第 1 回中間報告 - 国際ロータリー第2710地区

第 1 回中間報告
(2014 年 8 月 24 日~11 月 25 日)
国際ロータリー第 2710 地区
2014/15 年度グローバル補助金奨学生
University of Birmingham
MSc Global Cooperation and Security
新口慎太郎
派遣ホストクラブ及びカウンセラー:三原ロータリークラブ
出田啓治様
受入地区:第 1060 地区
受入ホストクラブ及びカウンセラー:無し
バーミンガムとバーミンガム大学について
2014 年 8 月 24 日より国際ロータリーグローバル補助金の奨学生としてのバーミンガ
ムでの私の留学生活が始まりました。バーミンガムはイギリスのイングランド中部に位置
し、18 世紀の産業革命をきっかけに交
通の要所、また工業都市として発展した
都市で、現在はロンドンに次ぐイギリス
第 2 の都市とも呼ばれています。市の中
心部には大きなショッピングセンターや
国際会議場、コンサートなどが開かれる
大きな文化ホール、また国際空港なども
あり、非常に活気のある文化的な街です。
しかし都会の喧騒を一歩離れると緑や川
バーミンガムの街並みと運河
などの自然が豊かな街でもあります。バ
ーミンガムはイタリアのヴェニスよりも多くの運河があることでも知られており、
「ナロー
ボート」と呼ばれる細長いボートが今でも運河を行き交っています。
バーミンガム大学は 1900 年に当時のイギリスの君主・ビクトリア女王の勅許によって
宗教や階級的背景などにかかわらず、全ての学生を平等に受けいれるイギリスで最初の都
市(市民)大学として設立されました。そのような歴史的背景もあってか、非常に国際色
が豊かな大学で、150 ヶ国以上の国から毎年約 5000 人の留学生を迎えており、特に大学
院における留学生の在籍者数はイギリス国内の高等教育機関では最大と言われています。
私はそのバーミンガム大学の大学院修士課程で Global Cooperation and Security(国際
協力と安全保障)というコースを専攻しています。
学業面での成果
渡英してからの最初の 4 週間は英語のコースに参加していました。このコースは必修で
はないのですが、私は留学経験が無く、学業面でも生活面でも分からないことや不安なこ
とが多かったので、このコースを通してイギリスでの学生生活に適応して大学院でのスタ
ートをしっかりと切りたいと思い、このコースに参加することにしました。このコースで
は主に英語での論文やレポートの書き方、大量に課される本や論文などの文献をどのよう
にして読み進めていくか、プレゼンテーションやディスカッションの行い方を学びました。
特に英語での論文やレポートなどの学術的文章の書き方は非常に難しく、文献の引用・参
照の仕方はもちろん、文章全体や各段落の構成の仕方、論の進め方などにも細かな共通ル
ールがあり、日本語で書く場合との様々な違いを感じました。しかし、この英語での学術
的文章の書き方を学ぶことで、課題として出される文献などがどのような構成で書かれて
いるかを理解することができ、より効率的に論文などを読むことができるようにもなりま
した。
この 4 週間の英語のコースには大学院での専攻が異なる学生がクラスメイトになり、そ
のため授業や課題で扱う内容も「地球温暖化」「人口問題」「教育問題」など一般的なもの
で、これらのトピックについて各国からの留学生とディスカッションやプレゼンテーショ
ンなどを行いました。同じトピックでも生まれ育った国や環境が違えば意見も異なり、そ
れぞれの国が抱える独自の問題や違った視点などを知ることができました。
4 週間のコースを終え、9 月末
からは大学院の授業が始まりま
した。1 学期目にあたる秋学期で
は 3 つの授業を履修しています。
その中の 1 つに必修科目の Fear,
Co-operation and Trust in
World Politics(国際政治におけ
る恐れ、協力、信頼)という授業
があります。この授業では国際関
バーミンガム大学のキャンパスの風景
係論の理論を中心とした授業で、
「国際社会において国家間の関
係を形作るのは不安や恐れなのか、協力なのか、それとも信頼なのか」という視点で実際
に国際政治の歴史上で起こった様々な事例を分析します。今までの授業では冷戦時代のキ
ューバ危機やパレスチナとイスラエルの問題、旧ユーゴスラビアへの人道的介入などを扱
ってきました。このようなケーススタディは日本での学部生時代にもゼミの勉強でよく行
っていましたが、私が一番に感じる違いは資料や情報の量です。日本でケーススタディを
行うときにはどうしても日本語で書かれた文献や日本語に訳された資料のみを情報源とし
てしまっていましたが、英語でとなるとアクセス可能な情報は圧倒的な量に増え、多くの
国の外交文書や国連や国際機関などの資料はほとんど全てが利用可能になります。このこ
とを言い換えると、留学生を含め学生はそれらの資料を「読んで当たり前」と教授からは
見なされます。旧ユーゴスラビアへの人道的介入のケーススタディでは国連安全保障理事
会の議事録を読んだり、キューバ危機のケーススタディではアメリカの当時の大統領であ
るケネディ大統領とソ連のフルシチョフ第一書記がこの問題を巡って数日間にわたって交
わした手紙を読んだりしました。
こういった授業内容、またその授業のための課題や資料・文献の読破は私にとって非常
に難しく、また厳しいものです。学期当初は文献などを読み切れないこともあり、またせ
っかく文献を読んで準備をして授業に臨んでもなかなか自分の意見を言うことができませ
んでした。ただ時間が経るにつれそういった不安や悩みは少なくなってきており、まだま
だではありますが少しずつ授業や日々の学習における吸収力を高められていると感じてい
ます。
受入地区でのロータリーとの関わり、奉仕活動
イギリスに来てからは奨学生としてロータリーの大きなイベントに二度参加させていた
だきました。9 月 26 日~28 日にウェールズのカーディフで行われた 2014/15 年度奨
学生の交流イベントでは、本年度イギリスに留学する奨学生とともにオリエンテーション
のような形でこの 1 年間奨学生としてどのように過ごしていくべきかということや現地の
ロータリークラブやロータリアンの方たちとどのように関わっていけばよいかというお話
を聞きました。また奨学生同士でも意見や体験談を共有することができました。私より数
か月早く渡英していた奨学生は既にホストクラブ以外の RC から例会に招かれ、大学院で
研究予定の内容のプレゼンなどをされていました。また 11 月 7 日~9 日に行われた地区
大会にも出席させていただきました。第 1060 地区は毎年地区大会を地区外で行っており、
今年はブリストルという都市で行われました。地区大会はたくさんのロータリアンの方々
とお会いする貴重な機会となりました。またブラッドフォード大学への平和フォローをは
じめ、たくさんの方の講話を聞くことができました。特にロータリーの「安全な水」への
取り組みの一つである「砂のダム」の取り組みが、それまで無駄になっていたアフリカで
の雨水をいかに有効に、そして安全な水資源に変えているかというお話は非常に興味深く、
他地域への応用やさらなる可能性を感じさせられました。また地区大会では貴重な経験も
しました。イギリスでは第一次世界大戦の終戦記念日にあたる 11 月 11 日に最も近い日曜
日に、同大戦以降の全ての戦没者に対する追悼式典が行われ、11 時に黙祷を捧げます。地
区大会最終日の 11 月 9 日はちょうどその日にあたり、ロータリアンの方たちと一緒に黙
祷を捧げました。私たち日本人がヒロシマ・ナガサキの原爆の日や終戦の日に黙祷を捧げ
るのと同じように、例え場所や時間、戦争に関わった立場は違っても、亡くなった方たち
への思いや平和への祈りは一緒なのだなと感じさせられました。
受入地区である第 1060 地区では奨学金制度が変わっ
てから奨学生を受け入れるホストクラブとカウンセラーつ
ける体制をとっていないようで、私は現在イギリスではホ
ストクラブもなくカウンセラーの方にもついていただけて
いないという状況です。同じ第 1060 地区にはもう一人奨
学生がいるのですが、その方も同じ状況でした。そのため
現実として他の奨学生に比べてロータリーとの関わりは非
常に限られたものになってしまっています。
しかし、幸いなことに地区大会でお会いしたロータリア
ンの方たちとは個人的に連絡を取らしていただいており、
先日もロータリアンの方のホームパーティーに招待してい
ただき、そこでまた多くのロータリアンの方にもお会いす
ることができました。また地区大会でお会いしたロータリ
地区大会にて第 1060 地区奨学金及び
アンの方の中に 53 年前に私の地元の三原にロータリー
平和フェロー担当のポールさんと
の関係で来られたことがあるという方がいらっしゃいました。その方が住んでいるコヴェ
ントリー市の旧コヴェントリー大聖堂には広島平和公園国際会議場にある「和解の像」と
同じものがあるそうです。これらの像はかつて双子の像と呼ばれていましたが、現在では
平和の象徴としてドイツのベルリンや北アイルランド、また平和研究で有名なブラッドフ
ォード大学にも同じものがあるそうです。そのロータリアンの方からは例会やロータリー
の活動でなくとも、プライベートでよいからコヴェントリーに足を運んで欲しい、またそ
の時には是非連絡してほしいと言っていただき、このようなご縁を大切にしていきたいと
強く思いました。原爆の日の 8 月 6 日にはコヴェントリーでも毎年平和祈念の集いが開か
れているそうです。
奉仕活動への参加はまだできていないのですが、バーミンガムのローターアクトクラブ
に参加させていただいています。ローターアクトクラブは 30 歳までの青年を対象としたロ
ータリーの提唱する奉仕クラブで、イギリスではこのローターアクトの活動が非常に盛ん
でバーミンガムにも 5 つのローターアクトクラブが存在します。大学を基盤にしているク
ラブも多く、学生の奉仕活動の場、またロータリークラブを含む地域コミュニティとの交
流の場ともなっているようです。私の参加しているローターアクトクラブはまだ立ち上げ
られたばかりで、これから私もこのローターアクトクラブの土台を作るのに積極的に関わ
ることができればと思っています。
直面した課題、問題点等
今までのところ困っていることはありません。友人にも恵まれ、忙しい毎日ではありま
すがとても充実した学生生活を送ることができています。また、お会いしたロータリアン
の方たちにも「何か困ったことや分からないことがあればいつでも相談して」と言ってい
ただけ、非常に心強く思っています。
今後の目標、課題
今後の目標はより積極的に授業でのディスカッションやグループワークに参加し、授業
に貢献することです。現実として今は英語圏の学生に圧倒されており、また自分の中にも
「留学生」としての甘えがあるのも事実だと思います。今までは授業で課される最低限の
課題をこなしていくのがやっとでしたが、これからは授業の枠を超えて自分の研究の幅を
広げていきたいと思っています。夏には NGO でのインターンシップを予定しており、それ
に向けてもしっかりと準備をしていきたいと思っています。
またロータリーともさらに積極的に関わっていきたいと思っています。こちらでのカウ
ンセラーがいないため、これまでは受け身のかたちでロータリーと関わっていましたが、
地区大会をきっかけに多くのロータリアンの方たちと繋がりを作ることができました。こ
れを生かしてロータリーとの関わりを深め、またローターアクトクラブの活動もさらに盛
んなものにし、奉仕活動や地域コミュニティに携わっていきたいと思っています。