ゲレンデ接骨院 今シーズンも無事に営業終了 今年も 3 月末をもち、全国各地のスキー場に当社が営業していた「ゲレンデ接骨院」のシーズンが終了しました。 景気回復と外国人旅行者の増加により、年々、スキー場の来場者は増加しています。 スキー場運営企業からの依頼を受け、毎年、オンシーズンの 12 月から 3 月までの約 3 ヶ月間半、「ゲレンデ接 骨院」は営業しています。首都圏、関西圏から来られるお客さんが多く、「接骨院での初期対応のお陰で、帰宅し て翌日病院に行くまでの苦痛が緩和されて助かった」という声を多く頂けます。スキー場運営企業からはここに 接骨院がある事自体がお客様にとってもサービス向上の一つとなり、また万一の時でも安心できると感謝されて います。そして柔整師にとっては、一生分の骨折・脱臼の症例を経験できる言わば「修行の場」として、自身のス キルアップが可能な職場です。 今回はシーズン終了後、各ゲレンデ接骨院の先生方にインタビューしましたので、その内容を一部編集しまして 掲載いたします。 ●高井富士ゲレンデ接骨院 西野 智史 先生● 2015 年 3 月 6 日 X-JAM 高井富士スキー場にて 取材者:小林 靖 ===ゲレンデ接骨院の勤務も、もうすぐ終了しますね。今の気持ちを聞かせて下さい。=== 正直、来たばかりの時はすごく不安でした。実は私は昨年 3 月の卒業な ので、柔整の免許を取って半年ぐらいで、いきなり骨折とかの臨床の場に 来たんです。最初はものすごく緊張しましたけど、今はすごくいい経験を させていただいていると思います。 机上の林檎はスキー場スタッフさんからの差し入れ ===1 人目の患者さんはどんな症例だったか覚えていますか?=== もちろん看板を見て来る患者さんも多い はい、最初に診た患者さんは、コーレス骨折の方で、整復はしなかったんですけど、それだけでもドキドキしてま した。これまで、そういった患者さんを診たことはなかったですし、あっても肩脱臼や肘の脱臼ぐらいでした。 それからは、毎日の様に患者さんが来られましたので、段々慣れて来ましたが。 結局、学校とか教科書で学んだことは、基本であるけども、教科書どおりには必ずしもいかないし、現場で経験 するのが一番だなと実感しましたね。 ===なるほど。印象深い症例はありましたか?=== そうですね、スノーボードで転んだ際に、膝をついて転倒して、普通だったら後十字靭帯が切れるはずなのに、 前十字靭帯が切れるというまたレアケースもありました。反対側が切れる事もあるということにも驚きました。 ===ドクターヘリが飛んだ時もあったんですよね?=== はい、その時も実際にその現場にいました。初心者が滑ってきて止まれなくなってしまい、それを下にいた友達 が受け止めてあげようとして、その人の身体ではなくボードのエッジを抑えてしまったんですね。指の上をものす ごい勢いでボードのエッジが走った感じです。刃物でスパっと切ったのと同じですね。指が切断されて、出血の量 も物凄かったです。本当にビックリしましたね。 すぐにパトロール隊長がドクターヘリに連絡を入れて、10分後くらいにはヘリが到着していました。 こんな風に切断された後はどういう応急処置をするのか、柔整師が手を出せないまた別の専門にはなりますが、 すごく良い経験になりました。やはりこういう現場ならではですよね。 患者さんにとっては大変お気の毒ですけど。 ===パトロール隊員との連携は必須の様ですね。何か特に心がけていることはありますか?=== あまりでしゃばらず、柔整の範囲外のものは手を出さないほうが 良いということですね。逆に柔整の範囲であれば、しっかり任せて もらう。そもそも専門が違いますからね。 患者さんの事を想うと、つい手を出したくなりますが、範囲外の事 をしたらリスクを負うことにもなりますから。 隊長からも、これだけはしっかり線を引くように指導されています。 これだけの材料でも 3 週間位で無くなる ===なるほど、線引きが大事なんですね。最後に、ジャパン柔道整復師会の柔整師の先生方に向けて一言 お願いします。=== あくまでこれは個人の意見として聞いていただければと思いますが、、、絶対一回は来たほうが良いと思います。 来ないと分からない経験がいっぱいあります。例えば、捻挫なのか骨折なのか、靭帯切れているのか骨折なの か、実際に観察しないと自分の経験にはならないです。 ===たしかに、歴代の来ている先生達も、ここで自信をつけて春に開業する先生や整形外科に就職する先生 もいたし、教員になる先生もいましたよね。=== はい。 私も今回この経験が出来て、まさに治療家としてのターニングポイントになりました。出来れば来年も経験したい です。治療家としての経験値と腕を人一倍上げていきたいですね。 ●よませゲレンデ接骨院 向山 敦仁 先生● 2015 年 3 月 6 日 よませ温泉スキー場にて 取材者:小林 靖 ===ゲレンデ接骨院での勤務もあと少しで終わりますね。 今の気持ちを聞かせて下さい。=== はい、12 月の下旬からスタートしてもうすぐ 3 ヶ月間になりますが、正直楽し いと思っています。 楽しいというと、ちょっと勘違いされてしまうかもしれませんけど、全部 が新しい環境でとても新鮮に感じましたし、経験豊富なパトロール隊員の 取材者と先生のツーショット 方との会話も勉強になったりしました。 ===向山先生は横浜から来られたんですよね?ある意味、別世界じゃなかったですか?=== はい。こんなに雪深いのかと思いました。正直、カルチャーショックを受けました。でも毎日現場にいると慣れるも のですね。 ===横浜で勤務されていた整骨院と比べて、ゲレンデ接骨院はいかがだったでしょうか?=== ここまで急性外傷が多いというのは治療家として魅力的な環境ですね。怪我をされた患者さんが聞いたら怒られ ちゃいそうですけど、、、。 シーズン初めのうちは正直、判断に迷うことも結構ありました。 折れているのか、捻挫なのか、骨折はしているけど、応急処置 として整復したほうがいいのか、それとも固定 だけで送り出したほうがいいのかなど、患者様の事を思うと どちらがいいのか判断が難しい状況がありました。 実際に、骨折の疑いがあると考えていた患者さんが病院に 行ったところ、骨折していなかったというケースもありました。 狭いながらも整理整頓、創意工夫 ===そこで自ら超音波エコーを入れたんですね。=== はい。 三か月間とはいえ、外傷を診られるせっかくのチャンス なので、出来るだけ多くを吸収しようと思い導入しました。 骨折の整復後、患者さんに病院のレントゲンを送って ほしいと患者様に伝えても、やはりなかなか送ってくれない のが現状なので・・・。 ちょっと思い切って自己投資しました。 超音波エコーと施術ベッド ===自分で購入したんですよね。高価な機械ですよね、いくらだったんですか?=== はい。でも中古なので思ったよりは安く手に入りました。12 万円位です。かなり古い機種なので・・・。 ===12 万円の自己投資の結果、費用対効果はいかがだったですか?=== 判断が的確になりましたね。 あくまで補助的な使い方ですけど、画像を見せながら患者さんに説明すると、説明にも信頼度が増しますしね。 もしかするとゲレンデ接骨院だけではなく、一般的な接骨院でもエビデンスがないといわれますけど、触診とエコ ーでかなり説得力のある説明ができると思います。 もしかするとこれは柔整師の一つの武器になるかもしれないですね。 ===柔道整復師の先生たちへ一言お願いします。=== 外傷に興味がある先生でしたら、同じ志を持った人たちが一緒に出会えるので非常に良い経験です。 シーズン中はスキー場に寮を用意して頂いたのですが・・・、2 人で一部屋なんですね。相部屋です。 私は高井富士の西野先生と同部屋だったんですが、全く知らない人と同じ環境で暮らし、日々自身の技術向上 に向け語り合う、そんな経験はなかなかできないですよね。 現地に行く前に、健生さんの東京の事務所で研修があった時に、他のスキー場に行く先生とも知り合えました し。 同じ環境で、同じ志を持った先生方と知り合え、シーズンが終わりますけど、今後も横のつながりを強めて、治療 家としてのネットワークを広げていければいいですね。 最初は正直不安だらけでしたが、今はとにかくいい経験ができたと実感しています。この経験を今後の治療家人 生に活かしていきたいと思います。 ===健生、またジャパン柔道整復師会のスタッフにも一言お願いします!=== はい、小林さんをはじめ営業の方にはとても親切にして 頂きました、ありがとうございました。 ジャパン柔道整復師会の方には、分からない事があると 何でも電話してしまいましたが、嫌な雰囲気も持たれずに 毎回丁寧に対応して頂きました。雪山のど真ん中にある スキー場でもインターネットが来ているので、レセコンも 遠隔操作で説明してくれたり、包帯とかの材料も頼んだ らすぐに送っていただいたりと、長野と仙台で離れてい ましたが、距離感はあまり感じなかったですね。 今年は例年より降雪が多かったそう ===良い事ばかり言って頂いてありがとうございます!おだてても何も出ないですよ(笑)。 最後に何でも良いので一言お願いします。=== これからも沢山の経験を積んで、いつかは開業出来る様に頑張りたいと思います! ===先生なら、きっと立派な院長になれると思いますよ。頑張って下さい!=== ●竜王ゲレンデ接骨院 只野 俊太郎 先生● 2015 年 4 月 2 日 当社・東京支店にて 取材者:酒井 悌司 ===ゲレンデ接骨院の勤務が終了しましたね。感想をお願いします。=== はい、今年も終わったな〜、という達成感を感じています。 あと、ちょっとですが、寂しさも感じています。 ===寂しさ、ですか?=== はい、パトロール隊員の方達や、スキー場の皆さん と別れるのがちょっと寂しいんです。連帯感やチーム ワークもバッチリだったので。でも、去年は夏に竜王 で集合してバーベキューやったりしました。 今年もまた会いたいですね。 今年 2 月、竜王にて。2 年目の貫禄(?) ===只野先生は今年で 2 回目だったですよね。 去年はシーズンが終わってから、今年のスタートまでの間、何をされていたんですか?=== はい、元々、お世話になっていた横浜の接骨院に戻って 勤務していました。 私の場合は師匠に恵まれていたというか、少しの間だけ 休職扱いにしてくれてたというか、研修に行かせて頂いた 感じです。 さすがに今シーズンは、卒業して来ましたので、もう戻る 場所はありません。(笑) ===では、今後はどうされますか?いよいよ開業ですか?=== 昨年末、大雪で埋まった駐車場の車 開業はまだ先だと思います。今は整形外科の求人を探しています。求人誌を見て電話しても、募集していません とか平気で断られるので少しへこみますね。 実は健生の本間さんにも紹介をお願いしてありまして、来週、面接までセッティングしていただきました。 ===採用になると良いですね。でも、今回は接骨院ではなく、整形外科ですか。=== 接骨院では長く経験を積んだので、今度は違う経験を積みたいんです。今度は医師側からのアプローチも、話を 聞くだけではなく、体感したいですね。 ===ゲレンデ接骨院では、病院や医師との連携はなかったですか?=== 患者さんが行く病院が決まっている場所は、紹介状をレセコン から印刷して渡していました。律儀な先生は、キチンと FAX なんかで結果を戻してくれますね。 ただ、毎回そうかというと、実際の現場では次から次に患者さん が来る事が多くて、そこまでの余裕があまりないですね。 あくまでも応急処置なので、如何に早く楽になって、ご自分で 病院まで行く事が出来るという事が求められていると思います。 これは一度だけですが、紹介状を書いたわけでも無いのに、 ドクターから直接電話を頂いた時がありました。 コーレス骨折の患者さんでしたが、キチンと整復できていた と報告を頂きました。 この時は嬉しかったですね。 鎖骨骨折の患者さんを処置する只野先生 ===今シーズン通して、患者さんはどれ位来られましたか?=== (レセコンを確認しながら・・・)、今シーズン全部で 293 名の患者さんが来ていますね。 内訳は・・・、骨折 83 名、脱臼 24 名、打撲 40 名、捻挫 146 名ですね。 ===やっぱり多いですね~。来院が重なる事もあると思いますけど、一番多く来た日はいつですか?=== えーと、(日報を見ながら・・・)、2 月 26 日の木曜日で 13 人ですね。10 人を超えると結構きついです。 実際は、自己判断で痛みを我慢して来院しない患者さんもいるので、怪我の発生数はもっと多いと思います。 こういうケースはたまにですが、来院しても、治療代が必要だという話をすると、我慢してしまう患者さんもいます。 学生のスノーボーダーはとにかくお金を持っていない人が多いんです。保険証の期限が切れてる事も多いです ね。 ===今年は九州から、会員の先生が見学に来られましたね。=== はい、皆さん、分院をいくつも経営されている先生方でしたので、正直、 緊張しましたが、皆さん真面目で、明るい方ばかりでしたので受け入 れ側としても良かったです。 ちょうど、見学に入って頂いている時に、あまり患者さんが来なかった ので、そう意味では残念でした。 接骨院の経営には、治療技術や経験も大切ですが、患者さんとの コミュニケーションや経営者としての経営力も大事だという話を聞 かせていただき、良い刺激を得ました。 この経験も、正直、モチベーションが上がりましたね。 包帯巻き器は必需品 ===最後に、柔道整復師の先生たちへ一言お願いします。=== これを読んでいらっしゃる皆さんは、開業している先生方も多いと思いますので、自分みたいに少しの経験で生 意気かもしれませんが、やはり機会があれば、この様な現場を経験された方が良いと思います。 考え方は色々ありますので、何が正しいという事は無いと思いますけど、ゲレンデは柔道整復師に求められる役 割を最大限生かせる現場の一つだと思います。 更に、スキーやスノーボードをされる方や、これからやろうという方にはもっと良い職場かもしれません。僕も、休 みの日やナイターで滑っていました。良い気分転換になりましたね。もちろん、ケガはしない様に気をつけて滑っ ていましたよ。(笑) ===只野先生、ありがとうございました。今シーズンもお疲れ様でした。=== 以上 当社では、スキー場という環境は柔道整復師の業務領域(職域)を最大限発揮できる環境だと捉え、今後もジャ パン柔道整復師会の会員整骨院様および関係者様のご協力を頂きながら、来シーズン以降も継続していきた いと考えております。 ゲレンデ接骨院で勤務したい柔道整復師の先生、また、接骨院の開設を希望されるスキー場運営会社様から のお問合せもお待ちしております。 お問い合わせ先: ジャパン柔道整復師会 TEL:0120-964-707
© Copyright 2024 Paperzz