1 夜の方位学習の具体例 明るい建物の中から急に外に出るとまわりのようすがわかりませんが、しばらくすると目が 慣れて次第に見えてきます。暗いようでも、よく見ると山の形も見えてきます。曽爾の代表的 な屏風岩・兜岳・鎧岳もそのシルエットからすぐに見つけられるでしょう。これで方位もわかり ますね。 ≪星などを頼りに方位を求めてみよう≫ Q1 太陽の動きもわからなくなった時、曽爾の空にはたくさんの星(星座)が見られます。それ では、この星(星座)をもとにして方位を調べられるでしょうか。 A1 北極星を見つけることが北の方位を知る一番確かな方法です。それは、北極星のある位 置が、地球のほぼ真北にあるからです。磁針のなかった大昔から、航海の進路を決める目 印として、この北極星が使われてきました。北極星を見つけるにはいろんな方法があります。 3つほどあげておきましょう。 【北斗七星から見つける】 北斗七星はおおぐま座の一部で、7つの星を線 でつなぐと、空に大きな「ひしゃく」が浮かびあが ります。この「ひしゃく」の水くみの2つの星(α星 とβ星)の距離を図のようにα星から5倍のばすと、 北極星にいきあたります。 【カシオペア座から見つける】 夏から秋にかけて見えはじめるカシオペア座は アルファベットのWの形に見える星座です。カシ オペア座の両端にある星2つずつ(α星とβ星、 ε星とδ星)をそれぞれ線でつないでのばすと、 Oの点で交わります。そのO点から残りの星(γ星 )に線を引き、そこから5倍のばした所に北極星 があります。 【ペガスス座から見つける】 秋によく見えるペガススは、神話では羽のはえ た馬のことです。馬の体をつくっている4つの星は すぐ見つかります。このペガスス座のα星からβ 星に線を引き、そのまま伸ばします。γ星からもう ひとつの星に線を引き更に伸ばします。すると、 カシオペア座のβ星を通って先に引いた線と交 わる所に北極星があります。 ≪月を頼りに方位を求めてみよう≫ Q2 太陽、星(星座)を利用すると方位を知ることができることはわかりました。太陽、星といえ ば月があります。月を見て方位を知る方法はないのですか。 A2 月を使っても方位を予想することもできます。いつも月が出ているとは限りませんが、時計 と月を使うと方位がわかります。下の表を見て下さい。 上の表は、時刻と月の形(月齢)とにより月の方位を表したものです。 今見えている月(月齢は新聞にのっています)が上弦の月であったとします。上の表で、 で囲んである上弦の月のところを見ると、上弦の月は日の入りのころ南の空 にあることがわかります。つまり、日の入りのころ、月のある方向が南の方位ということになりま す。 同じようにして上の表から、真夜中の午前0時ごろの上弦の月は、ほぼ西の空にあることが わかります。つまり、午前0時ごろの上弦の月は西の空に沈んでいく月なのです。 日の入りから午前0時の間に見られる上弦の月の位置は、上の表から南と西の間にあるは ずです。従って、そのころの月を見ると方位を知ることができるのです。 なぜこの表のようになるか少し難しいですが、上弦の月 で説明しましょう。 地球の周りを約一か月かかって一回りしている月(図1)が、Aの位置にきた時、地球から のような上弦の月が見えます。それでは、図2のもとに、自転により地球上の1地点から見 た上弦の月 の見え方が、どのように 変わっていくか考えてみましょう。 ある地点がアのところに来た時、太陽 は西の方に見え、日の入りです。この 時、上弦の月は南の空高くにあります。 地球の自転により、6時間後にイのと ころにきた時はもう真夜中です。太陽 は沈んで見えなくなり、上弦の月が西 の空にあります。 地球の自転により、イからウにきた時 は、太陽が東の空に見え、日の出とな ります。しかし、この時上弦の月は見え ません。 地球の自転により、ウからエにきた時、 太陽が真南にあり、昼の12時です。こ の時上弦の月は東の空に見えはじめ ます。 このように、上弦の月と時刻から、およその方位がわかるのです。その他の月の形でも上 の表のように、時刻から方位を知ることができます。 ※ 月は地球のまわりを約1か月かかって一回りします。そのため、地球から見る月の形も約1か 月かかって満ち欠けをくり返します。 ※ 地球の自転のため、月も太陽と同じように東から昇り、南の空を通って、西の空に沈むよう に見えます。 ≪黄道12星座を頼りに方位を求めてみよう≫ Q3 太陽、星(星座)、月を利用すると方位を知ることができることはわかりました。他に方位を 知る方法はないのですか。 A3 季節によって見える星座が変わりますね。星占いで使われる12星座を知っていますか。正 確にいうと黄道12星座とか黄道12宮とよんでいます。太陽が一年かかって動いていくように 見える見かけの通り道を黄道といいます。その黄道を12等分(1年なら1カ月分、1日なら2 時間にあたる)し、それぞれの等分された場所に見える星座をまとめて黄道12星座とよんで いるのです。 それぞれの星座は次ぺ−ジの図のようになります。太陽が、等分されたひとつの星座の方 に見えるのは一カ月間です。次ページの図を見ると8月には、地球からみてしし座は太陽の 方向にあります。ところが、太陽が出ているため、明るすぎてしし座は見えません。 一方8月の夜空には、しし座と反対側のみずがめ座が見えることになります。 しし座の反対側にみずがめ座があることを利用し、方位を考えてみましょう。 地球上のある地点が昼間(図のA点)にある時、太陽が真南の空にあり、昼の12時です。こ の時、しし座の正反対にあるみずがめ座は見えません。 地球の自転により、夜側(図のB点)に来た時、午前0時です。この時、みずがめ座は真南 の空にあります。 もし、午前0時より2時間前の午後10時の夜空だとすれば、星座は2時間で入れかわって いくので、みずがめ座の前のやぎ座が真南にあることになります。 さらにその2時間前の午後8時の夜空だと、やぎ座の前のいて座が真南ということになり、 その方位がわかるのです。 ちょっと難しかったかな? 発行年月 平成11年5月 執筆者 中森 輝夫 参考文献 中学校教科書「理科2分野上」 新興出版者 啓林館(平成5年度用) 「野外観察の手引」 (昭和63年) 堺市立科学教育研究所 豊原 稔 「天文年鑑」 誠文堂新光社(平成9年)
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