川崎競馬有識者懇談会概要 実施日時 平成24年8月6日(月)10時30分

川崎競馬有識者懇談会概要
実施日時
平成24年8月6日(月)10時30分~12時
実施場所
川崎競馬場大会議室
参加者
(有識者)
野元賢一氏(日本経済新聞社記者)
原
良馬氏(競馬解説者)
石飛博己氏(税理士・関東地方公営競馬協議会監事)
(神奈川県川崎競馬組合)
川﨑副管理者
田中事務局長
清水事務局次長
内容
1
ほか12名
副管理者あいさつ
(出席者紹介)
2
有識者からの意見等
3
質疑
4
まとめ
〔概要〕
1
川﨑副管理者あいさつ
川崎競馬場をもっといい競馬場にしたい、日本一の競馬場にしたいという思いで、先
生方に相談したところ、快くお力添えしていただけるということで、本日お集まりいた
だきました。
地方競馬・中央競馬の経営を取り巻く環境は大変厳しいものがございます。一部の主
催者におかれましては、単年度の赤字が出れば年度の開催の途中であっても競馬打ち切
りという厳しい報道もあります。当川崎競馬場も例外ではなく、12年前に一部事務組
合を設立した際には、繰出金が出せないばかりか、10億円を超える累積赤字を抱えて
おりました。川崎競馬が事務組合になった時、28の主催者が、12年たった今では
15の主催者となり約半分になってしまいました。これは、1年に1か所以上の競馬場
が廃止されているという厳しい経営環境でございます。
そうした中、川崎競馬場を含む南関4競馬場におきましては、共同でトータリゼータ
ーシステムの構築をはじめ、中央に先駆けて3連単の導入、SPAT4 の展開をしたり、あ
るいは、川崎競馬場におきましては、JBC 競走の誘致、キング・ビジョンやドリームビ
ジョンといった大きな映像システムを導入いたしました。さらに、ユキチャンといった
スターホースも誕生させるなど、最大で36億円の累積債務を抱えておりましたけれど
も、解消までもう一歩のところまで来ることができました。先人たちの努力により、奇
跡の回復を今成し遂げようとしているところでございます。
今年度は11月に2度目となる JBC の開催を控えてございます。また、10月から JRA
の I-PAT 投票が始まるという明るい話題もあります。本日は、3人の先生方から川崎競
馬の振興策、経営改善策についてご提言・アドバイスを頂戴し、その後、職員との意見
交換を含めて進めさせていただければと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
(出席者の紹介)
2
有識者からの意見等
(野元賢一氏)
普段は中央競馬の開催にいつもいて年間52週競馬場にいない日はない一方、地方競馬
場に来る日は最近少なくなっていて、お役にたつ話が出来るか自信はないのですが、いく
つか話していきたいと思います。中央中心に取材する形になってしまいますので、JRA と
地方の関係の設定の仕方がメインになるかと思います。
昨年から JRA と地方の間の発売協力は一気に進展しました。その先駆けとなったのはほ
かならぬ川崎競馬場の WINS 化になります。昨年12月から基本的に JRA の開催している
日は全部発売するということにして、そのために設備投資をされたと承知しております。
発売協力というのは2010年12月に公式に発表されたものですが、これはこれまでの
中央と地方の関係からすると画期的なことでした。2001年に農水省で地方競馬のあり
方にかかる研究会という生産局長の私的懇談会に参加しました。16人ほどいた大きな研
究会だったのですが、4か月の間に5回審議を行いました。その研究会の中でも非常に重
要なテーマの一つに中央と地方の発売協力ということがありました。特に中央の電話投票
のシステムを活用して地方のダートグレード競走が発売出来ないかという話を、地全協の
方が発言されたのですが、中央の担当理事の方とかなりシビアなやり取りになった記憶が
あります。研究会のメンバーの中には比較的地方競馬との関係が深い方が多かったので、
とにかく「いち早く発売協力をやるべし」という意見がその席では多かったのですが、中
央側がかなりシビアに「それはダメだよ」という姿勢をとっていた。
後からなぜそういうことになったのかという話をいろいろな方とする機会があったので
すが、1996年の橋本政権が着手した行政改革の流れで、プロ野球のコミッショナーを
されていた根来さんが中核となって我が国の競馬の在り方にかかる有識者懇談会が設置さ
れた。その後小泉政権での特殊法人改革につながっていく。公営競技関係5団体に関する
扱いは政権をまたいで先送りになっていたわけですが、2002年秋から2004年の初
めにかけて議論され、結果的に JRA は組織的にはあまり大きな変化はなく、経営委員会を
設定して経営の自主性を強化した。一方、地方競馬に関しては、地方共同法人という方向
性が示され決着をみた。発売問題に関する方向転換というのは、この問題が片付いた段階
からしばらくして、JRA としても非常に売り上げが厳しくなっていて、競馬として生き残
っていくために地方競馬が持っているリソースを生かしてかなくてはいけないと考える条
件が整ったというのが正確ではないかと思います。
地方の主要レースが中央の電話投票シテスムで購入できる。さんざん揉めていた問題で
ぱっと方向が変わってしまったのは、それだけ JRA の危機感が深いということです。中央
の担当者と話をしても、中央にとってメリットがあるかどうか、あれば中央としても協力
をしやすくなるということを何度も聞いています。
例えば、中央では、今までの場外に限界を感じている。作りたい所に作れない、作れば
建物が大きくなってしまうなどの理由で。また、最近はネットの発売が普及して、発売シ
ェアの6割がネットになっているので、現金投票に関しては、率直に言ってあまりお金を
かけたくない。そういう意味で川崎が地方の共同トータリゼーターが稼働し始める前の段
階で独自の経営判断として、中央の発売に完璧に対応できるシステムを構築されたという
事は大変素晴らしいことだと思います。
今年10月からはいよいよ PAT 方式での発売が始まります。川崎の場合ですと JBC を除
くと主に水曜日で即 PAT 対応になるかと思う。先般伺ったところ 313 万 PAT 会員のうち
117 万人が即 PAT、196 万人が A-PAT 会員になっている。主に 117 万人の方が新たな顧客
としてターゲットになるということです。そこで過去10年のデータを調べたのですが、
川崎のダートグレード競走の売り上げが2010年は20億円ぐらい。昨年はそれを割っ
ていると思いますが、いずれにしても年間450億円の売り上げのうち4.4%ぐらいを5
つの競走で売っている。どうやったら売上を伸ばしていけるかという事が一つあると思い
ます。ダートグレードの場合、売上もそうですが、競馬のショーケースという面もあると
思いますので、そこをどうやってテコ入れしていくかが大事です。問題は、今のダートグ
レートは競走の質的に、いかがなものかと思う部分がかなりあります。ゲートが開いて3
0秒か40秒たつと馬群が二つにちぎれて、中央の馬が前にいて地方の比較的能力のある
馬がどうにか付いていって、その遥か後ろの方を他の馬が走っているというように、見る
側からするとどうなのかなという競走が、どの場でも見受けられる。これに関しては、川
崎単独解決できる問題ではなく、ダートグレードは日本グレード委員会が格付けをしてお
り、地方で40くらいの交流重賞がありますが、正直多い感じがしています。中央の出走
枠を増やすという方法もありますが、そうなると中央の資源を貸す形になって、中央のレ
ースの競走資源が手薄になるので、いろいろと難しい面もあるかと思います。
昨年の地方の売り上げが3300億、大井が950億円で3割弱、その次が川崎で13%
ぐらいになります。地方競馬全国協会というのは、施行者の意向によって動くという建前
になっているので、これからは施行者の立場で売れる番組について、お隣の地方競馬で一
番の持ち分がある大井競馬と十分な意見交換をしながら、番組をどう改善していくかにつ
いて、逆に地全協なりグレード委員会をどう動かしていくか、そういう方向を探っていた
だければと個人的には思っております。
(石飛博己氏)
競馬組合との関わりを持ったのは税理士になってからで、その前は国税の方におりまし
て調査を専門としていました。税理士になってから税金という以外に企業経営というもの
も指導する立場になって、いろいろな企業の売上増進から経費削減などの提案という形で
お付き合いがあります。
税理士の抱える業務はかなり狭いが広げればどこまでも広げられる。競馬組合とは、消
費税という切り口でのお付き合いがあります。競馬組合に関しては、業績が良くなると納
税という部分で負担が重くなったり、逆に設備投資で還付してくれたり、消費税の関わる
部分がかなり大きい。今回はそういう観点ではなく有識者の提言ということで、私がお話
し出来ることは限られている。専門的なことは避けて一般論として企業経営というところ
から発生する問題として話をさせていただきたいと思います。
いろいろなクライアントさんに伺う時に、問題は会社が存続するためにはお客様の支持
を得なくてはいけない。お客様の支持を受けなければどんなにいいものを作っても、仕事
をしても淘汰されてしまうという中で、顧客満足、お客様の満足をしていただくサービス
を提供することに注力するしかない。設備投資をするにしても限界もあり、南関4場でも
基本的に出来ることは限られているかもしれない。顧客満足を高めるための差別化をどう
いう形でやるか。4場の中の差別化はもちろんですが、他の公営競技との差別化をどうす
るか、個性を出さなければ差別化が出来ない、差別化がなければ魅力が出ない。他の企業
の皆さんも同じことを抱えている。顧客満足を高めること、組合自体が顧客満足度を高め
ようとしている姿をどう見せるか、来場者、もしくはイベント等で川崎競馬場と関わる人
たちに対してどういうメッセージというか、良い競馬場にしていきたいという気持ちを届
けるためにどういう手段を取るべきか考えていくということが大切です。
今回このような機会をいただいたので調べてみると、全国の競馬組合のやっているもの
全て知っているわけではなくいが、イベントに関しては、客観的に見ても当たっていると
いう印象を受ける。場内の装飾などもそれなりに効果がでているように見える。川崎競馬
組合についてみると、同じように結構やっている。生ファンファーレとか誘導馬とかイベ
ント、B級グルメとか同じようにやっていると思いますが、それが規模の問題なのか大井
競馬との比較でいくと前面に出ていない。今回やったことに対する検証やイベントについ
ての検証を見ながら今後どういう手でいくかという事を考えていったほうがいいと思う。
最後に、私がお客様のところでお話しするのですが、経費の関係は別として、売り上げ
を拡大するということについて、計算式は人数×単価。人数×単価という中で考えるなら
ば、いろいろ分析する方法はありますが、人数というのはニューとリピーターがあり、ニ
ューとリピーターと単価で売り上げが決まってくる。新しいお客様を増やす、リピーター
は来場回数を増やす、さらにその単価を増やす、さらにこの3つを分解して、今やるべき
こと、次にやるべきこと、将来やるべきことの3つに分解して、何をやるかを常に考えて
いく。つまり9つのポイントに対して、手段が別々の方法になるはずなのですが、9つに
対して常に提案を入れて進まないといけないという話をよくします。いろいろな話がこれ
から出てくると思いますが、そういう観点で今何をやるべきか、今やったその次もその次
も用意をしておかなければならない。また、今は出来ないけど将来やりたい、やれるとい
うのも常に用意しておかなければならない。これを意識してほしいと思っております。
(原良馬氏)
私は野元さんと同じように競馬記者でしたが、今はOBになっています。昭和61年ま
でラジオ番組などをやっていて、いろいろな所に出ていましたが、今はフリーの立場で競
馬を楽しんでいる感じです。この社会に入って43年、当時は一番景気のいい時、何もし
なくても馬券が売れた時代でしたが、平成9年をピークにJRAもそうですが地方競馬は
軒並み単年度赤字が増え、累積赤字もどんどん増えてきて今は本当に大変な時代に入って
しまった訳です。フリーになる前もJRAが中心でしたが、地方競馬の仕事もけっこうや
っていました。岩手競馬、笠松、園田などからも仕事をいただいていました。フリーにな
ってから特にそれを感じまして、今は全国のウインズを回ったりしているケースが多いの
ですが、ファンの身近で仕事をしていますので、私はファンの立場としてこれからどうし
たら良いか常に考えています。売上が落ちてくれば、賞金も出せなくなり、経営は苦しく
なる。そういう点で私は常にファンあっての競馬、ファンをどうしたら良いか、ファンに
馬券を買ってもらうためにいろいろ考えなければいけないと思います。
委員として新潟県、群馬県、愛知県、石川県4県のあり方検討会に出席してきましたけ
れどその中での対応は、各県さまざまでした。石川県は、貯金があるうちに1億、2億赤
字が出てきたのでどうしたらよいか考えていて、私は呼ばれました。新潟県と群馬県は、
ずいぶん残したいと発言しましたが結果的には押し切られてしまいました。愛知県は県議
会がまだ検討をやっていますけど・・
その点、いろいろと川崎競馬は頑張っていると思います。一番悪い時は36億の赤字が
あったそうですが、今どんどん減らして5億位になりました。努力を続けていけば累積赤
字もなくなると思います。今までは何もしなくても売れた時代がありました。今は時代が
違いますから、どこに行ってもみんな一生懸命、特に川崎の場合は、私は佐々木竹見さん
の竹見カップでいろいろお世話になって頻繁に競馬場に来ていますが、いろいろな事を考
えたり、意見を聞いたりしています。競馬場を見ても馬場内の大きなビジョンもあります
し、いろいろなことをやっています。そうしてファンに来ていただいて馬券を買ってもら
ってということだと思います。それにはお金をかけないで売上を伸ばすのをどうしたら良
いか皆さんで考えていく必要があると思います。JRAもそうですが、今までは何もしな
くても売れていたので、どうしていいかわからないという時がありました。ウインズに行
くと本部から来ている職員は一人しかいない。事務の女性と警察関係のOBでやっている。
ウインズでお金をかけないでみんなでがんばりましょうとスタートしましたが、今は本当
に職員も頑張っています。イベントは手作りです。ウインズ新白河に最初行ったとき、マ
イク一本あればよいですと言って、自分たちで作っていくことが大事だといいました。マ
イクは近くの幼稚園から借りてきてイベントを始めて今も続いています。ですから職員の
皆さんにはこれまで以上に頑張っていただいて、代理店まかせとかそういう時代ではない
と思います。自分たちで汗を流してお客さんに来ていただいて、川崎でもJRAの馬券も
発売開始しましたし、先ほど野元さんも言いましたが、これからはJRAとの交流が大事
です。また先ほど石飛さんもおっしゃっていましたが今何をしたらよいのか、将来何をす
べきかを皆さんで考えを一つ一つ出して、こういう事はやりたいけどお金がないという事
が必ず出てきます。お金がない範囲でやっていきましょうというものを作ったほうがいい。
私はいつもファンの立場でいろいろ物を言ってしまうので、これからは野元さんにも川崎
競馬に来ていただいて、私はファンのひとりとして考えて、野元さんは組織面とか内部に
入っていろいろやっていますので、できれば今後は常にファンあっての競馬というのを大
事にして、考えてほしいですネ。ファンが離れたら売上も伸びないし、お客さんが来なけ
れば賞金も抑えなくてはならないですから。
3
質疑
(企画振興課職員)
ファンという話の中で迷っているところがありまして、ニューとリピーターという話が
ありましたが、どちらに軸足を置いた方がいいか、ニューなのかリピーターなのか。その
選択で非常に悩んでいる。両方やったほうがいいのはわかっているがニューにある程度や
るのは将来のため、今やるべきはリピーター対策、その辺はどうでしょうか。
(原氏)
どちらがいいか難しいところですが、中に入っている人も大事にしなくてはいけないし、
中に入りたくても入れない人もいる。競馬というのは専門用語を使ったりするので難しい。
競馬場に行きたいけど女性はとくに雰囲気が暗い、怖いとか。そんな時代ではないと言っ
てもまだそういう面もあります。新しいファンを引き込むことも大事だし、中に入った人
をほっておけばいいというわけにもいかない。両方考えなければいけないと思います。
(野元氏)
正反対に聞こえてしまうかもしれませんが、新しいファンといった場合に原さんはそう
いう経験が豊富なのでいいのですが、それにくらべると私はそういう機会が少ないのです
が、東京競馬場に来たことがない若い人に来ていただいて席を用意してという経験が何度
かあります。東京競馬場の新しいスタンドは 2007 年に出来ましたが、率直に言って日本の
競馬場ではこれ以上ないという施設です。そこにお招きするとたいがいの人に感動される。
飲食関係もそんなに悪くない。おととし、30歳前後の女性4人にダービールームという
一番いい所に来てもらった。みんなすごく満足して帰っていただいたのですが、問題は、
買ってもらうためには、初めて来た人にはベターっと誰か人がついていないとだめなこと
です。当日は毎日王冠というレースがあった日で、記者席とダービールームは 50 メートル
くらいしか離れていないので、行ったり来たりしながら話をしましたが、それでも大変で
した。
昨年のオークスの日には男性3人女性3人の6人で、ワンフロア下の席を主催者の方に
用意してもらったが、行ったり来たりすごく大変だった。面倒を見る暇がなかったのでど
うしたかというと、前の晩にA4で3枚のペーパーに、「このレースはこんなですよ」とい
うのを自分で作って、人数分コピーして配りました。そのぐらいやらないと買ってもらえ
ない。その日はたまたま一人がかなり高い馬券をとって満足して帰ってもらって良かった
のですが、場内で仕事をする人間からすると厳しい。人を連れてくるとしたらベターっと
ちゃんと付いていられるくらいでないと、なかなかエスコートするのは難しいという点を
すごく感じました。他の競馬場は東京競馬場の立派な施設に比べてどうなのかという点も
あります。来てもらった人にあまり悪いイメージを持たせないためには、正直言ってここ
はいかない方がいいとかここは見てもらってもいいとか、そういうこともあると思う。新
しいファンを引き寄せるというのはすごく時間と労力が必要ということを一つ念頭に置く
必要があると思います。
基本的には今質問された方のお話のように、今いるファンの方をきちんとケアしていっ
て余力が出た中で新しいファンに何かやっていくという手順なのかと思っています。
(原氏)
確かに入っている人は大事にしなくてはいけない。その人たちが離れていったら新しい
人を呼ぶのは大変です。JRAも去年まではオークスの日に著名人の女性を150人くら
い招待してというのが20年くらい続いていましたが、今年からやめてしまいました。こ
れはやめてよかったと思う。なぜかというと招待者に年に一度バスで東京競馬場に 2 台 3
台とお連れして食事出して土産まで付けて帰した。そういう人がそのあと 2 度 3 度も来る
かというとそれだけです。その日だけです。そういう人たちは、競馬場はいいですねと言
いますが長くは続かないのです。
(野元氏)
その件に関して言いますと、参加者が自分のブログに書いてくれるので、JRAはそう
いうのを期待しているのではないかと思う。そういうのは全く意味がないとはいえないの
でしょうが、費用対効果としてどうかという話です。
(原氏)
そこで、お金ですよね。お金をかければ何でもできますが、今は節約することも欠かせ
ません。JRAでもいまは土曜日などあいている部屋を使って下さいと企業やファンに確
保している。企業には競馬が好きな人もいて、初めての人を連れてくるケースが多い。
2、30 人と。部屋を貸すだけでいい、昔は予想紙などいろいろ用意したりして「来てくださ
い」とやっていましたが、今はJRAもそういう時代ではなくなっている。部屋を用意し
ますからどうぞ競馬好きな人は来てくださいというやり方が一番。川崎競馬でしたら地元
とタイアップしていくことが必要。ファンを大事にするのは難しいもので、今は高齢化し
て若い人が入ってこない。年配ばかりですよね。このまま放っておいたら若い人が入って
こないかと言ったらそうでもない。やっぱり好きな人はいる。子供ができて今は余裕がな
いとか、もう少し子供が大きくなったらとか。今 50 代 60 代から競馬をやりたい人も結構
います。私の後輩でお医者さんとか堅い仕事をしていた人が定年になって競馬を教えてほ
しいと来ています。そういう人たちをどう呼び込んだら良いかということです。
(石飛氏)
ニューとリピーターの話で、その延長にリピーターというのはリピート率とリピーター
自体の数というものがある。リピーターにも2種類あって、毎日毎週しょっちゅう来られ
ている方、今足が遠のいている方もリピーターとすると、それとこれとは違うアプローチ
になる。毎日投票している方と最近足が遠のいている方、他場に行っている方そういう方
もリピーターに戻すことも必要だと思う。それは場合によっては違うアプローチになるの
ではないかと思います。
売り上げの場合、単価×数量、単価は客単価、数量はニューとリピーターですが、もう
一つ飲食店の場合で言うと追加されるのが回転数というものがあります。満席にならなく
ては回転数が良くてもお客様自体増えないということになりますから、商売によっては回
転数は関係ないということもある。競馬場において言うと、全部に賭けているのか、賭け
る回数を増やすというのが売上に繋がるのか、そうするとかける回数を増やすアプローチ
は何なのか。結局は一つ一つ分解していって、その中で即効性のあるもので考えていくこ
とが分かりやすい。とっつきやすいという事でそういう手法がいいと思います。
(野元氏)
今までの話と関係するかと思いますが、三連単が回転を損ねているという状況認識はJ
RAにもよくあるのですが、こちらのシェアや回転に対する影響をどうとらえていますか。
(企画振興課長)
現在三連単は 50%以上シェアを占めておりまして、端的に言いまして回転数は悪くなっ
ています。三連単はシェアが伸びるのと比例して回転数は悪くなる傾向は否めません。
(原氏)
三連単はプラスマイナスがあります。私も最近は買いません。ファンというのは競馬場
に来て一つも当たらないで帰ったら面白くない。面白くないものは長続きしない。安い配
当でも当たれば、特に初心者は喜んで 350 円とか 400 円の配当でも払戻しに飛んで行く。
そういうことを考えると馬券の種類が多すぎて買いこめない人がけっこういます。
(野元氏)
これは、さっきの初心者をどうやって捕まえていくかという話と絡んでくるのですが、
新しく来た人にまず何を言うかというと三連単の話は基本的にしない。とにかく単勝・複
勝を買ってみて下さいという言い方になる。中央だとプラス10もあるし、単勝・複勝の
オッズもそれなりにリーズナブルになっている。今は前日の夜から発売していますから、
JRAのサイトを開くとだいたい人気はこうだなと、朝の段階である程度見通しが立てら
れる。ところが「南関東でさえも」と言っていいと思うのですが、単複のオッズが率直に
言ってわからない。締切10分20分前の段階でオッズが大きく動くので、非常に人に勧
めにくいような商品になってしまっている。このへんはすぐに改善する問題ではないと思
います。三連単がシェア 50%を超えているというのもそういうことの裏返しになっている
と思いますが、何か策がないのかなという感じがします。
JRAのように、今も既に単勝と複勝は 5%上乗せしていて、しかもプラス10があると
いう状況に比べると、こっちはどうしようもないのですが、何とか単勝・複勝に関しては、
リーズナブルで今より多少は「手を出してもいいかな」というものにしていかないと厳し
い面があるかもしれない。とりあえず馬連などでのシェアがもう少し増えるようなやり方、
今JRAが2連福を一生懸命やっていまして、三連単へのシェアの過度な集中を抑えよう
としているのですが、そういう手段がある気がします。
(原氏)
我々はこのサークルの内で仕事をしているとみんなが競馬ファンだと思ってしまう。一
歩外へ出ると競馬を知らないという人がたくさんいます。青森県や、山口県のウインズに
行っていますが、山口県は競馬のない県で競艇や競輪はあるのですが、ウインズを競馬場
だろうと感じているファンがいっぱいいます。そういう人たちに競馬っていうのはこうい
うものだと理解させる必要もあるし、昔、競馬場は汚い暗い怖いの 3Kといわれました。私
が新聞記者のころは。今はそういうイメージではないと思うのに、まだそういう人たちは
けっこういます。競馬場はそうではない、来ればいろんな楽しみがありますと、ただ馬券
買ってレースだけ見るのではなく、馬場内に入れば子供たちも遊べますよと、そういう競
馬場に変わってきています。それが馬券に結び付くかというと別ですが、ただ来てもらう
という事は大事ではないでしょうか。
(野元氏)
競輪場、競艇場に足を踏み入れることがなくて、どういう雰囲気になっているか率直に
知らないのですが、記事などを見ると、何年か前、競輪が最初に三連単をやったころです
が、ある方面に依頼して調査した。すると5年前に調査した当時と比べて、来た人の平均
年齢がきれいに5歳上がっていた。誰も新しい人が来ていないという話です。その後、1
0年近くたっていますが、状況は変わっていないようです。よく聞く話は、無料の専用バ
スがあって乗ってみると私と同じくらいの年代の人が間違いなく車内で一番若いそうです。
競輪、競艇ましてオートレースは、どうしてもギャンブルの器としてもともと設計され
たものなので仕方がない。今ロンドンオリンピックをやっていますが、競輪は正式種目と
して採用されている。ローマ字で書く KEIRIN は、日本でやっている競輪とは似ても似つ
かないもので、同じ競技のはずが、日本でやっている漢字の競輪の方がガラパコスになっ
てしまっている。横の選手を弾くとか、ラインを組むといった競輪独特の世界が、国際競
技にしたことによってガラパコスに見えるという不思議な状況を生んでいるようです。競
輪選手がオリンピックに出るようになったのは、確か 1996 年からだったと思うのですが、
すでに3大会でメダルを取っているはずです。それが残念ながら競輪事業の売上にはあま
り反映されていないというのは彼ら自身が認めるところです。女子競輪がこれからどうな
るかというのはまた別の問題です。
そういう意味で言うと競馬はどこかで外と繋がっている。実は競馬も国ごとに見ると、
一国一国でガラパコス競馬をやっていると理解した方がよくて、本当の国際競走ではない
ということは、他のスポーツを見ていて強く感じます。結局中立地というのがない。ドバ
イで競馬をやったらドバイの馬が強いし、アスコットでやればもちろんイギリスの馬が強
い。東京でやったら凱旋門賞やキングジョージで勝つような馬が日本の馬に負けてしまう。
厳密な意味での国際競走は存在しないと言ってもいいと思うのですが、それでも外に通じ
る回路というのはあって、地方からもコスモバルクはシンガポールに行ったし、アジュデ
ィミツオーはドバイに行っている。ここは一つの回路としてある程度キープしておいても
いいかなと思います。
もう一つの問題になるのは、これから先南関東の走路をどうするかという話があります。
長い期間、走路に手を付けていない状況があって、次にやるとしたらオールウエザーをや
るのかやらないのかという議論が出てくると思う。その時に川崎としてどう考えるのか。
そのへん何か考えたりしていますか。
(事務局長)
JBCの総会に行った時に、ある方が、地方競馬場全部をオールウエザーにするようJ
BC協会として正式に要望するべきだと発言されたのですが、設備投資、維持も含めてい
ったい地方競馬全場にどれだけの余力があるかということと、それをやって売上にすぐ結
びつくかというところは非常に見えにくいので、地方としては判断を慎重にせざるを得な
いのではないかと考えます。
(野元氏)
主催者の3割近い持ち分をもっている大井さんがどう判断するかによって、そこでもし
かしたら施行者の選別が行われる可能性があるかもしれない。
(原氏)
難しいのは、JRAや、地全協とも関係がありますし、南関東の大井、浦和、船橋とど
うやっていくかということもあります。そういう中で川崎は川崎だけの独自なものを出し
ていくというのもあるかと思う。それには騎手や調教師さんやきゅう舎関係者の協力がな
いといけませんネ。番組もレースを面白くして競馬って面白いなというのがないとダメだ
と思います。
私は、ファンによく言うのですが、こんなに面白いものはない。スポーツはなんでも見
に行きますけど、競馬ほど自分が一票を投じて参加できるという楽しい競技はないですよ
と言っています。だけど来て馬券買って一つも当たらないで帰っても面白くないですよネ。
そこで3連単は難しいから買ってはダメですよと初心者にはよく言うのですが、当たりや
すい馬券を教えるとみんな喜んで買っています。川崎競馬はコアのファンが多いと思うの
ですが、まったく初めて来た人たちをどうするかですよね。
(野元氏)
他種競技をみますと、競艇が非常にリピーターに対して、ちょっとやりすぎじゃないか
というくらい手厚いサービスをやっていますが、その辺についてどうお考えになっていま
すか。
(企画振興課長)
おっしゃるとおりどのくらい手厚くしていくかというところだと思います。
(野元氏)
大村競艇なんかはやりすぎかなと思います。
(企画振興課長)
リピーターの方は、ファンの中で一番のお得意様なのでそこをおろそかにしていると、
全体的にファンのイメージが悪くなってくるということに繋がってしまう。何もやらない
というのは選択肢としてあり得ない。あとはどの程度やるかということにつきるので、日々
一番考えているところです。
(野元氏)
競艇の場合、競走資源は全国一体。一言で各施行者間に、人の客をとるという考え方が
広がっていて、それがああいうふうな形で出ていると思うのですが、川崎競馬の場合、同
じ競馬だからと言って名古屋や大阪のお客様をとるという考え方にはあまりならない。そ
ういうのは4場単位でやっていくとか、南関4場としての行動はあるかなと思います。
(企画振興課長)
ファンにアンケートをとったら、何に期待しているかというと、何か貰えるということ
に期待している人が多い。そうすると何もやらないという選択肢はあり得ない。そこに期
待して来られるので、何もやらないと何だということになる。それから石飛先生の話にも
ありましたが、川崎競馬場としては、大井競馬場にかなり距離が近いので、ファンも半分
近くは両方のファン。そうすると、大井競馬場がやることをある程度やらないとファンか
ら差別化されてしまうので、そこは宿命的に川崎競馬場の場合はあります。
(野元氏)
逆に言うと、大井と川崎という関係を考えて、二つの競馬場で来場ポイントをやるとポ
イントが稼ぎやすい設定にする。そういうことをやるとかはどうでしょうか。
(原氏)
いろいろな事をやっても、すぐに結果が出るかといったら出ないです。JRAの職員と
話すのですが、何をやってもすぐに結果が出ないとよく職員は言われます。だけと何かや
らなければダメでしょうとよく言うんです。お金をかけずにやるにはどうしたらいいかと
いうことがポイントですね。お金がたくさんあればいろんな事ができるのですが、お金を
かけないでやるのは難しいですが、ファンが期待していることをしなくてはいけないとも
思います。
ウインズに行くと、JRAも、前は、ウインズは競馬場の管轄でしたが今は本部主導で
す。新白河や横手に行きますと、以前は福島競馬場の管轄でしたから、競馬場の場長の判
断で少しは予算が出たのですが、今は全部本部中心ですから。JRAの組織が良くないと
思うのは、何でも本部でやることでしょう。それぞれに責任を持たせてやったら、競馬場
やウインズの責任者は一生懸命やります。これからは各部署がいろいろなものを考えてや
っていくのが必要かなと思います。
あとは先ほど言ったように、きゅう舎関係者に協力を得なければダメです。みなさんが
一生懸命考えても調教師や馬主が協力しないとだめですよね。
(野元氏)
大井ではきゅう舎の人もいろいろイベントに協力しているということを大井の厩務員労
組の方から聞いたことがあります。
(原氏)
そういうことが必要だと思います。そういった点では竹見カップで全国からトップ騎手
が来るのはいいと思います。JRAも新潟競馬場で騎手が出てゼッケン販売をしたら、そ
のファンから集まって売上を被災地に寄付したりしています。
(石飛氏)
今、大井競馬場でやっていることをイベント会社自体がHP上で宣伝している。二番煎
じになりますが、そういうところにもう一度こちらでもお願いするという選択肢はあると
思います。まずは自分たちでということになると、ステークホルダーとしていろんな関係
者がいらっしゃると思うのですが、一緒になって競馬場を作るという方向で知恵を出し合
うというのが肝心で、新しいことを作り出すことは、それぞれに出てくればいいのですが、
出てこない場合には、過去やったものや今までいろんな事をやってきたものを評価して、
いいものは継続してやることが大事だろうし、ダメだったものも支持を受けるものに代わ
るかもしれないし、今までやってきたことも大事に一つ一つをいろいろ活用していくべき
だと思います。
(原氏)
大きなイベントをやるには代理店との関係は断ち切れないと思う。JBCに向けて大き
なことをやろうとしても職員だけでは無理で、やはりイベント会社に頼まなくてはいけな
いのですが、やはりお金はかかります。細かいことは代理店に任せないで、職員だけでや
ろうというものを考えなくてはいけないと思います。
(競走課長)
ダートグレードのことで考えをお伺いしたい。ダートグレード競走は昔JRAと自地区
と他地区の馬を集めて、強いダート馬をつくるというところから始めてきましたが、先ほ
ど野元先生が言われたように一軍と二軍が走っているような競馬になってしまっている。
他地区の主催者に聞くと、JRAをもう少し増やしたいと言っていますが、競走課長と
しては、まず南関東から強いダート馬を生んでJRAに賞金を持っていかれないようにも
う少しいい競馬をしたいという願いがあります。野元先生にこれからのダートグレード競
走の在り方とかJRAの考え方などご指導をいただきたい。
(野元氏)
私個人の考え方ですが、率直に言って年間40レースというのは少し多すぎると思う。
では、どのレースを削るかという話に当然なりますが、本当は南関以外の主催者がもう少
し考えていい部分があると思います。道営が以前グランシャリオカップというレースをや
っていましたが、それをやめて浮いた賞金を普通のレースの出走手当を積み増すために使
ったケースがありました。そういう考え方を個別の主催者単位、特に厳しいところで判断
をしていけば、レース数が減る方向に行くのではないかという気がしている。10月から
(IPAT 発売で)状況が全く変わるわけですが、最初の日が白山大賞典でそのあともいくつか
小さい主催者でダートグレードが行われます。はたしていくら売り上げが増えるか。
川崎でやっている5つのダートグレードの売り上げを過去10年分、書き出してきまし
たが、正直もう少し売れてくれないと困るという思いはあります。川崎記念が一番多いと
きで 7 億 7000 万、後は全日本2歳優駿、これは2歳なので致しかたない面もありますが、
最多で 3 億 8000 万、関東オークスはユキチャンが来た時は売れましたが、後はだいたい3
億円前後となっている。年間で20億。即 PAT の人が買えるようになるので、そこは年間
30億ぐらいにはしたいと思います。そのために何をするかという部分では、川崎だけで
できないことも非常に多いのですが、年間の競走体系を考えていく中で、本当に40とい
うのが妥当かという問題提起、各主催者にとってダートグレードは収益になっているので
すかということです。10月以降の状況は様子を見ないとわからないですが、その前の時
点では、足が出ているのでは、と思うような売上のレースが非常に多い。少し前まで 3000
万円というのが一番下の賞金(現在は 2,200 万円)で、賞金が5着までで 5100 万円です。半
分補助金としても自腹で 2550 万円という事になりますから、3億円だと売上の 8.5%が1
着から5着までの着賞金になってしまう。これでは収益が出るわけがない。もっと売れて
いないレースがたくさんあるわけですから、2億しか売れなかったら1割以上は着賞金で
出てしまうということになります。1個レースあたりの収益性を考えたら話にならない。
他場はもっと考えてもいいかなと思います。今の数を維持したまま中央の枠だけ増やして
くださいとなると、中央は「冗談じゃない」ということになると思います。今週のダート
のオープン競走の登録馬の状況を見ると、フルゲート16頭に対して11頭しかいない。
11頭中3頭が条件馬。そのぐらいしんどい所があるわけです。よそに走れる馬を放出し
た結果です。お盆は他場でいくつかダートクレードがある時期なので、当然そこに流れて
しまう。JRA が売れば、小倉のダートのオープン競走でも10億円くらいは売れるはずで
すが、3億円しか売れていない所に自分の馬資源をさらに持っていかれたらかなわない。
そうすると答えは二つしかない。これから中央の電話投票で売るわけですから、当然委託
料が入ってくるグレードを頑張って作って、中央が(馬を)貸してやっても良かったなと思う
レベルの売り上げをたたき出すか。地方側は中央でいいレースをやってもらってそれを発
売して売上の上がりをもらうか。どちらかしかないと思うので、そのあたりの冷静な判断、
合理的な判断に各主催者がこれから向かわなければならない。主催者は主催者で努力され
るけれども、今後のダートグレード競走全体の在り方について、地全協あるいは全主協が
あるのですから、そういう場で問題提起されていくことが大事ではないかと思います。
(原氏)
地方にスターホースが出てきてほしいですね。これから交流重賞をJRAで発売します
よね。そうなるとどこまで売れるかという心配があります。JRAの馬だけ買っていれば
では売り上げは伸びないと思います。地方から優秀な馬がたくさん出てきて中央のファン
が地方の馬を買って地方競馬を応援するような形がとれればうまくいくのではないかと思
います。
(野元氏)
今、地方で活躍している馬は、実はサンデーレーシングというケースも多いです。
(原氏)
グループ法人の馬が地方にもずいぶん来ていますから、このあたりをPRしてファンに
も目を向けてもらうという事が大事かと思います。
(野元氏)
グレードレースに限らず今後売っていくわけですから、どのくらい資源を投入していく
かという問題がある。即 PAT で全レース売るために、メインではないレース等を含めてど
ういう風に情報提供されていくのか、このあたりは決まってから随分たっているのでいろ
いろお考えはあるかと思いますが、よほどしっかりやっていかないと、せっかく発売のチ
ャンネルが広がったのだから買ってもらうために必要な情報をどのように提供していくと
いうことが重要と思います。
(副管理者)
売上が地方全体でピークの3分の1、約1兆円から 3300 億円になっていますから、供給
過剰ではないか、数の論理から言えばそういう言い方もされています。その中で売上のシ
ェアをどう確保するかということだと思います。今、ブロック競馬がかなり浸透していて、
南関は一つのブランドで戦ってはいますが、南関の中でも戦略は異なっていまして、浦和
競馬は3年前に地方競馬全体でも約8年ぶりとなる繰出金を埼玉県と浦和市にそれぞれ出
しました。浦和競馬場の取組方針のひとつに、場外発売でも力を入れている結果だと認識
いております。
競馬場としては、主催者は他からいい馬を持ってくれば馬券は売れますが、賞金は他所
へ持って行かれてしまうという課題があります。例えば、交流競馬をやっていますからJ
RAとか他地区の強い競馬場に賞金を持って行かれ、自分のところの調教師・騎手・厩務
員に賞金がおりていかない。つまり自厩舎にお金が回って行かない。その結果、強い馬が
表れず、調教師や騎手が腕を磨く機会も失われ元気がなくなってくるという、負のスパイ
ラルにどんどん入ってしまっています。南関各場で預託料も違ってくれば、賞金体系も違
いますから、お客様から見ても「何やっているのだろうな」というもどかしさがあると思
いますが、主催者もそれ以上にもどかしいところがあります。
もう1点、ファンの話がずいぶん出ましたが、ファンといっても非常に多様です。ファ
ンの中にも固定層がいます。雨が降ろうが雪が降ろうが当場には 3000~3500 人は来て下さ
います。これは10年前とそれほど変わっていない。10年前も 4000~4500 人くらいで、
1000 人は減っていますが、必ず固定のファンがいます。固定ファンはヘビーなファン、コ
アなファンと呼べますが、それだけではやって行かれないので、やはりニューなファン、
あるいは今は止めているが、機会があれば復帰したいという馬券購入停止者、ライトファ
ンなどといろいろファンの型があります。1レース100円のお客様より1レース1万円
とか5万円で遊んで下さるお客様を大事にしたいという気持ちも分からないではありませ
ん。昔は競馬場がファンを選んでいましたが、今はファンが競馬場を選ぶ時代になってい
ます。完全に選別されています。われわれは両方のファンを大切にしたいと考えておりま
すが、1万円使ってくれるお客様には1万円分のサービスを考えなくてはいけないのに、
100円のお客様に対しても同等になってしまいますと逆の意味で不公平感が出でまいり
ます。
したがってわれわれとしてはファンを一括りにしないで、分離してそれに合ったメニュ
ーをちゃんと用意していきたいと考えておりますし、B級グルメの話も出ましたが、交通
アクセスの問題もあり難しい課題です。しかし共通して言えることは、強い馬が出てくる
こと、花形のジョッキーをどんどん出していくこと、そういう元気のいい競馬場であれは、
やはりファンから支持されるだろうと思いますので、今日のご意見を踏まえて、また検討
していきたいと思います。
(原氏)
ファンというのはピンからキリまで。初心者がいればキャリア40年のファンもいる。
どこを大事にすればいいか難しい問題です。馬券を買うのは1日に 2000 円、3000 円の資
金で 100 円ずつ買って楽しむファンもかなり多いし、昔ほど大金を投資というファンも少
なくなっている。楽しみ方がみんな違うし、さまざまですよね。これが難しいところで、
どこに狙いをつければいいか難しい。私は初心者の身近で一生懸命頑張っています。
(野元氏)
今、中央の場外でエクセルフロアというのをいろいろなところで作っていますが、非常
に客単価が高い。そのかわり座るのも行列で大変なことになっている。1日10万単位で
使う人が多いらしいのですが、例えば、小さくてもいいからそういうフロアを作ってみる
手もあるかと、お話を聞いていて思いました。
馬に関していえば、一番は調教師だと思う。南関で強い馬と言ったら、川島さんのとこ
ろ。川島きゅう舎は年間 6 億から 7 億を稼ぐきゅう舎で、中央競馬で同じくらい稼ぐきゅ
う舎というのは20もありません。10幾つです。関東(美浦)ならトップクラスです。美浦
と船橋はせいぜい車で1時間程度しか離れていませんが、美浦で年間6億稼ぐきゅう舎は
今3つくらいです。それくらい川島さんのところはすごい。おそらく川崎も大井もそうい
う人は欲しいと思う。ただ、いろいろ難しい問題があって出来ないと思うのです。免許と
いうと地全協マターになってしまいますが、例えば人材のプールを広く求めるとか。どう
しても地方のきゅう舎は、地方のきゅう舎にいた人の中から調教師が出てきている。これ
は中央も同じですが、人的なプールの枠をもうちょっと広げていくという考え方がある。
今地方は認定きゅう舎をやっていて、そこは調教師免許を持っている人が管理しています
が、北海道の道営ではノーザンファームがいきなり当日輸送で競馬に使っている。ここで
はそういうことはできないですが、調教師の人材に関しては、クローズのやり方がこのま
までいいのか、中央にも共通した問題だと思っています。これは簡単に解決する問題では
ないですし、地方でも地全協という枠組みの中で議論される話だとは思います。
(原氏)
マスコミの利用の仕方ですね。私もマスコミのひとりですが、私が入ったころとはただ
◎印を付けてというだけですね。今は主催者も変わっているしファンの楽しみ方も変わっ
ている。そのあたりで専門紙は別として、スポーツ紙が昔と同じように3連単的中とかや
っていますね。もうちょっとスポーツ紙も変わっていかなければと思ったりします。広告
を1ページ出すのもいいのですが、川崎競馬コーナーとかニュースですね、こういう馬が
出たとか調教師や騎手についても扱ってもらえるコーナーを設けてもらいたいですね。
(野元氏)
報知新聞に川崎の人物が出ているコーナーがあったと記憶していますが、単に何が勝っ
た、馬券が当たった、外れただけでない、そういう情報提供を戦略的にやっていくことで
すね。
(原氏)
ニュースを発信していくという事が大事ですね。今のスポーツ紙は私がいたころと全然
変わってないですね。そういう点を崩さないといけないといつも思うのですが、ただ◎を
つけて満足している記者が多すぎる。私もこういう事を言える立場ではないのですが、川
崎競馬場の馬場内でこういう食べ物がおいしいですよと書いてありましたよね。そういう
のをちょっといれていくなどマスコミをうまく利用して川崎だけニュースを出していくの
も必要かなと思います。
(石飛氏)
魅力あるレースというのも必要だと思いますが、ある経営者の方との話で競馬も企業経
営もうまくいっている方、その方が言っているのですが、どうせ負けるなら行って楽しい
と思わないと行かない。楽しい環境をいかに作るか。期待値が 75%ですから、はずれる確
率の方が高い中で皆さんに来ていただく。来場していただくことで売り上げにそのままつ
ながるかどうかわからないけれども、少なくとも来場者を増やさないといけないですから、
増やすためは来ていただいて楽しめる環境を、楽しいかどうかというのはその中で作り出
す。まずは来ていただくためにはマスコミの力を借りていかないといけない。まず楽しい
環境をつくってそれを広報していくというのが大事だと思います。
(原氏)
どこの競馬場もスペースが限られてしまいますが、川崎競馬は馬場内がいいと思います。
馬場内にベンチを増やすとか、家族連れで来ても楽しめるように子供たちも飽きずに最終
レースまでいるような競馬場にするというのが大事だと思います。
(野元氏)
ひとつ質問ですが、法改正の話が先ほど出ましたが、控除率の設定についてはどういう
お考えですか。先ほど三連単のせいで資金が回転しないという話がありましたが、この件
はJRAも非常に苦心されています。
(企画振興課長)
まだどうしようと決めているわけではないので、JRAさんともフリートーキングレベ
ルでしか話をしていませんし、我々もまだ何も決めていない。
一般論的な考え方として、下げるというのは経営改善に繋がってくる部分もありますが、
弾力化という趣旨からすれば、消費税の引き上げもありますので経営改善のために下げる、
一方でファンサービスという視点から引き上げるということもありうる。JRAも単勝・
複勝 80%にすることでシェアも以前より少し上がっているのも事実ですし、両方検討しな
ければいけないということは念頭に置いてという状況です。
(原氏)
やはり大井の出方とかJRAだっていろいろ地方競馬がどうするかと考えているだろう
し、確かに 75%を 70 にすれは 5%主催者に返りますが、ファンから見たら、なんだ川崎は
となってしまう。馬券の種類によって率を変えていくのがベストと思いますネ。
(野元氏)
おそらく中央はそういうことをやってくると思います。
(原氏)
中央はそうですね。連複は今もやっていますが、そのあたりはもう少しファンサービス
に目を向けて、逆に三連単あたり率と下げるというケースもありますから、その辺を考え
られたらいいと思います。
(企画振興課長)
お話は尽きないようですか、ここでいったんまとめさせていただきます。
(事務局長)
本日は、お忙しい中貴重な時間をありがとうございました。第1回目であるにもかかわ
らず、非常に幅広く深いお話をいただきまして、本当にありかとうございます。時間の関
係で簡単に申し上げますけれども、野元先生からはJRAと地方の関係について IPAT の導
入は画期的であるというお話しがありました。なぜ画期的なのかというのが今日良くわか
りまして本当にありがとうございました。このICT社会で最近の売上を見ても 43%くら
いは在宅投票です。そういう意味で、この流れは非常に大事にしていかなければいけない
し、大いに期待すると共に、我々が期待できるものにしていかないといけないことを非常
に感じました。また、一つのレースの在り方として、ダートグレードでちょっと魅力のな
いようなレース展開ということについてもいろいろ考えていかなければいけないと強く考
えたところでございます。
私どもは、収入に合わせた歳出、身の丈にあったものをやるべきでありますが、このま
までは入るものが少なく、身の丈がどんどんシュリンクしていくことになるので、我々と
しては逆に増量をはかるという策をどうしていくかが大事だと非常に感じました。
そういった中で、石飛先生から差別化の話がありました。これは馬主さん方も言ってい
ることで、他場との差別化をどうやって図るか。同じことをやっていてもダメだとよくわ
かっているので、そういった知恵なり工夫を我々はしていかなければいけないと思います。
新たなファンなのかそれとも既存のファンリピーターなのかという議論もいろいろいた
だきました。ここも非常に大事なことであるというふうに思いましたのと、今から将来を
考えた展開、これが大事だという事も感じたところでございます。
また、原先生からはファンの投票でわれわれは潤っているのだと、これが減れば必ず苦
しくなると、馬券を購入していただくとことについて、ここは大事なキーワードだったと
思うのですが、お金をかけずにいかにやるかについては私共が常に考えていかなければい
けない。特に職員という大きな力があるわけですから、うまく活用していくことを実践し
ていかなければいけないと強く感じたところでございます。
野元先生の話にもありましたが、新しく連れてきたお客様に、買ってもらうためには、
ある程度面倒を見る必要があり、大変だったという話もありましたが、私どもも最初に一
人職員をつけて馬券の買い方だとか、こういう視点が必要だとか、10 分でもいいから最初
に教えてあげると若い女の子も相当楽しんで買っていた場面もありますので、ちょっとし
た気配りも必要ではないかと考えております。三連単の話もありましたが、賭け式の在り
方自体、本当に考えていく時期にきているというふうに考えております。昔に比べて一日
当たりの一人当たり購買単価が非常に落ちています。景気のせいもあるかもしれませんが、
逆にいうと三連単で一発当てれば 100 円が 10 万円になると、それでいいじゃないかとなる
と購入額は減っていくわけです。だとするといろいろ考えなければいけないと思ったとこ
ろです。
最後に原先生からお話がありましたマスコミの活用については、うまく活用して、より
広く知っていただき参加していただくことは非常に大事なことであると感じたところでご
ざいます。
本日第1回目でございますが、次回またあろうかと思います。また貴重なご提言をたく
さんいただければありがたいと思います。以上簡単ですがまとめにさせていただきます。
ありがとうございました。