水稲育種効率化に関する研究 (イネ低温発芽性遺伝子 qLTG3-1 の発見) 北海道の稲作では低コスト化・省力化対策が求められており、その手段の一つが直播栽培と考 えられます。しかし、直播栽培では播種期(5月上旬)の気温が低いと発芽不良となるため、安 定生産には低温での発芽性に優れる品種が必要となります。ホクレン農業協同組合連合会は(独) 農業生物資源研究所と共同で、世界で初めて、低温条件下で発芽を向上させる遺伝子がイネに存 在することを発見しました。 1.研究の背景 北海道の稲作では低コスト化・省力化対策が求められてお り、その手段の一つが直播栽培と考えられます。 イネは熱帯地域を起源とする作物ですが、長年の品種開発に よって寒冷地である北海道でも栽培が可能となりました。しか しながら、直播栽培は、移植栽培以上に播種期(5月上旬)の 低温の影響を受けやすく、現在の品種では低温によって発芽が 低下することが問題となっています。直播栽培での安定生産の ためには、低温での発芽性に優れる品種が必要とされていま す。 2.研究内容 今回、低温条件下で発芽を向上させる遺伝子(qLTG3-1) がイネに存在することを世界で初めて発見しました。 qLTG3-1 遺伝子は、低温条件下で高い発芽性を示すイタリア 由来のイネ「Italica Livorno」から単離しました。この遺伝子 は「発芽」を制御する新規なタンパクをコードし、イネの種 子が発芽するときに芽を覆っている部分で働いていました。この遺伝子を交配によって北海道の栽培 品種に導入したところ、明らかな発芽能力の向上が確認できました。 さらに、この遺伝子は低温だけではなく、塩害、乾燥、高温といったストレス条件においても、高 い発芽性を示すことを明らかにしました。 また、他の作物の遺伝子について調べたところ、トウモロコシやコムギなどの世界の主要な作物に も、この遺伝子が存在することがわかりました。 3.研究成果の評価 低温や乾燥は作物の収量を低下させる主要因であり、これらの耐性を付与することはイネのみな らず多くの作物において重要な育種目標となっています。今回の発見は北海道における直播栽培用水 稲品種の開発を効率的に進めることができる可能性を示したと同時に世界的な「穀物の安定生産」に 寄与する画期的なものといえます。 【作物機能開発課】
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