小次郎講師の実践チャート分析第23回

小次郎講師の実践チャート分析第23回
「2016年、新春相場!流れの変化が出てきたぞ!」
(2/29分析)
===秘伝のチャート分析===
皆さん、こんにちは。小次郎講師です。
こんにちは。助手のムサシです。
株式が今年になって下げ続けてびっくりしている人がいるが、びっくりし
ていることにびっくりだ。
びっくりしていることにびっくりって言ったって・・・あれだけ下がるということは
やはりびっくりでしょ?
去年、コモディティがどれだけ下がったと思う?原油の下げは一昨年か
らだ。1 バレル 100 ドルを超えていたものが、なんと 20 ドル台まで下落
した。金も昨年は 1 年下げ続けた。金・原油だけでないぞ、コモディティ
全体が未曾有の下げを経験した。それらは全て景気が悪いから。株式
投資家はコモディティを見ていない。コモディティと為替と株式は連動し
ている。同時に見なければいけない。
なるほど、コモディティを見ていれば、この株の下落は読めたわけですね。
【1,さやとりとは?】
さて、本日はさやとりの話をしたい。ムサシ君はさやとりって知っている
かな?
もちろん。ある銘柄を買って、ある銘柄を売るというのを 1 セットにした取引
ですね。
【さやとりとは】
・銘柄 A は買う
・銘柄 B は売る
これを 1 セットにした取引
ということは手じまうときにも同時にする。銘柄 A を売り決済するときに
は銘柄も買い決済する。常に 1 セットということを忘れてはいけない。
ときどき、銘柄 A を買った後にしばらくして、銘柄 B を売るなんてことがあり
ますが、これはさやとりではないんですね?
厳密な意味でのさやとりではない。
手じまうときも、買いは出来るだけ高いときに決済して、売りは出来るだけ安
いときに決済してと、時間差を付けたくなりますが、それも駄目なんですね。
さやとりという意味では駄目だ。買いと売りを同時に仕掛け、同時に手
じまう。
さやとりってなんのためにするんですか?
通常の取引は価格が上がるか下がるかを予測して売買する。上がると
思えば買い、下がると思えば売る。
そうですね。
それに対してさやとりとは 2 商品の値段の差を売買する取引。2 銘柄の
差が縮まると思えば高い方を売り、安い方を買う。さらに広がると思え
ば高い方を買い、安い方を売る。
【さやとりの仕掛け】
価格差が広がるか縮まるかを予想
広がると思えば高い方を買い、安い方を売る。
縮まると思えば安い方を買い、高い方を売る。
【2、さやとは?】
そもそもさやってなんですか?
価格差のこと。漢字では鞘と書く。この漢字どこかで見たことないか?
刀の鞘とかいうときに使いますね。
そう鞘は刀の鞘から出た言葉。武士にとって刀は命。だからいい刀を
持っている侍は立派な侍、お粗末な刀を持っている侍は三流の侍とす
ぐわかる。しかし、江戸時代が長く続き、合戦の経験のない武士はお金
に困窮すると質屋に刀を入れてしまった。ということで立派な刀は質屋
に預け、安い刀を差していた。ところがそれでは恥ずかしいので鞘だけ
従来の立派なものを使っていたのだよ。
つまり、安い刀と立派な鞘で価格差が出来たということですか。
そういうこと。
なるほど。
さやとりには 2 種類ある。商品間のさやとりと、同商品の限月間のさや
とりだ。
同商品の限月間のさやとり?
商品間のさやとりってのはよくわかるよな?例えばガソリンと灯油など
が代表的。基本的には一緒に上がったり下がったりする銘柄で、一時
的に価格差が出たら割安の方を買い、割高の方を売るなどの取引が
多い。
それはよく知ってます。
同一商品の場合は限月を比較して、割高な限月を売り、割安な限月を
買う。
なるほど。限月間のさやとりってそういうことをするんですね。
【2 種類のさやとり】
・商品間のさやとり・・・ある商品を買い、ある商品を売る
・同一商品の限月間のさやとり・・・ある限月を買い、ある限月を売る
順ざや、逆ざやって知っているかな?
聞いたことあります。
期近から期先にかけて価格が上昇しているのが順ざや、期近から期先
にかけて価格が下落しているのが逆ざや。同じくらいの価格で推移して
いたら同ざやと呼ぶ。
【順ざや・逆ざや】
順ざや・・・期近から期先にかけて価格が上昇
逆ざや・・・期近から期先にかけて価格が下落
英語では順ざやのことを Contango(コンタンゴ)と言い、逆ざやのことを
Backwardation(バックワーディション)と呼ぶ。今、ゴムはコンタンゴで
すね、などと言うとかっこいい。
とすると、今の金相場は逆ざや、バックワーディションですね。
そういうこと。金相場はとっくにマイナス金利を織り込んでいる。通常金
価格は期近から期先へ金利分順ざやで推移するのが普通。
なるほど、今は異常なんですね。
だって考えてごらん。金 1 キロ持っている人がいたとする。16/04 月に
空売りして納会で金の現物を渡せばグラム 4469 円、1 キロで 446 万 9
千円手に入る。もっとも手数料のことを入れてないが。そして、同時に
17/02 月を 1 枚買えば、その月の納会に金 1 キロ手に入る。そのとき支
払うお金はグラム 4435 円、つまり 1 キロで 443 万 5 千円。
取引が終わった時点では 1 キロの金を持っていることに変わりないのに、気
がついたら儲かってますね。
そうだ。446 万 9 千円もらって、443 万 5 千円払った。手元には 3 万 4
千円が残る。しかも、約1年の間、446 万 9 千円のお金を手にするわけ
だから、それを運用すればもっと利益が増える。
お金を借りて利子をもらうようなものですね。
そう。つまりマイナス金利だ。さやの中には順ざや・逆ざやだけでなく天
狗ざや・おかめざやというものもある。天狗ざやとは真ん中の限月が高
いもの、おかめざやとは真ん中の限月が低いものを言う。
天狗ざや・・・真ん中の限月が高く、両側に行けばいくほど低くなる。
おかめざや・・・真ん中の限月が低く、両側に行けばいくほど高くなる。
天狗ざやは順ざやが逆ざやに変化する過程で起こる。おかめざやは逆
ざやが順ざやに変化する過程で起こる。だから、天狗ざや・おかめざや
というのは非常に大事。さやとりではなく、通常の売買をしている人にと
ってもさや変化を知ることは大事だ。
なるほど。
【3、商品間のさやとり】
さて、話を戻して商品間のさやとりを考えよう。代表的なのが、金と白
金、ガソリンと灯油、大豆とトウモロコシなどだ。原油とガソリン、原油と
灯油のように原料と製品のような関係のものはクラックスプレッドとわざ
わざ呼ぶ。
株式でもさやとりってありますよね?
あるある。同じような業態の会社のうち割安な会社を買い、割高な会社
を売る。ここで大事なのは今後の値上がり値下がりを予想する取引で
はないということ。価格差がどう変化するかを予測して取引をするもの
なのだ。
価格差?
たとえば A という銘柄が 2000 円、B という銘柄が 1400 円とする。現在
の価格差は 600 円。この価格差が今後縮まると思えば A という銘柄を
売り、B とい銘柄を買う。もし両方が値上がりしたとしても A が 2200 円、
B1800 と価格差が 400 円に詰まったとしたら、A のマイナスが 200 円、
B のプラスが 400 円と、差引 200 円の利益となる。
なるほど。
もし、両方が下がったとしても、A が 1600 円、B が 1300 円と価格差が
300 円に詰まったとしたら、A のプラスが 400 円、B のマイナスが 100 円
と、差引 300 円の利益となる。
なるほど、確かに上がる下がるは関係ないですね。
【4、金と白金のさやとり】
さて、その中で現在注目度一番なのが金と白金のさやとり。
おお、凄い。これが白金と金のさやをグラフにしたものなんですね?
そうだ。一昨年白金価格と金価格の差は 700 円以上白金の方が上だっ
たのに、今では 1000 円以上金の方が上になっている。
こちらが白金と金のさやの月間足チャート。これを見てもほとんどの時
期に白金が金より上にある。これは当たり前でね。金の地上在庫はオ
リンピック 3 杯分約 16 万トンと言われる。それに対してプラチナは僅か
に 5100 トン程度。希少性が違う。とても取れないコンサートのチケットを
プラチナチケットと呼ぶ。それは白金の希少性から出た言葉。
いいことを聞きました。ということは白金と金のさやとりをするチャンスと言う
ことですね。
そんなことは言っておらんが、どういうさやとりをしたいのかね?
もちろん割安の白金を買って、割高の金を売る。
そんな当たり前の話ならわざわざ私がこのレポートに書いたりしない。
そんなことを書いてるブログやホームページはごまんとあるからね。何
故私がこのレポートを書いているかというとそういうさやとりに警鐘を鳴
らしたいからだ。
警鐘?駄目なんですか?チャートを見る限りチャンスに見えますが?
これが白金と金のさやの週足チャート。2014 年の後半から 2 年弱、下
げに下げに下げ続けている。
確かに。でも、それが逆にチャンスって言えませんか?
2015 年になって金価格と白金価格が逆転した。ここから金と白金のさ
やとりがものすごく盛んになってね。もちろん、元のさやに戻ることを期
待した白金買いの金売りだ。それから 1 年以上、両者の差は広がり続
け、白金買い、金売りのさやとりをした人は、損をし続けている。
あちゃ。
チャートを見てごらん。さやのチャートなどと色眼鏡で見ないで、通常の
価格のチャートだと思って、このチャートに下げ止まり感を感じるかな?
・・・感じませんね。
こんなに安定下降している銘柄を探す方が難しいというほど安定的に
下がっている。この 1 年、コモディティは下げの 1 年だったが、それにし
ても一時的な戻しはいくらでもあった。ところがこの白金と金のさやは一
環して下げ続けている。現在もその基調は変わっていない。
なるほど。
つまり、このトレンドで利益を上げたいなら、金買い、白金売りでなけれ
ばならない。そういうトレードをした人は今大儲けしている。ところが、こ
のチャートを見て、白金買い、金売りのチャンスだと思った人は死屍
累々となっている。その白金買い、金売りのさやとりの死屍累々は現在
も継続中でなんら状況は変わっていない。それはいつか変化はあるだ
ろうが、今はみじんも感じられない。仕掛けるなら変化が出てからにす
べきであって、まだまだ下げトレンドが続いているのに逆張りをすべき
ではない。
そうなんですね。
かつて A という銘柄と B という銘柄を比較したら、常に A という銘柄が
高かった。それが今は B という銘柄の方が高くなっている、なんてこと
がよくある。するとほとんどの投資家は A という銘柄を割安と思い買
い、B という銘柄を割高と思いを売るというさやとりを始める。そして、し
ばしば小さく儲かって、最後に大やけどをする。
最後に大やけどをするんですね?
割安な銘柄を買い、割高な銘柄を売るというのは正しいことをしている
気がする。いつか価格は正常に戻ると思っている。しかし、正常って一
体何だという話だ。
難しい。
かつて石炭と原油を比べれば石炭の方が高かった時代があった。しか
し、石炭の価値は下がり、原油が上昇していった。そのとき、割安だと
思って石炭を買って原油を売ったとしたらどうなるかね?
大損します。
だろ?白金が金より安くなっているのは理由があると思わなければい
けない。いくら白金の方が希少性があると言っても、誰にも利用されな
いものは価値がない。ムサシ君が作った粘土細工が世界にひとつと言
っても、誰も見向きもしないのとおんなじだ。
ひどいたとえですが、よくわかります。希少性なんてものに騙されてはいけ
ないんですね。
【5、さやとり注意ポイント】
最後にさやとりをするうえでの注意事項をまとめよう。さやとりは通常の
取引と同様、魅力的な取引だ。だが、以下の注意が必要。
1、通常の取引にくらべてリスクが小さいと思ったら大やけどをする。買ってる銘柄が下がり、売
ってる銘柄が上がることを股割きと言うが、股割きはよくあること。通常の取引同様リスクがあ
るということを認識しよう。
2、昔の価格と比較して割安だとか割高だと感じても、昔の価格に戻る保証はない。また価格
差も開きすぎているとか、逆転していると感じても、元の価格差に戻るという保証は全くない。
このことが分かってない人が多い。さや取りをリスクの少ない取引。最
終的には価格差は必ず戻ると思っている人が多い。そういう人は失敗
を繰り返す。さやとりは魅力的な取引。だが、リスクは低くない。また元
の差に戻る保証はない。白金が2度と金より高くならないことだって考
えられる。
そうなんですか?
もちろん、ここから反転して、最終的に白金が金より高くなることだって
ありうるよ。だけど、それを絶対確実なものだと思ったらとんでもない失
敗をする。今、白金と金のさやとりではそう思っている人が、どんどん損
を広げている。それにも関わらず、雑誌やブログは「白金買い、金売り
のさやとりのチャンス」と書き続けている。残念でならない。
ですね。聞けて良かったです。
私もさやとりをよくする。さやとりで成功したことも多い。開きすぎたさや
が元に戻ったり、逆転していたさやが元に戻ったりして獲ったこともあ
る。それを前提として言うが、もしさやとりをするなら、今価格がどんど
ん開いていっているとしたら、あるいは価格がどんどん逆転していって
るとしたら、その方向に仕掛けた方が成功しやすい。つまり割高な銘柄
を買い、割安な銘柄を売るのだ。
そんなことどこにも書いてないです。
どこにも書いてないことが聞けるのがフジトミさんのコラム。他の会社の
コラムだったら当たり前のことしか書いてない。だからこそ、このコラ
ム、貴重だろ?もし、白金買い、金売りをしたいなら、今の長期下降トレ
ンドがはっきりと終了したというシグナルが出てからでも遅くない。金と
白金のさやとりだけではないぞ、全てのさやとりで、割安な銘柄を買
い、割高な銘柄を売るということを安易にやっていては最後に大失敗す
ると言っておこう。
勉強になります。
ということで本日はここまで。
ありがとうございました。