【肝臓の病気】 肝臓には痛みなどを感じる神経がありません 全国健康保険協会ホームページより転載しました 平成 26 年 04 月 01 日 肝臓の役割とおもな病気 ●肝機能障害を引き起こす原因 肝臓には、私たちの体に欠かせない重要な働きがいくつかあ り、その働きは大きく 3 つに分けることができます。1 つは 「代謝」といって、食べものからとった栄養素を体で使える かたちに変えたり、貯蔵、供給したりする働きです。2 つ目 はアルコールや薬、有害物質などを分解して無毒化する働 き、3 つ目は腸内での消化吸収に必要な胆汁という消化液を つくる働きです。 これらの肝機能が障害を受ける病気、すなわち肝臓病をおも な原因別に見てみると、ウイルス性のもの、アルコール性の もの、薬剤性のものなどがあります。 ●病状の経過によって 3 つに分類される「肝炎」 肝臓病の多くは、ウイルス感染やアルコール、薬物などにより肝細胞が破壊される肝炎で す。肝炎を病状の経過や進行具合によって分類すると、 「急性肝炎」 「慢性肝炎」 「劇症肝炎」 の 3 つに分けることができます。 急性肝炎 肝炎の初期段階で急性に発症しますが、原因となるウイルスや薬物などが短期間で排除さ れ、肝細胞の破壊も短期間で終息します。 慢性肝炎 原因となるウイルスや薬物が排除されず、肝炎が 6 ヵ月以上にわたって持続(慢性化)す るものをいいます。ただし、肝炎の種類によっては症状がないまま進行し、気づいたとき には慢性化していたという場合もあります。 劇症肝炎 急性肝炎が短期間で急激に悪化した状態をいいます。重症の場合は昏睡に陥り、死に至る こともあります。 ●肝臓病の末期的な症状「肝硬変」 肝硬変とは、慢性肝炎が長期化し、肝細胞の破壊と再生をくり返すうちに硬い組織が増え (線維化という) 、肝臓が硬く小さくなっていくものをいいます。肝硬変は多くの肝臓病の 末期的症状といえます。 肝臓病は、なぜ恐いの? ●自覚症状のないまま進行し、死にもつながる 肝臓には痛みなどを感じる神経がないため、障害を受けても肝臓そのものは自覚症状を現 しません。何らかの症状が現れたときには、かなり病状が進んでおり、治療には長い時間 を要することになります。 完全に肝硬変の状態になると、もとの健康な状態の肝臓に戻ることは極めて難しく、病状 が進行すると肝臓がんに移行したり、肝不全で命を落としたりすることもあります。 肝臓病の原因は? ●生活習慣が招く肝臓病 肝臓病のなかには、生活習慣の乱れが原因で引き起こされるものもあります。 お酒の飲みすぎによる「アルコール性肝障害」 アルコールによる肝障害は、急激に起こるものではありません。しかし、多量の飲酒を長 年続けていると、飲んだ量に比例して肝臓は障害を受けます。 アルコール性肝障害の最初の段階は、「アルコール性脂肪肝」です。脂肪肝とは、肝臓に脂 肪がたまった状態をいい、脂肪肝になると肝機能が低下します。さらに多量の飲酒を続け ていると「アルコール性肝炎」を発症し、劇症化して死亡するケースや、 「アルコール性肝 硬変」に進むケースがあります。 食べすぎや運動不足がもたらす「脂肪肝」にも要注意! 脂肪肝の原因は飲酒だけでなく、過食や肥満、運動不足などもあります。 お酒を飲まない人でも過食や肥満、運動不足などが原因で脂肪肝になり、こうした非アル コール性の脂肪肝のなかにも肝炎を発症するケースがあります。非アルコール性の脂肪肝 から発症する肝炎は、 「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」とよばれ、肝硬変へと移行し たり、肝がんを発症したりする場合もあります。過食や肥満のほか、糖尿病や脂質異常症、 高血圧を合併していると、NASH を発症する可能性が高くなるといわれています。 ■アルコール性肝障害、脂肪肝の危険因子 · 多量の飲酒 · 過食 · 肥満 · 運動不足 · 糖尿病 · 脂質異常症 · 高血圧 肝臓病を予防・改善するために ●危険因子は生活習慣の改善で減らすことができます アルコール性肝障害や脂肪肝には、生活習慣に潜むいくつかの危険因子がわかっています。 つまり、ウイルス性肝炎などとは違って、自らの意思で発症を予防できるということです。 お酒を飲む習慣のある人は、適量を守るようにしましょう。検査項目で γ- GTP が高値の人 は、飲みすぎが疑われます。日本酒は 1 合、ビールは中びん 1 本など、適量とされるアル コール摂取量におさえるようにします。さらに、GOT(AST)や GPT(ALT)も高値の場 合は、アルコール性肝炎が疑われるので、断酒が必要なこともあります。 お酒を飲まない人も、過食や運動不足などによる肥満は脂肪肝の原因となります。肥満を 改善するとともに、NASH の危険因子である糖尿病、脂質異常症、高血圧の予防・改善に つとめましょう。 また、健診で糖尿病や脂質異常症、高血圧を指摘されている人は、これらの病気の危険因 子を減らすとともに、病気を正しく治療することも大切です。 ■生活習慣改善のポイント · 飲酒は適量を守る · 過食をしない · 肥満を改善する · 動物性脂肪を控え、青魚などの魚を積極的にとる · コレステロールを多く含む食品を控える · 野菜・果物を積極的にとる · 適度な運動を習慣にする ●こんな検査でわかります 肝臓では、さまざまな酵素の働きによって代謝や解毒などの機能を果たしています。しか し、肝臓が障害を受けると、これらの酵素が血液中にもれ出したり、血液の成分が変化し たりします。そこで、血液の成分を調べることで、肝臓が正常に機能しているかどうかを 調べることができます。 肝機能を調べるおもな検査項目には、 「GOT(AST) 」 「GPT(ALT)」 「γ-GTP(γ-GT)」 「ALP」 のほか、「総蛋白」「アルブミン」「総ビリルビン」「LDH」などがあります。さらに、肝炎 ウイルスに感染しているかどうかを調べる検査として、 「HBs 抗原」と「HCV 抗体」があ ります。また、 「腹部超音波検査」では、脂肪肝の有無などがわかります。 各検査項目の詳細については、こちらをご覧ください。 <肝機能の検査項目> 肝機能等 平成 25 年 07 月 29 日 GOT(AST) 対象となる健診: / GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)は、AST(ア スパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とも呼ばれ、肝細胞をは じめ、腎臓や心筋(心臓の筋肉)の細胞内に多く含まれている酵素 です。この酵素はタンパク質を分解してアミノ酸をつくり、からだ の代謝がスムーズに行われるための重要な役割を担っています。し かし、肝細胞や心筋の細胞内で何かしらの障害が起こると、血液の 中に GOT が流れ出し、数値が高まります。 そこで、この数値を調べると肝機能障害や心筋梗塞などを見つける 手がかりになります。検査は血液を採取して血液中の濃度を測るこ とで異常の有無を調べます。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 35U/L 以下 要精密検査 50U/L 以上 基準値から外れた場合に考えられる病気 急性・慢性肝炎 アルコール性肝炎 脂肪肝 肝硬変 心筋梗塞 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 GPT(ALT) 対象となる健診: / GPT(グルタミン酸ピルビン酸 トランスアミナーゼ)は、ALT(アラニ ンアミノトランスフェラーゼ)とも呼ばれる肝細胞に多く含まれている酵 素で、GOT(AST)と同様にアミノ酸をつくり、代謝を助ける役割を担っ ています。肝臓や胆汁(肝臓が作る消化液)が流れる胆道に障害が起こる と敏感に反応し、血液中の数値が高くなります。 そこで、この数値を調べると肝機能障害を見つける手がかりになります。 検査は血液を採取して血液中の濃度を測ることで異常の有無を調べます。 また、病気の種類や程度は、検査結果ででた GPT と GOT の数値を比較し て検討します。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 35U/L 以下 要精密検査 50U/L 以上 基準値から外れた場合に考えられる病気 急性・慢性肝炎 アルコール性肝炎 脂肪肝 肝硬変 心筋梗塞 ※要精密検査、要治療診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※肝臓の病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 γ-GTP(γ-GT) 対象となる健診: / γ-GTP は、肝臓、腎臓、すい臓、小腸などに含まれている酵素です。 肝臓の機能にはアルコールや薬剤などを無害化するはたらきがあり ます。この無害化に重要なグルタチオンという物質のはたらきを、γ ‒GT という酵素が助けます。 お酒を飲み過ぎる人や脂肪分を多く食べている人は、数値が高くなり ます。また、胆石などで胆道が塞がり、胆汁(肝臓が作る消化液)が 流れにくくなると、血液中に γ ‒GT があふれ出てきます。 そこで、 この数値を調べると肝機能障害を見つける手がかりになりま す。 検査は血液を採取して血液中の濃度を測ることで異常の有無を調 べます。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 55U/L 以下 要精密検査 100U/L 以上 基準値から外れた場合に考えられる病気 アルコール過剰摂取 薬物摂取 肝臓病(アルコール性肝障害、薬剤性肝障害) 胆道の 病気(胆道炎、総胆管結石) ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※肝臓の病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 ALP 対象となる健診: ALP(アルカリフォスファターゼ)は肝臓や胆道、骨、小腸、腎臓 などに含まれる酵素です。普段は胆汁とともに排泄されますが、肝 臓障害や胆道の病気で胆汁が排泄されなくなると血液中にあふれ 出てきて数値が高くなります。 そこで、この数値を調べると肝機能障害を見つける手がかりになり ます。検査は血液を採取して血液中の濃度を測ることで異常の有無 を調べます。 また、骨や甲状腺に障害が起こっているときも数値が上がるので、 それらの病気の指標にもなっています。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 340U/L 未満 要精密検査 450U/L 以上 基準値から外れた場合に考えられる病気 急性・慢性肝炎 総胆管結石 胆管炎 骨肉腫 甲状腺亢進症 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※肝臓の病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 総蛋白 対象となる健診: 血液から赤血球などの血球成分を取り除いたものを血清といいま す。血清中には 100 種以上の蛋白が含まれ、それらを総称して総蛋 白といいます。 これら多くの蛋白を作っている肝臓の機能や、血液中のたんぱく質 を再吸収している腎臓の機能が低下すると、血清中の総蛋白量も低 下してしまいます。 そこで、この数値を調べると肝機能障害や腎機能障害を見つける手 がかりになります。検査は血液を採取して血液中の量を測ることで 異常の有無を調べます。 また、ウイルスによる感染や栄養状態を知る手がかりになります。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 6.5~8.0g/dl 要精密検査 6.0g/dl 未満 >9.0g/dl 基準値から外れた場合に考えられる病気 高値 脱水症 膠原病 感染症 低値 慢性肝炎 肝硬変 腎臓病 栄養障害 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 アルブミン 対象となる健診: アルブミンは、血清中の蛋白の半分以上を占めています。あらゆる病気 の原因で数値は減少しますので、アルブミンだけでは病気の特定はでき ませんが、その減り方の度合いから、病気の程度を調べるのに用いられ ます。 一般的には、異常値を示したとき腎機能障害や肝機能障害が疑われま す。検査は血液を採取して血液中の量を測ることで異常の有無を調べま す。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 4.0g/dl 以上 要精密検査 3.5g/dl 以下 基準値から外れた場合に考えられる病気 腎臓病 肝臓病 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 総ビリルビン 対象となる健診: ビリルビンは寿命がつきた赤血球が肝臓などで壊され、それをもと に作られる色素です。胆汁色素とも呼ばれ、胆汁の主成分となって います。 普段は胆汁とともに排泄されますが、肝臓障害や胆道の病気で胆汁 が排泄されなくなると血液中にあふれ出てきます。ビリルビン色素 が血液中に増えると黄疸になり体が黄色になります。 そこで、この数値を調べると肝機能障害を見つける手がかりになり ます。検査は血液を採取して血液中の濃度を測ることで異常の有無 を調べます。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 1.1mg/dl 以下 要精密検査 2.0mg/dl 以上 基準値から外れた場合に考えられる病気 急性・慢性肝炎 肝硬変 胆石症 黄疸 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※肝臓の病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 LDH 対象となる健診: LDH は肝臓、心臓、血液、骨格筋など、からだのほとんどに含まれ ている酵素で、体内のブドウ糖がエネルギーに変わるときに働きま す。 なんらかの原因で細胞がダメージを受けると血液中にあふれ出てき て数値が高くなります。 そこで、この数値を調べると肝機能障害や心筋梗塞などを見つける 手がかりになります。検査は血液を採取して血液中の濃度を測るこ とで異常の有無を調べます。LDH が異常値を示したときには、他の 検査項目の結果と総合して異常個所を特定します。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 230U/L 未満 要精密検査 350U/L 以上 基準値から外れた場合に考えられる病気 急性・慢性肝炎 肝硬変 心筋梗塞 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 ※病気の詳しい内容は「気になる病気辞典」をご覧ください。 アミラーゼ 対象となる健診: アミラーゼはでんぷんなど糖類を分解する消化酵素で、すい臓、唾液腺、 耳下腺から分泌されています。 膵臓や唾液腺に障害があると、アミラーゼが血液中に出てくるためすい 臓の病気や唾液腺に異常が起きていると考えられます。 そこで、この数値を調べると膵臓の機能障害などを見つける手がかりに なります。検査は血液もしくは尿を採取して血液中もしくは尿中の濃度 を測ることで異常の有無を調べます。 ※生活習慣改善については、こちらをご覧ください。 基準値 50~200 要精密検査 50 未満 >250 基準値から外れた場合に考えられる病気 高値 急性・慢性すい炎 膵臓がん 耳下腺炎 慢性腎不全 低値 重度の糖尿病 ※要精密検査、要治療と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。 <出典>全国健康保険協会船員保険部の HP「気になる病気辞典」より転記(2012.8.8)
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