平成 13年度 高齢者・障害者等用情報通信機器等開発事業 公募採択案件 8 事業名:視聴覚障害者向け支援PDAツールの開発 団体名:財団法人 共用品推進機構 1.事業の概要 視覚障害者および聴覚障害者のコミュニケーション上の弱点を支援するために、それぞれの利用特 性に応じたユーザーインタフェースを持った、コミュニケーション支援機能(音声認識機能、音声合 成機能)を搭載したPDAを開発することである。 2.開発成果 本事業において開発した機能とその概要は以下のとおりである。 (1)シーン別慣用会話機能 聴覚障害者が、対人会話を要する様々な場面を想定して、それぞれのシーンで慣用的に使用される ことが多い、簡単な会話集を用意してPDAに内蔵することにより、適当な発言内容を容易に選択で きるようにした。 (2)音声合成・認識表示機能 聴覚障害者は、音声合成中、音声認識中など音声情報を認識することができないため、その代替とし てPDAの状態を画面表示し、聴覚障害者のPDA操作を誘導できるようにした。 (3)連携ランチャ機能 PDAを用いて聴覚・視覚障害者のコミュニケーションに必要なソフトウェア機能を利用する際に、 ソフトウェア間を簡単に連動させられるように、ランチャ機能を開発した。 なお、ソフトウェアは現在開発が進 ① められている市販品の音声認識開発キ ット、音声合成開発キットをPDAに ② インストールし、各機能が単独でも利 マイク 音声入力 タッチッパネル ペン入力 画面 テキスト出力 スピーカー& イヤホン 音声出力 用可能なように自主開発として「音声 ③ 合成I/F」 「音声認識I/F」を開発 した。 ハードウェアは、マイクロソフト社 製OS(Microsoft Windows CE)搭載 の POCKET PC 端末を、市販の中から本 開発に最適なものを選定して、使用し た(COMPAQ 製 PDA「iPAQ」)。 図1 PDA端末 3.実証実験結果 (1)実証実験の内容 目 的 対象者 場 期 所 間 ①聴覚障害者に対する実証・評価実験 ・PDA全体、連携ランチャ機能、シーン別慣用会話機能の有効性・操作性評価 ・音声認識機能、音声合成機能の有効性・操作性評価 ・音声合成・認識表示機能の有効性・視認性評価 ②視覚障害者に対する実証・評価実験 ・PDA全体の操作性評価 ・連携ランチャ機能の有効性・操作性評価 ・音声合成・認識表示機能の有効性評価 ③聴覚障害者・視覚障害者間に対する実証・評価実験 ・聴覚障害者・視覚障害者間のPDAを介したコミュニケーションの有効性評価 聴覚障害者 7 名、視覚障害者 3 名、聴覚障害者・視覚障害者間の実証・評価実験は上 記と重複するメンバー2 名 当機構 他 平成13年12月∼平成14年2月 (2)実証・評価結果 ①聴覚障害者 シーン別慣用会話機能については、聴覚障害者の中でも発音機能が弱い人あるいは言語障害者での 活用を想定していたものであったが、それでも半数以上のモニターが本機能を役立つと回答している。 ②視覚障害者 連携ランチャ機能で、起動ボタンによる立ち上げと音声指示でのアプリケーション移動操作を実現 しており、起動の操作の容易さ、アプリケーションの移動操作のしやすさについて、高い評価を得た。 ③聴覚障害者・視覚障害者間 ・ 聴覚障害者から視覚障害者への情報伝達は、文字入力・音声合成が使われるので、音声出力が聞き 取りやすく、正確にコミュニケーション内容が伝わっていることが明らかとなった。 ・ 視覚障害者から聴覚障害者へは、音声認識・文字変換が使われるが、音声認識の認識精度や変換時 間の長さといった制約があるために、正確なコミュニケーションは困難であった。 会話音声入力 音声認識 認識テキスト表示 音声入力の確認 (視覚) 音声フィードバック 図2 音声認識I/Fの動作画面 4.今後の展開 本開発インターフェイスソフトの事業化については、以下のように本開発プロジェクトをきっかけ としたPDAの障害者対応の普及のための活動も含めて推進していきたい。 ①開発ソフトウェアのWebでの公開と無償提供による普及 ②今後の音声認識・音声合成ソフトへの対応による普及 ③PDAメーカーへの障害者ニーズ等の情報提供による障害者対応PDAの開発支援
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