平成 15 年度国際開発協力関係民間公益団体補助事業完了実績報告書 補助事業の成果 1. 補助事業の名称: 2. 事業対象国・地域: 3. 事業実施期間: 4. 事業成果: 11. 事業促進支援事業 バングラデシュ国 平成 15 年 6 月 1 日 (2) プロジェクト評価支援 ガザリア郡 ~ 平成 15 年 9 月 30 日 AMDA は、1999 年より、バングラデシュ国ガザリア郡において、マイクロクレジット事業、職業 訓練事業、保健衛生事業の 3 つから成る地域総合振興事業を実施した。過去 4 年間の各事業の目 標達成度や効果について評価し、必要に応じ活動の軌道修正を図ることを目的として、本年度 6 月から 8 月にかけて評価調査を行った。 本評価調査では、アンケートによる面接調査、参加型農村調査(Participatory Rural Appraisal) 、フ ォーカスグループ・ディスカッション等の参加型手法を用いて情報収集を行った。その上で得られ た情報を目標達成度、効果、妥当性、効率性、自立発展性の観点から整理し、総合評価としてま とめた。 4-1. マイクロクレジット事業の総合評価 プロジェクト実施地域は川に囲まれ陸路での移動が困難という地形的条件から、受益者の増加は 当初の計画通り順調に進まず、現在の受益者数は 2,000 名程度(内 97%が女性)である。また、 多くのより貧しい女性が対象となるための工夫が充分でなかったため、「貧困女性の融資へのア クセス向上」という目標の達成度は必ずしも高いとは 言えない。 アンケート調査の結果からは、融資を受けて以降平均 月収を 1,000Tk.(2,060 円)以上増加させた世帯が 6 割以上に達し、「受益者の収入向上」に対してはある 程度の効果があったと判断される。一方、社会開発面 での効果については、受益者と家族の関係が改善され るなど目に見えにくい効果はあったと判断されるも のの、「女性のエンパワメント」についての顕著な効 果は確認することができなかった。 ベン相関図を作成する PRA 参加者の様子 1998 年、洪水の被害を受けた後、ガザリア地域住民 は経済や生活の復興のために現金を必要としていた。 そのため、1999 年のマイクロクレジット事業開始当初は、融資が地域や住民の家屋の再建や家業 の復興、新規ビジネスの開拓に大いに役立ったと判断される。しかし、住民の生活が安定するに つれて、貧困度や職業など異なる背景を持つ人々の中での生活・環境のニーズも多様化し、当事業 はそれらのニーズを的確に把握することができなかったと反省される。 現地職員の中には社会開発活動に携わって日の浅い者が多く、円滑な事業運営が軌道に乗るまで に多くの時間が費やされた。しかし、2002 年 8 月以降は、現地採用職員に対するプロジェクト運 営手法などについての訓練や役職・体制変更が集中的に行われ、職員の日々の活動や情報・記録管 理、職員間のコミュニケーションの効率性は高まっている。 -1- また、マイクロクレジット事業は独立採算が可能な段階にまで達しており、自立発展性は高いと 判断される。 4-2. 職業訓練事業の総合評価 2002 年度は合計で 106 名の訓練生が受講(内女性は 57 名)であり、途中退学したものは 2 名に とどまった。今年度の受講者総数も 100 名(内女性は 35 名)を数え、出席率もすべてのコースに おいて 95%以上を維持している。「地域住民への職業能力向上」という目標の達成度は高いと判断 される。 卒業生の就業率は実質的には 70%%を超えており、また、女性の就業率も 60%%を超える。今回 面接対象者とならなかった 30 名以上の卒業生についても、ダッカや外国での就業を達成している との報告があり、受益者の就業率向上への効果は全般的に高かったと言える。 しかし、本事業は、「マイクロクレジットの貸し付けのみではなく、技術的なサポートを行うこと により、住民の就業率や収入向上に結び付けていこう」という意図をもって開始されたものの、 職業訓練の受益者のうち、マイクロクレジット事業受益者は数名しかおらず、事業計画の内容吟 味が十分でなかったと考えられる。 職業訓練の講師は、政府の職業訓練所などでも講義を行っていた経験のある質の高い講師陣がそ ろい、また、総務会計職員も社会開発活動の分野での経験のある者が採用されており、事業運営 は円滑に進められている。職業訓練の運営は一部訓練所の収入からも賄われており、費用対効果 は高く、全体として効率性は高い。 職業訓練事業の自立発展の見込みは、今後も多くの受講生を集められるか、訓練所で作成してい る製品のマーケット開拓を進められるかの 2 点にかかっているが、これらの課題は職業訓練の質 の改善と密接に結びついており、今後も引き続きコース内容や訓練手法の改善に取り組む必要が あると思われる。 4-3. 保健衛生事業総合評価 2002 年 6 月までに実施された保健衛生教育は、細かい ニーズ調査を行った上で目標を設定し、活動計画を立 てる、というプロセスを踏まなかったため、住民の健 康状態の改善や衛生に係る行動変容など、具体的な効 果を測りがたい活動内容となっていた。その反省に基 づき、2003 年以降保健衛生事業の活動内容を大幅に改 善した。その後の効果を測ることは現段階では時期尚 早と思われるが、ヘルスセンターにおける医療活動、 地域保健事業ともに、徐々に軌道に乗りつつある。今 後は、活動の質を一層高め、目に見える効果に結びつ く事業運営を心がけることが望まれる。 予防接種の様子 保健衛生事業の財政的自立発展性は、患者数の増加が 鍵であるが、これについては事業の質が大きな影響を 与えると思われる。担当職員の能力向上及びサービスの改善により患者数は増加すると予測でき、 独立採算を達成することも可能であると判断される。技術面での自立発展性については、職員の 能力向上及び意欲向上が今後も重要課題のひとつである。 4-4. 課題と提案 ガザリア郡地域総合事業の反省点の第一は、ターゲットが絞りきれず、異質なターゲットグルー -2- プにそれぞれ適正なアプローチをとれていなかったことである。ターゲット別に異なるニーズに 対応できるように、融資の方法やサービス内容の幅を広げていく必要がある。 第二に、本事業をより効果のある事業へと改善していくために、各事業を融合させ相乗効果を上 げていくべきであると考える。現在は、3 つの事業の活動計画は事業部署ごとに立てられており、 それぞれ独立した事業の運営が可能になっているというメリットはあるものの、事業間の協力・ 連携体制が脆弱である。各事業の連携を強め、各部署間で受益者の情報を交換しつつ、受益者の 状況や地域環境の改善により総合的なアプローチがとれるよう心がけるべきであろう。 5. 会計報告 経費区分 調査員派遣旅費 調査員人件費 報告書作成費 事業管理費 計 総事業費 補助金確定額 自己資金使用実績 416,775 915,500 240,000 42,297 360,000 400,000 225,000 - 56,775 515,500 15,000 442,297 2,014,572 985,000 1,029,572 (単位:円) -3-
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