帰国報告書 - セラミックスを基軸とするものづくり研究拠点形成に向けた

組織的な若手研究者等海外派遣プログラム報告書
氏名
西峯
貴之
所属専攻・学科
未来材料創成工学専攻
学年
博士前期課程 1 年
指導教員名
柴田
派遣先
Rouen 大学
派遣先指導教員名
Dr. Dominique Cahard
派遣国・地域
France・Rouen
派遣期間
2010 年 10 月 3 日~2010 年 10 月 31 日(29 日間)
哲男 教授
研
修
報
告
<研修内容>
今回私はグリーンケミストリーの観点から,容易に回収ができ,繰り
返し用いることが可能な不斉触媒の開発を行うこととした。すなわ
ち,ゼオライトやメソポーラスシリカなどの多孔質材料に種々の不斉
Recycle
触媒を組み込み,その表面で不斉反応を行う。反応終了後はセラミッ
クス触媒を濾取した後,繰り返し反応に利用する。これにより触媒が
再利用可能となれば,環境負荷の小さい有機反応の開発が可能とな
る。そこで不斉トリフルオロメチル化において有用であったシンコナ
アルカロイドや,有用な有機触媒であるプロリンなど,種々のセラミ
セラミック触媒
ックス触媒ライブラリーを構築し,多岐にわたるスクリーニングを行
うこととした。
<達成した成果・今後の抱負>
toluene, reflux
O
O Si
O
SH
Cinchona alkaloids
AIBN, CHCl3
MCM-41
SH
(MeO)3Si
MCM-41
MCM-41
OH
OH
OH
O
O Si
O
S
N
Scheme 1 Preparation of ceramics supported catalysts
本コンセプトで用いることにした多孔質材料であるメソポーラスシリカには,その形や孔の大き
さにさまざまな種類が存在し,いずれも容易に購入可能である。今回私は,同様のコンセプトで
非常に良い結果を与えている MCM-41 と呼ばれるメソポーラスシリカを触媒坦持の材料とするこ
ととした。MCM-41 の組成式は SiO2・nH2O であるが,その表面はケイ酸末端が Si=O ではなく
Si(OH)2 となるように処理されている。私はまずその表面に有機触媒との橋渡しとなるリンカー
部を付加させることとした。さらにそのリンカーに対し,種々のシンコナアルカロイドをラジカ
ル的に付加させ,ソックスレー抽出法により精製した後,減圧下で乾燥させ,目的のセラミック
ス触媒を得た(Scheme 1)。続いて得られた本触媒を,我々が開発したトリフルオロメチルビルデ
ィングブロックに用い,反応のスクリーニングを行った。大きな不斉収率の向上は見られなかっ
たが,エナンチオ選択性を発現していることから,今回合成したセラミックス触媒は確かに反応
に関与していることが分かった。また回収した本触媒を再び同条件で用いた場合も同程度の不斉
収率であったことから,再利用も可能であることが分かった。今後はさらに反応の精査を行い,
不斉収率の向上を目指す予定である。そして本触媒をより高度な反応へと応用し,医薬品などの
生理活性物質の環境に優しい不斉合成法の開発を目指していきたい。
フランスで一カ月間研究を行った実験室です。
フランス出発の朝,ルーアン駅で撮った写真で
す。中央が一カ月お世話になったドミニクカハ
ード博士です。
本反応用の原料を合成しているところです。