流通科学大学卒業論文 崔 相鐵 ゼミ マーケティング

流通科学大学卒業論文
崔
相鐵
ゼミ
マーケティングにおける色彩と購買意欲の関係
37010263
妹背亜希子
35011718
宮本伴美
提出日
2004.12.18
「マーケティングにおける色と購買意欲に関する研究」
妹背・宮本
構成内容
Ⅰ.はじめに
なぜ色彩マーケティングを調べようと思ったか
Ⅱ.カラーマーケティングと色の働き
1.カラーマーケティングとは
2.色のイメージ
3.商品サイクルと色彩
① 食品パッケージの例
② CI(企業理念)などのイメージ構築に使われる例
③ イメージの差別化の例
Ⅲ.時代背景と色
1.時代背景と色の移り変わり
(1)カラフル志向を転換させたオイルショック
① マイカー時代の幕開けとボディーカラー
② 高度成長期の色彩意識
③ 公害問題とカラートレンド
(2)成熟化が促進させた無彩色志向
① パーソナル志向とヤングのカラートレンド
② 高級志向とカラートレンド
③ バブルカラーとカラートレンド
④ ポストスーパーホワイトのシルバー系
⑤ ホワイトの復活
(3)近年のクルマのカラーデザイン
Ⅳ.流行色
1.流行色とは
(1)JAFCA
(2)流行色が決まるまで
(3)インターカラーの重要性
2.自然発生流行色
(1)自然発生流行のメカニズム
(2)身近なところで生まれる流行色
Ⅴ.色に関する実証研究
1.色彩は無言のセールスマン
2.心理状況と求める色彩の変化
3.私たちの見解
Ⅵ.結びに
<参考文献>
Ⅰ.はじめに
われわれの暮らしは様々な色に囲まれている。あまりにも当たり前の存在として色があ
るためにその重要性を強く認識することは少ないかもしれない。しかし、たとえば果物、
魚肉、野菜といった食品の鮮度をその色合いによって判断していることが多い。また、簡
単に行っている信号機の赤と青の区別も白黒の世界では判断が容易ではない。色の違いが
わかるということ一つとってみても、色が生活の中でどれほど大切かがわかる。
また、色は、われわれが感じる美感にも大きな影響を与える。あるものが美しい、醜いな
どといった美的な評価や、生活のなかでそのものにふさわしい色であるか否かなどはその
事例である。色のこのような働きにより、好きな色と嫌いな色、心地よい色と不愉快な色
が生まれたり、色の違いによって商品の購買意欲が大きく変わってしまうということがお
きるのである。実際に人間の五感のうち見て買う視覚の認識が87%、聴覚が7%、触覚
が3%、嗅覚が2%、味覚が1%と視覚は他の感覚器を大きく引き離し購買と深く関わっ
ていることがいえる。
また、企業においては「色彩デザイン」「商品開発」「生活重視」「人にやさしい」などとい
う言葉が語られない日はないほど企業の経営理念は変化してきている。この変化の要因の
一つ目は消費者の欲求の変化、価値の多様化、生活意識の変化であり、二つ目は製品市場
の飽和、三つ目は企業間の技術レベルの平均かが挙げられる。経済高度成長期における大
量生産、大量販売、大量消費の時代にあたっては、消費は美徳という言葉のとおり使い捨
てがおこなわれ消費者の物的欲求を充足させてきた。しかしながら昭和48年の第一次オ
イルショックを契機としてこれが見直され、消費者も「資源の枯渇」「環境破壊」「環境汚
染」などに関心を持ち出し、消費者も自分の生活の見直しとともにその欲求も「物的欲求・
物質的豊かさへの欲求」から「精神的欲求・精神的豊かさへの欲求」へ、すなわち「モノ
による生活の充実」から「ココロの安らぎ、ゆとり、快適性などによる生活の充実」を求
める欲求へと変化してきだし消費者から生活者へと変化してきた。
またこの生活者の価値観も多様化し「モノを所有することに価値」をもとめていた時代
から「モノを使用することに価値」を求めて時代へ変化してきているこのことはモノが不
足していた時代に「モノの充実」を求めていたことが、大量生産、大量販売によって満た
され、生活者はモノの機能性、経済性、安全性などという基本的価値観に加えて、快適さ、
温かさ、楽しさなどという二次的価値をも含めて自分の生活設計にあわせて「自分に必要
なモノ」を購入するようになってきたことによる。しかし、企業が存続していくためには、
企業は「生活者が何を求めているか」をその課題として次々とモノを生産しなければなら
ず、このため製品市場にはさまざまな商品があふれ、飽和状態となってきている。
技術に目をむければ、昨今の科学・技術の急速な発展、マイクロエレクトロニクス技術
の普及などによる企業間の技術レベルの平均かによって各企業の製品の機能に差がみられ
ず、企業は他社と差をつけるために「色彩」や「デザイン」によって優位に立とうと考え
出してきた。このように今日の企業にあたっては、技術をいかに人間生活に活用すれば良
いかという製品企画・計画に係わる部分に「色彩」や「デザイン」が期待されだし、これ
までの「生産重視」から「生活重視」へ、「技術優先」から「デザイン優先」「付加価値優
先」へと企業の理念を変化してきて、企業の経営資源である「ひと・かね・もの」に加え
て「色彩デザイン」も経営資源といわれるように「色彩デザインのはたらき」は無視でき
なくなってきている。
Ⅳ 流行色
1
流行色とは
流行色とは国際流行色委員会が予想した流行色と、社会背景、政治などから自然発生す
る流行色の2つが挙げられる。
(1)JAFCA
流行色とはインターカラー(国際流行色委員会)で世界の加盟国代表(2004 年 6 月現在、
オーストリア、中国、コロンビア、チェコ、イギリス、フィンランド、フランス、ハンガ
リー、イタリア、日本、韓国、ポルトガル、 スイス、トルコの14カ国)が集まり、ワー
ルドレベルで実シーズンの2年前のカラートレンドを選定する。日本からインターカラー
の会議に出席しているのは日本流行色協会(通称 JAFCA)だけである。
JAFCAとは生活のあらゆる分野での流行色を予測し、発信している日本で唯一の公
益法人の色彩情報機関である。会員制度をとっており、流行色情報は会員になれば個人で
も企業でも、誰でも手に入れることができる機関となっている。
日本流行色協会の創立は 1953 年(昭和 28)。設立のいきさつとしては、当時の日本は戦後
経済が立ち直りかけてきて、国内産業や貿易産業が伸展し始めようとしていた時期にあた
る。 しかし、街中には未だ粗悪で好き勝手な色が溢れていたため、こうした色を改善する
グッドテースト運動を起こそうということと、また先進国である欧米の色彩嗜好や色彩傾
向を研究し、それを輸出製品の色に反映していこうという 2 つの趣旨からはじまった。
(2)流行色が決まるまで
流行色が選定されていく流れを説明すると、まず、実シーズンの 2 年前に先に述べた「イ
ンターカラー」の情報が選定される。その情報をもとに、実シーズンの 1 年半前に、JA
FCAの専門委員によって色選定会議委員会が開催され、そこで国内市場に向けたトレン
ドカラーである「JAFCA カラー」が選定され、会員に向けて発表される仕組みとなってい
る。専門委員は実際に企業や業界の中で色彩を専門としている担当者(メーカーの企画担
当、マーケティング担当、デザイナー、バイヤーなど)に、委嘱している。 そしてJAF
CAのカラー情報を受け取ったメーカーが、それぞれに自分の作るものにあった色をその
中から選んで商品に使い、店頭に並べられ消費者の手元に届くことになっている。商品の
作り手は、JAFCA の選定したカラーの意図や傾向をくみ取りながら、実際に商品化するの
で、トレンドカラーをアレンジして様々に表現されたものとして、店頭に登場する。
ここで注意しておかなければならないのは「インターカラーとは未来を志向し、市場を
動かすと予想される色であって現在流行している色ではない」ということである。簡単に
言えばインターンカラーの流行色とは流行ではなく一種の経営戦略といえよう。 下記はイ
ンターカラーを元に流行色が決定するまでの流れである。
2 年前・・・
インターカラー(国際流行色委員会)
色彩動向調査
暮らしのトレンド
選定色と加盟各国の提案色
JAFCA 専門委員会(JAFCA から委託した業界の識者で構成)による色選定会議
JAFCA カラー選定
1年半前・・・
JAFCA 会員に情報発信
商品企画
商品化
実シーズン・・・
生活者
A 段階(24∼18 ヶ月前)…日本を含む14カ国から2年後の景気や社会情勢を考慮して
持ち寄られた提案色から選定されるファッションカラー情報「インターカラー」(1963 年
発足)は年ニ回、春夏用と秋冬用が検討される。これは最も早く発表される流行色情報で
ある。日本の代表機関は JAFCA(日本流行色協会)である。
B 段階(18∼12 ヶ月前)…民間団体及び海外の情報会社が一斉にカラー情報を発表する。
これらの情報は男女の衣服やインテリアなどテーマ別のパレットが構成され、おおむねの
配色も提案される。また、この時期と多少前後しながら、ヨーロッパを中心に素材展が開
催される。ヤーン(糸)は、イタリアのピッティフィラティやフランスのエキスポフィル、
服地はイタリアのイデアコモやフランスのプルミエール・ビジョンや同じくフランスのイ
ンディゴなどがある。特にイタリアのパリで催される「プルミエール・ビジョン」は最も
早い時期に開催され、規模も大きいため注目度が高い。JAFCA ではアドバンスカラー選定が
行われファッションカラーが発表される。
C 段階(12∼6ヶ月前)…さらに JAFCA アドバンスカラー(上昇色)が発表され、日本国
内の紡績メーカーなどによるファッション・トレンド・ブックが発表される。国内で製作・
発表されるこれらの情報資料は日本のマーケットを意識して分析している面がある。さら
に各社で A・B 段階で把握した予測情報の軌道修正を行い、素材・デザイン傾向と合わせて
カラー情報を、それぞれの製品レベルに合ったカラー・パレットに落とし込んでいく。こ
の時期に VIEW ON COLOR (オランダ・イギリス)・INTERNATIONAL TEXTILE(オランダ・イ
ギリス)・日本繊維新聞・繊研新聞など業界紙・業界新聞で発表される。
D 段階(6 ヶ月前∼実シーズン)…サロンドプレタポルテ(フランス)IGEDO(ドイツ)
東京ファッションウィークなどのアパレル展示会やパリ・ミラノ・ニューヨーク・ロンド
ン・日本でデザイナーズ・コレクションが発表され、業界・一般向けの『ヴォーグ』、『エ
ル』、『マリクレール』、『モードエモード』、『流行通信』などのファッション雑誌、
そして『アンアン』、『ノンノ』・『モア』・『ジェイジェイ』などファッションを中心
とした女性一般誌やマスコミによって消費者にもファッション情報が作品として伝達され
る。
(3)インターンカラーの重要性
供給者側からみると流行色委員会のような機関が流行色を予測することで商品企画や在
庫管理がしやすくなり商品カラーの需要が高いときに売ることができる。また、流行色は
早くに察知し、少量つくり、売り切ってしまわなければならない。大量に作りすぎると来
シーズンにはタダでも欲しがらないというリスクがあるからだ。このようなことを考えて
販売計画を立てる上でも流行色を知ることが重要だといえよう。
また、流行色委員会のようなノウハウがないまま各社各様に流行色のマーケティングを
展開すればマーケットには様々な流行色が氾濫する。これは流行色の存在を打ち消すよう
なもので各社が互いに刺し違えて共倒れするということになりかねない。
さらに、人間の心理として、新しいモノを見ると興奮する作用がある。流行色は基本的
に今まであまり見かけない色であることが多く、現在市場にあふれていない色で目新しい
魅力を与え、一般消費者の欲を刺激して新しい商品を買ってもらおうとする、購買意欲を
促すことにつながるのである。
2
自然発生流行色
(1)
自然発生流行のメカニズム
私たち受け手としての消費者は、なぜ多くの色を自由に手に入れることができるのにもか
かわらず、流行色に縛られているのだろうか。ここでは消費者の立場に立って考えてみる。
社会心理学の立場で考えてみると、一般に流行採用の動機として同調とその対極にある差
異化とを取り上げることができる。すなわち、自分だけ他人に先駆けて新しいファッショ
ンを着用したいと考える人は、初期にファッションを採用し、独自性を満たす。一方、同
調性欲求の強い人は、流行が広まってきたところに、自分だけ取り残されるのを恐れてこ
れを採用するのである。前者はイノベーダ−、後者はフォロワーと呼ばれる。また、流行
し始めたファッションが良いものであると主張するオピニオンリーダーの存在も伝播に影
響を及ぼす。 イノベーションの伝播研究のなかで「個人によって新しいと知覚されたアイ
デア」をイノベーションと定義し、社会のメンバーがイノベーションを採用していく時間
的な遅速によって彼らを次の理念型として 5 つの採用者カテゴリーに分類した。
革新者(innovators) 新しいアイデアや行動様式を最初に採用する人々である。彼ら
は社会の大部分のメンバーが新しいアイデアや行動様式を採用しない前に採用に踏み切る。
したがって、彼らは社会の価値からの逸脱者であり、冒険者である。( 5つの採用者カテ
ゴリーに分類したとき革新者は全体の2.5%)
初期採用者(early
adopters) 彼らは進取の気性に富んでいるが、革新者に比べて社
会の価値に対する統合度が高く新しいアイデアや行動様式が価値適合的であるかどうかを
判断したうえで採用する。社会の平均メンバーと革新者ほどかけ離れてはいない。そのた
め彼らは最高度のオピニオン・リーダーシップを発揮する。(13.5%)
前期追随者(early
majority) 彼らは社会体系において、平均メンバーが採用する直
前に新しいアイデアを採用する。その点では、社会での新しいアイデアや行動様式の採用
を正当化する機能を果たすが、完全に採用するに至るまで、慎重に行動する。(34%)
後期追随者(34%)(late majority) 彼らは社会の平均的メンバーが採用した直
後に採用する。彼らは新しいアイデアの有用性に関して確信を抱いても、採用へと踏み切
るためには、さらに仲間の圧力によって採用を動機付けられることが必要である。大勢順
応型である。 (16%)
遅滞者(laggards) イノベーションを最後に採用する人たちで、彼らの大部分は孤立
者に近い。彼らは伝統志向的で、鏡に映る過去に注意の目を固定している。(16%)
この類型は、農村における農業技術革新の普及に関連して考えられた類型である。しか
し、流行はある段階を経ながら普及している。このことは、新しい様式が社会のメンバー
に同時に採用されるのではなく、順々に採用され、だんだんとそれが社会で広まることを
意味している。したがって、流行の採用者を、時間の経過につれて分類したこの理念系を
当てはめることは可能だといえる。流行はその展開過程の口火を切る革新者に始まり、次
の新しい流行に点検を下し、潜在的採用者のモデルの役割を果たす初期採用者へ、さらに
流行を正当化し、流行の展開を決定付ける役割を果たす前期追随者に至るまでさまざまな
役割を演ずる層によって担われている。その結果、流行は時間の経過とともにその規模は
拡大し、社会の中に定着して行くのである。
さらに詳しく述べると、例えば2002年に流行したボヘミアンスタイルは「手作り感
がある」とか、「皮が使われている」「ベージュと赤が多い」といった共通性が人気デザ
イナーに見られた。すると流行をニュースとして先に伝えたいメディアは「ナチュラル・
ボヘミアン」といったタイトルをつけて次の兆候をくくることとなる。そして印象的であ
った作品の中からその言葉にぴったりの服を写真で紹介するのである。(この場合の革新
者が人気デザイナーやマスメディア)
その情報を得一部のメーカーはそのデザインを少し真似た形でトレンディーなものを作
り出す。そして「新しい物好き」の消費者も「次はナチュラルボヘミアンで手作りで皮付
きで赤とベージュだな」とインプットして、それを雑誌や売り場で探したい行動に駆られ
るのである。ここではすでに見たファッションショーの様子や雑誌の写真が肯定的に記憶
に残っている。だから同じような商品を見つけると喜んで買ってしまうのだ。(新しい物
好きの消費者がここでの初期採用者)やがてちらほら新しいスタイルの人を町で見かける
ようになるとそれが刺激となって「私も欲しいと思う人」が追随する(前期追随者)
そのあとから「皆が着ているから」買いたい人が仲間入りするのである(後期追随者)
このころになると市場では手作り、皮つき、ベージュと赤は市場で大量に出回り値段もも
っと下がってくる。最後に売り場に沢山あって目立つ色に惹かれ「安かったから」と自分
を納得させる人が加わるのである(遅滞者)
こうして考えると、いつでも新しいものが欲しい人、皆と同じ物が欲しい人、安いもの
が欲しい人の合作で「流行」が作られていることがわかる。おかげでデザイナーは売りた
いものが売れ、マスメディアも情報を売ることに成功したのだ。そして消費者は「私はセ
ンスがいい」「私は皆と同じだ」「私は賢い」というそれぞれの満足を手に入れたわけで
ある。このうれしい経験が流行を追いかけるエネルギー源となるのだ。やがて全員の関心
ごとは「次は何色?」となっていき、繰る返されるわけである。
(2)身近なところで生まれる流行色
流行色が生まれる過程として人気のあるモノ、コトと世の中の注目される出来事が重要
になってくる。人気のあるモノ、コトは5つの採用者カテゴリーのような動きがおこる。
近年ではパールカラーが化粧品や婦人雑貨で人気となった1999年、携帯電話のシャン
パンゴールドが発表され、その後のヴィッツなどの光沢ある色彩ブームにつながる。
世の中の注目される出来事では政治、経済、社会面、景気、イベントなどの時代背景も重
要になる。環境問題が本格的にクローズアップされ始めた89年には生成のエコロジーカ
ラーがトレンドとして登場した。バブルの頃はボディコンに鮮やかなビビットカラーが人
気を得た。また、2001年同時多発テロ事件によりエッジの効いた黒から一気にロマン
ティックボヘミアンの白やナチュラルに転換しました。ワールドカップの前後は勧告の
「赤」日本の「青」が注目されたことは記憶に新しいだろう。
世の中の出来事を注意してみると規模の大小はあるものの流行色のルーツは意外なところ
にあったりする。
Ⅴ.色に関する実証研究
上記で「色彩の働き」というものを述べてきた。色がマーケティングと購買意欲の変化
において発揮する役割を次のようにまとめる。
1.「色彩は無言のセールスマン」
人は沢山の情報を素早く処理して決断し、行動できるように「単純化して覚える」習性
を持っている。そして単純なモノほど覚えやすいので自分にとって楽な、良い、情報を肯
定的に受け止めやすいのである。そればかりか単純化して記憶した情報は記憶の再生もス
ムーズで思い出しやすいという特徴をもっている。この単純化して覚えるという行動に「色
彩」は大きな役割を果たすのである。
色彩は商品の特徴や、イメージ、何を売りにしているかなどというコンセプトを明確化
にしており、それにあわせたカラーで消費者に強いイメージを与えている。そのため消費
者は数多くある商品のなかから自分自身のライフスタイルにあった色彩を自由選択(フリ
ーダムチョイス)することにより、ほしいモノを手に入れやすくなるのである。
また、色彩は商品そのものにイメージという付加価値をもたらすものであるからパッケ
ージにも買うに当たるポイントとなるのである。パッケージデザインやロゴマークにおい
て色彩は自社商品を他社商品よりもアピールするための「差別化」としても使われている。
元気さと健康のイメージである「赤のコカ・コーラ」に、爽やかさ、爽快さのイメージで
ある「青のペプシコーラ」が戦いを挑んだのが良い例である。
コンセプト、イメージに加えコーポレート・アイデェンティティーまでも雄弁に語って
いるのである。
2.心理状況と求める色彩の変化
人は誰でも心の安定を求めて色を選択する。
(色彩は無言のセールスマンで述べたパッと
見て商品内容がわかるというのは本能や経験に基づいて「食べられる」や「安全か」とい
う安心感からくる)すでに安定している人はそれを維持しようとして緑やベージュを求め
るのである。これは心を急激に変化させにくい色であるからだ。反対にイライラして怒っ
ている人はとりあえずそのイライラや怒りに対して違和感がない色を選んで自分と「色」
を同調させようとするである。赤を選んだ人はやがて赤によってなだめられるのである。
同じ人でも心が静かでハイテンションになれないときは静かな印象の「青色」に惹かれや
すくなる。
このように「人が心のボルテージにあった色を選ぶ」ということになる。心の変化と体
の変化が「求める色」を変えるわけだが、その心の変化や体の変化をもたらした原因は「環
境の変化」である。なかでも気温や湿度、日照時間の変化は影響力が大きい。また、生活
する場所や仕事の変化も大きな要因となる。そして対人関係の変化もストレスのレベルを
変え、求める色を変化させるのである。さらに経済情勢から、平和か戦争かといった世界
情勢まですべての出来事が人に影響を与え「求める色の性質」を変えていくのである。
しかしながら、「安定」を求めつつ対極にある「変化」を求めずにはいられないのが人間
である。安全と健康を求める本能が「安定」を要求する一方で目新しいモノを見ると興奮
作用をもたらし、「変化」を追うのである。この変化への追求はとどまることがない。これ
が流行のメカニズムにつながる原因であり、このメカニズムの波が売れる色と社会背景を
作り出すのである。色彩は時代背景や人々の願望が顕著に表れるものである。
3.私たちの見解
それでは、購買意欲を刺激し、購入したくなる色とは何色か?と考えたとき、出る答え
は次のようなことを考えなければならないと私たちは仮説をたてた。
まず、第一に商品の形容詞を考えなければならない。ここで伝えたいことを明確化し、
消費者に与えたいイメージを単色か2,3色で、記憶に残る色にすれば有効である。そして、
他社の同じ種類の商品と差別化を図るには対極の色を使うなどして眼にとまりやすい工夫
を入れると効果的である。これは食品や医薬品、生活消耗品などのパッケージに有効だと
考える。「色彩は無言のセールスマン」で述べた「ぱっと見て商品内容がわかる」というの
は本能や経験に基づいて「食べられる」や「安全か」という安心感からくるのである。さ
らにこれは消費者に安心や堅実といったイメージを与えるのだ。商品サイクルの変化の為、
デザインや色彩は若干変わるが大きな色彩イメージの変化は少ないであろう。
反対にクルマや携帯、服などはその人の嗜好や心理に大きく影響されるものである。今
まで以上に多種多様な色彩の商品が販売されるであろう。それぞれ一人ひとりの嗜好する
色を予測して販売することは不可能に近い。そこで流行色のように売れる色を予測し、一
種の経営戦略として色彩を使いこなす必要があるわけである。この流行色を予測する材料
となるのが社会情勢や景気、流行した娯楽やイベントが混ざり合い、流行色が生まれるの
である。それではこれからの流行色はどうなっていくかを考えてみよう。まず、私たちが
今年感じる社会的な出来事は新潟中越地震や台風などの自然災害。自衛隊派遣やイラク日
本人拉致事件などが挙げられる。色彩と時代背景で見てきたように景気の良い年や万博な
どの明るいニュースが多い時代には明るい有彩色が流行し、オイルショックや公害問題な
ど暗いニュースが多いときにはアースカラーや黒や白といった無彩色が流行した。このこ
とから考えるとこれからは色味の鮮やかでない色が流行となりうる。さらに目新しさも重
要となることに着目すると、2002年から03年にかけて、女性服飾流行色はロマンテ
ィックボヘミアンの赤やベージュ。2004年はピンクなど明るく華やかな色が好まれて
いた。明るい色から鮮やかでない色や黒や白といった無彩色は目新しさもあるはずである。
そこで私たちは2005年に好まれる色としてトーンの低い色つまり黒や茶色が好まれる
と予想する。
Ⅵ.結びに
2004年の時代背景として多くの人が「不安定」や「暗い」「下降気味」「不景気」と
感じている。そして2004年を象徴する出来事としては、台風や地震といった自然災害
や拉致問題が挙げられ、社会情勢としても暗いニュースが満延している。しかしながら「今
年もっと目にとまった色」や「気になる色」を尋ねた結果、オレンジやピンクといった明
るい色が多くなった。
この結果をふまえて言えることは「Ⅲ-3時代背景と色」で述べたような明るい時代に明
るい色。その反対に暗い時代には暗い色が求められているということが言えなくなって着
ている。
これは社会・経済情勢における先行きの不透明感、不安感などが一向に払拭されない日々
が続いており、人々は「安心」「喜び」「幸福」
「感動」などという「楽天的」ともいえる心
の状態を強く求めているといってもよい。これは図2「これからの社会情勢はどうなると
思いますか」という質問で安定するや景気がよくなるなど楽観視する意見が多いことから
も伺える。
このように考えると2005年以降は暗い色よりもトーンの明るい色が好まれると考え
る。
<参考文献>
日本流行色協会
色彩の世界
http://www.jafca.org/
ホームページ
∼現代の流行色について∼
今井
恭子
http://www.andrew.ac.jp/sociology/teachers/harada/students/9s1045.html
カラーコーディネーションの基礎
著者、出版
東京商工会議所
売れる色彩の研究
著者
業種別・代表企業12社の色彩戦略
大阪商工会議所・色彩研究会
発行
東京ダイヤモンド社
売れる色・売れるデザイン
著者
高坂
美紀
発行
ビー・エヌ・エヌ新社
図解でわかるカラーマーケティング
著者
下川
美知瑠
発行
日本能率協会マネジメントセンター
デザイン概論第三版
著者
飯岡
正麻
白石
和也
発行
ダヴィド社