株式需給のここに注目-外国人投資家の買い余力は充分

2016 年 11 月 4 日
第 80 号
株式需給のここに注目-外国人投資家の買い余力は充分
大和住銀投信投資顧問
部長
経済調査部
門司 総一郎
10 月は米 S&P500 が 1.9%安、欧州の STOXX600 が 1.2%安など、他の株式市場は全般に軟調だったので
すが、TOPIX が 5.3%上昇するなど日本株は好調でした。前々回当コラムで紹介した業績底入れ期待、
前回紹介した金利低下リスク後退などが日本株好調の理由ですが、外国人買いもその理由の 1 つです。
今回は外国人買いを取り上げます。
外国人買越額( 月次、兆円、現物と先物の合計)
3
2
1
0
-1
買越額(兆円)
-2
3ヵ月移動平均(兆円)
-3
-4
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
出所:東京証券取引所、大阪取引所より大和住銀投信投資顧問作成、16年10月は第3週まで
まずこれまでの外国人の動きを見てみます。2012 年後半に外国人は売り越しから買い越しに転じ、
15 年前半まで買い越しを続けました。しかし、その後は売り越しに転じ、2015 年通年では 3.4 兆円、
16 年 1-9 月も 7.2 兆円の売り越しです。ただし、10 月には買い越しに転じ、第 1 週から第 3 週まで 1.3
兆円の日本株を買い越しました。この外国人買いが 10 月の日本株高の理由の 1 つです。
次に今後の外国人買いの持続性について考えてみます。ポイントは 2 つあります。買う理由と買い
余力です。外国人が買い越しに転じたきっかけは前述の業績底入れ期待や金利低下リスクの後退など
です。こうした要因については前回、前々回の当コラムで述べたようにいずれもしばらくは日本株を
押し上げる要因であり続けると見ています。
外国人の買い余力についてもまだまだ高いと見ていますが、この点について米系証券会社 BofA メリ
ルリンチの「ファンドマネージャー調査」(FM 調査)を見てみます。FM 調査はメリルリンチが毎月 10
日前後に実施する世界の機関投資家を対象にしたアンケート調査です。当社のような国内の投資家も
も回答していますが、回答者の多くは大半は海外の投資家です。
外国人が日本株を買う場合、大雑把にいって 2 つのケースがあります。1 つは債券や現金など他の資
産から株式に資金をシフトするケース、もう 1 つはグローバルな株式ポートフォリオの中で米国やユ
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注目!
2016 年 11 月 4 日
ーロ圏など他の国・地域から日本株に資金をシフトするケースです。前者は資産配分の変更による日
本株買い、後者はグローバル株式の国・地域別配分の変更による買いといえます。
まず前者についてですが、FM 調査には株式・債券・現金などについて現在のポジションがオーバー
ウェイト(基準値よりも多めに保有している、以下 OW)、アンダーウェイト(基準値よりも少なめに保有
している、以下 UW)、中立(基準値並みに保有している)のいずれかを問う設問があります。左下のグラ
フは株式に対する回答に関するもので、折れ線グラフは株式 OW(または UW)と回答した投資家の比率、
棒グラフ(ネットバランス、NB)は両者の差をとったものであり、これが高いほど投資家全体として株
式に強気なことを示しています。
機関投資家の株式に対す るポジ シ ョ ン( 回答に占め る比率)
機関投資家の日本株に対す るポジ シ ョ ン( 回答に占め る比率)
60%
60%
40%
40%
20%
20%
0%
0%
80%
-20%
-40%
2011年
ネットバランス
アンダーウェイト
2012年
2013年
2014年
2015年
80%
オーバーウェイト
-20%
2016年
-40%
2011年
出所:BofAメリルリンチ証券より大和住銀投信投資顧問作成
ネットバランス
アンダーウェイト
2012年
2013年
2014年
2015年
オーバーウェイト
2016年
出所:BofAメリルリンチ証券より大和住銀投信投資顧問作成
NB はプラス圏で推移することがほとんどです。2011 年や 12 年にマイナスになったことがあります
が、いずれも一時的なものに止まりました。
足元 NB は 9 月の+1%から 10 月の+12%に上昇しましたが、2011 年以降の平均+33%を下回っています。
言い換えれば投資家は株式にまだ慎重で、低めの組み入れに止めていることになるので、ここから更
に組入れを引き上げる余地は、まだまだあるといってよいでしょう。
次に後者についてですが、FM 調査には、グローバル株式ポートフォリオにおける日本・米国・ユー
ロ圏・英国・新興国それぞれのポジションを問う設問があります。右上のグラフは日本株に対する回
答に関するもので、NB が高いほど日本株に強気な投資家が多いことを示しています。
2012 年まで日本株の NB はマイナス圏にあり、この間日本株に弱気な投資家が多かったことを示して
います。しかし、2012 年末の安倍政権発足をきっかけに NB はマイナスからプラスに転じ、昨年 5 月に
は+42%に達しました。前ページのグラフが示すように、この間外国人は買い越しを続けています。
しかしそこから NB は低下に転じました。特に今年に入ってから急低下し 4 月にはマイナスに転落、
9 月には-9%まで低下しました。2012 年 12 月以来の低水準です。この間外国人は日本株を売り続けま
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注目!
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した。
しかし、10 月の NB は-4%に上昇しました。これは外国人が日本株にまだ弱気ではあるものの、それ
でもグローバル株式ポートフォリオにおける組み入れを引き上げ始めたことを示している可能性があ
ります。実際 10 月に入って外国人は日本株を大幅に買い越しました。NB が 4 年ぶりの低水準にあるこ
とを考えると、この観点からの買い余力もまだ大きいといえるでしょう。
このように資産配分、グローバル株式の国・地域別配分のいずれの観点からも、外国人の日本株買
い余力は大きいと思われます。以上述べてきたように、業績底入れへの期待感、日本銀行の金融政策
への安心感、外国人買い、この 3 つの理由で年末にかけて日本株の上昇が続くと予想しています。
以上
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
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る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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