人材育成は“企業は人なり”の原点 - 企業のためのジョブ・カード制度

人材育成は“企業は人なり”の原点
(株)ウィズネス
≪宮崎商工会議所扱い≫
<企業概要>
■所 在 地:宮崎県宮崎市
■業
種:サービス業(美容業)
■資 本 金:1,000万円
■従業員数:75人
<訓練概要>
■訓練コース:美容室アシスタントマネージャー
人材養成コース
■職
種:専門的技術職
■訓練生数:2人(2人を正社員採用)
■期
間:平成22年4月~10月
■訓練種別:実践型人材養成システム(基本型)
1.制度の活用に取り組んだ目的
題となっている中で、今回のジョブ・カード制
度の活用に至ったわけです。
具体的な導入目的としては、次の諸点をあげ
美容業界が持つ共通の悩みのひとつに、ス
タッフの定着率をいかに向上させるかというこ
ることができます。
とがあります。通常、美容室がスタッフを新規
(1)職業訓練校に派遣する経費などの負担を
採用する場合は、美容専門学校を卒業した美容
軽減できるので、これまでよりも多くの訓練
師免許の取得者から募集することになりますが、
生を育成できる。
応募者のいずれもが技術、知識、接客術とも未
(2)専門的教育訓練の実施により、訓練生の
スキルアップとやる気を醸成できる。
熟の状態ですので、これをいかにして訓練する
(3)新規採用者の定着率が向上し、その結果、
かが常に頭の痛い問題になっています。
この問題の解決に当たり、これまで多くの美
容室では、新規採用後に入社教育の一環として
ベテラン美容師の負担軽減とステップアップ
に連動し、全体の定着率の向上を図れる。
職業訓練校(宮崎美容技術開発協会)に委託訓
練生として派遣するやり方が一般的となってい
ます。しかし、この方法では訓練のための経費
負担が大きいことから、派遣する人数を制限せ
ざるを得ません。その結果、訓練生は「いつま
で経っても自分のスキルアップが認められない
のは、自分が美容師に向いていないのではない
か…」と、早いうちに自ら判断して、美容師と
いう職業そのものに見切りをつけてしまうケー
スが後を絶たず、これが定着率の悪化に繋がっ
ているわけです。
そこで、こうした、いわば“負のスパイラ
ル”をいかに断ち切るかが業界全体の喫緊の課
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熱心な OJT の受講風景
2.具体的な取組内容
今回実施した具体的な訓練の流れは、次の
とおりです。
(1)オリエンテーション(個人面談方式)
:説
明
①約6カ月にわたる職業訓練の意義・目的お
よびジョブ・カード制度の概要(ポイント
=評価シートの丁寧な説明と活用)
。
②職務遂行のための基本能力が能力ユニット
別、かつ、詳細に体系化されていて分かり
やすく、身に付けるべき訓練目標が明確で
あること。
③個人評価欄、企業評価欄の活用により、バ
ランスの良い評価視点を保つことができる
こと。
(2)訓練開始
(ポイント=プロとしての最初の技術習得を
Off-JT 訓練にも熱が入る
鍛えるため、妥協は許さない)
。
①美容接客接遇座学:服装(身だしなみ)、
(4)現場(美容室)実務実習
(ポイント=全て専任スタイリスト監督のも
立ち居振る舞い、言葉の操り方など、ロー
とに実習する)
。
ルプレィ方式を織り込んで学習。
②美容受付業務実技:予約受付の段取り、シ
①ワインディング業務実技・実習:カール理
ャンプースペースへの誘導、電話応対をロ
論、薬液特性、デザイン理論など様々なテ
ールプレィ方式により学習。
クスチャーコントロールの基礎を学習。
③シャンプートリートメント実技・実習:シ
②ブロー業務実技・実習:ヘアドライからブ
ャンプースペースでのカウンセリングトー
ローまで、様々な素材への対応や骨格補正
ク、薬液選定、プレシャンプー、マッサー
を目的とした技術を習得。さらに、自分で
ジシャンプーの順に反復訓練(担当講師に
判断し、思いどおりのデザインができるま
よる厳しい指導・評価と徹底した反復訓
で反復練習。
練)
。
これらを大別して6項目の内容で訓練を実
施しました。
(3)実務実習
(ポイント=専任スタイリストの指導を受
(5)目標達成のための留意点
けながら問題点を明確化し、訓練生、訓練講
師に訓練日誌を通じて情報共有を徹底させ
①訓練日誌には当日のうちに欠かさず記入さ
せること。
②無遅刻・無欠勤を徹底させることによって、
る)
。
①カラー業務実技・実習:薬液知識、白髪染
め、ファッションカラーの技術を習得(髪
のコンディション把握には、高度な毛髪理
論の学習も必要)
。
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モチベーションの醸成と訓練環境を整備す
ること。
3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫
4.制度の活用による具体的な効果
昨今の新入社員は、業種を問わず離職率が
今回の実践型人材養成システムの活用によ
高いといわれていますが、特にこの業界では、
る訓練の取り組みにおいては、予期せぬ多くの
美容師という職業自体からリタイアするケース
事態に悩み、その対応に苦しむなど試行錯誤の
が高いことが特徴となっています。その理由は、 連続でしたが、結果として訓練生とトレーナー
他の職業(資格)と比べて格段に長いアシスタ
などとの間に信頼関係が構築され、相乗効果が
ント期間が若者の働く意欲を削いでしまうので
生まれるまでに至りました。
はないかと考えています。
そして、何よりも、以下のようなことを実感
今回の訓練においても、訓練開始後、間もな
く新人2人が理由も告げずに退社するという事
したことは、大きな収穫でした。
(1)脱落者を生むことなく訓練を終了させる
態が発生しました。
には、トレーナー同士が連携し、同志になら
こうした現実の中で、挫折を免れ、生き残る
なければならない。
新人が将来のサロンを背負って立つ人材に育つ
(2)日々成長する訓練生をトレーナーがしっ
のだろうと期待しています。そして、そのため
かり見守ることにより、訓練生は尊敬できる
の仕掛けとしては、職場環境の改善や充実はも
先輩と出会うことができる。
とより、訓練に対する企業のスタンスやあるべ
(3)トレーナーも、日々成長する訓練生から
き姿を徹底的に議論し、問題の解決策を見出さ
なければなりません。
そこで、今回の訓練では、次のような仮説を
立てて定着率の向上を目指しました。
(1)技能訓練の明確な目標とそれを実行する
プランの確立があれば…。
(2)日々のサロンワークを繋ぎ、働く動機付
けの浸透が図られれば…。
そして、これらを具現化するため、訓練開始
時に引き続いて中間で2回目のオリエンテーシ
ョンを実施し、美容室に入社した意味の徹底し
た意識付けを行い、“目指す美容師になるには
何をしなければならないか”ということを問い
かけ、各人の目標に対する動機付けやそのため
のアプローチ(本人の指針)について記述させ、
同僚や上司の前で発表させました。
さらに、訓練開始前にその都度、反復発表を
させ、「目標」→「達成させるプラン」→「実
践」→「日々の反省と学習」という、ひとつの
流れの中で訓練を実施しました。
- 121 -
人を育てる責任感と喜びを得ることができる。
実践型人材養成システムの概要
<(株)ウィズネス>
訓練の目的
社会人として必要なコミュニケーション能力の育成から能力開発、模擬接客演習など美容アシスタント
になるために必要な知識・基礎能力・業務能力を習得させる。これにより、当社の指導方法の継承に必要
な素地を養い、将来、当社美容アシスタント業務の中核となる人材を養成する。
訓練生の仕上り像
「ベルフェミン」美容室アシスタントとして、お客様に対する電話応対、接遇および美容技術アシスタン
ト業務ができる。
職務名または教科名
美容受付業務
美容室接客業務
アシスタント業務一般実習
O
J
T
ブロースタイリング
アシスタント実習
パーマワインディング
アシスタント業務実習
ワインディング(パーマ)
業務実習
ブロー(フィニッシュ)
業務実習
時間
ディスプレイの管理、商品の管理、金銭の管理、会計、電話
対応、予約の確認、連絡、予約台帳の記入
挨拶、言葉遣い、立振舞い、ご要望等の連絡・確認
道具、用具の準備、タオルの管理、カルテの準備、機材の洗
浄、室内の清掃
10
10
パーマの準備、ロッドの使い方
10
10
クレンジング実習、マッサージシャンプー実習
150
毛染め診断、白髪染め、塗布実習
150
ワインディング実習、ストレート実習、応用実習
150
社内
サロン
ディレクター
ブラシ、ドライヤーの正しい使い方、スタイリングの理解、
150
毛流、毛先のコントロール
OJT合計 680
電話対応、商品管理、予約台帳に記入
3
美容室接客接遇
挨拶、言葉遣い
3
アシスタント業務一般実習
カルテ管理
1
スタイリング剤の種類・使い方、機材の準備
1
パーマの種類、毛髪診断、ロッドの使い方
1
カラー剤知識、毛髪診断
1
シャンプーの概要・手順、トリートメントの仕方
1
カウンセリング
1
カウンセリング
1
カウンセリング
1
ワインディング(パーマ)
業務実習
ブロー(フィニッシュ)
業務実習
実施主体
担当者
サロン
マネジャー
20
美容受付業務
ブロースタイリング
アシスタント実習
学 パーマワインディング
アシスタント業務実習
カラーアシスタント業務実習
シャンプートリートメント
科 業務実習
カラー業務実習
所属
20
機材の準備、スタイリング剤の使い方
カラーアシスタント業務実習 カラー剤の準備、塗布実習
シャンプートリートメント
業務実習
カラー業務実習
接遇トレ-ナー
宮
崎
美職
容業
技訓
術練
開法
発人
協
会
技能トレ-ナー
学科合計 14
‐
O
f
f
職務または教科の内容
美容受付業務
電話対応、商品管理、予約台帳に記入
3
J
T
美容室接客業務
挨拶、言葉遣い、立振舞い
3
アシスタント業務一般実習
カルテ管理、タオル洗浄、機材の洗浄
1
ブロースタイリング
スタイリング剤の使い方、ドライヤーの使い方
1
アシスタント実習
パーマワインディング
パーマ剤の準備、ロッドの使い方
1
実 アシスタント業務実習
1
カラーアシスタント業務実習 カラー剤の準備
技 シャンプートリートメント
シャンプーの概要・手順・仕方、トリートメントの仕方
109
業務実習
カラー業務実習
カラー剤塗布
12
ワインディング(パーマ)
パーマのかけ方、ストレートパーマ
12
業務実習
ブロー(フィニッシュ)
スタイリング
24
業務実習
実技合計 167
Off-JT合計 181
総時間数 861
- 122 -
宮
崎
美職
容業
技訓
術練
開法
発人
協
会
接遇トレ-ナー
技能トレ-ナー