ナミビア (338KB、2014年5月)

ナミビア共和国医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の服用方
法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバイスを受けるよ
うにしてください。
最新更新履歴:2014 年 1 月 10 日更新
1.赴任前の準備
(1)予防接種
日本から直接入国する場合は、入国時に予防接種の証明書を求められるものはない。但し、
ナミビア入国前までに、黄熱病流行地(アンゴラ、ケニア、タンザニア、ザンビア等)に滞在、も
しくは経由した場合、黄熱病接種証明書(Yellow Card)の提示が必要となる為、必ず携帯す
る事。黄熱病及び各種予防接種は、首都市内のトラベルクリニックで接種可能である。
一方で、最近日本からの直行路や南アなど、本証明書提示の義務がないとされている国か
らの経由や入国に際しても、黄熱病証明書を要求されることがあったため、出発国を提示する、
また、すでに摂取済みの者は証明書を持参することを奨励する。
(2)その他の準備
ナミビアの医療は、GP(一般医)開業のほか、限定的な科目については、総合病院等で開
業している各種専門医の診療や処方を受けることが可能である。その際、日本の医師から紹
介状(Reference letter/英語)を持参することが望ましい。薬剤や保健材料は殆どが南アから
の輸入製品である。日本で使用されている慢性疾患治療薬は、ほぼ入手可能であるが、商品
名に違いがあるため、薬品名を確認してくることを推奨する。
眼鏡、コンタクトレンズは、眼科医の処方を受けて購入することになるが、検眼技術の精度
の問題や商品の流通が限定的であることから、日本から持参することを推奨する。ソフトレン
ズ商品が主流であり、保存、洗浄液等の購入は、首都部では可能である。
2.医療事情
(1)医療機関
首都や州都には、公立及び私立の総合病院、専門医クリニックがある。公立病院はナミビ
ア国民を対象とした保険体制となっていることや設備、医療者人材も限定的であるため、日本
人の受診には適切とは言えない。
一方で私立病院は、南アのメディカルチェーンの一つの Namibia Medi Clinic Hospital に、
外国人の受診者が多く、施設や医療サービスも比較的充実している。
一般傷病は、GP(General Practitioner/一般医)を受診して、必要時専門医の紹介、検査
室への依頼などの手続きをうける。開業時間は一般に午前 8 時から午後 4 時半頃までであ
る。
緊急及び時間外の傷病対応は、総合病院の 24 時間対応の救急外来(Emergency Room)
を利用する。予約は不要であるが、その分受診料金が高めになる。病院によって救急車サー
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ビスを持つところもある。
ナミビアの医療レベルは、地域差があり、首都及び大都市圏は、第 3 次医療が可能である
が、地方では第 2 次医療レベルで、専門的な治療は首都圏施設に移送されることが多い。
日本人開業医は居ない。人種による医師教育内容の差異は無いが、現在の医師の構成を
見ると、南アとの関係や歴史的経緯から、アパルトヘイト前に南アで教育を受けた白人医師や
欧州からの移民医師が、私立系病院に多く勤務しており、公立病院では黒人系医師の割合が
多く見られる。
日本人がよく利用する首都周辺の医療機関は、以下のとおり。
① Namibia Medi-Clinic Hospital
場所: Heliodoor Street, Eros, Windhoek
Mail: P O Box 9819, Windhoek, 9000
Tel: +26 46 122 2687 救急外来: +26 46 122 2687
(2)緊急時の対応と措置
国立病院付属の救急病院付属救急車の要請は可能であるが、台数やパラメディカルが限
定的であること、設備や医療サービスが基本的にナミビア人を対象としたものであることから、
外国人には適切とはいえない。私立病院(Nmibia Medi Clinic Hospital)では、24 時間救急に
対応しており、要請により救急車の手配が可能である。
3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
慢性疾患常用薬(薬剤名がわかればナミビア GP から処方を受けることは可能)やアレルギ
ー等で特殊な薬品を必要とする場合は持参することを奨励する。薬局は商業街にあり、基本
的な薬剤は入手可能である。衛生用品も種類は限定され流通しているが、温冷湿布薬や温
熱カイロなどは入手困難。
(2)現地で調達できる医薬品
日本の薬局で入手可能な医薬品(風邪薬、胃腸薬、整腸剤、痛み止め、消毒薬、目薬、虫
さされ用薬、防虫スプレー、ビタミン剤、サプリメント)はほぼ入手可能。南アの大型チェーン薬
局支店や地元小売店がある。化粧品や各種ローションなども首都部の薬局で入手可能であ
る。
(3)現地で調達できる衛生用品
生理用品、避妊具、包帯、ガーゼ、体温計、血圧計、吸入器、体重計、アイスノン(冷却剤)、
温冷枕、コルセット、マスク、手袋、哺乳瓶など乳幼児用衛生器具等が揃う。
(4)薬局
全国のショッピングセンターや商店街には、Parmacy/Apteek(薬局)があり、薬剤師が駐在
するので、相談することが可能である。一般薬(Generic Drugs)は処方箋不要であるが、抗生
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物質や特殊な治療薬は、医師の診断を受けた処方箋が必要となる。営業時間は概ね午前 9
時から午後 5 時ごろだが、病院付属の 24 時間営業の店も有る。救急病院では、その外来で、
基本的薬品を常備しているため、救急時は病院で、直接購入することが可能である。
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠した場合の対応
掛かりつけの GP から、産婦人科医の紹介を受けて受診することになる。日本と同様に、妊
娠・出産・分娩後診察を一貫して産婦人科医師が担当するが、個人病院では分娩施設を持た
ずに、分娩時は、大型病院の産科病棟に入院して、担当医が通う形態になる。ナミビアでは、
分娩入院は通常 1 泊 2 日程度で、万一母子に異常が起こった場合、専門医数や医療設備が
限定的なので、南アに搬送される事が有り、その経費は莫大となる。
ナミビアでの病院施設や医療技術は先進国に比べ未熟であり、衛生と安全性の点で推奨
できるレベルとはいえない。また、言語や生活習慣の違い、費用の問題などを考慮すると、日
本での妊娠・出産を強く推奨する。
(2)出産後の対応
母子の産後管理については、病院によっては定期健診が無料・有料で実施されるが、日本
の様なきめ細かい育児指導や健康教育は期待できない。乳幼児対象の予防接種については、
日本の法定予防接種及びアフリカ地域疾病に対応したワクチン接種が可能である。外国人は、
受診料及びワクチン料は有料である。
(3)育児
小児健診や予防接種は基本的な項目について実施されているが、日本の保健所サービス
のような育児支援や母子教育システムは無い。就学前教育施設(幼稚園)は私立有料であ
る。
5.手術
(1)現地で可能な手術
首都圏では、第 2-3 次医療レベル(一般外科や整形、婦人科などの主なる外科手術と 24
時間救急外来)の医療が、私立系専門病院で実施されている。地方圏では、第 2-プライマリー
医療レベル程度で、専門的手術や重症例は大都市圏病院へ搬送することが多い。
(2)手術設備の状況
首都圏で外科の有る施設では、基礎的な設備は整っているが、専門的な手術設備は無い。
地方においては、医師や医療者の絶対的数の不足、施設の不備などから、救急・救命処置
以外のサービスは困難と思われる。また、輸血についての安全性にも不安がある。
(3)その他の留意点
日本の病院経営方法と異なり、病院の建物管理、医師の外来管理、検査室、レントゲン室、
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手術室(麻酔医、手術室と医療機器管理)は、全て個別の責任者によって管理運営される。そ
のため、病院を受診する場合、各所で利用料金の精算を行う必要が有リ、特にナミビア保険
制度加入者以外の者に対する料金設定は高額で、現金での支払いが求められる。
6.現地での傷病
(1)一般の疾病
アフリカ南西部の共和国。国土の主要部分は 1000~1500m の高原地帯で、西部地域は
大西洋に面しているが、赤道以南のアフリカでナミビアと並んで最も乾燥しているナミブ砂漠、
カラハリ砂漠に挟まれている。高温乾燥した気候で水資源に乏しいため農業には適さないが、
鉱物資源の豊かさでは世界有数である。乾燥気候で、一日の中でも気温差が激しく、昼は半
袖で快適に過ごせるが、夜になるとセーターやフリースを着込まなければならないこともある。
特に 7~8 月は夜の冷え込みが激しいので、風邪や上気道感染症などに注意が必要となる。
大西洋岸は特に乾燥していて、内陸へ進むにつれ若干ではあるが、降水量が増える。雨期は
11 月から 4 月で特に 2 月~3 月に集中し、この頃は熱帯感染症の流行が懸念される。
また、ナミビア国内でも、近年の食生活、生活習慣の変化により、全国的に生活習慣病が
増加しており、肥満、高血圧、糖尿病、脳心血管障害などの予防と早期治療が励行されてい
る。
(2)風土病、感染症
マラリアは雨季に地域的発生 1がみられるので、近隣地域に出かける場合は、防蚊対策(マ
ラリア予防内服薬、防虫スプレー、長袖、長ズボン、蚊取り線香など)を実施しそのような地域
での活動には、予防薬の服用を推奨する。ウィルス性肝炎(A 型)、エイズを含む性病は季節
にかかわらず発生し、特に HIV/AIDS は、近隣国の中でも高い罹患率を示している。リフトバ
レー熱など東-南部アフリカ地域の風土病も散見される。
(3)有害動物、病害虫
狂犬病患者が国全体で毎年数名から数十名の発症が報告されているので、どの動物にも
触れない、近づかないといった注意が必要である。万が一、咬まれた場合はすぐに傷口を洗
い、医療機関で適切な治療を受ける。また、マダニ刺症(African Tic bite Fever)は特徴的に
インフルエンザ様症状を呈する感染症で、ナミビアでは一般的な疾病で、高熱、頭痛、リンパ
節腫脹と咬傷口周囲の発赤を認めた場合これを疑い、速やかに抗生物質の投与を受けること
が必要である。
7.保健衛生
(1)飲料水
ナミビアフリカの水道水は、飲水が可能であるとされているが、途上国では一般に、貯水槽
1
東北地域(Okavango, Caprivi)は通年ハイリスク地域で、特に雨季中~後期に増加。西北地域もハイリスク地域であるが、9 月から 10 月の
乾季にはマラリアの発生は減少し、北東地域とマラリア流行のパターンに相違がある。一方で、海岸地域と南部のほとんどの地域でのマラリ
ア発生は見られていない。(MOHS Namibia/National Policy & Strategy for Malaria Control,1995)
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や水道管の汚染、水圧低下による汚水混入の可能性が否定できないので、必ず煮沸(10 分
程度)するか、ミネラルウォーターを飲用することを推奨する。
(2)濾過器の入手
薬局で、購入可能である。
(3)その他の留意点
ナミビアは、昼夜を問わず、窃盗、強盗、ひったくりなどの犯罪が報告されている。夕暮れ以
降の外出は、現地の人間も控える程で、日常的な緊張とストレスが大きく、意識的なストレス
マネージメントの必要性が有る。また、防犯も兼ねて車両移動が多く、交通事故や車両強盗な
どの危険性も高いため、保険への加入は必須であるといえる。
以上
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添付資料:ナミビア訪問者が携帯すると良い南ア保健省黄熱病規定
*この規則ではナミビアから南ア入国の際不要とされている。一方でナミビアに流行国(表内)
から入国する際、黄熱病証明提示を求められることがあるので注意
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