市谷議員がおこなった討論 PDF212KB

2011 年 6 月県議会討論
日本共産党鳥取県議団
2011年6月県議会反対討論
日本共産党の市谷知子です。日本共産党県議団を代表して、次の議案の反対
討論を行います。
まず、議案第 11 号 大山自然歴史館の指定管理者制度導入についてです。県
立大山自然歴史館の目的は、「大山の自然・歴史・文化に関する資料を展示し、
その魅力を県内外に発信し、自然を大切にする心を育む」とされています。し
かし指定管理者制度の導入で、業者選定が、一般公募の競争入札、5 年間の期限
付き契約となれば、職員の雇用と身分が不安定となり、大山の調査研究の蓄積
が継承できず、施設の設置目的達成が困難になりかねません。また従来から入
館料や自然観察会の料金は無料でしたが、有料化される可能性もあり、とりわ
け子どもたちが利用しにくくなり、本館の設置目的にもある「自然を愛する心
を育む」チャンスが少なくなるのではないでしょうか。こうした自然・歴史・
文化の共有を目的とした施設の管理運営は、経費削減を目的とした指定管理者
制度にはなじまないと考えます。よって、本議案には反対です。
次に、議案第 5 号、第 14 号ですが、県立病院の分娩料の値上げが盛り込まれ
ています。執行部の説明では、国の出産一時金の増額が確定し、分娩料が値上
がりしても、その範囲内で支払えるから大丈夫との事でしたが、出産には、出
産そのものの費用だけでなく、オムツやミルク、赤ちゃんの服など出産準備に
多くの経費がかかります。ただでさえ出産にはお金がかかるのに、とりわけ今、
子育て世代の収入が低迷している中で、分娩料を値上げすることは、子育て王
国鳥取県に逆行です。また県立病院への患者の集中を解消するためとの話もあ
りましたが、それは子育て支援に逆行する、分娩料の値上げでなく、他の民間
病院で出産する場合に費用助成するなど、子育て支援制度の充実によって解消
すべきです。よって本議案には、反対です。
次に議案第 25 号、鳥取県税条例の一部改正についてです。国会審議されてい
た平成23年度・地方税法改正法案は、この間成立せず、
「つなぎ法」によって
各種減税措置が 6 月 30 日までの3ヶ月間延長され、県税にかかる部分は、5月
臨時県議会で、県税条例の一部改正の専決処分の承認を行い対応してきました。
今回国会において、その平成23年度地方税法改正法案が2つに分割され、そ
の一つが昨日、国会で成立しました。今回の県税条例の一部改正は、成立した
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日本共産党鳥取県議団
法案にそって減税措置をとるものですが、改定は 100 本項目以上に及ぶにもか
かわらず、一つひとつ吟味することなく一本の県税条例改正案で行われ、県民
には非常にわかりにくいと思います。更に税改正の中には、心身障害者を雇用
する事業所への減税や中小法人の法人税減税といった経済不況の中での弱者対
策もありその点は賛成ですが、上場株式配当による所得税の20%から10%
への減税を2年間も延長する大金持ち減税も含まれており賛成できません。更
に、今国会で未成立となっているもう一つの法案には、多額の内部留保金をも
つ大企業への法人税5%減税が含まれていますが、東日本大震災で財源不足が
指摘される中、大問題であり、これが今後、国会で成立すれば、今回の県税条
例改正によって、県議会では審議しなくても、規則で自動的に施行されること
になっており 2 重に問題です。よって本議案には反対です。
最後に、陳情の委員長報告に対する反対討論を行います。陳情 23 年 8 号・9
号は、2012 年度から4年間使用する教科書の採択にあたって、改定教育基本法、
改定学校教育法及び改定学習指導要領の内容を、教育委員・学校関係者に周知
徹底し、それに最も適した教科書の採択をするよう市町村教育委員会に指導・
助言すること、及び教科書の展示会会場の増設と周知などを、主には県教育委
員会に求めるものとなっています。私は、陳情本文そのものが、その多くを県
教育委員会に要望するものとなっているのに、なぜ県議会として陳情を受け付
けたのかが、疑問であることを、まず述べておきます。その上で、本陳情は、
改定教育基本法にそった教科書の採択を求めているわけですが、私は改定教育
基本法そのものに問題があると考えます。そもそも教育基本法は、日本が引き
起こした侵略戦争によって、アジア諸国民 2000 万人以上、日本国民 300 万人以
上の痛ましい犠牲を生み、かっての天皇絶対の専制政治が、子どもたちに「お
国のために命を捨てよ」と教え込み、若者たちを侵略戦争に駆り立てたことを
根本から反省し、平和・人権尊重・民主主義という憲法の理想を実現する人間
を育てようという、決意にたって、制定されたものです。しかし改定教育基本
法は、この理念を踏みにじり、
「人格の完成」という教育の目的に加え、第 2 条
に「教育の目標」として「国を愛する態度」などの徳目を列挙し、その目標の
達成を学校や教職員、子どもたちに義務付けています。これら徳目それ自体は
当然のことのように見えるものもありますが、問題はそれを法律に書き込み、
政府が強制することは、憲法 19 条が保障した、思想・良心・内心の自由を踏み
にじるものです。日本共産党は市民道徳を培う教育は重要と考えますが、それ
は「人格の完成」をめざす教育の自主的な営みを通じて培われるべきものであ
って、法律によって義務づけ、強制すべきではないと考えます。そして、こう
した「愛国心」の強制は、戦前戦中に「教育勅語」によって、子どもたちを戦
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場にかりたてた教育への反省を踏みにじるものです。さらに従来の教育基本法
は、「人格の完成」という「教育の目的」の実現のためには、「教育は、不当な
支配に服することなく、国民全体に直接責任を負う」、学校の教員は「全体の奉
仕者」と記述され、国家権力による教育への介入を厳しく禁止していました。
しかし改定法では、これらの記述の多くが削除され、
「法律」更には「教育振興
基本計画」などによって、教育内容を数値目標も含めて詳細に定め、実施し、
評価することができると、国家介入に道を開いています。その具体化として、
「全
国いっせい学力テスト」の実施による競争教育の導入によって、弱肉強食の社
会に順応する人間をつくること、更には法の前文から「平和を希求する人間の
育成」という理念を削除し、
「愛国心教育」とセットで「戦争する国」に忠誠を
誓う人間をつくる教育が、押し付けられようとしています。そして、今回の教
科書検定を通過した教科書を、実際に私も鳥取市立図書館で見てきましたが、
「育鵬社」の公民教科書では、
「大日本帝国憲法下で、天皇は元首でしたが、例
外的に実権を行使した以外は直接政治を行ったわけではない」と、天皇が侵略
戦争を推し進めた事実を欺き、「自由社」の公民教科書は、「日本国憲法はGH
Qによる押し付け憲法」との立場が描かれ、その一方で、20 歳以上の男女によ
る普通選挙で選ばれた国会で、憲法が審議・議決された事実が書かれていませ
ん。こうした教科書に対して、神奈川県内の法律家 4 団体が、
「憲法及びそれを
めぐる諸状況に関する記述において、法律家として到底見過ごすことができな
い」とアピールを発表しています。私は、今回の陳情は、改正教育基本法やそ
れに基づく検定を通った教科書を使うという、単なる手続きを求めているので
はなく、他国に甚大な犠牲を強いた日本の侵略戦争とその反省という、戦前戦
後の歴史認識をゆがめ、子どもたちを戦場にかりたてる教育を推し進める、大
変危険な性格をもっていると思います。私は、侵略戦争に命がけで反対した日
本共産党として、また子どもを持つ母親として絶対に賛成できません。よって、
本陳情の不採択を主張し、私の討論を終わります。
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2011 年 6 月県議会(議員提出議案への反対討論)
日本共産党の市谷知子です。日本共産党県議団を代表して、議員提出議案第
5号、
「郵政改革法案の審議の迅速化を求める意見書」に対する、反対討論を行
います。
現在、国会審議中の「郵政改革法案」は、小泉内閣の郵政民営化によって廃
止された、
「金融の全国一律サービス」及び「郵便・郵貯・簡保の全国一律サー
ビスの義務づけの回復」をうたい文句にしていますが、実際にはそれを保障す
るものにはなっていません。法案では、
「郵政持ち株会社」や、
「郵政事業会社」
と「郵便局会社」を統合した「新日本郵政株式会社」に、金融の全国一律サー
ビスを課すとしていますが、
「新日本郵政株式会社」も、郵便局に金融サービス
を提供している「ゆうちょ銀行」も「かんぽ生命」も、採算性を度外視したサ
ービス提供は困難な、利潤追求の株式会社です。そして「ゆうちょ銀行」も「か
んぽ生命」も、銀行法、保険業法上の民間会社であるため、そもそも全国一律
サービスの義務付けはなく、その実施は事実上無理なことです。つまり、利潤
追求の株式会社に対して、採算がとれない地域への「金融の全国一律サービス」
を義務付けようという、この法案の制度設計そのものに、根本的な矛盾があり
ます。また仮に「新日本郵政株式会社」に「金融の全国一律サービス」を義務
付けたとしても、この会社が保有する金融 2 社の株式は1/3程度にしかすぎ
ず、全国一律サービスの義務に基づく経営方針を、その金融 2 社に徹底するこ
とは困難です。結局、この法案は、「郵政民営化見直し」といいながら、「看板
倒れ」です。
さらに、「郵政改革法案」は、「ゆうちょ銀行」の「預け入れ限度額の引き上
げ」、「新規事業の拡大」を掲げていますが、地域金融、地域経済に混乱を及ぼ
す懸念があります。推進している民主党の大塚郵政改革担当副大臣自身が、昨
年 2 月に発表した「郵政改革素案」においても、
「民間金融機関、とりわけ中小
地域金融機関にとって、政府出資、全国ネットワーク、3 事業一体で、資金規模
の大きい日本郵政グループが、「経営の潜在的脅威」であることは理解できる」
と述べていました。法案が成立し、限度額が引き上げられ、新規業務が拡大さ
れれば、郵政グループは、地銀、信用金庫、農協など、中小地域金融機関の潜
在的脅威から現実的脅威に変わり、地域金融・地域経済の大きな波乱要因にな
ることは避けられません。
結局、この郵政改革法案は、郵政グループやそのもとにある「金融 2 社」に
対して、国民が求める全国一律サービスの義務付けを、事実上は免除しながら、
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その一方で、政府出資など民間にはない有利な条件のもとで、金融業務を解禁
しようというのが狙いです。この法案は、こうした郵政グループの利益拡大の
ために、その一部を手直ししただけであって、
「郵便・金融・保険の全国一律サ
ービスの回復」という国民の願いにそった見直しにはなっていません。
郵政民営化見直しというのであれば、民営化そのものを見直し、バラバラに
された郵政三事業を公的事業体として一体化し、そこにユニバーサルサービス
を義務付けることです。
今回の本意見書案は、
「郵政改革法案」の審議の迅速化を求めていますが、仮
に審議を迅速化しても、先ほど述べたように、国民や地域経済にとって、なん
ら利益をもたらすことはありません。よって、本議案に反対であることを述べ、
私の討論を終わります。
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