国際教育部会の取組について 『外国語活動~こんなふうに進めたら~』 1 はじめに 平成23年度から新しい学習指導要領が全面実施されます。今回の改訂にともな い、小学校5・6年生においてそれぞれ年間35時間の外国語活動が行われます。 今年度、国際教育部会では、市内の研究校で行われた授業のビデオリフレクショ ン ※ を行い、それらをもとに外国語活動のねらいを達成するための授業のポイント やアイディア等をまとめました。これらが外国語活動の授業づくりのヒントとなり、 安心して外国語活動の取り組む手助けとなることを願っております。 今後の授業や校内研修にぜひお役立てください。 ※ビデオリフレクション: ビデオに撮った授業の様子を見ながら授業について検証する、授業研究の手法の1つ ~ 2 目 次~ 外国語活動の授業のポイントやアイディア (1)授業の各段階におけるポイントについて(p.2~5) ① 導入 ② メインとなる活動 ③ ふりかえり (2)評価について(p.5) (3)コミュニケーション活動に適した場の設定について(p.5,6) (4)学級担任の役割について(p.6) 3 小中連携の必要性 (p.7) 2 外国語活動の授業のポイントやアイディア (1)授業の各段階におけるポイントについて ①導入 あいさつは、楽しい雰囲気で ・ ここで、楽しい雰囲気作りをしておくことが大切です。担任やALTとあいさつ するだけでなく、友達同士でも声を掛け合うとよいでしょう。そうすることで、 自分の気持ちを表現する機会を増やすこともできます。 ・ “I’m fine.”だけでなく、どのくらい元気なのかを表現したり、“~great.”や “~hungry.”などを用いて、その時々の気分を表現したりすることができます。 英語の歌の活用 ・ 外国語活動の雰囲気作りや、英語のもつリズムを感じ取らせたり、英語の音に慣 れ親しませたりする上で効果的です。また、歌に身振りをつけることで英語を感 覚的に捉えることもできます。 チャンツの活用 ・ リズムボックスやメトロノームを使って、単語や基本的な表現をリズムに合わせ てテンポよく繰り返すことで、言ったり聞いたりすることに慣れ親しむことがで き、とても効果的です。 ・ 児童が好きな歌やチャンツは、導入時や活動の中で取り入れてもよいでしょう。 活動例の紹介① ロウズ・アンド・カラムズ(Rows & Columns) ウォーミング・アップなどで、「今日の天気は?」「あなたは~が好 きで すか?」などの教師からの簡単な質問に、児童が答える活動です。 答えた児 童は横の列(row)か縦の列(column)を選択し、その児童と一緒に選択された 列の児童は着席します。全員が座れるまで繰り返します。 他に「私だけ座れる(only me)」や「給食のグループ(lunch group)」など を取り入れても面白いでしょう。 活動例の紹介② ボールやぬいぐるみを使って 導入時などに、担任とALTが各列の先頭の児童に、ボール(ぬいぐるみ) を手渡しながら、“How are you?”とあいさつをします。手渡された児童 は、“I’m ~.”と答えて、後ろの児童に同じ動作を繰り返します。各列の 最後の児童は、担任やALTに“How are you?”とあいさつをしてボール (ぬいぐるみ)を手渡します。 ②メインとなる活動 学級担任とALTとのデモンストレーション ・ 児童にとって学級担任は、英語を使ってコミュニケーションを図ろうと する者 (学習者)のモデルとなり、大きな意欲づけとなります。 ・ 担任やALTがデモンストレーションを行うことで、児童は活動におけるやり とりの流れを目や耳でつかむことができます。デモンストレーションの後に、 担任やALTが質問の仕方や答え方を示すことで、その後の活動がよりスムー ズになります。 日本語で訳さなくても児童には伝わる ・ ALTがジェスチャーや表情を使いながら説明してくれることが分かってくる と、児童は日本語を介さずにALTの言っていることが理解できるようになって きます。ALTとの直接のコミュニケーションを大切にするという意味で、AL Tに活動の指示をしてもらい、担任は児童の様子を見て授業をマネージメントし ていくとよいでしょう。児童がやり方に戸惑う場面でも、正しく反応できた児童 に“Good job!”等と声をかけたり、もう一度児童の理解のスピードに合わせて ALTに説明してもらったりすることで、児童は全神経を総動員して理解しよう とするようになっていきます。 英語が使えるタイミングを逃さずに ・ ゲームが終わった後にカードを数える場面などでは、英語で数えたいものです。 このチャンスを逃す手はありません。がんばった児童には、“Good!”“Great!” “Wonderful!”などと声をかけましょう。担任も児童も、授業の中で英語を使う チャンスを見逃さず使っていきたいものです。 児童の思いや考えを伝え合える場面設定を ・ 自分の思いや考えを伝えたり、相手の思いを聞いたりする機会を設定 すること は、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度につながります。 ・ 相手の思いや考えを聞いた時、相づちや聞き返し、相手の言ったことに質問する など、互いの発話内容を確認することは、豊かなコミュニケーションにつながり ます。 異文化理解は自国の文化理解にも ・ 外国のことを知るだけでなく、日本との違いを考えることは、自国の文化の良さ を理解することにつながります。自分の行ってみたい国について表現する時に、 日本と他国の文化・習慣のそれぞれについて自作の絵本を用いて表す活動は、児 童が興味や関心を高め、積極的に話したり聞いたりすることに効果的です。 言葉に動作をつけて ・ 発達段階によっては、単語や基本的な表現を言う時にポーズを付け、体全体を使 って表現させることも有効です。 ・ キーワードジェスチャーゲーム ※ において、担任とALTが児童とコミュニケー ションをとりながら、児童が自分たちでジェスチャーを考え決定していくという 方法は、自分たちで決めたという気持ちが、活動の意欲につながっていくため有 効です。 ※ キーワードジェスチャーゲーム:Hello を聞いて、手を振るなど、キーワードに対応するジェス チャーを行うゲーム ゲームの効果 ・ 単純なゲームでも、難易度を上げるなどして変化をもたせることにより、児童は 飽きることなく興味を持続させながら参加します。ゲームをとおして、何度も基 本的な表現を繰り返すことで、自然に英語表現に慣れ親しむことができます。 デジタル教材(英語ノート)の活用 ・ 英語ノートのデジタル教材は、音声のみならず、児童の興味・関心が高まる効果 的な映像も入っています。効果的に活用したいものです。 ・ テーマに関する材料をテンポよく提示することができます。操作や選択を児童に 任せることで、主体的に知ろうとする態度を引き出すことができます。 BGMの活用 ・ 活動中のBGMは雰囲気作りに役立ちます。会話の邪魔にならない、活動に適し たBGMを使いましょう。 ③振り返り 振り返りカードの活用 ・ 振り返りカードを使って自己評価をさせる際、本時のめあてに対してどうだった か、という視点で記入させると良いでしょう。児童一人一人の見取りに活用でき ます。 (2)評価について 見取りカードの活用 ・ 指導計画・評価規準に基づいた見取りカードや振り返りカードを活用することは、 児童の評価に加え、以後の授業における指導改善に役立ちます。 (参考資料:英語ノートを使った授業での評価例 別紙 p.8) (3)コミュニケーション活動に適した場の工夫について 教室環境 ・外国語活動用の部屋があるなら、リラックスしたムードで自然に外国語に親しめ るような環境にしたいものです。掲示物などで、外国に来たような雰囲気を出す のも楽しいです。動きのある活動がしやすいよう、机を置かないのも1つのアイ ディアです。その場合、振り返りカードなどを記入する時は、探検バック等の活 用が考えられます。 隊形の工夫 ・椅子のみを使用する場合は、円形の隊形も考えられます。みんなの顔(表情)が 見やすい利点があります。 ・児童―教師のほどよい距離を心掛けましょう。 ・ペアワークの際は、二人が向かい合うことで、アイコンタクトもしやすくなりま す。 名札の活用 ・ 児童が英語の名札をつけていると、ALTにとって直接児童の名前を呼びかける ことができます。 ・ 「1年生の時に担任が名札を作り、次の学年に持ち上げてずっと使う」「5 年生 のはじめの名刺作りの活動(英語ノート)の時に名札を作る」「横型の名札の場 合、裏側に英語の名札を入れておき、英語活動の時には、裏側が見えるように安 全ピンを付け替える」など、いろいろな作り方が考えられます。 学級経営が基盤 ・ 児童間、児童―教師間、担任とALT間とのより良い人間関係を築くことが、 活発なコミュニケーション活動につながります。 (4)学級担任の役割について 英語を使って伝えたいという気持ちを大切に ・ 小学校の外国語活動では、技能の習得をねらいとしていません。児童に英語を通 じて、自分の思いや考えを伝えたいという態度を育てることが大切です。そのた めには、児童の表現を寛容に受け止める教師の心構えと雰囲気作りが必要です。 授業のプロデューサーとして ・ 指導計画をつくるにあたっては、児童の実態を知っている担任の強みを生かしま しょう。英語のプロはALT、子どもたちの興味・関心を高めるプロは、担任の 先生です。 授業のディレクターとして・コーディネーターとして・評価者として ・ ALTと協力して活動の指示をするとともに、担任は、児童の良い所をすかさず 褒めたり、配慮が必要な児童を支援したりして、集中した楽しい雰囲気で活動が 行われるようにしたいものです。 英語学習者のモデルとして ・ 英語を母語としない者が英語を使ってコミュニケーションを図ろうとしている 姿は、児童にとって良いモデルとなります。 3 小中連携の必要性 外国語活動の理解から ・ 中学校の教員が小学校外国語活動の授業を見たり、ビデオリフレクションの機会 を持ったりすることで、学区内の小学校で行われている外国語活動の理解を深め られます。小学校の先生方が様々な工夫を重ねていることが分かり、その成果を 生かすためには、小中連携が必要であることを実感できるでしょう。 指導内容・指導法の系統性 ・ 外国語活動の趣旨や目標だけでなく、学区内の小学校の指導内容や指導法を理解 することで、小学校でやったことのある活動を中学校でも活用するなど、中学校 英語の授業に生かすことができます。例えば、ウォーミング・アップ時のチャン ツなどの難易度をあげて活用することも可能でしょう。 小・中学校教師の相互理解 ・ 小中の連携を進めるために、学校間、教師間のネットワークづくりを通して、身 近に交流できる機会をもつことが大切です。小中学校合同の研修や、それぞれの 授業参観等を通して相互に理解を深めていけるとよいでしょう。双方の年計、指 導方法、教材・教具等を確認することも有効です。 外国語活動と中学校英語の役割 ・ 小学校の外国語活動では、単語やジェスチャー等、自分の持っている知識・技能 を駆使して、何とかして相手とコミュニケーションを図ろうとする力を育ててい ます。 ・ 中学校の英語科では、小学校で養われたコミュニケーションへの積極性を維持・ 伸長し、自分の思いや考えを豊かに伝え合うことができる力を育て、正しく伝え るために必要となる語彙力や文法的知識を身に付けさせることが必要です。また、 小学校では音声を中心とした活動が行われますが、中学校では「聞くこと」「話 すこと」に「読むこと」「書くこと」を加えた4技能をバランスよく育成してく ことが重要です。
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