転軸の明確化が音楽再生に及ぼす影響ははかりしれません。
TMS3 は以上のような基本的な要素の上にさらに、音質向上のための数々のユニークな工夫を取り入れました。ターンテーブル
全体の低重心化とさらなる S/N 比向上のためボトムプリンスに真鍮とステンレススチールを組み合わせたウェイトを搭載。トップ、ミド
ル、ボトムの各プリンスに高密度 MDF を採用し初代 TMS で好評を博したピアノラッカーで仕上げ。ミドルプリンスからサブプリンスへ
のノイズ伝達を減少するためにカスタマイズドデカプラーを採用。ミドルとトッププリンス間にアセタールデカプラー採用。ミドルプリンスに
アンチバイブレーションスペーサー採用。新設計のスパイクフットには音質向上と確実な接地を約束するタングステンカーバイドボー
ルを採用。スパイクフットベースには接地面にソリッドシリコンパッドを採用。そして新設計のインナー&アウタープラッターを採用し連続
的なダンピングを達成しました。またレコード交換時に静電気によってフェルトマットが外れることを防ぐために“O”リングを付属。
これらの各構成要素が効率よく、レコードが回転し、カートリッジがストレス無く音溝をトレースし続けることをサポートすることで
トラージ・モグハダム氏はレコード再生を新たなる次元へと近づけました。その具現化されたモデルが TMS3-トラジ・モグハダム・シグ
ネチュアなのです。
今この新次元のレコード再生を体験できる幸せをお手元に届けることが出来る時が参りました。2008 年春、TMS3 到来です。