血液サンプルプーリングの 自動化がもたらす 安全性の

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CLINICAL DIAGNOSTICS
血液サンプルプーリングの
自動化がもたらす
安全性の高いPCR診断
ド イ ツ、Halle(ハ レ)に あ る 血 液 セ ン
タ ー で は、Freedom EVOⓇ Clinical
150にTe-PoolSafe™モジュールを組み
合わせて利用することで、血液サンプ
ルプーリングを自動化し、高い信頼性
を実現している。また、続いて行われ
るPCRベースの検査では、血液製剤
による病原体への感染が全く存在し
ない。
輸血体制が常に整っているということは、重
傷者の救命だけでなく、手術中の患者への
対応においても必須である。例えば胸部手
術の場合には20∼30単位の血液が必要
になる場合もあるが、現在、献血者から得
られるヒト血液に代わる人工物は存在しな
いことから、血液はまさに「重要かつ必需」
なのである。この状況が問題になっているの
は、献血の供給が既に不足しているのに加
え、献血者を選択する厳格なプロセスにより
献血そのものの希少価値が高まっているこ
とによる。また、患者が自らに投与される血
液に感染症や病原体がないことを確認する
には徹底した血液検査の結果に頼るしかな
いため、検査結果は正確かつ明瞭であるこ
とがきわめて重要なのである。
各血液センターは、見込み献血者が実際
に献血を行うよう誘導すること、および現在
の技術で可能な限り安全な血液を提供す
ることを目的としている。血液センターでは、
PCRとELISAベースの並行検査を用いること
によってそれぞれの検査結果を確認する一
方、偽陽性を回避し、患者に「クリーンな」
血液を輸血するようにしている。さらに、欧
州諸国の大半と同様、献血にあたっては一
Tecan Journal 3/2007
検査室のチーム
左からSusan Glaser、
Katrin Kahle、
Amelie Bolte、
HeidrunBusch、
Angelika Stöcker
般的な血清学的スクリーニング検査と血液
型検査をセットにして実施しているが、保健
当局によってはさらに多くの血液検査を要
求するところもある。
ドイツ、Halle(ハレ)にある大学臨床センター
(University Clinical Center)の 血 液 セ ン
ターでは、1日当たり100∼120人から採取
した血液を取り扱っており、これらの血液か
ら各種血液製剤が調製され、主な使用先
である大学臨床センターの病院に供給され
る。生物学修士Angelika Stöckerを長とす
る血液センター検査室では、それぞれの献
血のサンプルとしてバーコード入りラベルを
貼った直径13 mmの試験管を受け取ると、
直ちにFreedom EVO Clinical 150ワークス
テーションを用いてそれをプーリングしてい
る。4個のディスポーザブルチップと4個の
固定チップを備えた8チャンネルリキッドハン
ドリングアーム1本、1 mLシリンジ、PosID™
バーコード識別デバイス、Logic software™
が搭載されるこのワークステーションは、
MAK-SYSTEMソフトウェアと接続すること
で、同ワークステーションとの遠隔コミュニ
ケーションが可能となり、例えば、中央検査
室のPCからテカンのプラットフォームに作業
リストを送信することができるようになる。
このリキッドハンドリングプラットフォームは、
迅速で高感度の天秤を使用して、プーリン
グしたサンプルの重量を測定する液体到達
の自動チェックシステム「Te-PoolSafeモ
ジュール」と組み合わせることにより、性能が
高まり、血液バンクが使用するプーリングア
プリケーションの性能を監視・評価すること
ができるようになる。Te-PoolSafeでは、プー
CLINICAL DIAGNOSTICS
Tecan Freedom EVO Clinical 150ワークステーション
リングされた分ごとに分注1つずつの重量を
測定し、書面による性能証明を発行するこ
とにより、全サンプルのトレーサビリティを確
保する。分注したサンプルに不正確なもの
が見つかった場合は、その貯蔵分全体を取
り出して再度ピペットでの分注を行っている。
試験管16本を一組として処理されるサンプ
ルは、遠心分離後、そのサンプルそれぞれ
から血清400μLずつプーリングされ、その
量は常にTe-PoolSafeモジュールを用いて
確認を行う。さらに、PCRを繰り返す必要が
ある場合に備えて、保存用のマイクロタイ
タープレートを3枚調製するほか、長期貯蔵
に備えて等量の各サンプルを-30∼-40℃
で保存している。
Te-PoolSafe天秤上でのプーリング用試験管への分注
動的に読み取れる。また、それぞれのプーリン
グ分での各サンプル量の正確さについては、
プーリング後に作成されるプーリング分ごとの
重量についてのレポートで確認することができ
る。血液貯蔵の自動化により、これまで行って
きた手作業とは違い、オペレータのプーリング
処理を監視するための人員が不要になる。こ
れにより、さらに大きな時間的余裕ができ、人
員を他の業務に回せるようになった。
Te-PoolSafeオプションは、ご利用いただける国
が限られております。詳しい情報については、現
地営業所までご確認ください。
■この記事は2007年9月発行 Tecan Journal 3/2007
に掲載されているユーザーストーリーを抜粋、翻訳したも
のです。ご質問、ご要望は下記までお願いします。
テカンジャパン株式会社
TEL. 044-556-7311/FAX.044-556-7312
E-mail: [email protected]
プーリング用試験管に
血清を分注している
Te-PoolSafe天秤の接
写写真
貯蔵血液に対しては、ヒト免疫不全ウイルス
(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎
ウイルス(HCV)を対象としたPCRベースの
検査が行われ、PCR検査の結果、1つでも
陽性があれば再検査を行う。再検査で当
初の検査での陽性が裏付けられた場合に
は、さらなるPCRベースの検査に向け、8サ
ンプル貯蔵分2組の血液を元の16サンプル
から調製し、陽性を示した貯蔵分の8種類
の 血 清 を 個 別 に 検 査 す る。ま た、ELISA
ベースの検査では、PCRから得られた結果
の確認に加え、ヒトサイトメガロウイルス抗体
およびTreponema pallidum(梅毒トレポネー
マ)抗体についても確認する。
プーリングプロセスの自動化以前は、プーリ
ング量が正しいかどうかをオペレータが目視
で検査していた。これに対し、Te-PoolSafe
では、それぞれのプーリング分の16サンプ
ルのデータをPosIDバーコードリーダーで自
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