S P R I N G 2 0 1 6 ものつくり大学通信 No.15 01 学長あいさつ 02 連載―ものつくり考1 03 連載―ものつくり考2 04 海外通信 05 学生のページ 06 トピックス1 07 トピックス2 08 トピックス3 09 ものつくりインフォメーション News 学 長 あ い さつ 01 学長就任のご挨拶 新学長 赤松 明(あかまつ・あきら) ものつくり大学名誉教授 木材加工学 農学博士 厚生労働省技能者表彰審査委員 法務省全国矯正展刑務所作業製品審査委員 国際協力機構技術専門員 元技能国際大会エキスパート 元技能五輪全国大会競技委員 (主査) 2006年に建設技能工芸学科教授として着任し、2011年 ところで、本学の設立目的は、改めて言うまでもありま から2012年まで建設学科長、2013年から2015年までは せんが、単に理論がわかるだけでなく、高度な技能技術の 技能工芸学部長の大任を仰せつかりました。この5年間は、 腕も併せ持っている人(テクノロジスト)を育成し社会に 全教職員はじめ関係各位から多大なご協力とご指導を賜り 輩出することです。このことは、我が国のものづくり分野 ましたこと心より感謝申し上げます。 で、本学卒業生の活躍が大いに期待されていることに他な この度、稲永忍前学長の後任として、学長の職を拝命い りません。 たしました。このことは、身が引き締まる思いで与えられ 学長就任に当たり、全学一致協力して、卒業生がものつ た任期を全うできるよう心して努めたいと思っています。 くり大学を誇りに思い、自身の能力を社会で遺憾なく発揮 さて、我が国の生産年齢人口(15歳∼64歳)は、年々減少 できるよう、ものつくり大学の学びの環境を整え、学生自 を続け2010年の約8000万人が50年後の2060年には約 身の学びを応援したいと思っています。そして、我が国の 4500万人に大きく減少すると見込まれています。このこ 発展に欠かせないものづくりの振興と、ものづくりを現場 とは、我が国の唯一の資源といえる、国民一人一人の人的 で支える高度な技能を持つ技術者の育成に向けて、実践的 資源が減少し、国力の衰退を予測しています。そこで、一 な工学教育と研究を進めてまいります。 人一人の持つ能力を最大限に伸ばし、その能力を活用する 今後とも、卒業生、教職員、関係各位のご支援、ご協力 ことが望まれています。 を賜りますよう宜しくお願いいたします。 2016年度 入学式 退任のご挨拶 名誉学長 稲永 忍(いななが・しのぶ) 鳥取大学名誉教授 新疆農業大学名誉教授 中国科学院水土保持研究所名誉教授 中国科学院石家荘農業現代化研究所名誉教授 Fellow of the Agricultural Research Corporation of Sudan with the all rights and privilege 作物学・砂漠化対処論 農学博士 ものつくり大学名誉学長 1 皆さまのお陰で、学長任期4年間を満了することができ (入学者定員の確保、個性化・差別化の強化、退学率の低 など)でつまずくケースが多いことが分かりました。 ました。ここに謹んで御礼申し上げます。 減、就職内定率の向上、産学官共同研究事業・文部科学省 こうした事実から、高等学校時代の内容も含めた補習 さて、4年前に記した「就任の挨拶(ものつくり大学通 補助金等の外部資金の獲得強化に係る取組)の策定です。 や教材の改良等を行っています。また、学生が勉学に悩 信 No.7)」の中で『……18歳人口の急減や大学数の増加 実践の結果、2年連続しての学生定員充足、外国人留学生 むサインを早期に検知できるシステムの導入や、一人の により、私立大学のうち、入学定員が未充足のところや、 の増加、文部科学省私立大学等教育研究活性化事業3分野 学生に対して複数の教職員がアドバイスする体制の整備 財政の単年度収支がマイナスになるところの割合が増加し への採択、地元の行田市や鴻巣市等との包括連携協定の締 等を行いました。この先、これらを活用して退学率低減 つつあります。こうした状況に打ち勝つためには、まずも 結、学生就職率95%以上の維持、企業等との共同研究・文 の取組を推進するとともに、最近、職員から私に提案の って学生や企業、地域・社会等との信頼関係を強めながら、 部科学省科学研究費助成事業・国土交通省建設基準整備促 あったアイディアですが、新入生(定員300名)の3分の そうした側の視点を重視した教育研究活動を行うことが重 進事業への採択件数・金額の増加等の成果が得られました。 2を収容できるドーミトリを活用して、学生一人一人に生 要と思います。それには、本学の比較優位性、教育研究プ しかし、教育の最重要課題の一つである退学率の低減に 活面と学修面できちんと向き合い、きめ細かく対応する ログラム、学生の就職指導等について絶え間ない見直しが ついては、未だ成果が得られていません。退学率の低減に 教育の実践も急務と思います。 欠かせません。卒業生のみなさんから「ものつくり大学に 係る取組としてまず、退学者がどのような科目でつまずい 今後、ものつくり大学が、学生、保護者、企業、地域 入学して良かった。自分の子供たちもこの大学で学ばせた たのかを開学以来の学生データを用いて分析してみました。 の声にさらに耳を傾け、それらの方々の本学に対する満 い」といっていただけるよう、教職員と共に務めてまいり その結果、製造学科では退学者が入学直後に学ぶ物理や数 足度を一層高める努力をスピード感を持って継続すると ます。』と、決意表明しました。 学でつまずくケースが多いこと、それは高等学校時代の成 ともに、国内外の大学等との連携を強化して、社会にな そこでまず行ったのが、全教職員と協働して、本学「中 績とも関係していることが判明しました。また建設学科で くてはならない大学となることを期待しています。 長期経営計画」の実現のためのアクション・プログラム は、退学者が1年次の必修科目(構造材料や建設基礎設計 2 Serial Essay on MONOTSUKURI 連 載 ものつく り 考1 02 学部長就任挨拶 学部長・製造学科教授 平岡 尚文(ひらおか・なおふみ) 1957年 京都府に生まれる 1980年 京都大学工学部卒業 1982年 京都大学大学院修了 東京芝浦電気(株)(現(株)東芝)入社 2003年 ものつくり大学製造学科講師 2005年 博士(工学) (東京大学) ものつくり大学製造学科助教授 2009年 ものつくり大学製造学科教授 [ 趣 味 ] 猫、犬、鉄道、自動車、航空機に関する諸々 赤松前学部長の退任を受け、任期を引き継ぐ形で学部長 あります。ものつくり大学はこの対立を解消し、理想的な を務めることになりました。ものつくり大学および日本と ものづくり教育を提供するフロンティアです。我々教職員 世界のものづくりの発展に少しでも貢献できるよう、引き は、どこにもモデルのない、難しい教育を担っているとい 続き努力させていただきます。 うことを、常に意識しておく 学部長の仕事として最優先したいのは、学生諸君が大学 必要があります。 を信頼し、迷いなく学びに励める環境をより充実させてゆ 誤解を恐れずに言えば、学 くことです。 生諸君は大学の使命など知ら ものつくり大学には、日本のものづくりをリードすると なくてもよい。大いに大学を いう使命があります。その使命を果たすための第一の手段 利用し、得るべきものを得て が、人材の育成です。実践型教育を通じて将来のものづく もらいたい。その結果、もの りを背負う人材を輩出することが、ものつくり大学に期待 づくりに興味と責任感を抱 されています。 き、ものづくりの実世界に飛 しかし、もちろん学生諸君は大学にとっての手段ではあ び込んでくれるのを、大学は りません。逆に、学生たちが自主的に学び、自ら成長して 期待するのみです。そのため ゆくために利用されるのが大学です。彼らがものづくりを の環境をさらに整備してゆく 背負う人材となってくれるのは、大学での学びをもとに自 こと、実践型を含む、ものづ ら選択した結果でしかありません。学生自身がそのことに くり教育の中身をさらに練り 気づかず、本来の成長ができなくなることを、最も恐れます。 上げてゆくことが、私の仕事 実践的な教育は、時としてこの学び方と対立することが と考えています。 ル・コルビュジエ「カップ・マルタンの休暇小屋」制作 NHKロボコン出場 ものつくり大学は、学生が自主的に学ぶ機会を提供しています。 鉄は熱いうちに打て! ―建学の精神を鼓舞しよう― 名誉教授 鈴木 克美(すずき・かつみ) 本学に勤務し始めてから9年が経ちました。当初は授業 ます。先人の知恵で「鉄は熱いうちに打て」のごとく、月 があるとは思えません。 と研究を担当する非常勤、2013年からは常勤として学内 曜から土曜までの毎日、大学に通い、授業が無いときは図 多くの組織は10年経過すると原点や目標を見失い、軽 の教育・研究に全力で走り続けてきました。人生を振り返 書館や教室、実習場でひた向きに学習と体験、仲間との交 視する傾向があります。本学は工学部や理学部ではな ると、家業の鋳物工場を手伝いながら博士課程まで実務と 流をして、問題意識や解決の知恵を身につける訓練こそが く、「技能工芸学部」であることを再認識し、建学当初 理論を学び、大学の研究員、非常勤講師から企業の研究開 自己実現のための修行・成長の場と捉えて欲しいもので の熱い思いを継続し続けて、業界や学生の「顧客満足」 発、製造、管理を経験する中で一貫してテーマとしたのは す。「ゆとり教育」や授業科目の縮小などの美辞麗句で予 を満たし他大学との差別化を図り存在価値を高めてこ 溶融加工、すなわち鋳造です。 習復習の強化や猛勉強ができるのか、その延長線上に答え そ、社会の要請に応えると信じています。 私の産⇔学の経験を活かした入職動機は「テクノロジス ト」の育成・輩出です。本学の建学精神である基本理念6 カ条は多くの企業が本学に期待し、また他大学との差別化 1950年 東京生まれ 1978年 早稲田大学大学院博士課程修了 工学博士 1978年 早稲田大学鋳物研究所 特定研究員 (綜合鋳物センター研究所兼務) 1983年 日本碍子 (株) 金属事業部入社 (転写金型、 技術 開発、 材料開発など担当) 1991年 旭テック㈱[材料開発部出向] (マグネシウム開発) 1994年 旭テック㈱(技術開発、 鋳鉄工場、 アルミホイール 工場など担当)理事 2002年 技術士 (金属部門) 取得 2007年 ものつくり大学 非常勤講師、 特別客員教授、 特 任教授 2013年 ものつくり大学製造学科教授 2016年 同退職 3 で存続・発展できる目標指針です。ドラッカーの「注射が 打てる医者」を目指して教職員と学生が一丸となり、モノ づくりの原点を意識した教育を今後も目指して欲しいもの です。 企業では有名大学から入社しても製造現場や開発研究で 能力を発揮できない社員が多い実態から、大学受験だけが 人生の登竜門ではなく、物づくりへの「熱い心」、「な ぜ・どうしての問題意識」をもつ者が成功する現実があり ものづくりの現象理解は体験から始まる (鋳造実習) 行田市に寄贈した学生の鋳物作品 4 制作の様子 Serial Essay on MONOTSUKURI 連 載 ものつく り 考2 03 10年を振り返って 名誉教授 赤松 明(あかまつ・あきら) 2006年の着任当時から、ティンバー実習場には多くの木 あり、少しは自信もありましたが、大学の管理運営につい な環境の変化による驚きと好奇に満ちた年月で、後半の5 工機械が配備されていました。しかし、機器の配置は、安 ては、職を全うすることができるか不安でなりませんでし 年間は、多くの方々のご協力とご指導によって辛うじて 全を考慮したとは言い難く、集塵設備に至っては、移動式 た。しかし、意を決して、学生の意見を聞くとともに、教職 職を全うすることができ、この10年間は真に有意義な の集塵機数台が、所狭しと場所を占め、ダクトが床を這い 員の考えも参考にし、自身の考えがばらつかないよう、素早く 日々でした。 ずり回っているという状況で、重大事故がいつ起こっても 決断することを心がけ、大役をお受けすることにしました。 今後の学生諸君ならびに教職員の皆様のご活躍を期待し 不思議ではない極めて危険な状況でした。 このように、ものつくり大学での前半の5年間は、劇的 ています。 そこで、至急、木工機械の再配置と集塵装置の整備をお 願いし直ちに改修措置を取って頂き、床がコンクリートの 土間であった手加工場に構造用合板を敷き詰め木材加工に 適した作業環境を整備して頂きました。また、木材や資材 1950年 1974年 大阪に生まれる 職業訓練大学校木材加工科卒業 職業訓練大学校木材加工科助手 1986年 職業訓練大学校木材加工科専任講師 1992年 農学博士 (東京大学) 1993年 職業能力開発総合大学校造形工学科助教授 2006年 ものつくり大学建設学科教授 2016年 同退職 [ 趣 味 ] 書道 ハイキング の整理整頓を徹底し、安全第一を常に意識するよう学生諸 君ならびに教職員にお願いしてきました。 着任して2年目の2008年には、技能五輪全国大会の建築 大工職種に続き家具職種にも本学学生を選手として送り出 し、その後、造園、左官、とび職種にも多くの学生がチャ レンジするようになりました。 ところで、2011年に建設学科長、2013年には技能工芸 学部長を拝命し、学生の指導と大学の管理運営を担当する ことになりました。教育及び研究については37年の経験が 実測調査(安曇野市豊科近代美術館) 技能五輪全国大会 軽井沢彫家具の見学 ものつくり大学への遺言 名誉教授 白井 裕泰(しらい・ひろやす) 私は、2003年4月にものつくり大学に教授として着任し を世に送り出すことができました。教職員の皆さんの協力 文化財白井家住宅の修理を行ったこと、科研費補助でベト ました。本学は、2001年4月に開学しましたが、現在、開 により、「大工棟梁」を育てたいという私の夢の一部を実 ナム・フエ王宮建築の修理や復原を行ったことなど、多く 学以来勤務している建設学科の教員は数名になってしまい 現することができたのは望外の幸せです。 の思い出を作ることができました。ここに卒業生の皆さん ました。開学当時は、技(技能・技術)と心(知識)をあ 学生たちと共に、木造総合実習で東屋を建設し、旧長久 に心から感謝します。 わせもつテクノロジスト(私は高度専門「職人」と考えて 寺本堂を修理したこと、卒業制作で社寺の修理や住宅・長 最後に、本学の未来のためにも「木造建築学科」の創設 いますが)を育てることを目標にしていましたが、他大学 屋門の1/5模型などを作ったこと、ゼミ合宿で国登録有形 をお願いして、私の遺言とします。 の建築学科との差異が次第になくなってきているように感 じています。 そもそも私が共栄学園短期大学から本学に転職したの は、東京都の文化財建造物の修理現場において、大工棟梁 1950年 愛知県豊川市に生まれる 1974年 早稲田大学理工学部建築学科卒業 1976年 同大学院理工学研究科修士課程終了 1979年 同大学院理工学研究科博士課程満期退学 1980年 東京都文化財保存修理事務所 主任 1990年 早稲田大学工学博士 1991年 株式会社空間文化研究所 所長 1993年 共栄学園短期大学助教授 2003年 ものつくり大学建設学科教授 2016年 同退職 [ 趣 味 ] 旅行、 映画鑑賞 5 をはじめ、大工が高齢化し、若年大工が育っていない現実 を目の当たりにしたからです。私は伝統的木造建築技術を 継承する若い大工を養成しなければ、日本建築の未来はな いと痛感し、その技術を教える大学が設立されると聞い て、転職をすぐさま決意しました。 本学に着任して早くも13年間が経過し、木造建築の技 能・技術教育に専念することができました。その間、私の ゼミを卒業した学生67名のうち15名ほどの堂宮大工の卵 3年生木造総合実習:旧長久寺本堂修理 (この建物がなくなるのは残念至極) 白井研究室合宿ゼミ:国登録有形文化財白井家住宅修理 6 International 海外通信 04 フィリピン・セブ州の2大学から工科系学生が見学 海外インターンシップを体験して 参事・教務・情報課長 宮本 伸子(みやもと・のぶこ) 2015年夏、学生6名がタイで行われた2ヶ月間の海外インターンシップに参加しました。 泰日工業大学での1ヶ月および企業での1ヶ月を経て、広い知見や積極性、行動力を身につけ成 長して帰ってきました。そんな学生たちに、海外インターンシップに参加して得たことを聞いて みました。 日本では見ることのできない場所・文化を体 積極性と自分で考える力です。自分からど 感することができました。中でもアユタヤ遺跡 んどん質問をしたりコミュニケーションをと に行き、タイの歴史や文化の原点を知ることが らないと海外では生きていけないことを実感 できたのはとても貴重な体験でした。海外での しました。今までは、恥ずかしがって消極的 生活を経験し、大きな自信にもつながりました。 な部分もありましたが、少しずつ改善するこ 2015年10月29日、埼玉県の県民生活部国際課の「埼 語で進めました。はじめに見学した建設学科では、コンクリー 玉・セブものづくり人材育成事業」(JICA事業)によりフィ トの実験場でクラックスケールと呼ばれる小さなひび割れの幅 リピン共和国セブ州の学生と引率の教授が見学に来られました。 を測る手のひらサイズのメジャーで実際に測ったり、木造の東 サンホセレコレトス大学からは、土木、コンピュータ、電気、 屋の前で学生と交流しました。 産業、機械の各学科から8人、フィリピンで最も古いサンカ 次の製造学科では、各種の機械 ルロス大学からは、機械、電子の2学科から2人の学生が参 やフォーミュラカーの見学ととも 加されました。 にNHKロボットコンテストに出場 使用言語は英語ということで、案内役の佐久田教授、大 した学生のプレゼンテーションを 垣教授は大学の概要紹介と製造学科、建設学科の紹介を英 熱心に聞き入る姿が印象的でした。 ロボコンの学生から説明を受ける 製造学科3年 荒井 宏太 とができました。その上で常日頃から考えて 行動することを心がけました。色々な状況を 積極性です。海外に行くまでは人並みに積 想定しておくことで、実際に行動する時に臨 極性があると思っていましたが、実際に企業 機応変に素早く行動に移すことができました。 で働いてみて、積極性がさらに増しました。 このように準備しておくことが、海外では大 製造学科3年 只野 光彦 切な事だと感じました。 建設学科2年 古矢 健人 対応力です。タイでは言語の違いもあります ものつくり紀行/ヨーロッパの河川風景 名誉教授・(一社)日本ものつくり学会理事 増渕 文男(ますぶち・ふみお) ることを知る人は少ないと思います。この水路は利根川の水 を荒川へ流すもので、大改修工事が今春完了しました。 が、文化・習慣に大きな違いがあり、日本の常 自分で考えて、自分で行動する力 を得ら ヨーロッパ大陸でも多くの水路が建設されています。アル 識が通用しないことがしばしばありました。こ れたと思います。言語が通じない世界で迷っ プス北側山麓には2つの大河川、北海に流れるこの大陸の父 の経験から冷静に対応する力を得ました。 た時、まずは自分で解決策を考えることが多 なるライン河、そして黒海に注ぐ母なるドナウ河の源流があ 製造学科3年 林 哲宇 かったです。その中で、自分の力だけでも解 ります。両河川とも大型船舶を内陸へ導き、これらの河川を 決できることが多いことにも気づくことがで 結ぶ長大運河は1992年に完成。後に大陸を東西に横断しEU き、自信がつく経験となりました。 統合の象徴としての大動脈になりました。大規模なものづく 自ら積極的にコミュニケーションをとるこ とで、勉学以外の人と人との関わりあいの大 A.ドナウ河源流は、アルプス北側 のドイツのドナウエシンゲンとい う町にあります。美しい林の中に ある2本の小川が合流する地点を ドナウ河の起点としており、この 風景を愛した明治の歌人斎藤茂 吉も随筆に残しています。 首都東京の命を守る水を運ぶ武蔵水路が、本学の近くにあ 建設学科2年 茂 凌子 切さや、伝えようとする意思の大切さを知る B.ドナウ河は東方に向けて流れ、 ドイツの古都ウルムの手前でイラ ー川と交わり、ゆったりとした大河 に成長します。そのためにウルム の街は舟運の要所となり堅牢な城 壁都市を形成しています。 りとしてのこの運河に興味を持ち、この地を訪れ入手した資 C.ライン河とイル川の合流地にフ ランス最大の河川港ストラスブー ルがあります。古くからこの大河を 治める水の都として栄え、幾度も ドイツ領になり、両国の文化が融 合した独特な風情が漂います。 料をもとに、今回はこの巨大河川の特徴を写真で紹介します。 次の機会には両大河川を結ぶ運河の報告をし、またこの地 とともに、積極的な行動力を得ることができ 域にある「鉄の街道」や「ものづくりの道」も訪ねて寄稿し ました。 たいと思っています。 建設学科2年 関口 明日菜 D.スイスのボーデン湖下流20km付近にライン河唯一の滝があることはあまり知られていません。ヨーロッパ最大の滝で大きな岩礁 が幾つもあり、そこに当たる水しぶきの壮大な風景は一見に値します。さらに下流には難所のローレライもあり、これらが父なる河と 呼ばれる所以となっています。 (一社)日本ものつくり学会とは・ ・ ・ 泰日工業大学学生との勉強会 インターンシップ現場(タイの地下鉄工事)の様子(古矢) ※学年は2016年3月時点のものです。 7 日本ものつくり学会は、ものつくり大学名誉 教授の有志により、2015年6月16日に一 般社団法人として設立されました。 法人の目的 ものをつくる技能・技術、マネジメントに関する研究の促進・発展に寄与する活動及びものをつくる人材を育成する教育 に関する研究の促進・発展に寄与する活動並びにものをつくる技能者・技術者、団体を支援・援助する活動を通じて社会 に貢献することを目的として事業を行っていきます。 (URL)https://sites.google.com/site/monotsukurikai/ 8 Voice 学 生のペー ジ 05 学生時代を振り返って 大学院ものつくり学研究科10期生・製造学科10期生 山本 健太(やまもと・けんた) 学生生活を振り返ると、やりたいことをただひた 大学の勉強会に参加したり、昔の車について古い雑誌を読 ロール ユニット)の研究開発をしました。 すらにやり続けてきたと思います。 んで調べたりもしました。こうして力をつけた私は、自身 振り返ってみると、私はやりたいことに無心に打ち込むこ 私がものつくり大学の製造学科に入学を決めたの がリーダーを務めた2013年大会で、これまでにない車を作 とで、成長してこられたと感じます。大変だったことや辛い は「実際にものを作って学ぶのは面白そうだ」とい り出すことができました。この車の独創性は自己評価だけ こともたくさんありましたが、今ではすべてが良い思い出で う理由だったため、入学した瞬間から「やりたいこ でなく、自動車雑誌にも掲載され、外部の方々からも認め す。ものつくり大学での思い出を胸に、これからも「やりた とをやる」はスタートしていました。普通科高校出 ていただきました。大学院でもやりたいことをやり続け、 いこと」にひたむきに取り組み、もっと成長していきたいと 身の私は加工機に触れたことや見たことがなかった 学生フォーミュラ用多機能ECU(エレクトロニック コント 思っています。 学生フォーミュラ車輌を運転する筆者 学生フォーミュラで設計、製作したエキゾーストパイプ ので、特に機械加工の授業に興味を持ち、週に一回 の実習の授業では誰よりも精密で正確な作品を作ろ うと全力を尽くしました。 1991年 2010年 2014年 2016年 埼玉県生まれ 埼玉県立朝霞高等学校卒業 ものつくり大学技能工芸学部製造学科卒業 ものつくり大学大学院ものつくり学研究科 修了 修士論文のテーマ : 汎用マイコンを用いた学生フォーミュラ用 多機能コントロールユニットの研究開発 就職先 : 日産自動車株式会社 [ 趣 味 ] ボルダリング、 バイクツーリング 機械加工に次いで、私がやりたいと思ったことは 学生フォーミュラです。この活動は、学生主体で小 型のレーシングカーを企画、設計、製作し、海外、 全国から約90チームが集まってものづくりの総合力 を競い合うものです。私は「誰にも負けない個性的 な車を作ってやろう」という思いを持って、この活 動に参加しました。誰も思いつかなかった部品を作 るために、レーシングカーについて様々な方法で勉 強しました。考え方や計算式を学ぶために企業や他 ものつくり大学卒業にあたり今思うこと 大学院ものつくり学研究科1年・建設学科12期生 中野 綾希(なかの・あやき) 1991年 2010年 2016年 2016年 神奈川県生まれ 福島県立会津高等学校卒業 ものつくり大学技能工芸学部建設学科卒業 ものつくり大学大学院ものつくり学研究科 入学 卒業研究のテーマ: 地方活性/こどもの環境 [ 趣 味 ] 図画工作 誰にでも平等にチャンスを与え、自分の努力次第で 職種の埼玉県代表として出場し、日本左官業組合連合会競技 どんなことにも挑戦できる。その精神が本学にはあり、 委員特別賞を受賞しました。4年次には学外の設計コンクー 一番の魅力であります。実習の授業では、まさか自分 ルに出展し、今後は大学代表として埼玉県の第16回卒業設計 が生涯の中で関わるとは思いもしなかった多くの貴重 コンクールと日本建築学会主催の第57回全国大学・高専卒業 な経験をしました。ものづくりというのは、一人では 設計展示会に出展し、その他のコンペに挑戦します。これら なく仲間との関わりと、汗を流し本気で取り組んだ軌 の幅のある経験はものつくり大学だからできたことです。 跡から生み出されるものである、という技術者として 4年間在籍して相性が良いと思えたことと、施設も整い、 の基礎が机上だけではない体を使った自らの体験の中 カリキュラムも素晴らしいので、2016年4月から本学の大学 から形成されました。将来は設計者になることを目標 院に進学します。他大学にはない特長と魅力を持ったものつ としています。自分が設計した建築が、多くの人に使 くり大学出身の設計者として、この大学に誇りを持ち、胸を われるというのは、とても素敵なことだと思います。 張り、社会に進出していきたいと熱い想いを抱いています。 それが設計者になりたい一番の理由です。 技能五輪競技の様子 大学生活を振り返り良かったと思えるのは、「設計 だから設計」ということにとらわれなかったことです。 授業は可能な範囲で多くの講義、実習を受講しました。 所属していた家具サークルの活動の中では、木の材質 を五感で学び、より根本的なものづくりの原点を経験 しました。3年次には、第52回技能五輪全国大会 (2014年11月28日‐12月1日愛知県開催)に、左官 9 東屋制作の木造実習風景 設計コンクールにて審査委員との質疑応答 自分で設計製作したスツールを学園祭で販売 実習の合間の仲間とのひととき(右端筆者) (家具サークル) 10 Topics ト ピックス1 06 2015年度学長表彰紹介 学長特別表彰の様子(若生さん) (建設学科) 【学長表彰】 【学長特別表彰】 学生 学科・学年 若生 裕貴 製造4 〃 谷口 佳 〃 山田 達也 〃 横地 翔太 〃 目黒 健太 〃 福原 悠麻 建設4 山村 薫 小室 和博 建設4 内 容 マンガンカーレース大会を長年にわた り継続して開催し、子供たちにものづ くりへの興味をもつ機会を与えている ことが評価され、第25回ホビー大賞特 別賞を受賞 第53回技能五輪全国大会(家具職種)で銅賞 第53回技能五輪全国大会(左官職種)で銅賞 (製造学科) 【学長表彰】 学生 寺屋 衛 佐野 紀行 森田康二郎 岩宮 惇太 北嶋 勇斗 小山 景子 谷口 佳 学年 4 3 3 4 〃 〃 〃 内 容 スターリングテクノラリー大会「人間 乗車部門」で、ワンツーフィニッシュ という快挙を達成 一般社団法人電子技術情報産業技術協会 (JEITA)「JEITA実証プロジ ェクトフェーズ2」として実施された 「設計コンテスト」で努力賞を獲得 (大学院) 【学長表彰】 学生 小保方友哉 第3回同窓会表彰 学年 内 容 2 日本鋳造工学会全国講演大会「ADC 12合金の割れに関する基礎的研究」が 奨励賞を受賞 内 容 学生 学年 (左官職種) で敢闘賞 髙野 拡 4 第53回技能五輪全国大会 (建築大工職種) で敢闘賞 本多 諒平 3 第53回技能五輪全国大会 (建築大工職種) で敢闘賞 森脇 康太 2 第53回技能五輪全国大会 (木材加工職種) で第2位 山口 智大 1 第10回若年者ものづくり競技大会 (木材加工職種) で第2位 手島 脩兵 1 第10回若年者ものづくり競技大会 片山 聡美 4 加藤 亮介 〃 齋藤あゆみ 〃 行田市教育文化センター「みらい」内、福 関根 裕 〃 祉の店「きゃんばす」設置の木製店舗什 中島 裕基 〃 器の制作。きゃんばす運営委員会より感 新岡 龍世 〃 謝状。読売新聞・埼玉新聞へ掲載 早川 洋平 〃 山村 薫 〃 弥生時代集落遺跡 「新宮宮内遺跡」 史跡公園内休憩所 上川 直道 4 の設計施工 開園記念式で兵庫県たつの市長より感謝状授与予定 瀬尾 真 2 安藤 大祐 〃 大木 凪子 〃 「特別県営上尾シラコバト住宅の共助に 菊池 将史 〃 よる活性化推進に係る連携協定」の一環 君嶋 海裕 〃 として、2年間、若年夫婦向けのリフォー 針生 直樹 〃 東原 大地 〃 ム住宅の家具及び内装を設計・制作し、 野沢 達也 〃 若者の入居を促進 魚住 涼音 1 NHKや日本テレビをはじめとする各種 手島 脩兵 〃 報道機関で報道 山口 智大 〃 渡邊 恵子 〃 ※学年は2016年3月時点のものです。 学生課厚生係 同窓会会長・建設学科2期生 上原 苑子(うえはら・そのこ) ものつくり大学同窓会では、学内の卒業研究・制作や 「知識」や「知恵」「技能」「技術」の集大成です。それら 修士論文の発表会で優れていると認められた学生や、社 を駆使して卒業研究・制作や修士論文に取り組む学生の成果 会的に学術研究等の成果が優れていると認められた学生 を同窓会表彰として評価することで、研究に取り組む意欲を 等を表彰する規則を2013年度に制定しました。両学科の 高めることを目的としています。下級生に誇れる研究をし、 先生方のご協力をいただき、2013年度卒業生より同窓会 社会でご活躍されることを卒業生一同願っています。 表彰を実施し、2015 年度も製造学科3名、 建設学科4名、ものつ くり学研究科1名の計 8名の学生が受賞しま した。 卒業研究・制作や修 士論文の発表は、もの つくり大学で培った 製造学科受賞者: 寺屋 衛さん、井田 耕平さん 柴 陽香里さん 建設学科受賞者: 勝又 悠弥さん、阿部 柚実さん、 山本 千絵さん、石塚 優莉さん 大学院受賞者: 山本 健太さん 平成27年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業 タイプ1∼3に採択される 平成26年度に引き続き、私立大学等教育研究活性化設備整備事業に3件採択されました。 タイプ1「教育の質的転換」:小型3Dプリンター等による三次元造形個別指導システム タイプ2「地域発展」:地域気象観測ステーションによる気象シミュレーションシステム 「昼光利用ブラインド」の特許登録 タイプ3「産業界・他大学等との連携」:力覚デバイスによるバーチャルリアリティ安全教育システム 教務・情報課 建設学科講師 伊藤 大輔(いとう・だいすけ) 日本設計工学会から優秀発表賞受賞 職務発明として「昼光利用ブラインド」の開 発を株式会社ニチベイとともに行い、2015年7 製造学科教授 松本 宏行(まつもと・ひろゆき) 月3日付で特許登録となりました。本ブライン ドは水平ブラインドにライトシェルフの機能を 2015年5月31日に公益社団法人日本設計工学会「平成 持たせることにより、より積極的に昼光利用し、 27年度春季大会研究発表講演会(日本大学)」で、筆者 照明負荷の削減及び光環境の快適性向上を目的 が発表した論文『特異スペクトル解析を用いた減衰特性 としています。 の解析』が「優秀発表賞」に選ばれ、同年10月9日の秋 ライトシェルフとは窓の途中に設けられた中 庇のことであり、直射日光を室内の天井部に反 射させて、室奥まで昼光を導入するものです。 ライトシェルフブラインド びに賞状をいただきました。 スペクトル解析を用いて過度応答から減衰特性を推定す 作業が必要、重たい印象を与える、コストが高 る方法の有効性を提示したものです。従来から広く用い いといった問題があります。 られているフーリエ解析とは異なる信号処理手法の取組 今回、提案するブラインドは、窓上部のブラ みであり、興味深い結果が得られています。 インドを傾けることにより、ライトシェルフの 受賞を嬉しく思うと同時に、さらに気を引き締めて松 効果を簡易的に得ることができ、前述の問題を 本研究室(ものデザイン研究室)で行っているユニバー 解決することができます。本学の職務発明とし 11 季大会研究発表講演会(北海道大学)授賞式で賞牌なら 今回の論文では、新しい信号処理解析手法である特異 しかし、ライトシェルフは大掛かりな取り付け て特許権を取得したのは初めての事例です。 タイプ2 地域気象観測ステーション ライトシェルフ収納時 サルデザインや振動・音響に関する研究成果をまとめて いきます。 優秀発表賞の賞牌と賞状 12 Topics ト ピックス2 07 本学非常勤講師が平成27年度秋の黄綬褒章受章 祝!第19回スターリングテクノラリー入賞! 製造学科3年 関根 宏司(せきね・ひろし) 製造学科准教授 香村 誠 (こうむら・まこと) 建設学科准教授 佐々木 昌孝(ささき・まさたか) 2015年11月2日付で政府が発表した秋の褒章において、本学建設学科の「家具技能および 実習」科目の非常勤講師・栗林成明先生(くりばやし・しげあき:若狭企画栗林木工所)が 2015年11月7日、日本工業大学で開催されたスターリ 計・製作に活かすため検証・考察・蓄積し、それを糧に新たなも 黄綬褒章を受章されました。 ングテクノラリーに参加しました。毎年行われる国内最大 のを生み出していく 温故知新 の思想も大切にしています。 同褒章は、農業、商業、工業等の業務に のスターリングエンジン競技大会で、7クラスが設定され、 プロジェクト活動を通して得た知識やノウハウを基に、オ 精励し、他の模範となるような技術や事績 各クラスの規定をクリアした機体のみが大会に参加するこ ールラウンダーなテクノロジストを目指し、これからも日々 を有する方が対象となるもので、埼玉県で とができます。日本全国ほか海外より多くのエンジニア、 精進します。 は今回9名の方が受章されました。栗林先生 エンジニアの卵達が集まります。 は、家具製造業の分野における特に秀でた 本学のスターリングエンジンプロジェクト(以下 業務精励の功により、48歳(当時)という MSEP)は2009年の発足以来、着実に実力をつけてきまし 若さで黄綬褒章を授与されました。ここに た。そして今回、最大規模である人間乗車クラスにおいて 黄綬褒章 その栄誉をご報告させて頂くと共に、心よ 1位、2位を独占するという快挙を成し遂げました。1位に りお慶び申し上げます。 入賞した"Chappie"はデザイン賞金賞も同時に受賞し、ま た、その他のクラスで上位入賞を果たしたマシンもありま 人間乗車(L)クラス1位入賞マシン M&S-LE200C"Chappie" 人間乗車(L)クラス2位入賞マシン "Puff" す。 【栗林成明先生の略歴】 MSEPのメンバーは、各々の設計思想に基づいた設計計 1988年 第26回技能五輪全国大会家具職種 優勝 算、CAD・ドラフターによる製図、パーツの加工、組み立 2001年 第20回技能グランプリ全国大会家具職種 優勝 て、評価および改良の流れを一貫して行っているため、多 2005年 東京都優秀技能者 東京マイスター認定 2009年 卓越技能者(現代の名工)表彰 黄綬褒章受章式(栗林先生ご夫妻) 第53回技能五輪全国大会(千葉)結果報告 10名が出場し、5名が入賞!! 建設学科教授 三原 斉(みはら・ひとし) 第53回技能五輪全国大会が、2015 年12月4 忍耐力そして集中力を短期間に習得し、将 ∼7日に千葉県の幕張メッセを主会場として、 来の仕事に活用することができます。 各都道府県での予選会を経て選出された全国 本学からは、大工職種では本多諒平さん、 1,183名の選手が集まり実施されました。 森脇康太さんがそれぞれ敢闘賞、家具職種 本大会は、満23 歳以下の若者の競技大会で では山村薫さんが銅賞、左官職種では小室 あり、学生や専門学校生および入職後1∼2年 和博さんが銅賞、髙野拡さんが敢闘賞を受 の若者達が、与えられた競技課題を2日間で時 賞しました。 間内に適切に完成させる ために一生懸命に作業に 取組むものです。 本大会に出場した学生 たちは、職場で働くため 事の段取りを主とするマ ネジメント技術、高度な 技能、応用力、判断力、 クーラー3Vクラス4位入賞マシン "しろくま1号" 第13回全日本学生 フォーミュラ大会参加報告 第19回スターリングテクノラリーにおけるMSEPメンバー 行田市田んぼアート連動企画 はやぶさ2 模型の製作・展示 製造学科4年 髙木 謙悟(たかぎ・けんご) (はら・かおる) 製造学科教授 原 薫 製造学科教授 市川 茂樹(いちかわ・しげき) 行田市の「田んぼアート」は、ギネスに認定されて一 2015年9月1日∼5日、静岡県の小笠山総合運動公園(エ 躍有名になりました。2015年度のテーマは「古代から未 コパ)で開催された第13回全日本学生フォーミュラ大会に 来へ」と題して、絵柄の一部に はやぶさ2 が描かれまし 出場しました。 た。また、関連企画として、2015年9月19日から10月18 今大会から会場のレイアウトが大きく変更されたことに 日の期間でJAXA職員を招いた宇宙・はやぶさの基調講演 伴う錯綜に荒天が加わり、競技会全体が混乱する中、もの と宇宙関連の展示が行われました。 大チームは全競技を完遂したうえ、日本自動車工業会会長 写真の はやぶさ2 は、そのときに本学が依頼され、製 賞およびスポーツマンシップ賞 造学科の有志学生で製作したものです。実際の1/2模型で を受賞、総合順位もエントリー 主にアルミ、ステンレス鋼板をレーザやタレットパンチ 大工職種 千葉・長狭高校出身 兵庫・龍野北高校出身 群馬・高崎工業高校出身 90大学中28位となり、2014年か ングプレスで切断し曲げ加工を行った板部品とロボドリ ら大きく躍進しました。 熊本・九州学院高校出身 新潟・柏崎工業高校出身 ルによる切削部品で構成しています。小さな造形物には 家具職種 《銅 賞》 4年 山村 薫 4年 早川 洋平 これもチーム全員の力ならび 左官職種 《銅 賞》 4年 小室 和博 《敢闘賞》 4年 髙野 拡 4年 中村 俊太 3年 加藤 佑佳 3年 水木 晴佳 埼玉・羽生実業高校出身 神奈川・桐蔭学園高校出身 山梨・富士河口湖高校出身 東京・女子聖学院高校出身 神奈川・城山高校出身 ※学年は2015年12月時点のものです。 13 たエンジンの技術的課題や失敗要素を、次のエンジンの設 《敢闘賞》 3年 本多 諒平 《敢闘賞》 2年 森脇 康太 3年 小松 春樹 に必要な技術技能者とし ての資質、すなわち、仕 彩な知識に精通しています。また、失敗に終わってしまっ にご支援いただいた皆々様のおか 3Dプリンタを用い、強 2015年大会会場で撮影 度が必要な部分は溶接 げと、あらためて感じています。 しました。展示期間中 2016年度は静的審査を疎かに を通して、行田市の古 しない計画づくりを掲げ、より 代蓮会館の正面エント 高みを目指せるように精進いた ランスに飾られ、来場 します。 者の注目を集めました。 エンデュランス競技での走行 14 はやぶさ2 模型 Topics ト ピックス3 08 中小企業現場活性化支援事業 平成27年度 ものつくり大学特別公開講座 「世界に誇る日本の文化財建造物」 2015年2月19日(金)/パレスホテル大宮 講師(株)小西美術工藝社 代表取締役社長 デービッド・アトキンソン氏 教務長・製造学科教授 関根 次雄(せきね・つぎお) 日本のものづくりを下支えする中小企業の と願う人達を現場支援アドバイザーとして 少子高齢化社会を迎えた我が国において、 労働人口や国内市場 存在価値は大きく、政府の地方創生・1億総 大学側で会員登録し(シーズ)、企業側か が縮小していくなかで強い経済を実現させるために、 金融アナリ 活躍社会の実現のためにも、とりわけ中小 らの支援要請(ニーズ)が大学窓口に寄せ ストであったアトキンソン氏は 「観光立国」 を提言されています。 企業の活性化が大きな鍵を握ると考えられ られた時点で、ニーズとシーズのマッチン 既に観光業は世界第4位の基幹産業に成長し、 国際観光客数は ます。というのは、製造業全体に占める中 グ対応(専門スタッフによる現場診断と詳 2030年には18億人を超えると予測されています。 これを支える 小企業(資本金3億円未満又は従業員数300 細打合せによる対応具体策協議)を行って、 のが自国の文化財となりますが、 残念ながら今まで我が国は観光 人未満)の会社数及び従業員数の割合(H24 双方合意の下に、適任アドバイザーによる 戦略を重視した施策を採っていなかったため、 外国人観光客が満 年度総務省統計局データによる)は、それ 現場での実務支援を行うものです。 足する状態に整備がされていません。 ぞれ約99%、72%と大きな比率を占めている 支援の主な狙いは、企業の体質強化と収 観光業を成功させる4条件 「気候・自然・文化・食」 が全て揃う日 一方で、利益率で見ると、大手企業平均の 益力向上で、図2に示すような、現場に潜む 本ではありますが、 文化の体感的サービスが不足する課題も浮き 4.7%に対し、中小企業平均では1.7%と、非 様々な課題に対応した改善と仕組み改革で 彫りとなっています。 正に我々日本人の意識改革が急務な状況に 常に厳しい経営状況にあります。 す。一般のコンサルタント支援との大きな あるのです。 筆者は、産業界とともに歩むことを建学精 相違は、①低廉な価格での支援、②企業側 アトキンソン氏は、 日本の伝統文化の継承と我が国の歴史上重 神の一つとする本学の重要な使命と、長年 スタッフの人材育成を念頭においたきめ細 要で世界に誇るべき日本の文化財建造物の積極活用がセットに 企業で製造現場の改革指導をしてきた経験 かいOJT支援、③改善障壁となる技術革新発 なることで、 結果として強い経済の基礎を築く要因になることを を踏まえ、中小企業のニーズに合った支援 生時の大学研究者への展開対応等が挙げら 提唱されたのです。 の具体策を模索・検討し、2015年7月に本 れます。 事業を立ち上げました。 また、大学にとっては、これらの事業成 その仕組みは図1に示すように、企業で長 果が、本学の魅力の増強につながるという 年にわたり現場改善指導の経験を積み、定 大きな期待もあります。 年後もその経験を活かして社会貢献したい 建設学科准教授 横山 晋一(よこやま・しんいち) 公開講座の様子 受託事業「大学を活用した長期職業訓練」について 本学では、開学以来、職を求める社会人を対象に、 長期職業訓練を行っています。この訓練は、埼玉県 から受託し、就職に必要な知識・技術を身につけて いただくために、2015年度も「建築CAD設計製図コ ース」、「機械CAD設計製図及び加工技術コース」 の2コースを開講し、6か月の期間で実施しました。 建築CADコースは、住宅設計に必要なCAD設計・ 製図の基礎的な技術・技能を習得します。機械CAD 図1 中小企業現場活性化支援の仕組み コースは、2次元・3次元CAD技術を習得し、データ 加工技術実習 を用いた加工実習を行い、CADを中心とした生産シ ステムを学びます。 また、企業説明会、企業実習やキャリアコンサル ティング等による就職支援も行っています。訓練を 受けている方は、20代から50代と幅広く、この訓 練により職業能力を高め、即戦力として就職してい ます。 図2 主な支援内容 ものつくり研究情報センター 15 CAD演習 16 Information も のつくりインフォメーション 09 2016年 2017年 6 29 19 10 10 18 ・月 24 31 6 14 27 10 ※ ※ ※ 29 30 27 26 ※は進学相談会 ★10/29、10/30は学園祭同時開催 ★11月27日はものつくり大学で、高校生ロボット相撲全国大会が開催される予定です。 遠隔地からオープンキャンパスに参加される方は、ドーミトリ (学生寮)に宿泊することができます。詳しくは入試課まで。 オープンキャンパス以外にも個別大学見学 「あなたのための見学 会」 を受け付けています。 事前に入試課にお申し込みください。 受付します。 ●入試TOPICS ●奨学金情報 ★特待生制度 ★地方入試 推薦入学試験(ものづくり特待生)での上位合格者、または 一般入学試験A日程・入試センター利用試験A日程の上位合 格者は、特待生として認定され、年間授業料(88万円)の全 額または半額が免除されます。なお、特待生も奨学金に応募 することができます。 推薦入学試験A日程、一般入学試験A日程、外国人留学生入 ★検定料コンビニ支払 ★検定料優遇措置 検定料は全国のコンビニエンスストア(セブンイレブン、フ ァミリーマート、ローソン、サークルKサンクス)で支払う ことができます。 本学の入学試験を複数回受検する場合、検定料の優遇措置 があります。詳しくは大学までお問い合わせください。 学試験A日程は、大学会場の他に、宮城県・長野県・新潟県・ 福岡県でも入学試験を実施します。試験会場の詳細は大学 ホームページまたは、大学までお問い合わせください。 ★ものつくり大学奨学金 ★ものつくり大学さくら奨学金 ★ものつくり大学生活支援奨学金 学部生30万円・大学院生45万円を給付。 学部・大学院に在籍する2年次の学生対象。 採用人数(2015年度実績)13名 12万円を給付。 学部に在籍する3年次及び4年次の学生対象。 採用人数(2015年度実績)4名 年間30∼60万円を給付。 受験前に申請と採用の確認が可能。 採用人数(2015年度実績)33名 ◎ものつくり大学独自の3つの奨学金はすべて給付制であり返還は不要です。 ◎大学独自の奨学金と特待生の2つの制度によって、新入生のおよそ5人に1人以上が大学からの経済的支援を受けることができます。 ●私費外国人留学生授業料減免制度 私費外国人留学生の場合、入学料50%(15万 ★試験日自由選択(高得点採用) ★他学科併願無料 一般入学試験A日程は、2日間の試験日から受験する日を自 由に選択できます。また、2日間とも受験した場合は、高得 点の結果で合否判定します。 一般入学試験と入試センター利用試験は、第2希望学科を 無料で併願することができます。 円)、年間授業料40%(35.2万円)を減免しま す。初年次学生納付金は99.8万円、2年次以降 は84.8万円です。なお、入学検定料も50%減 ●オープンキャンパス予約特典 ものつくり大学のオープンキャンパスは予約なしで参加できますが、事前に予約 すると当日プレゼントがあります。 ぜひ、 ホームページから予約してください。 ●資料請求 ものつくり大学ガイドブックや募集要項など、多くの大学資料をゆっくりとご 覧ください。資料の請求は、大学ホームページまたは、入試課にご連絡ください。 免となります。 ★入試日程等は、大学案内、大学ホームページ等でご確認ください。 ものつくり大学通信 バックナンバー ●Calendar 2016年4月∼2017年3月 4 新入生ガイダンス 6 11 5 入学式 4 さきたま火祭り 12 14 第1Q授業終了 18 海の日・平常授業 14 15 第2Q授業開始 8 第1Q授業開始 21・22 蔵めぐり オープンキャンパス 15∼19 スタンプラリー 19 オープンキャンパス 24 オープンキャンパス 8/15 30・31 行田市浮き城まつり ∼9/16 29 昭和の日・平常授業 29 オープンキャンパス 31 オープンキャンパス 27 10 オープンキャンパス 中旬 古代蓮まつり 5/2 休業日 ∼5/6 オープンキャンパス 山の日・平常授業 第2Q授業終了 10 オープンキャンパス 一斉休業 20 学生夏期休暇 オープンキャンパス 10 体育の日・平常授業 第3Q授業開始 オープンキャンパス 28 29 30 31 上旬 行田市商工祭 忍城時代まつり 学園祭準備・臨時休講 24 第3Q授業終了 12/26 学生冬期休暇 第16回碧蓮祭 進学相談会 25 第4Q授業開始 ∼1/3 27 高校生ロボット相撲 全国大会 第16回碧蓮祭 進学相談会 12/28 年末年始休業 進学相談会 祝日振替休業 ∼1/3 1・2 初旬 9 13 センター試験前 臨時休講 2/10 14・15 大学センター入試 ∼3/31 入試・臨時休講 修士論文発表会 第4Q授業終了 学生春期休暇 17 卒業式・修了式 26 オープンキャンパス 下旬 卒業研究発表会 夏期休暇 *土・日・祝日は休館 短縮 4/1 ∼4/7 休館 5/2 ∼5/6 17 延長 6/1 ∼6/14 延長 8/1 ∼8/12 休館 8/13 ∼8/31 短縮 9/1 ∼9/16 延長 11/10 ∼11/24 短縮 12/26 休館 休館 12/27 1/13 ∼1/3 延長 休館 延長 1/25 2/1∼2 2/3 ∼31 ∼2/9 18 短縮 2/10 ∼3/3 ものつくり大学通信 No.15 発 行 日 : 2016年5月18日 春期休暇 休館 10/28 ∼10/31 以下URLで、 バックナンバーの PDFを公開しています。 ぜひご覧ください。 http://www.iot.ac.jp/cgi-bin /guide/tsushin/index.cgi 発 行 人 : 赤松 明 休館 3/4 ∼3/31 編 集 長 : 龍前 三郎 編 集 : ものつくり大学通信 編集委員会 (表紙) :カップ・マルタンの休暇小屋のレプリカ スケッチと文:藤原成曉(建設学科長・教授) 本学キャンパス内にあるコルビュジエの「終の住処」と 呼ばれる小屋のレプリカ。建設・製造両学科協力の下、 学生諸君の手によりディテールまでつくり込まれている。 粗末な小屋だが、多様な居場所を内包する胎内空間と 素のコルビュジエを体感することができる。
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