(2015/6/18)韓国とシンガポールで初の法定カバードボンド

新生ストラテジーノート 第 192 号
2015 年 6 月 18 日
調査部長 江川 由紀雄
[email protected]
(03) 6880-6035
韓国とシンガポールで初の法定カバードボンド発行に向けた動き
韓国では新法成立から 1 年余り、シンガポールでは発行解禁から 1 年半で初事例
韓国の國民銀行 Kookmin Bank が初の法定カバードボンドを発行するとの報道が多数見ら
れる。また、格付会社 Moody’s Investors Service と Fitch Ratings がそれぞれ今週、
Kookmin Bank が発行予定の mortgage covered bonds に予備格付けを付与している。
(これらの格付けは、日本の金融庁長官の登録を受けていない無登録業者によるものである。)ま
もなく韓国初の法定カバードボンド―2014 年 1 月に公布され、2014 年 4 月 15 日に施行された
「二重償還請求権付債券発行に関する法律」(以下、韓国カバードボンド法)に基づく債券―が出
現することになる。
シンガポールでは、2013 年 12 月 31 日に銀行法 Banking Act (Chapter 19) に基づく
Notice としてシンガポール法に基づき設立された法人で銀行免許を有する者によるカバードボ
ンド発行を許容した。シンガポールの銀行によるカバードボンド発行が解禁されて 1 年半が経過し
たことになる。これまで発行事例は見られなかったが、シンガポール最大手銀行の DBS が 2015
年 6 月 16 日付でカバードボンドプログラムを設定したとの発表 1を行った。また、 DBS が初のカ
バードボンド発行に向けての準備を行っているとの報道 2は多数見られる。弊社は、これらの報道
内容について別途の事実確認は行っていない。
韓国では、カバードボンド法施行から 1 年余り、シンガポールでは、発行解禁から 1 年半が経
過した 2015 年半ばにようやく初事例が出現することになる。
1
DBS, DBS establishes USD 10 billion global covered bond programme, 16 June
2015
http://www.dbs.com/newsroom/DBS_establishes_USD_10_billion_global_covered_
bond_programme
2 報道例
The Cover, DBS mandates first Singaporean covered bond, June 17, 2015
http://www.coveredbondnews.com/Article/3463191/DBS-mandates-first-Singapo
rean-covered-bond.html
The Straits Times, DBS plans to issue Singpore’s first covered bond, June 17, 2015
http://www.straitstimes.com/news/business/banking/story/dbs-plans-issue-sing
apores-first-covered-bond-20150617
1
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韓国におけるカバードボンド法整備までの道程
韓国では、銀行等によるカバードボンド発行と投資家保護の枠組みを整備する「二重償還請求
権付債券発行に関する法律」(以下、韓国カバードボンド法)が 2014 年 1 月 14 日に公布され、
4 月 15 日に施行された。
韓国におけるカバードボンド法施行までの主なできごとを、筆者の理解に基づき、以下に整理し
てみる。
韓国におけるカバードボンド法施行までの経緯

2008 年 6 月 主要銀行、カバードボンド発行を許容する法整備を金融委員会 FSC に要
望

2009 年 5 月 國民銀行 Kookmin Bank 국민은행 が米ドル建てストラクチャードカバ
ードボンドを発行 (2014 年 5 月に償還済)

2011 年 6 月
FSC と金融監督院 FSS が連名で銀行によるカバードボンド発行を認める
ガイドライン(模範基準)を発表

2012 年 6 月 21 日
은행의 커버드본드 발행을 위한 모범규준
FSC にカバードボンドについて検討するタスクフォース設置
태스크포스
主要銀行、法律事務所、韓国金融研究院 KIF、資本市場研究院 KCMI 等が参加

2012 年 10 月 18 日 「カバードボンド発行に関する法律制定方案」ワークショップ
‘커버드본드 발행에 관한 법률 제정 방안’ 워크숍 にて、FSC が法案を国会に提出
する意向を表明

2012 年 10 月 24 日~2012 年 12 月 3 日 立法予告 입법예고 (FSC) 法案の案に
対する意見募集

2013 年 1 月 29 日 国務会議 국무회의 法案を決定

2013 年 2 月 5 日 法案国会提出

2013 年 6 月 国会の政務委員会 정무위원회 議員の意見を踏まえて法案を修正

2013 年 12 月 19 日 国会通過

2014 年 1 月 14 日 制定(公布)
이중상환청구권부 채권 발행에 관한 법률 二重償還請求権付債券発行に関する法律

2014 年 4 月 15 日 法律・施行令(大統領令)施行

2014 年 4 月 16 日 FSC 監督規程감독규정 制定
(出所: 報道を含む公表情報を基にとりまとめ)
2
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シンガポールにおけるカバードボンド発行までの経緯
シンガポールでは、2013 年 12 月 31 日にシンガポール銀行法に基づく Notice によりシンガ
ポール法に基づき設立された法人で銀行免許を有する者によるカバードボンドの発行を解禁した。
(つまり、シンガポールの銀行は発行可能だが、外国銀行のシンガポール支店は、銀行免許を有
していても、発行は不可とされている。)
シンガポールにおける銀行カバードボンド発行解禁の経緯

2012 年 3 月 9 日 シンガポール通貨庁 MAS カバードボンド発行に関するガイドライン
案発表、意見募集
Consultation Paper On Covered Bonds Issuance by Banks Incorporated in
Singapore (2013 年 12 月 31 日 意見募集結果発表)

2013 年 12 月 31 日 MAS 銀行法 Banking Act (Chapter 19) に基づく Notice と
してシンガポール法に基づき設立された法人で銀行免許を有する者によるカバードボンド
発行を許容
MAS Notice 648 Issuance of Covered Bonds by Banks incorporated in
Singapore, MAS, 31 December 2013

2015 年 1 月 29 日 MAS Notice 648 の改正案を公表、2 月 28 日に意見募集締切

2015 年 6 月 4 日 MAS Notice 648 を改正、即日施行
(出所: MAS のウェブサイト上の情報を基にとりまとめ)
ここまでに見てきたことから、韓国でも、シンガポールでも、カバードボンド発行を可能にする法
整備から、実際の初事例の出現まで、相当な時間を要していると総括できよう。
次に、いまいちど、韓国における経緯を振り返ってみたい。
法整備に先立ち、カバードボンドの発行事例が積みあがった韓国
韓国の大手銀行、國民銀行(Kookmin Bank)が、証券化の仕組みを応用し、民間銀行が発
行する無担保社債に対して SPC が元利払いの保証を付す形でのストラクチャードカバードボンド
を発行した事例が過去に 1 回(2009 年 5 月発行)あった。これに続くストラクチャードカバードボ
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ンドは全く見ない 3。
前述の韓国の発行体による初のカバードボンド発行に先立つ 2008 年 6 月、銀行等を構成員
とするカバードボンドについて検討するタスクフォース 4が設置され、金融委員会にカバードボンド
発行を可能とする法整備を要望した。
韓国住宅金融公社(KHFC)は、同公社の設立根拠法(2004 年施行)に基づく「住宅抵当証券
担保付債券」(mortgage-backed bonds, MBB)を 2010 年以降、数次にわたり発行してきてお
り、これらの MBB は、カバードボンドの一種と考えられる 5ことから、広報資料やマスコミ報道等で
は “covered bonds” と呼ばれることが多い。韓国カバードボンド法は、KHFC も対象としている
ので、同法の施行日以降は、KHFC についても、MBB から韓国カバードボンド法に基づく「二重償
還請求権付債券」の発行へ移行する可能性もある。KHFC 以外の韓国カバードボンド法で「金融
会社等」と定義される銀行等の金融機関にとっては、これまでカバードボンド発行の裏付けとなる
法的な枠組みは存在しなかった。
金融当局がガイドラインとして通達を発出するも、利用事例なし
こうした中、2011 年 6 月には、クォン・ヒョクセ金融監督院長がマスコミの取材に答えて「韓国
住宅金融公社を通じてカバードボンドや長期・固定金利貸出市場を活性化するよう努力している。
3
なぜ後続の案件がないのかについては、発行条件(5 年債、米ドル建てで T+550bps に相当)
を見れば明らかであろう。韓国金融研究院(KIF)がカバードボンド法制定を検討するタスクフォー
ス(本文中で後述)における検討資料で、「発行費用が増加」したことを指摘している。
한국금융연구원, 커버드본드 발행관련 법률 제정의 의의, 2012 年 10 月 18 日, page 20
http://www.kif.re.kr/kif2/login/login.aspx?returnurl=/kif2/publication/viewer.asp
x?controlno=129108
4 報道例(報道内容に付き、当社は別途の確認は行っていない) MoneyToday 2008.6.13
은행들 "커버드본드 발행 허용해 달라" “13 일 금융계에 따르면 국내 은행들은
커버드본드 발행 추진을 위한 태스크포스(TF)를 구성하고 커버드본드 발행을
허용해달라는 내용의 법 건의안을 금융위원회에 제출했다.”
http://news.mt.co.kr/newsPrint.html?no=2008060414011739095&type=1&gubn
=sty
5 韓国住宅金融公社 “MBB 란 Mortgage-Backed Bond(주택저당채권담보부채권)의
약자로 최근 유럽에서 많이 발행되고 있는 커버드본드(Covered Bond)를 말합니다.”
[MBB は、Mortgage-Backed Bond(住宅抵当債権担保付債券)の略語であり、欧州で多く発行
されているカバードボンド(Covered Bond)のことを言います。]
http://www.hf.go.kr/hfp/ContentServlet?menuId=10059
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固定金利貸出は(2016 年までに総貸出残高の)30%に高まり、固定金利貸出の市場が形成さ
れると見ている。カバードボンドについては、法と制度を作り、活性化できるようにしていかねばな
らない。國民銀行(Kookmin Bank)は採算度外視で、損失を被りながら固定金利貸出を増やし
ているが(中略)長期的には固定金利貸出を伸ばしていけるよう、インセンティブの提供方案を検
討してみたい。」と述べた 6とされている。当該マスコミ報道の当否については、別途の確認は行っ
ていない。同時期に、金融委員会(FSC)と金融監督院(FSS)が共同で「銀行のカバードボンド発
行のための模範基準」(カバードボンド通達) 7を制定し、FSS が各銀行に発出したことを発表した。
カバードボンド通達は、銀行がカバードボンドを発行する際には、(1)直近年度末の負債残高の
4%以内で発行すること、(2)一定の要件(住宅担保貸出の場合は、第一順位抵当権付、LTV
70%以下、延滞 60 日以下等)を満たす「担保資産」を用いて、5%以上の超過担保比率を維持
すべきこと、(4)四半期毎に担保資産の適格基準遵守状況等を投資者に対して情報提供すべきこ
と、などと記述しているが、何ら法的な手当てを行うものではない。したがって、カバードボンドの
要である倒産隔離性(発行体に倒産手続きが開始されたとしても、カバープールを用いて元利払
いを継続できる手当て)やデュアルリコース性が確保されたものではなかった。カバードボンド通
達に基づく韓国の銀行等によるカバードボンド発行事例は全く見られない。
ここまでの金融当局(FSC と FSS)の動きを振り返ると、政治問題化していた「家計負債」に対応
し、カバードボンドの導入を短期(貸出期間 3 年程度)・変動金利型が主流の住宅ローンを超長期
低利固定金利型へと移行させるインセンティブを銀行界に与える手法と金融監督当局が捉え、金
融監督当局がカバードボンドの導入を前面に立って推進しようとした姿勢がうかがえる。
タスクフォースの議論を踏まえ、金融当局が法案提出を決断
前述のカバードボンド通達に基づく発行事例がまったくない中、2012 年 6 月 21 日に FSC はカ
6
たとえば、 E-Daily の 2011.6.30 付報道 「[일문일답]권혁세 "장기·고정금리 대출
인센티브 검토"」 "주택금융공사를 통해 커버드본드, 장기•고정금리 대출 시장을
활성화하도록 노력하려고 한다. 고정금리 대출을 (2016 년까지 총 주택담보대출의)
30%까지 높인다고 하면 시장이 형성될 것으로 본다. 커버드본드는 법과 제도를 만들어
활성화하도록 해야 한다. 국민은행에서 손해를 보면서 고정금리 대출을 늘리겠다고
해서 고무되고 있지만 그렇게 하기는 현실적으로 어렵다. 장기적으로 (금융회사들이)
고정금리 대출을 늘릴 수 있도록 인센티브 제공 방안을 검토해 보겠다." (和訳省略)
http://www.edaily.co.kr/news/NewsRead.edy?SCD=DA21&newsid=020631265962
86968&DCD=A01202
7 금감원, 2011.6.30 「은행의 커버드본드 발행을 위한 모범규준」
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バードボンド法を検討するための新たなタスクフォース(TF)を設置し、同日、初回の会合を開催し
た 8。同 TF の会合のひとつで、2012 年 10 月 18 日に開催された「カバードボンド発行に関する
法律制定方案ワークショップ」の会合の直後に、FSC がマスコミに向けてカバードボンド法案を起
案し、国会に提出する意向を発表した模様であり、複数の韓国の報道機関がこれを報じている 9。
じっさい、10 月 24 日には、金融委員会による「法案の案」の「立法予告」(パブリックコメント)手続
きが開始され、12 月 3 日までの間、「法案の案」に対する意見募集が実施された。法案は、2013
年 1 月 29 日に国務会議の承認を得て、2 月 5 日に大韓民国国会に提出された。なお、立法予
告における「法案の案」では、「커버드본드」(発音を日本語で表記するとすれば、「コボードボン
ド」)と呼ばれていたものが、国会に提出された法案では、「이중상환청구권부 채권」(漢字表記
で「二重償還請求権付債券」)となった。
政府(金融委員会)提出法案の形で国会に提出された「二重償還請求権付債券発行に関する
法律制定案」は、国会の政務委員会において、2013 年 4 月と 6 月に審議が行われた。この過程
で、政務委員会が原案の一部を修正した別の法案(代案)が国会に提出され、原案は廃案とされ
た。代案と原案の差異は、細部では多岐にわたるが、筆者がざっと読み比べる限り、本質的に変
更になったものではない。この法案は 2013 年 12 月 18 日、政務委員会で可決、19 日に本会議
で可決され、成立
10した 11。同法は、2014
年 1 月 14 日に公布され、同年 4 月 15 日に施行さ
報道例として、中央日報 2012.6.21 付記事 「금융당국, '커버드본드 특별법' 입법절차
착수」 (金融当局、カバードボンド特別法の立法手続きに着手) “TF 는 금융위, 금융감독원,
금융연구원, 자본시장연구원, 주요 시중은행, 은행연합회, 신용평가사, 법률전문가
등으로 구성됐다. TF 는 다음 달 말까지 커버드본드 법제화 효과, 발행 절차, 해외 사례
8
등을 면밀히 검토해 특별법 초안을 마련할 계획이다.” [TF は、金融委員会、金融監督院、
金融研究院、資本市場研究院、主要市中銀行、銀行連絡会、格付会社、法律専門家等により構
成された…] http://article.joins.com/news/article/article.asp?total_id=8534630
たとえば、韓国経済新聞 2012.10.19 付記事は、“금융위원회와 금융연구원은 18 일 서울
다동 예금보험공사에서 ‘커버드본드 발행에 관한 법률 제정 방안’ 워크숍에서 이같이
9
발표했다.” [金融委員会と金融研究院は、18 日、ソウル・茶洞の預金保険公社で開かれた「カバ
ードボンド発行に関する法律制定方案ワークショップ」でこのように(カバードボンド法案を国会に
提出すると)発表した。]と報じた。
http://m.hankyung.com/apps/news.view?category=general&aid=2012101864901
法案の国会における審議過程(委員会の提出資料、議事録等)は、大韓民国国会の「議案情
10
報システム」で一覧できる。議案番号は 1908638 である。
http://likms.assembly.go.kr/bill/jsp/BillDetail.jsp?bill_id=PRC_I1N3W0B6S2E4R1I5
L5B2R3Y6L9P9U6
11 欧米のマスコミ等による英文の報道や評論では、韓国のカバードボンド法案が「12 月 18 日に
通過した」との記述が目立つが、筆者は大韓民国国会の「議案情報システム」で照会し、2013 年
6
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れた。
日本におけるカバードボンド法導入に向けた検討状況
日本では、カバードボンド発行の試みや、カバードボンド法整備に向けての検討が行われたこ
とはあるが、カバードボンドは実現していない。日本におけるカバードボンドに関連する動向につ
いて、整理しておく。
経済産業省の委託調査として、2009 年 10 月に設置された「カバードボンド検討会」(事務局:
三菱UFJリサーチ&コンサルティング)は、集中的な検討を経て、12 月に「カバードボンドに関す
る欧米事例我が国における導入可能性の検討」と題する報告書をとりまとめて、経済産業省へ提
出した。同報告書は、翌年、経済産業省のウェブサイトで公開された。この報告書は、カバードボ
ンド市場の状況、他国に見られるカバードボンド制度の特徴、そして、カバードボンドを日本に導
入する際の論点整理を行ったが、結論としてカバードボンド法制導入の提言を行っているもので
はない。また、じっさい、この報告書に基づく政策が立案されたことはないと筆者は認識している。
株式会社日本政策投資銀行が事務局を務める「カバード・ボンド研究会」が 2011 年 7 月にとり
まとめて公表した「わが国へのカバード・ボンド導入に向けた実務者の認識の整理と課題の抽出」
と題する報告書
12が網羅的かつ本格的なカバードボンド法制整備に向けた提言となった。また、
成長ファイナンス推進会議(国家戦略室)は 2012 年 7 月 19 日に「カバードボンドの導入の必要
性について、民間金融機関や投資家のニーズや国際的な議論、預金者保護や預金保険制度へ
の影響も踏まえて検討する(2012 年度中)」ことを決定し、同月 31 日に閣議決定された「日本成
長戦略」の別表「日本再生に向けた改革工程表」にカバードボンド導入検討が明記された。
この後、2012 年 11 月に衆議院が解散され、12 月の選挙を経て、政権交代が起きた。国家戦
略室による提言は、たとえ閣議決定の形で当時の内閣の方針として確認されていたとしても、安
倍内閣が尊重されることは期待し難いであろう。政権交代が起きた時点で、カバードボンド法制導
12 月 18 日に政務委員会が可決し、採決のため、本会議に送られ、翌 19 日に本会議で採決さ
れ、可決されたことを確認した。韓国の国会は一院制である。マスコミ報道を鵜呑みにしてはなら
ない事例と認識したい。
12
「カバード・ボンド研究会 とりまとめ わが国へのカバード・ボンド導入に向けた実務者の認識
の整理と課題の抽出」(2011 年 7 月) http://www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/boo
k1107_03.pdf
2013 年 1 月には、日本政策投資銀行の事務局より「カバードボンドの発行に
向けた検討報告『「カバード・ボンド研究会 とりまとめ」フォローアップ』が公表されている http:/
/www.dbj.jp/pdf/investigate/etc/pdf/book1301_03.pdf
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入に向けた検討は、政府においては「ペンディング」状態になったと見てよいだろう。
経団連による要望と政府の回答
2013 年 3 月 22 日、日本経済団体連合会(経団連)は、内閣府の規制改革会議規制改革ホッ
トラインを通じて、カバードボンド法整備の要望を政府に提出した。内閣府のウェブサイトに経団連
の提案と、それに対する金融庁から内閣府に対する回答(同年 7 月)が公開されている。以下に、
内閣府のウェブサイトに掲載されている「検討要請に対する所管省庁からの回答」 13から関係す
る箇所を引用する。
規制改革ホットラインに提出された提案と所管省庁からの回答からの引用
提案事項: カバードボンド法制の整備
提案主体: 日本経済団体連合会
【具体的内容】
今後の成長戦略・インフラ整備等を見据えれば、特に外貨調達や中長期資金確保の手段
等を充実させていく必要があり、カバードボンドはそのための有力な手段となり得る。
カバードボンドがわが国の市場に定着するための課題は、市場における流動性の確保で
あり、流通コストを引き下げる標準化の最も厳格な形として法制化を検討する意義が大き
い。
法制化に向けては、ダブルリコースを確保するための倒産法制の例外的措置や預金者保
護との関係整理等が必要となるため、今後さらに議論を深める必要がある。
【提案理由】
現在、わが国金融機関が担保付社債を発行する場合、担保付社債信託法に基づき発行
することが可能であるが、担保管理における事務手続きの煩雑さなど制約が多く、担保付社
債はほとんど流通していない。また、法律に基づかないストラクチャードカバードボンドの場
合、コスト面、流動性の面から金融機関の継続的な資金調達手段とはなりにくく、現在まで
わが国では発行事例はない。わが国金融機関の資金調達は預金と無担保社債が中心とな
っているが、今後、預金の減少が予測されるなかでは社債などによる市場からの調達の重
要性がますます高まることが予想される。一方、金融危機時にわが国の社債マーケットは大
きな影響を受け、資金調達における困難に直面した経験を踏まえれば、金融機関の調達手
13
内閣府 「『規制改革ホットライン』で受け付けた提案等に対する所管省庁からの回答について
【平成 25 年 3 月 22 日~11 月 30 日受付分】 12 月 25 日付取りまとめ」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/hotline/h_index.html
8
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段の多様化は重要な課題である。
海外では、欧州においてはカバードボンドは市場規模 250 兆円にまで拡大しており、加え
てリーマンショック後にも安定した発行実績を確保するなど、その有用性が確認されていると
ころである。さらに、これまでカバードボンドを導入していなかった豪州、韓国、カナダなどア
ジア太平洋地域でもカバードボンドの法制化の動きが広がっており、カバードボンドにより、
外貨を含む資金調達を行っている海外金融機関とのイコールフィッティングを確保すること
は、今後、わが国の金融機関が海外業務を展開していく上では不可欠である。
また、国内においても、年金等の有力な運用手段たり得る新商品を準備することの意義
は高く、法制化による新規市場創設が望まれるところである。
所管省庁: 金融庁
わが国の銀行等は諸外国と比較すると預貸率も低く、国債等を潤沢に保有しており、これ
を担保とした資金調達が可能な状況にあることから、現状ではカバードボンドを発行する喫
緊のニーズはないと考えられます。
具体的なニーズがないにもかかわらず法制化の検討を行うこと自体、国際的にわが国の
銀行が資金調達に困難を抱えているかのように受け止められる危険性があること、また、カ
バードボンド保有者を優先的に保護し、倒産法制における例外を認めることは、預金者や預
金保険制度への損失が増大するおそれがあると考えられることから、法制整備を行うことは
適当でないと考えます。
出所: 内閣府
経済同友会による提言
2014 年 5 月に、経済同友会がカバードボンド法導入提言した。経済同友会が 2014 年 5 月
23 日に公表した「『新成長戦略』に盛り込むべき金融面の施策」 14には、「民間金融機関に よる
カバードボンド発行を認め、長期資金調達を可能にし、公共インフラの更新、大型 M&A などの資
金需要に対応する」といった文章が盛り込まれており、民間金融機関によるカバードボンド発行を
提言している。
(調査部長 江川 由紀雄)
14
公益社団法人経済同友会 「『新成長戦略』に盛り込むべき金融面の施策」 2014 年 5 月 23
日 http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2014/140523b.html
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名称
:新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号
所在地
:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号
日本橋室町野村ビル
Tel : 03-6880-6000(代表)
加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
資本金
:87.5 億円
主な事業 :金融商品取引業
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