第13回国際TDM会議

会 員 通 信 コ ー ナー
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会 員 寄 稿
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「第13回 国際TDM会議」参加印象記
野村 浩子
Hiroko NOMURA
福岡徳洲会病院薬剤部
Department of Pharmacy, Fukuoka Tokushukai Medical Center
2013年 9 月22日から26日まで、アメリカ・ソルトレイクシティにおいて第13回国際TDM会議(13th
International Congress of Therapeutic Drug Monitoring & Clinical Toxicology)が開催されました。
今回、私は光栄なことに日本TDM学会より「国際TDM会議派遣賞(海老原賞)」を賜り、本学会に参
加・発表させていただきましたので、ここにご報告させていただきます。
国際学会に参加することも初めてなら、英語で発表することも初めて。期待と不安が入り混じった
数ヶ月間、共同研究者の皆様の協力を得て準備をすすめ、アメリカに旅立ちました。ソルトレイクシ
ティは2002年に冬期オリンピックが開催されたことで、日本でも知名度の高い都市です。市の西部に
は地名の由来にもなっているグレートソルトレイクが広がり、末日聖徒イエス・キリスト教会(モル
モン教)の総本山であるテンプルスクエアやユタ大学(University of Utah)などがあり、自然・歴
史・文教の街という印象でした。治安も大変良く、また、滞在中は天候に恵まれたこともあり、路面
電車のTRAXなども利用して、素敵な街を安心して散策することができました。
学会はグランドアメリカホテルで行われました。プログラムはTherapeutic Drug Monitoring分野と
Clinical Toxicology分野に分かれて構成されており、全日程を通し、 4 つのプレナリーレクチャー、20
のラウンドテーブル、 6 つのシンポジウム、 2 つのディベート、 8 つのワークショップ、 7 つの企業
ワークショップが開催されました。なかでも、Clinical Toxicology分野の乱用薬物や職業性の金属曝露
などのプログラムは大変興味深く、日本ではあまり収集できない情報を得ることができ、また、ワー
クショップの終了後、自験例について、演者の先生と意見交換を行うこともできて大変有意義でした。
英語力に自信のない私でしたが、日常の担当業務(救急・急性中毒)に近い内容であったため比較的
容易に理解でき、それを会期の早いうちに体感することができたので、言葉の緊張がほぐれ、学会を
楽しむことができたように思います。また、プログラムの中で印象的だったのはラウンドテーブルで
した。今回は朝食時に行われる形式で、いわゆるモーニングセミナーのような認識で申し込みをして
しまったのですが、発表者によるプレゼンテーションではなく、本当に言葉の通り机を囲んで、朝食
をとりながら初対面同士の参加者で意見交換を行うという、大変ハードルの高い内容だったので驚き
ました。食事を急いで終わらせ耳を傾けておりましたが、リーダーのご配慮でyes/noで回答できる質
問を投げかけてくださったおかげで、かろうじて輪に加わることができ、いい経験となりました。
一般演題は口頭発表が約90演題、ポスター発表が約140演題ありました。ポスター示説の時間は
Refreshment Breakにもなっており他のプログラムと重複しておらず、また会場も同じであるため多く
の方が集まり賑やかな雰囲気の中、活発な意見交換が行われていました。私は 3 日目に、「Population
TDM研究
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pharmacodynamic analysis of HMG−CoA reductase inhibitors (statins) in Japanese adult patients
based on the in−hospital medical records」という演題で、臨床での電子カルテデータを基盤に、母集
団モデリングアプローチを通して、スタチンにおける LDLコレステロールの経時的推移と併用薬の影
響を表現したモデルを構築し、さらに構築したモデルに基づきシミュレーションを実施することで、
スタチン治療に対する併用薬の有用性が示唆されたこと、またこの手法は他の薬剤への適用が可能で
あり実用的な方法であるということを発表いたしました。 4 名の外国人の先生方をはじめ、日本から
参加された先生方から、解析方法に関するご質問やモデルの妥当性に関するご意見など、多くのお声
かけをいただき、緊張の中あっという間に示説時間は終わりました。
最終日の全演題終了後に閉会式が開催されました。そこで本学会のAward Presentationsが発表され、
兵庫医療大学の大野雅子先生がベストポスター賞を受賞されました。また、次々回、2017年第15回国
際TDM会議の京都開催が発表され、谷川原祐介先生の力強いガッツポーズで我々の興奮は最高潮とな
りました。2017年の京都開催を皆で盛り上げて参りましょう。
次回の第14回国際TDM会議は2015年にオランダ・ロッテルダムで開催されます。次回も参加・発表
できるよう、さらに研鑽を重ねて努力したいと思います。今回、日本からの参加者とアメリカで活動
されている方々の参加と合わせ、30人以上の日本人が本学会に参加していました。帰国後も国内の各
学会でお目にかかることもあり、多くのご縁をいただいたことも大きな宝だと感じています。
最後に、このような貴重な機会を与えて下さいました、日本TDM学会の先生方、本研究の指導・支
援をいただいた共同研究者である九州大学大学院薬学研究院 薬物動態学分野の皆様、職場の上司・
同僚に深く感謝致します。
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Vol. 31 No. (
1 2014)