うに、 通信【創刊号】

通信【創刊号】
全国 800 社のネットワーク
コラム
深呼吸したくなる家
人・家・地球の健康を未来の子供達へ
衣食住
半世紀の劇的な変化の中で
寒さも峠を越え、ようやく暖かい時期にむかってゆく頃となりました。住まいという環境を考えますと、年々温
暖化し冬は暖かくなっているものの、冬の暖房効率をあげてゆくという業界全体の流れは加速しているように感
じます。確かに現在の家は 50 年以前のおじいちゃん、おばあちゃんの家に比べるとだいぶ暖かくなり暖房効率は
飛躍的にあがりましたね。
しかし、当時の家を見ると、屋根は萱葺き、例えば瓦も土を焼いたもの、柱は大工さ
んによって組まれ、貫(柱をつなぐ板)を通しそこに葦を組んで、左官屋さんが土壁
を塗りました。建具は木製で障子紙を貼り、畳は井草、どれをとっても天然、自然素
材に囲まれて私達の先祖は数百年、生活してきたように思います。
若い頃よく先輩方に『日本の家は夏向きに造れ』と言われたものです。最初は何を言わ
れているのかあまり意識もしませんでしたが、ある程度材木を扱い住宅を手掛けてきま
すと、通気が悪く材木が蒸れたり腐ったりする現場にも遭遇します。すると高温多湿の
日本では、おのずと湿気を抱えない環境をつくらなければならない。=風通しのいい家
=夏向きの家となるのでしょう。
ところが 50 年ほど前から、住宅の普及政策がとられ、伝統工法は自然素材(湿度によって動き、伸びたり縮んだ
り、曲がったりする)を扱うにあたり、特殊で高度な職人の技術を必要とします。これでは普及は難しいと木の
動きを止めるため薄くスライスして接着剤で貼り合わせた合板や石油製品による壁紙(ビニールクロス)また、
ガラス繊維の断熱材そして、材木から鉄でフレームを組むといった家づくりによって、
特殊技能を持つ職人を育てるのではなく、この動かない新建材を工場で組むといった
量産合理化住宅(現代住宅)が本格化しました。そして地場工務店が継承してきた日
本の伝統工法はいつの間にか在来工法とされ始めたのです。
量産合理化
大きな代償
しわ寄せが女性や子供に
50 年前合板が出始めのころ、木を食べるヒラタキクイ虫の卵がサンドイッチされて輸入され、床下が木の粉だら
けになるということが起こりました。当時を知る大工さんは慌てて殺虫剤を撒いたそうです。それを知っ
たメーカーは接着剤に防虫剤を投入しました。それが今シックハウス症候群の原因に代表されるホルムア
ルデヒドやトルエン、キシレンといった人体にも影響を与える化学物質の始まりです。虫はピッタと止ま
りましたが、大工さん達が目に痛みを感じたり頭が痛くなったりと症状が出始めました。
当時はまだ風通しを意識していたので、化学物質の濃度はそれほど室内に留まりませんでした。ところが暖房の
効率を上げるために 30 年ほど前から、北海道の旭川が『高気密高断熱』発祥の地とも言われてますが、北欧北米
の家づくりをならい徹底した冬向きの家づくりが始まったのです。私が最初に出会った
地元工務店の社長さんたちは『旭川はシックハウスも発祥の地だ』と言われていたのを
今でも思い出します。この大自然で生活する皆さんが、なぜ家の中で調子を悪くしなけ
ればならないのか?講演をさせていただいたあと聞いていた方々が次々に集まってきて
『親戚がシックハウスだ』
『娘がシックハウスだ』と言い始めます。その娘さんは新築のマンションに入って間も
なく調子が悪くなり、窓を全開にして生活させているとお父さんが言っておりました。まさか-25℃になる冬も
ですか?と尋ねると、さすがにそういうわけにいかないから困っていたんだけど、今日はい
い話をきいたと喜んでいました。家が原因で調子が悪くなる?こんなことが起きるなんてと
思いましたが、よくよく考えてみれば、50 年以前の家づくりには化学物質は存在しませんで
した。ところが職人を育てず量産合理化の家づくりが進み、食品でいえば早くて安くて簡単
と添加物が入れられ、更に輪をかけて夏向きの家が強烈に冬向きに移行したわけですから出る
べくして出たといったところでしょう。喘息・アトピー・偏頭痛などの現代病は増え続け、最
近では更年期障害からうつ病まで、シックハウスが原因といわれはじめています。
現代病
家からも
どう解決したらいいのでしょうか?
大人一人当たり一日に呼吸する空気の重さは、約 20 キロにもなるといわれています。例えば食事は三食で 2 キロ
と言われますのでおよそ 10 倍摂取してることになります。摂取する空気が化学物質やカビなどをふくまない新鮮
な物であれば問題はないわけです。では昔ながらのオール天然素材の家を造ること?これは理想です。しかしな
がら現在そういった材料も手間も逆に高上りになり、坪 100 万円は下らないでしょう。そこまでかけても、おじ
いちゃんの家は暖房効率が悪く、快適とは程遠いものです。
では換気をきちんとすればいいじゃないか!そうですね室内に化学物質がこもらない、またカビが生えないよう
にするには絶えず外の空気と入れ替えればいいですね?ん、待てよ、さっきの北海道のお父さんの話じゃなけど、
冬は寒気を逆に夏は熱気を入れ替えるのではたまりませんね。北海道ではこの矛盾を解決しようと、熱交換シス
テムを搭載した換気装置を取り付け頑張ってみたそうです。ところが熱交換率は半分、単純に外の‐20℃の熱と
室内の 20℃の熱を触れ合わせて交換しても0℃にしかならず、また各部屋に新鮮空気を送るはずのダクト内はほ
こりがつきカビやダニが繁殖するといった悪循環をまねいているようです。これでは機械で外の空気と入れ替え
るということも二次被害になってしまいますね。
ではどうするのか?ん~・・・
昔の家には戻れない、換気扇も省エネから
逆行してしまうので矛盾する・・・
空気がわるくなる原因ってなんだ?
無駄なエネルギーを使わずに捨てづに
室内の空気が悪くならない方法って
あるのかな?
湿気対策
全ての原点
答えは伝統が継いできた『家の呼吸』
そんな方法あるのかな?って皆さんお思いでしょう。例えば私たちは生活の中で結構な量の水分使っています。
大人一人当たり 1.5 リットルの水分を使っています。四人家族では約 6 リットルほどの
水蒸気を発散しています(洗濯物を乾し、シャワーを浴び、炊事や汗、しゃべってる
だけでも出していますね)おじいちゃんの家はこの大量に発散される水蒸気を土の壁
湿気が抜けない
が吸収し、太陽が当たれば自然と放出してくれました。すると室内には余計な水分は
ビニールハウス
こもらないため湿度は下がります。ところが現代住宅はどうでしょう?土壁が石膏ボ
ードに変わったまでは良かったんです。しかしその上にビニールクロスを貼ってしま
った。天井にビニールをはり壁にビニールを貼る・・・ビニールハウスですね。湿気は抜けにくいから湿度が上
がりますね、湿度高くなるとカビが生えますね、ダニも動きだしますね。そして、フローリングやドアなどに使
われている合板から湿気と一緒に化学物質が揮発し
てきます。湿気と一体になった化学物質はビニール
によって壁を抜けることができません。カビは生え
やすく化学物質は残留し空気は汚れるのです。暖気
を捨てず空気を汚さない技術とは実は単純です。
綿のシャツを着ていれば汗は抜けてゆく、ビニール
のシャツを着ていれば汗はこもり体はべとべと。壁
に湿気を通す材料を使ってください。湿気とともに
化学物質もにおいも抜けてゆきます。カビも生えず
空気は悪くなりません。消臭剤もいらないですよ!
呼吸する家
冬の効能
冬のワンポイントアドバイス
◎温度と湿度の関係をしめす空気しめり線図
窓硝子の温度↓
↙部屋の湿度
←部屋の温度
上の図のように例えば部屋の温度 20℃●で湿度 50%●の場合は窓硝子の温度が●9℃になると空気中の水分が露
点に達し結露し始めます。ところが湿気を通す材料で覆われた部屋は温度はそのままに湿度が下がります。おな
じ温度 20℃●で湿度 40%●の場合は窓硝子の温度が●5℃になってようやく結露してくるのです。
冬暖かい家
時代の要請
家づくりは環境問題の原点
実はみなさん 2020 年に車の燃費と同じように、住宅も燃費計算をして役所の確認がおりる
という時代にはいります。確かに地球規模の気候変動が温暖化の影響といわれる以上、住宅
の暖房の効きをよくすることは時代の要請です。ということはこれからの家は『冬暖かいの
は当たり前』の時代に入ります。WB工法の家も国の基準にあわせ暖かい家となります。
しかし密閉の仕方を間違えると、逆に暖房をかけながら換気扇を回すという矛盾を生じるこ
とも知っておいてください。人間は皮膚呼吸をして言います。汗を掻くことで体の中の老廃物を出しています。
聞くと汗は尿の成分とあまり変わらないそうです。家も汗をかける材料で老廃物(化学物質や生活臭)を排出し、
深呼吸したくなる暖かい家を造りましょう。人にも地球にも優しい家づくりは実は家にもやさしいのです。
そのあたりは次号(家の寿命や耐震性)でお話しいたします。
【今号のまとめ】
創刊号はいかがでしたか。生活習慣も大きく変わり、衣食住全てにおいて合理化が加速してゆきますが、日本の
気候風土にあった伝統の造りや対策がありました。変えなければいけない部分と変えてはいけない部分がありま
す。日本では『湿気対策』は住まいづくりの原点です。家が本来持つ『呼吸』をとめない家づくりが、環境問題
の矛盾を解決します。これから新築リフォーム
をお考えの皆様、住まいには様々な問題があり
ます。冬の寒さ・夏の暑さ・家の寿命・耐震性・
シックハウス・結露・生活臭・省エネなど季節
に合わせた『コラム』をご紹介してゆきます。
それでは桜の咲くころに春号でお会いしましょ
う。ご拝読ありがとうございました。
あたりまえの暮らしがしたい自然や季節を感じ、伝統から知恵を受け継ぐ。
そんな暮らしを考えたら、あたりまえの家づくりが必要でした。人が呼吸するように、
家も呼吸しながらいきている。深呼吸したくなる家。通気断熱のWB。