外航海運セミナー 航行安全と環境への対応 （第二部） 一般社団法人 1 日本船主協会 国際海事機関と条約 2 国際海事機関（ＩＭＯ）とは International Maritime Organization 171カ国が加盟する機関で、海上（船舶）の安全と保安な らびに海洋汚染の防止について協議する国際機関で、ロ ンドンに本部を置いている 3 船舶の安全に関する条約 １９７４年の海上における人命の安全のための 国際条約（ＳＯＬＡＳ条約）（海上人命安全条約） International Convention for the Safety of Life at Sea, 1974 1912年のタイタニック号沈没事故が契機となった国際条約 ・ 1914年 第一次世界大戦の影響で発効せず ・ 1933年に発効（1929年に締結） ・ 1948年、1960年に大幅な改定 ・ 現在は1974年の条約が基本となっている （日本は1980年に批准） 4 関係国内法 船舶安全法 国際船舶・港湾保安法 5 海洋汚染防止に関する条約 1973年の船舶による汚染の防止のための国際 条約（MARPOL条約）に関する1978年の議定 書（海洋汚染防止条約） Protocol of 1978 relation to the International Convention for the Prevention of Pollution from Ships, 1973 ・ ・ ・ ・ 1954年 油による海洋汚染防止 （1958年発効） 1973年 IMOで採択（発効せず） 1978年の議定書（各付属書ごとに発効） 1997年の議定書 6 関係国内法 海洋汚染等及び海上災害 の防止に関する法律 7 安全運航への取り組み 8 ISMコード（国際安全管理コード） 9 ISMコード（国際安全管理コード） ブリッジ・リソース・マネージメント 10 ISMコード（国際安全管理コード） ブリッジ・リソース・マネージメント 海賊問題と対処活動 11 ISMコードとは International Safety Management Code 1993年に採択された船舶管理に 関する規則集 12 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 13 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 14 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 文書管理 15 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 文書管理 工程管理 16 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 文書管理 工程管理 検査・試験 17 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 文書管理 工程管理 検査・試験 不適合品の管理 18 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 文書管理 工程管理 検査・試験 不適合品の管理 是正・予防措置 19 SOLAS条約の一部、第９章 経営者の責任 品質システム 文書管理 工程管理 検査・試験 不適合品の管理 是正・予防措置 教育・訓練 20 会社は、船長の責任を明確にし、文書化 しなければならない マニュアル化 21 安全管理方針 陸上管理用 船上管理用 規程 規程 手順書 手順書 チェックリスト等 チェックリスト等 22 ブリッジ・リソース・マネージメント とは何か？ 23 ブリッジ： 船橋（操舵室） リソース： （人的）資源 ＝ 乗組員 マネージメント： 管理 ２０１０年改正のSTCW条約（船員の訓練及び資格 証明並びに当直の基準に関する国際条約）で訓練 要件に入っている。 24 船は一人で操船（操縦・運転）しない 入港前など、交通の輻輳する海域では、 複数体制 船長、航海士、操舵手 ＋ 水先人 25 トップダウンの文化 26 ヒューマンエラーを排除するには、 意図の伝達、確認が必要 27 ヒューマンエラーを排除するには、 意図の伝達、確認が必要 エラー・チェーンを断ち切る 28 一つのエラーで大事故に つながるリスクは低い 29 30 テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故 （テネリフェの悲劇） 1977年、2機のジャンボ機が衝突して 583名が犠牲となった航空事故 31 Wikipedia 32 この事故を受けて、航空業界では コックピット・リソース・マネージメント （ＣＲＭ）を導入 ＣＲＭのコンセプトを基に海運業界 でもＢＲＭを導入した 33 現在でも海賊はいる 34 どこで出没しているのか？ 海賊が多い海域は？ 35 南米北岸 地図① 36 インドネシアとマレーシア 地図① マラッカ海峡 シンガポール 37 世界の主な海賊行為発生海域 地図① 38 西アフリカ沖（ギニア湾） 地図① ナイジェリア 油タンカー積出港 39 ソマリア沖（アデン湾） ホルムズ海峡 地図① スエズ運河 40 アデン湾を航行する船舶 年間延べ２０,０００隻 うち日本関係船は１０％程度 41 世界の主な海賊行為発生海域 地図① 42 襲撃（未遂） 武器（火器）の使用 乗り込み（窃盗行為） 人質（身代金要求） 43 現代の海賊はどんな姿？ 44 Wikipedia 45 実際の海賊は （アデン湾・ソマリア沖の海賊参考写真） 襲撃時に使用される小型船 写真：BBC、トレードウィンズ、フェアプレー 46 対策は？ 自衛手段 進入防御 武装警備 日本籍船は制約が多い 自衛隊による護衛活動 47 ガンネル・スパイク レザーワイヤー 48 船橋シールド用フェンス 船尾からの放水 対ロケットランチャー・フェンス 船橋側面に積まれた土嚢 49 シタデル（CITADEL） 50 P-3C哨戒機 護衛活動中の自衛艦 51 環境問題への配慮 52 船舶が影響を及ぼす環境問題とは？ 53 海洋汚染 54 海洋汚染 大気汚染 55 バラスト水条約 56 バラスト水とは？ 船体の姿勢制御や復原性確保の ためにバラストタンクに 積載される海水 57 バラスト水 貨物艙（カーゴ・ホールド） 58 貨物艙（カーゴ・ホールド） 59 60 バラスト水 61 1980年代にオーストラリアで急激に数を増した麻痺 性貝毒原因種の無殻渦鞭毛藻を餌にした養殖貝に 毒が蓄積され、住民が貝毒の被害にあった。 62 1980年代にオーストラリアで急激に数を増した麻痺 性貝毒原因種の無殻渦鞭毛藻を餌にした養殖貝に 毒が蓄積され、住民が貝毒の被害にあった。 原因は船舶のバラスト水 63 1980年代にオーストラリアで急激に数を増した麻痺 性貝毒原因種の無殻渦鞭毛藻を餌にした養殖貝に 毒が蓄積され、住民が貝毒の被害にあった。 原因は船舶のバラスト水 なぜ？ 64 バラスト水を取り入れる際に海洋微 生物も一緒に取り込むことになる 取り込んだバラスト水は、違う国で排出される その際に、海洋微生物も一緒に排出される ２０万トンクラスバラ積船の場合、６万トンもの バラスト水を排出 65 66 豪州、米国ほかの独自の規制 国際条約化の必要性 ２００４年にバラスト水規制に 関する条約が採択 67 どうやったら防げるのか？ 68 どうやったら防げるのか？ ① バラスト水を排出しない（一部の船では可能） 69 どうやったら防げるのか？ ① バラスト水を排出しない（一部の船では可能） ② バラスト水を張り替える 領海から２００海里以上（排他的経済水域外） 水深２００メートル以深の海域 70 どうやったら防げるのか？ ① バラスト水を排出しない（一部の船では可能） ② バラスト水を張り替える 領海から２００海里以上（排他的経済水域外） 水深２００メートル以深の海域 ③ バラスト水中の生物を死滅させる 71 どうやったら防げるのか？ ① バラスト水を排出しない（一部の船では可能） ② バラスト水を張り替える 領海から２００海里以上（排他的経済水域外） 水深２００メートル以深の海域 ③ バラスト水中の生物を死滅させる ④ バラスト水処理装置を搭載 72 ホットな話題？ 発効条件 条約批准国が３０か国以上かつ全世界の船腹量の ３５％に達した時点から、１年後に発効される。 ２０１６年６月現在で、３４．８６％ 73 ホットな話題？ 発効条件 条約批准国が３０か国以上かつ全世界の船腹量の ３５％に達した時点から、１年後に発効される。 ２０１６年６月現在で、３４．８６％ フィンランドの批准で発効条件をクリアか？ 74 条約が発効すると・・・ バラスト水処理装置の設置が強制化される 75 海洋汚染防止条約 （MARPOL条約)の 規則改正 大気汚染の防止 76 船の燃料は？ 77 重油 78 ＬＮＧ （液化天然ガス） 79 － １６２℃ １／６００ 80 船舶の機関は、ディーゼル機関 （大型トラックと構造は同じ） 81 82 トラック何台分？ （馬力での比較） 自動車船： ５４台 コンテナ船： ２１６台 大型トラック ＝ ３６０馬力で換算 83 CO2排出量対比表 g/ton x km Source: NTM, Sweden 84 燃料（重油）に含まれる硫黄分を規制 硫黄分の少ない燃料油の使用 → コスト高 脱硫装置の設置 → 高額な装置 85 早ければ２０２０年から 条約が強化される 問題点 低硫黄分の燃料の供給量 脱硫装置の設置 → 間に合うか？ コスト・アップ 86 環境に配慮した船舶 （省エネ船） 87 「泡」で省エネ『空気潤滑システム』搭載船 7千台積載、最新省エネ技術の「アリエス・リーダー」 空気潤滑システムを搭載した モジュール運搬船を下から見たイメージ図 ブロア方式で平均約6％のCO2排出量削減が確認され、 主機掃気バイパス方式では約4～8％のCO2排出量削減が期待されている 日本郵船HPより 88 省エネ船 「EMERALD ACE」 太陽光発電システムと大型リチウム電池を 搭載し、停泊中ゼロエミッションを実現可能 786枚の太陽光パネルを船体最上部に搭載 商船三井HPより 89 省エネルギー □ 自動過給機カット装置（主機） □ 風圧抵抗軽減デザイン □ 低摩擦塗料の採用 □ 船体大型化による輸送効率アップ □ 高効率プロペラ 排気の浄化 □ NOx生成抑制装置付きエンジン □ SOxｽｸﾗﾊﾞｰ(大型排気ｶﾞｽ浄化装置） クリーンエネルギー □ 太陽光発電システム 川崎汽船HPより 90 ご質問はありますか？ 91
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