会報 9号 - 日本ビジネス航空協会

刷新版
第
9
号
隔月刊
2009年 9月 1日
(NPO法人)日本ビジネス航空協会
◇ 巻 頭
常務理事・空港/グランドハンドリング委員会委員長
東山 浩司
初秋の候、皆様ご健勝のことと存じ上げます。
この号が皆様のお手元に届く頃は、夏
の陽射しも和らぎ、秋の訪れが見え始める頃ではないでしょうか。
昨年の 10 月、リーマンブラザーズの経営破たんに端を発した経済危機も、発生から早 1
年が経ちました。 この 1 年間に起きたことは、誰もが事前に予想をしていなかったので
はないかと思います。
株価の下落、ビッグ3といわれるアメリカ自動車業界の経営破た
ん、それらが世界的に広まったことは、言うまでもないところです。
無論、日本においても皆様ご承知のとおり、「派遣切り」
「内定取り消し」等に見られる
労働者の削減、給与の引き下げ、倒産….. あまり聴きたくない言葉が飛び交っていまし
た。
日銀の短観では景気の底を打ったとの報道もなされていますが、実際にはどうでし
ょう、デフレの兆しも見えており、まだまだ「実感」として個々の生活に反映されていな
いと思います。
今回の経済危機で特筆すべきは、アメリカで発生した経済の下降がほんのわずかの間に
全世界に波及した、その速度ではないでしょうか。
一晩の間に、例外なく全世界に短期
間にその影響が広がる姿は、1929 年の世界恐慌と比べても、この 80 年の間に、如何に経済
がグローバル化してきたか、如実に判ります。
つまり、地理的位置関係に関わらず、世
界経済だけを見ると、地球が小さくなってきた感があります。
野での技術革新がもたらした産物といえます。
無論これはいろいろな分
80 年前と今では、何もかもが変わってい
ますが、ほんの数年前と今を比べてもその違いは顕著に表れています。
誰もが携帯電話
を持ち、インターネットを通して世界各地とリアルタイムで繋がり、電子マネーによって
現金を持たなくとも生活が出来てしまう、小さい頃に本や漫画(敢えてここではアニメで
はなく漫画と表現します)を通して夢を見ていた「未来像」が具現化してきています。
私たちの従事する航空業界においてもこの「進歩」は計り知れないものがあります。 そ
の昔、海外に行く為には羽田からミッドウェイ、ハワイを経由してサンフランシスコまで
何十時間も掛けて、旅をしていました。 ボーイング 747 型機がジャンボジェットの名称
で世の中に現れたときは、船のように大きい塊が空を飛ぶなどと、誰もが興奮しその勇姿
をわざわざ空港に見学に行ったものです。 ところが、その最初の 747 型機も引退する時
を迎え、今ではそれより大きいエアバス 380 型機が就航し、最先端を駆使したボーイング
787 型機が間もなく目の前に姿を現すでしょう。
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航空機の発展が世界経済に与えた影響は、計り知れないものがあります。
航空機が世
界経済の発展に寄与するものであるとしたならば、ビジネス機の存在と発展は、まさに世
界経済をひとつに結び付けてきた立役者である、これは当協会に属する皆様の一致する見
解だと思います。広大な土地を有しながらも公共交通機関の乏しいアメリカで発達してき
た、
「航空機をビジネスに利用する」という考え方がアメリカ国内にとどまらず、全世界に
広まっていった背景には、航空機の技術進歩により、比較的小さい飛行機であっても、例
えば東京とニューヨークやロンドンをノンストップで結ぶことが出来るようになった事が
大きく寄与しているものと思います。
大げさな表現になってしまいますが、私共ビジネ
ス機に携わっている当協会会員の皆様は、世界経済に貢献しているという自負や誇りをお
持ちになられているといっても、過言ではないでしょう。
ビジネス機を巡る環境は年数を経るごとに変わってきています。
私自身、この業界に
携わるようになってから 18 年が経とうとしていますが、その当時と今では機体性能はさる
ことながら、制度、考え方など大きく変わってきました。
する対応などは特筆すべきでしょう。
アジア諸国のビジネス機に対
香港において新しい空港をデザインする際に、真
っ先にビジネスジェット専用 FBO を建設することを念頭におき、現在ではそれが中国・香
港経済にとって有効に機能している点、中国は北京オリンピックの時期に北京国際空港に
おいてビジネス機が 80 機程駐機できるスペースを確保するなどは、まだ記憶に新しいとこ
ろです。
ます。
日本における対応も航空局や各空港のご協力の下、徐々に様変わりしてきてい
以前であれば、各空港の調整官と運航の調整をするにあたっても、ビジネス機と
いうだけで、あまり良い顔をして受け入れて頂けず、何度も挫折感を味わったり、また時
には衝突するような経験をしたりしてきました。
しかしながら、今ではある程度その存
在価値を認識して頂いている感もあり、昔ほどの苦労を感じることなく、ビジネス機の運
航を受け入れて頂けるようになっています。
しかしながら、日本におけるビジネス機に対する考え方は、まだまだ「金持ちの道楽」
というレッテルを払拭できていません。
これは日本だけの問題だけではなく、ビジネス
機が最も発達しているアメリカにおいて、3 大自動車メーカーが議会の公聴会に出席する為
に自社機を使用したことに対して批判の声が上がったことをみても、各国の同業者が同じ
問題に頭を悩ましているが想像できます。
そのような状況を打開する為に、この業界に
従事している私共は、このような一般的な意識を尊重しつつも、敢えてこの考え方が正し
いものではないことを、慎重に世間一般に判って頂く努力をしなければなりません。
そ
の昔、外車に乗っている方々に羨望のまなざしを投げかけ、いつか自分も外車を乗り回し
たいと思っていた方も多いと思いますが、現在はどうでしょう、街中には日本車のみなら
ず、多くの外車が走っています。
決して航空機も同じとは言いませんが、いつの日か自
分、又は企業として航空機を所有し世界を股に掛けて飛ぶことが「当たり前」となる日が
来ないとも限りません。
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冒頭でも述べました、世界経済の衰退により、ビジネス機業界全体も昨年に比べ 40%程
の市場規模の下落を記録していると伺っております。
これは決して見過ごすことの出来
ない現実であり、また何とか脱却しなければならないことであることは、皆様も感じてお
られることと思います。
ビジネス機はビジネスの為の道具(ツール)である、この原理
に基づけば、ビジネス機の運航をさらに促進させ、業界全体の市場規模を上昇させること
が、世界経済の復活に寄与することになるのではないでしょうか。
では、私共 JBAA として何をしていけばいいか。 日本において、ビジネス機に対する理
解を得、またその利益を日本企業、しいては日本国民が余すことなく享有すことが出来れ
ば、JBAA の役割を果たすことが出来ると思います。 行く道は平坦ではありません。 そ
の中で私共役員は、各機関との折衝を重ね、また各種委員会を設立し知恵を搾り出しつつ
議論をし、また各種企画を立案し、会員各位にその内容をお伝えした上で、ご意見を賜り
実行をしております。 会員各位のご協力が無ければ、何一つ進めることはできません。
今回の経済危機が予測不能であったと同じように、これからのこの世界がどのような方
向に向かうか、誰も予言は出来ません。
す。
しかしながら、方向付けは可能であると思いま
我々にとって、
「良い」方向付けをしていく為にも、今後の協会運営にご注目頂き、
また積極的にご参加いただくことを、切にお願い申し上げます。
◇ ビジネス航空界のトピックス ・ 新着情報
ビジネスジェットの利用促進議員連盟発足
すでにホームページでもお知らせしましたように、ビジネス航空の日本での発展を促すた
め、自民党内に「ビジネスジェットの利用促進議員連盟」が設立され 6 月 25 日にその設立
総会が開催されました。
当日は下記役員以外の議員も多数参加され前向きな活発な議論がなされたとのことです。
又前田航空局長も設立総会に出席され「ビジネス航空の現状と課題」について話をされま
した。
我々業界にとりましては大変ありがたいお話です。
議員連盟役員 (議員)
会長(設立発起人) 森 喜朗(元首相)
会長代理
額賀福四郎 町村信孝
副会長
保岡興冶 愛知和男 逢沢一郎 石原伸晃 浜田靖一 泉 信也
林
芳正
幹事長
茂木敏充
幹事
大村秀章等 6 名
事務局長(設立発起人)木原 稔
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東京国際航空宇宙産業展 2009
東京都/東京ビッグサイト(昨年の協会 NBAA ツアーにも御参加いただきました)共催の
東京国際航空宇宙産業展 2009 が 11 月4日(水)から6日(金)まで東京ビッグサイトで
開催されます。会員の皆様には後日ご案内を送付させていただきますが、協会としてもブ
ースを出させていただく予定になっておりますので皆様のご来場をお待ちしています。
日経フォーラム 2009
今年も、11 月 19 日(木)にビジネス航空を取り上げた日経フォーラムを開催していただ
けることになりました。詳細は追ってお知らせしますが、協会としましても全面的に協力
させていただく予定です。
その他
ビジネス航空のトピックス、情報ではありませんが、航空業界に関する興味深い記事
がありましたので転載させていただきます。
☆ 自動車より怖い航空業界の危機
経済波及効果はより大きいのに経営難でも政府は知らん顔
(NEWSWEEK 誌
ケイティ・ベーカー記
2009 年 7 月 15 日号より転載)
各国政府は世界経済危機の直撃を受けた自動車メーカーのてこ入れを急いでいる。だが、
同じように破綻寸前の航空会社には知らん顔だ。しかし、英コンサルティング会社オック
スフォード・エコノミクスの調査報告によると、航空業界の経営状態は自動車業界以上に
経済に与える影響は大きい。
航空業界は現在、世界中で550万人余りを雇用し、毎年4250億ドルを稼ぎ出す。
観光業や航空券取扱業などの関連産業も含めると、雇用者数は3300万人となり、全世
界のGDPに1兆5000億ドルも貢献している。これはG20(20 カ国・地域)の多くの
国を上回る数字で、自動車業界の売上高より約3割多い。特にアジアで需要が急増してお
り、2026年には航空業界は5000万人を超える雇用を支え、全世界のGDPのうち
3兆6000億ドルを担うと期待されている。
GMより先に救うべきだった?
その航空会社が傾き始めれば、世界経済は大打撃を受ける。成長率が予測をわずか1%
下回っただけでアジアで約200万人、ヨーロッパとアメリカでそれぞれ150万人が失
業し、全世界のGDPは最大4400億ドル減尐する。特に観光業界とグローバル企業へ
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の痛手が大きい。グローバル企業が物や人を迅速かつ効率的に長距離輸送できるのは、航
空会社のおかげだ(グローバル企業の 80%が航空輸送は自社の効率性にとって「重要」と
回答、うち半数が「不可欠」と回答した)。
航空会社には大量の二酸化炭素(CO2)を排出しているとの批判もある。だがオック
スフォード・エコノミクスによると、CO2排出量全体の2%を占める航空機の航行を制
限しても、今後 20 年間で代替燃料のCO2排出量が航空燃料と同じかそれ以上になる可能
性がある。
ゼネラル・モーターズ(GM)救済より、航空会社へのてこ入れのほうが先だったかも
しれない。
☆
鳥避け新兵器の紹介
(Aviation International News 2009 年7月号から)
最近起きた US エアのハドソン川事故例のように、米国内でのバードストライクの報告は
1990 年の 1759 件から 2007 年には 7666 件に増えています。
同じ空を使うかぎり、鳥たちとの衝突事故は無くならないものですが、鳥たちにもやさ
しく、傷つけることなく事故を予防する新兵器が紹介されています。
それは鳥の嫌がる物質として知られる、商品名「Bird-B-Gone」を空中に放出することで
鳥を忌避するもの。コンコード種のブドウから抽出したアントラニル酸メチル、5 ミクロン
の人畜無害な霧状粒子は米保険省でも認可されている食品芳香剤。鳥たちの眼の三叉神経
や呼吸器の粘膜を刺激する性質があり、散布された空域から鳥は居なくなると。
この物質を球体にくるんで空中に打ち出すと、霧状になって 6000-8000 平方フィートの
面積に有効であると。滑走路、離着陸帯、格納庫、整備場などに 64 個の球体をプリセット
しておき、プログラムされたように打ち出すことができる、しかも残留することはないと
紹介されています。
Bird-B-Gone を訳せば「トリサンアチラ」とでも言うのでしょうか。
訳と絵 柳井
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◇ 協会ニュース
JBAA 事務局
新事務室の紹介
このたび日本エアロスペース(株)のご好意で JBAA 事務局は従来の同社 9 階のスペース
に代わり、より広い新しい事務室を使用させていただけることになりました。同じビルの
7階にある同社施設の一部ですが、日本ビジネス航空協会のロゴを掲げています。ご来局
の時はいったん9階の事務局 大西にお申し出頂くことになりますが、資料の閲覧、3,4
名の小会議などが可能になりました。
情宣・マーケッテイング・会員増強専門委員会
第1回会議開催
8月3日(月)に、第1回の情宣・マーケッテイング・会員増強専門委員会を開催し今後
のマーケッテイングのあり方及び会員増強策について討議いただきました。
運航・整備、技術・安全合同専門委員会 第1回会議開催
上記委員会と同日の8月3日(月)に、運航・整備、技術・安全両専門委員会合同の第1
回委員会を開催し、2005年に航空局に提出した要望内容の見直し作業の開始及び ICAO
Annex6全面改定に対する今後の対応について討議いただきました。
2009年第2回総会の開催予定について
2009年第2回総会を12月14日(月)にメルパルク東京で開催する予定です。
主要協会活動
7月 6日 四役会開催
7月14日 航空局新総務課長訪問
7月21日 運輸政策研究機構の「首都圏空港戦略検討委員会」への協力打ち合わせ
8月 3日 理事会開催
第1回情宣・マーケッテイング・会員増強専門委員会開催
第1回運航・整備、技術・安全合同専門委員会開催
日経フォーラムについて日経との打ち合わせ
8月21日 中部国際空港会社と中部国際空港の新施設について会議
東京ビッグサイトの東京国際航空宇宙産業展 2009 説明会に参加
8月26日 航空局総務課長にビジネス航空と協会活動の現況について説明
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◇ 投稿
日頃登場する機会の尐ないヘリコプターですが、日本のビジネス航空の片翼
を担っている業界、しかも我が国の社会資本や地勢上でも効率のよい利器です。
このヘリコプターについて 2 回のシリーズでお届けします。
ヘリコプターの活用(その1)
うえむら
上村
まこと
誠
はじめに
JBAA 事務局の柳井さんから依頼を受け、ヘリコプターに関する話題の提供をさせて頂く
事になりました。40年程前にヘリコプターの開発に携わりたく、当時の川崎航空機工業
(現川崎重工業)に入社して以来、ヘリコプターの研究開発、特に飛行制御装置関係の業
務に従事してきました。1971 年からスエーデン向けの KV-107II ヘリコプター用自動飛行
装置の開発チームに加わり、連日飛行試験を実施していましたが、その時飛行課でパイロ
ットをされていたのが柳井さんでした。後に、このシステムについてシンポジウムで発表
する時、技術成果をただ見せるのだけではつまらなく思いましたので、挿絵を柳井さんに
依頼しました。当時から、氏の瀟洒な文体と、ウイットに満ちたイラストに魅せられてい
ましたので、パイロット業務で多忙な所を無理にお願いして本装置の最も特徴的な成果を
2枚の漫画にして頂きました。これは尐々お色気も有り、発表すると大好評で、中身より
もこの絵をほめて呉れる人も多かったのです。そういうご縁、というより大きな借りがあ
りましたので、今回駄文を掲載する仕儀となりました。
サウジアラビア王国 内務省の KV107ⅡA 救急ヘリ
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以下の内容は、退職前の2001年秋から5年間日本航空宇宙工業会へ出向中に、ヘリ
コプターの活用をはかるために広く産業界、運航業界、研究機関、また官公庁のオペレー
ターや行政当局(航空局と経産省航空機武器宇宙産業課)にご参加を頂き、自由闊達に現
状の分析と課題の抽出等を議論して頂いたものを、現時点で検証してみたものです。内容
の一部は現在のジェネラルアビエーションの課題と重なる部分も有ろうかと思います。興
味がお有りでしたら、お読み頂き、何かしらお役に立てて頂ければ幸いです。
(なお、以下に示す最近のデータは参考文献1に基づいています。)
ヘリコプターの登録機数
ヘリコプター活用の現状を知るため、まず日本における民間ヘリコプターの登録機数を
調査しました。そして驚いた事には、読者の皆様には自明のことであるかもしれませんが、
1991 年には 1200 機を超え、世界で第3位である事を知りました。トップはもちろん米国
で約1万機、2位はカナダで、4位がオーストラリア、5位以下にはイギリス、フランス、
ドイツ等ヘリコプターメーカーを有するヨーロッパ各国が並んでいました。1991 年はバブ
ルの絶頂期で、ヘリコプターは2年の特別償却が可能という事も有ったのでしょう。バブ
ルが弾けでからは毎年のように減尐を続け、調査当時の 2002 年末には 868 機、そして 2007
年度末には 775 機となり、未だ漸減を続けているようです。おそらく現在はオーストラリ
ア、イギリスにも抜かれ、ひょっとするとフランス、ドイツよりも尐ないかもしれません。
因に 1991 年には固定翼航空機全体の登録機数は 1184 機でしたからヘリコプターの方が
多かった事になります。従って当然ジェネラルアビエーションの機体よりも多い事になり
ます。現在は手元にデータがありませんので正確には分かりませんが、ほぼ同じくらいで
はないでしょうか。民間航空機に占めるヘリコプターの割合がこのように高い国は世界中
どこにも見当たらないようで、世界の平均値は約4%と言われていますから、日本ではヘ
リコプターが「活用」されているのではないか、尐なくともジェネラルアビエーションよ
りは活用されている、と言えそうです。が、実態はどうでしょうか?それをこれから見て
いきたいと思います。
国産ヘリコプターのシェアー
ところで、総登録機数に占める国産ヘリコプターのシェアーはどうなっているのでしょ
う。日本におけるヘリコプターメーカーは川崎重工業、富士重工業、三菱重工業の3社で
すが、合わせても、10%に届きません。内訳を見ると、タービン双発機の分野では川崎B
K117型機が 58 機、三菱MH2000型機が 2 機、タービン単発機の分野では、富士ベ
ル204B及び205Bが 8 機と川崎ヒューズ369型機が 3 機、さらにレシプロ単発機
は川崎ベル47型機が 3 機で計 74 機となっています。これらの内現在も販売が続いている
のは川崎BK117型機のみであり、このシェアーもさらに先細りしていきそうです。メ
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ーカー別シェアーでは1位がユーロコプター社、2位がベルヘリコプター社、3位がロビ
ンソンヘリコプター社となっており、国産ヘリコプターメーカーにて技術者人生を捧げた
者としてはいささか残念な気持ちでもあります。
なお、日本におけるこれまでのヘリコプターの総生産機数は 2000 機を越しており、民需
比率は約 30%となっています。これは、以前はベル47やベル204B等ライセンス国産
によるヘリコプターや、前者の改造国産機である川崎ベル式KH―4ヘリコプターが多数
生産されていましたが、為替が円高方向に強まるに連れ輸入機との価格競争力が低下して
いったことが原因の一つと考えられます。
ご承知のように我が国のヘリコプターメーカーは防衛省向け機体の製造と修理で生業を
立てている訳で、防衛省では現在 600 機以上のヘリコプターが運用されていますが、こち
らは基本的にはライセンス生産を含めてほぼ 100%国産となっています。
ベル 47Gヘリコプター
ヘリコプターの利用状況
さて、登録機数の減尐状況は明らかにヘリコプター活用状況が悪化している事を示して
いますが、どの分野が減尐し、どの分野が今後需要の伸びが期待されるのでしょうか?以
下に現在のヘリコプターの利用状況を概観してみます。

公的分野
公的分野としては消防・防災、警察などの公用分野と防衛分野があります。
消防・防災ヘリは全国の都道府県および政令指定都市に3県を除き配備され,消防・防
災、及び救急業務(救急ヘリコプター)に携わっています。特に1995年に発生した阪神・
淡路大震災を契機として、震災時におけるヘリコプターの効果的活用が認識され、消防・
防災ヘリコプターとしての整備が飛躍的に増大し、現在全国で75機が配備されていま
す。
警察関係では1959年に警視庁に川崎ベル47G-2ヘリコプターが最初に配備された後、
現在は96機が全国の都道府県警察に配備され警備活動、捜索・救難等に活躍していま
10
す。
官公庁としては最も早く、1953年にベル47D-1およびシコルスキーS-55ヘリコプタ
ーを導入した海上保安庁では、現在全国の航空基地及びヘリ搭載型巡視船に46機のヘ
リコプターを配備し、海上における警備、捜索・救難、さらに洋上救急業務に使用して
います。
公用分野ではその他10機が国土交通省の地方整備局などにて運航中です。
一方、防衛分野では、防衛省の前身である保安隊当時の1954年にベル47D-1/H-13E
ヘリコプターを米軍より受領し運用を開始して以来、現在では輸送、観測、多用途、救
難、試験計測、掃海、哨戒、対戦車等約600機以上が使用され、日本における最大のヘリ
コプター運用機関となっています。
また、政府専用機として1986年から陸上自衛隊第1ヘリコプター団に特別輸送ヘリコ
プター隊が編成され、現在はユーロコプター社のEC-225-LP機を運用しています。
患者搬送のため駐車場にアプローチするドクターヘリ

(株)エアロパートナーズ提供
事業分野
事業分野は運送事業と使用事業に大別されます。
ヘリコプターは尐人数の機動的な高速移動に極めて有効であると自負していますが、
人員輸送については、現在「東京愛らんどシャトル」が伊豆諸島6島間を結ぶヘリ・コ
ミューターとして運航されている以外には、都心と空港間等の人員輸送といった本格的
なコミュータ運用は実施されていません。
「ドクターヘリ」は、民間のヘリコプター運航会社により委託運航されるところから、
利用分野としては運送事業として位置付けられますが、2001年度に厚生労働省の補助に
より運用開始されて以来徐々に増加し、現在16道府県で18機(予備機を除く)が病
院の救命救急センターを拠点として運航されています。
物資輸送については、特に電力会社による大型鉄塔建設や、山小屋への荷揚げ/荷下
ろし作業において、環境破壊を防ぐ効果も含めてヘリコプターは必須の手段として使用
11
されています。
使用事業の分野では、一時期最も活躍していた薬剤散布が、最近では環境保護・有機
野菜農業及び無人ヘリコプターの普及などにより急激に減尐しています。特に散布面積
では無人ヘリコプターの方が上回っています。
また、日本で民間ヘリコプターとして最初に登録(JA7001)された機体は産業経済
新聞社の輸入したシコルスキーR-6A 報道用ヘリコプターであったように新聞やTV
取材には現在では100機以上のヘリコプターが使用されています。
事業分野に供される機体数は民間登録機数の約60%位であり、現在でも 400 機前後
が使用されていると考えられます。

私的分野
2002 年に民間ヘリコプターの使用状況を調査した時のデータによりますと、官公庁機
を除いた自家用機における個人オーナーのシェアーは25%でした。一方いわゆるビジ
ネスヘリとして企業トップの移動や社内連絡便などのビジネス用途に使用されるヘリコ
プターの機数は残念ながら特定できませんが、一般の企業が所有する機体数もほぼ同じ
位と思われます。
閑話休題
ご存知の方も多いと思いますが、ヘリコプターで行けるレストランが日本にも有るので
すね。岐阜県可児市の木曽川沿いにあるオーベルジュ・ドゥ・リリアーヌというフレンチ
レストランがそれです。十数年前、物珍しさと多尐の調査も兼ねて友人達と食事に行きま
した。自宅から車で15分も有れば行ける所ですから、もちろんヘリコプターではなく、
マイカーで出かけました。我々が到着すると程なく、木曽川の下流側からロビンソン R−2
2が飛んで来ました。ヘリパッドとなっている芝生に着地しようとしましたが、店の人の
指示ですぐにレストランの建物側に移動して着地しました。メイン・ローターが建物に接
触するのではないかと冷やっとしましたが、悠々とエンジンをシャットダウン、中からま
だ30代と思われるカップルが出てきました。その後直ぐに又、川の方からヘリコプター
の音が聞こえてきます。今度はベル206ジェットレンジャーで、先ほどの芝生のヘリパ
ッドに着地しそのままエンジンをシャットダウン、中からは 40 代後半と思われるパイロッ
トのご主人と奥様、それに子供さんとお父様が相次いで降りてこられました。二組とも颯
爽とレストランの中へ消えていきました。自家用ヘリコプターはこういう風に使用するも
のだと、深く感じ入った次第。いつかは自分も、とは思っていましたが、同乗させてくれ
る友人も無く、残念ながら行けずじまいです。因に現在、名古屋飛行場から「ヘリコプタ
ーメモリアルフライト」のフランス料理コースとして遊覧飛行が運航されているようです。
小生はこのレストランとも運航会社とも何の利害関係もありませんが、ヘリコプターを愛
する一人として、ヘリコプターの活用を願い、皆様にご紹介する次第です。
その 2 では、需要動向と活用のための課題として、「ドクターヘリ」、「コミュータヘ
リ」、「機体側の課題」等の話題を書いてみるつもりです
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参考文献1.「ヘリコプター・ハンドブック 2008、Helicopter JAPAN 別冊」、2008 年 11 月 30
日、株式会社
タクト・ワン発行
うえむら
上村
まこと
誠
氏のプロファイル
1945 年高知市生、東京大学(工)航空学科卒。1968 年川崎航空機工業(株)に入社、翌年合併
により川崎重工業に社名変更、ヘリコプタ設計室に勤務、大型ヘリの自動飛行装置の開発で大
河内賞、全国発明表彰を受賞。OH-X の開発、ブレード先端形状の技術研究、特許などに実績を
示す。後にヘリコプタ等の Fly by Wire/Fly by Light 制御技術研究開発に従事。1977 年より名大
講師。2001 年日本航空宇宙工業会に出向、ヘリコプタ活用懇談会立上げ、2006 年より(株)ナス
カ取締役(エンジニアリング会社)、JAXA 客員研究員。
こよなく自然を愛するナチュラリストでもあり、八ヶ岳山麓に居を構え、バードウォッチャーとして
野鳥や野生動物の観察、山野草に埋まった庭造りなどを通して自然との共生を楽しむ。また地域
の音楽祭ではモーツァルトを歌う、演目は「もう飛ぶまいぞこの蝶々」か!
64 歳、緑の中で真っ赤な車を駆使する日々、転落しても救出が容易なようにと。
柳井 記
◇ ホームページのご案内
協会ホームページ
http://www.jbaa.org/
ホームページでは、新着情報等 より詳しい情報を提供していますのでご利用下さい。
◇ 入会案内
当協会の主旨、活動にご賛同いただける皆様のご入会をお待ちしています。会員は、正会員(団体及び
個人)と本協会の活動を賛助する賛助会員(団体及び個人)から構成されています。
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詳細は事務局迄お問い合わせ下さい。入会案内をお送り致します。
入会金 正会員
団体 50000 円
個人 30000 円
賛助会員
団体 30000 円
個人 10000 円
年会費 正会員
団体 120000 円以上
個人 20000 円以上
賛助会員
団体 50000 円以上
個人 10000 円以上
◇ ご意見、問い合わせ先
事務局までご連絡下さい。
特定非営利活動(NPO)法人 日本ビジネス航空協会事務局
〒107-0062 東京都港区南青山 2-5-17 ポーラ青山ビル9F
TEL: 03-5772-6738 FAX:03-5785-5965 E-MAIL:[email protected]
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