A2.6 〔参考訳〕 鎮痛剤や麻酔薬、ステロイドといった薬剤が、痛みを緩和・軽減するために開発されてきたとはいえ、一般的に言っ て、痛みは十分に対応されてこなかった。理由の一つに、医師は主に、痛みではなく疾患に注目する嫌いがあることが 挙げられる。医師は痛みを疾患の徴候と見なしてきたが、それ自体は処置するに足るほど深刻なものだと見なしてこな かったのだ。しかし、慢性的な痛みは患者の心身を蝕み、患者に残るのは芯からの疲弊である。痛みにより、時には安 楽死への希望が生じることすらある。 しかし近年、痛みが患者の生理的状態に影響を与え、免疫による防御機構を妨げ、その回復を遅らせうるという理由 から、医師はいよいよ、痛みにしっかりと対処しなければならないということを理解するに至った。長年慢性的なひど い痛みに悩まされてきた Penney Cowan は、1980 年に ACPA を設立したが、それ以来、痛みへの処置、あるいはその コントロールは QOL(生活の質)の観点から、医療における極めて重要な部分になっている。 痛みとは、科学的には、実際あるいは潜在的な組織の損傷に伴う不快な感覚上の経験、と定義される。急性と慢性、 大きく 2 つに分類される。急性の痛みとは鋭いが一時的なものである。一方、慢性的な痛みは、軽度なものから重度な ものまで多岐にわたり、数ヶ月・数年あるいは生涯に渡って続く場合もあり、身体的・感情的・心理的・社会的・職業 的等、様々なレベルで患者に影響を与える。また、神経因性疼痛あるいは神経痛と呼ばれる 3 つ目の分類もあり、これ は我々の身体や脳にある神経に影響を及ぼすものである。神経痛は、疾患や健康を害した体の一部・器官が回復した後 でさえ、消え失せないようである。 ACPA によると、全米で 400 万人以上が、様々な慢性的な痛みに苦しんでいる。しかし多くの人は、その痛みを和ら げるために必要なケアを受けられない。医師や看護師は、患者からの意見を聞いてその痛みが実際にどのようなもので あるか、より良く理解しようと試みている。この目的のため、また、一般的な疼痛緩和ケアの向上を目指して、ACPA は QOL スケールを開発した。このスケールは現在、患者と家族・親友とのコミュニケーションは当然、患者と医療提 供者とのコミュニケーションも高めていくための効果的なツールとして使われている。このシステムは特に、自分の痛 みを正確に説明することができない小児や高齢者にとって有用なものである。このスケールを用いることで、痛みの種 類や強さをより明確にすることができ、患者がこれ以上「忍耐強く」いる必要がないように、医師は患者の痛みをより 一層効果的に処置していくことができるのである。 〔解答例〕 問1 以前は、痛みは病気の徴候で真剣に処置すべきものと捉えられていなかった。しかし今は、患者の生理的状態に影響を 与え、免疫系を妨げ回復を遅らせるため、十分に処置すべきと捉えられている。 問2 acute pain とは鋭いが一時的なものである。chronic pain とは、軽度なものから重度なものまで多岐にわたり、数ヶ月・ 数年あるいは生涯に渡って続く場合もあり、身体的・感情的・心理的・社会的・職業的等、様々なレベルで患者に影響 を与える。neuropathic pain は、身体や脳にある神経に影響を及ぼすもので、疾患や健康を害した体の一部・器官が回 復した後でさえ、消え失せない場合がある。 問3 患者の痛みを理解し、疼痛緩和ケアを向上させるためのものである。患者と家族・親友は当然、医療提供者とのコミュ ニケーションを高める効果的なツールとして使われている。特に自分の痛みを正確に説明できない小児や高齢者に有用 で、痛みの種類や強さを明確にでき、患者が我慢する必要がないよう医師は痛みに効果的に処置できるようになった。
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