諏訪神社の木馬は何歳? 桜地区にある諏訪神社は散歩コースにあるのでよくお参りをする。この神社は戦国時代 がいせん に伊達政宗が相馬遠征の初陣の際に戦勝祈願し凱旋したところと伝えられており、また 1 つつ がゆ 月 15 日に農作物の作況を占う筒粥神事が執り行われることでも広く知られている。 大きな石鳥居をくぐるとまもなく右手に「御神馬」と書かれた小屋があり、子馬大の本 物そっくりの白い木馬が奉納されている。この木馬を初めて知ったのは、32 年前、文化財 しっかい 保護の担当職員だった昭和 57 年(1982)に、絵馬の悉皆調査をしたときだった。 調査の翌年3月に、絵馬 181 点の写真と文化財保護委員をされていた故渡部美津丸氏の 解説文を載せた絵馬の図録集「角田市の文化財第十二集『絵馬』 」が角田市教育委員会から 発行された。その表紙を飾ったのが諏訪神社の白い木馬で、これは私の撮影によるものだ けに、この木馬には非常に愛着をもっている。 絵馬は、馬の代わりに板札に馬の絵を描いて奉納したのが始まりと言われている。権力 者は信奉する神社に神様の乗り物である馬を奉納したが、庶民はそうもいかなかった。し かし、ここのものは等身大の木馬なのである。このように手の込んだ立派な木馬の奉納は 県内では見当らない(渡部氏)のだから、非常に貴重な文化遺産と言えよう。 1月 16 日、宮司さんにお願いし、32 年ぶりに小屋の中に入らせていただいた。壁に掲げ られた2枚の板札に木馬と小屋の修復の時期が書いてあった。修復は2回行われており、 現在のものは昭和 61 年(1986)に修復されたもの。その前は大正 11 年(1922) に修復されていた。そうすると、私が昭和 57 年に見た木馬と小屋は、修復から 60 年以上 も経過していたのだから相当傷んでいたのもうなずける。奉納の時期は、最初の修復から さかのぼ 50 年位前と考えると、明治初年(1868)頃まで 遡 り、この木馬の推定年齢は 140 歳以上 ということになる。この木馬を長い間大事にしてきた地域の人たちの優しさと、祈りの深 うま どし さに触れることができた午年の正月だった。
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