リリオだより ヤマト運輸からの指摘で映画制作側が気付い 雑学シリーズ 87 2014/7/1 雑学「魔女の宅急便」 たわけですが、ヤマト運輸はあえて訴訟などを 起こさず、むしろラッキーと考えました。 ヤマト運輸のしたたかな戦略が見事に奏功し、 1989 年に公開されたジブリのアニメ映画「魔女の宅急便」の挿入歌といえば 筆頭スポンサーになり、また「魔女の宅急便」 「やさしさに包まれたなら」ですね。第3回リリオコンサートで歌いましたか をヤマト運輸の宣伝に自由に使える権利を得た ら。でもね「めぐる季節」という歌もその映画のイメージ曲なのです。 のです。 もう少し正確にいうと、映画に使われた曲は「海の見える街」という曲で、 歌詞がないのでBGMとして使われていますが、その後 2004 年に吉元由美さん がこの曲に歌詞を付け「めぐる季節」として井上あずみさんが歌いました。 つまり「海の見える街」の歌入りバージョンが「めぐる季節」ということで、 どちらも同じメロディーです。 ところで「魔女の宅急便」の「宅急便」ですが、 これは「黒ネコヤマト」の登録商標です。 本来であれば、「魔女の宅配便」でなければい けないところです。 実は、原作者の角野栄子さんや映画制作者が、 うどんすき (美々卯) そして映画公開前に、ヤマト運輸は、テレビの コマーシャルでイメージ曲の「海の見える街」 (めぐる季節)をバックに使い、また大手新聞 「魔女の宅急便」の一場面 主人公の魔女キキの横に黒ネコの ジジがいます。 に次のような全面広告を出しました。 ヤマトは大きく成長しました。今や「宅急便」は一般名称となりつつあります。 万歩計 (佐山時計計器) エスカレーター (オーチス社) ホッチキス (ホッチキス社) マーガリン (雪印乳業) キャラメル (森永製菓) 一時は経営不振にも陥ったヤマト運輸ですが、映画のコマーシャルがでる度 に「黒ネコヤマト」を連想させるという幸運もあって、その頃から業績を伸ば し、今では業界トップの座をつかんでいます。 よくできたことに、この映画に「ジジ」という黒ネコが 「宅急便」という言葉がヤマト運輸の登録商標 紙おむつ (ピション) 登場しています。一般に魔女ものの物語には、黒猫がし であることを知らずに映画制作をしてしまいま サインペン (ぺんてる) ばしば魔女のパートナーとして登場します。 した。そして指摘された時には、修正不能なま シュークリーム (開進堂) でに映画制作が進んでしまっていたのです。 スチュワーデス (ユナイテッド航空) あまりにも「宅急便」という言葉が一般化し 猫いらず (成毛製薬) てしまったため、そんな肝心なことに誰も気付 パーソナルコンピュータ (アップル) かなかったのです。 福神漬け (酒悦) フリーダイアル (NTT) そのように登録商標が一般名称になっている 例はたくさんあります。右はその例です。 今では権利が消滅しているのがほとんどです が、 「宅急便」のように権利が有効な場合もあり ます。 黒猫は、中世のヨーロッパでは、魔女の家族、あるいは 魔女の変身したもの、と思われていました。 真っ暗闇では他人の目につかず、隠れられる能力を持っ ているので、魔女のパートナーにふさわしいからです。 ヤマト運輸も黒ネコを商標としていますが、これは母猫 万年筆 (丸善) が子猫を口にくわえて運ぶときのように優しく丁寧に物 マジックインキ (内田洋行) を運ぶ、という企業姿勢を示しています。 ファミコン (任天堂) マジックテープ (クラレ) 「宅急便」という題名といい「黒ネコ」が登場することといい、偶然とはい えヤマト運輸にとっては絶好の宣伝になる映画でした。 亀岡弘志(記)
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