鼎談(PDF 270KB) - 九州地域産業活性化センター

鼎談
「明日の九州を語る」
(出席者)
(財)九州地域産業活性化センター会長
鎌田迪貞氏
九州経済産業局長
谷
重男氏
北九州市立大学学長
矢田俊文氏
(司会)(財)九州地域産業活性化センター
専務理事
前山修一
司会) 本日はお忙しいところ、10 年後の九州の展望と活性化方策をテーマとした「明日の
九州を語る」鼎談にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
我が国および九州の経済社会は大きな変革期にあり、将来を見据えた地域戦略の重要性
が益々高まっていると思います。また今年は、活性化センターにとりまして設立 20 周年を
迎えた記念すべき年であり、この鼎談を企画いたしました。
本日はテーマを「地域振興」と「産業振興」に分け、それぞれについて、皆様のご関心
事項や重要視されている問題などをお話いただくことで進めてまいりたいと思います。
それでは最初のテーマであります「地域振興」についてお尋ねをいたします。谷局長は九
州経済産業局長として赴任されて半年あまりですが、地域の実情を把握される中で、九州
のポテンシャルや課題および将来像について、どのような見方をされておられますか。ま
た、地域振興で重点的に取り組んでおられる課題は何でしょうか。
地
谷局長)
域
振
興
まず結論から先に申し上げると、九州のポテンシャルというのは非常に高いの
ではないかと思っています。言い方を変えると、非常に伸びしろが大きいということが言
えると思います。ただ、今お話になったように、これからの日本の発展というのは、20 世
紀型の発展というより、いろんな変革とか改革をしながら、新しい発想に基づき新たな取
り組みをやっていかないといけない。何故ポテンシャルが高いかということは、個別要素
についてはまた後ほど触れたいとは思いますが、これから新しいいろんな取り組みをやっ
ていくときに、九州というのは経済界、産業界、学界あるいは自治体も含めて、新しい取
り組みに対する姿勢に非常にチャレンジングな意欲を感じますし、実際またそういう活動
もあちこちでされています。そういう点において、非常にポテンシャルを感じています。
私の造語なんですけども、いま九州は「発展進行形」というか、単なる発展途上というこ
とではなくて、いろいろな新しい取り組みにチャレンジしながら、新しい日本の発展モデ
ルみたいなものに挑戦しつつあるのではないかと思っています。地域振興ということに関
しては、九州全域というか、九州地域全体が発展していかないといけない。ただこれは九
州地域の中でも、地域の中のまた地域ということがあるわけで、それぞれ全ての域内で同
じような発展をするということはなかなかないわけです。それぞれの地域の特性なり、個
性なりというものを踏まえて発展していかないといけない。その際、ばらばらに発展する
ということはなかなかないわけでありまして、それぞれの地域特性を生かしながら、それ
らが様々な形で連携、結合した形での発展を目指していくべきではないか、そんな風に考
えています。そのときの方法論として、例えば何々県の何々地方ではこうだという、狭い
地域プレーヤーに限定した取り組みではなくて、強いものとうまく連携しながら、ある種
の相乗効果、シナジー効果が発揮されるような、そういういろんな形での連携が必要では
ないか。連携というと自治体同士の連携ということもあるでしょうし、異業種間の連携、
もっと言うならば人と人との連携、ネットワークの連携もあるでしょう。これから当然高
齢化社会に向かっていく中で、特に九州地域はその中でも相対的には高齢化が全体として
は進んでいくわけです。これからの日本経済全体が、日本社会全体が多参画社会というか、
老若男女を問わず、いろんな形でこれまでとは違った形での社会参画になっていくと思い
ます。それは働き方、ボランティア活動なんかもを含めてなんですが、そういう多参画社
会になっていかないといけない。それから、よく言われていることでありますけれども、
アジアとの近接性。これは今も含めて既に非常に密接な関係にあるわけですが、この深化、
深堀りですね。これをどう進めていくかということも九州地域全体の活性化のためには不
可欠だと思います。アジアとの近接性というものをどう具体的に発展につなげていくか、
さらにこれから頑張らないといけないということです。
経産局としての施策としては、例えば企業立地促進法あるいは地域資源活用促進法、そ
ういった法律に基づきながら各種施策を展開しているわけですが、これも冒頭に言いまし
たように、それだけでやるのではなくて、そういう施策も使いながら、企業を誘致したと
きに、単に工場立地に止まらずに、それをどう九州全域に波及効果を及ぼしていくのか、
例えば今申し上げた地域資源活用みたいな話と何とかつなげていけないか、そうした施策
の連携ということを十分頭においてやっていきたいと思っています。
司会)
それでは鎌田会長にお尋ねします。鎌田会長は九州経済連合会会長、九州地域戦
略会議議長として、道州制の実現など九州は一つの推進に取り組んでおられます。九州の
将来像および地域の課題について、どのようなお考えをお持ちなのかお尋ねします。
鎌田会長)
いま谷局長から連携というお話が出ました。私は九経連会長に就任したとき
に 21 世紀のキーワードは「連携」であろうと言ったわけです。その背景にはやはりグロー
バリゼーションの大波があるわけですね。企業にしても地域にしても、個々ではもう対応
しきれない。そういう状況を背景にして、いろんな面で連携を図っていかなければいけな
いということです。九州の将来像ということですが、「九州がひとつになって、自立的に発
展していく九州」、これが基本的な方向であります。その最終目標はやはり道州制であろう
と考えております。それに取り組むための仕組みといいますか、システムは「九州地域戦
略会議」として既にできており、九州地方知事会と経済 4 団体が一緒になって取り組んで
いるわけです。ここで九州の重要な課題を論議し、施策を打ち出しています。
ただ、取り組みのための仕組み、システムはできているのですが、それを進めていくた
めには、基盤整備が必要不可欠です。特に、交通ネットワークの整備が遅れています。ア
ジアに向けて港湾や空港を活かすためにも、九州域内の循環がもう一つ盛んにならなけれ
ばいけない。その域内循環を支える道路整備が大変に遅れているのが最大の問題点です。
それから、後半の産業振興にも関連してくることだと思いますが、人材の育成といった
問題があります。今はまだ人材は豊富にあるということで、半導体関連や IT などの事業所
が出てきているのですが、既に大分県では求人倍率が 1 をオーバーするという状況です。
この人材育成の体制、これも基盤整備の一つと考え、非常に重要なことであると思ってお
ります。
地域振興といえば、都市再生の問題がありますね。福岡市など大都市の 30 年、50 年先を
考えたグランドデザインづくりや、地方都市の中心市街地の活性化などが重要な問題です。
また、九州にはいろいろな伝統文化があります。地域振興を文化の視点から見直すとい
うことは、地域の特性を活かすという意味でも重要でしょう。文化に注目して、地域振興
なり町づくりを考えていくということです。
加えて、最近注目されている保険や年金の問題など社会保障の問題も、いつまでも国ば
かりに頼っているのではなくて、地域として主体的に考えていくという視点を持たなけれ
ばいけないのではないでしょうか。都市再生も文化も社会保障もと、幅広い視点を持って
地域振興を行なわなければならないと思いますが、そうした幅広い角度から主体的に地域
振興を図るために道州制が必要であると考えています。
司会)
次に矢田学長にお尋ねします。今まで全国や九州の未来戦略づくりにおいて、重
要な役割を担ってこられました。現在九州圏広域地方計画策定に向けて中心的な役割を務
めておられます。計画策定の意義等について、どういうふうにお考えになっておられるの
でしょうか。
矢田学長)この20年ほど国土審議会などで全総にかかわってきました。98 年に5全総が
でき、そこでは、成長を重視した政策はやめ、国土計画システムを見直そうということが
書いてあります。その後の見直し作業の一つに「国と地方の役割分担」研究会があり、私
が座長でした。そこでは、地方分権型の計画策定をしようという答申を出しました。昨年、
国土形成計画法が制定され、その目玉の一つが広域地方計画を地方自ら作るということで
す。具体的には知事と政令市長と国の支分局長による協議会で作成しようということで、
2008年の夏に全国各ブロック計画が決定します。国の計画でありながら、原案は地方
が作る。従って単に知事、市長、局長クラスだけではなくて、それを支える県や市の職員
及び支分局の職員、それから地元の有識者が初めて自らの計画を策定する作業に入ってい
く。これを何回か繰り返すと、相当ノウハウが地域に定着していくんだろうと思います。
それこそが分権型の地域づくりで、今まではどうしても東京中心で、中央官庁と特定の研
究者が策定していました。
私はこの九州広域地方計画策定の有識者会議の委員長なんですが、もうそろそろ、知事、
政令市長、局長が一堂に会すための叩き台が俎上にのぼってきます。今のところ 3 つだけ
目玉を考えています。一つはアジアの成長と「連動する」九州の発展を示す。二番目が九
州を一体化するための、幾つかのネットワーク構想です。高速交通、高速通信、防災、学
術、医療、福祉などのネットワークの形成です。要するに九州を一体化するためのネット
をしっかりつくりあげる。もう一つは、人口減少、高齢化ということで、限界集落等を含
めて離島・山間僻地対策を重視した「三層の自立圏」を提案する。一層目は九州広域圏、
二層目が今の県庁所在都市等を中心としたところの中間的な圏域、三層目が中小都市を軸
とした周辺の農山漁村地域を入れたところの日常生活圏。それぞれがしっかりと自立でき
るような戦略をたてる。日が当たるところだけは当たって、厳しいところがどんどん崩れ
ていくような圏土計画にしない。全体的には各ブロック間の競争になっていますが、こう
いう概念自体も九州独自で出していきます。
司会) これからは地域の振興に関して、どなたからでもご自由にご発言をお願いします。
皆様から幾つかのキーワードをお聞きしておりますが、特にご発言をしておきたいことと
か、先ほどのご発言の補足でも結構でございますが、よろしくお願いします。
谷局長)
農商工連携について申しますと、九州のみならず日本全体としても、これから
の一つの大きな課題とだというふうに経済産業省としても考えています。中央レベルでも
具体的なあり方について議論が既に始まっています。特に九州は、日本の中では非常にそ
ういう取り組みに、先進的に取り組んでいる地域であるわけですし、農業の産出高でいう
と全国の 2 割の規模を占めているわけです。そういう意味では、九州全域の発展というも
のを考えたときに、九州の農業も強くなっていかなければいけない。その際の一つのキー
ワードが農商工連携ということだと思います。是非これは日本の農商工連携のモデル地域
といわれるように、九州の関係者が一丸となって取り組んでいきたい。二つ目が矢田学長
から広範なネットワークの話がありましたが、まったくそのとおりだと思います。ネット
ワークの前に少しインフラ整備ということについて、まだまだ九州はいろんな連携とかあ
るいはシナジー効果を発揮するために、やっぱりインフラの整備をもうちょっとやらない
といけないなと思います。例えば、道路でいえば東九州自動車道、これは九州地域での様々
な連携を生み出し厚みのある産業構造を創出するために是非必要だと思います。
それから港湾とか空港を見ましても、アジアとの関係をいったときに、例えば空港なん
かまだ九州域内の貨物の発着で見ると、半分だけなんですね、九州の中は。あとは成田と
か関空を使っている。これをどういうふうに考えるかということです。もっと九州を高め
ないといけない。港湾のほうは 9 割くらいが九州発着貨物なんですが、逆に言えばアジア
に近い九州の港湾を、隣接県であっても1割位しか使っていないということです。これか
らいろんな形の農商工連携とかになりますと、もっと港湾を活用したアジアとの交易体制
というものを考えた場合、まだまだ整備するところがある、そういうインフラの問題があ
ります。さらに情報関連のインフラも遅れています。こうした各種インフラを九州全域の
いろんな連携の効果を上げるために、戦略的に作っていく必要があるかなというふうに考
えています。
鎌田会長)
「連携」ということでいいますと、幅広く展開されております。例えば産学官の連携で
進めているもので非常に評価の高いものとして、システム LSI があります。当初、設計開
発拠点の創設ということで、福岡の百道を中心に展開してきたのですが、それが昨年、文
部科学省の第Ⅱ期知的クラスター創成事業に認定され、向う 5 年間で 80 億の資金がつくと
いうことになりました。自動車関係でも、九工大が自動車会社とも一緒になり、北九州市
とも連携しながら、素材の研究とか金型の研究に取り組んでいるということもあります。
九大のほうは芸工大と一緒になったということもあって、デザインの問題あるいは運転者
の心理の問題、そういう面から自動車の研究をやろうとしています。
また、谷局長がおっしゃっていたように、最近よく言われているのが農商工連携です。
これは実は私どもも FTA、EPA を進めてもらうときに、やはり九州にとっては、農業の問
題が非常に大きな問題になるということで、JA さんと九経連との連携を図ろうということ
を話し合ってきました。最近ではそれに農政局なり経済産業局も一緒になって、農商工連
携を模索しようということになってきたわけです。これは非常に大きな意義のある取り組
みであろうと思っております。さらに、マーケティングだとか物流に詳しい商社みたいな
ところが参入するともっと成果に結びつくと思われます。
そのほかにも地域連携の事例として、九州地域戦略会議で取り組んでおります九州観光
推進機構の設立や道州制検討委員会の設置などがあり、九州で一体的な取り組みをやろう
としているわけです。いろんな連携が進んで、非常にいい方向に進んではいるのですが、
まだまだ問題点も課題も多々あると思っております。
谷局長)
一点だけよろしいですか。ちょっと人材というか雇用の話があったのですが、
九州はまだ、確かに大分あたりは1.08 なんですけども、全体的に有効求人倍率は全国に比
べるとまだ低いといわれています。実は一般事務職がめちゃくちゃ低くて、エンジニアと
かワーカーになるとそうでもなく結構1を越える高い数字なんですね。職種で切っていく
と、そんなに有効求人倍率は低いことはない。ミスマッチですね。だからその辺のことも
よく分析して議論していく必要があると思います。それから長期的に見ると、新卒者が例
えば東京・大阪・名古屋に行くことを一様に反対してもしょうがない面もあると思うので
すけれども、これからどんどん働き方が多様化してくる中で、例えば若いときには向うに
行っていたが、少し成熟してまたこちらに来て、それなりにいろんな仕事をやる。それは
九州だけではなくて、日本全体がそういうふうになっていったらいい。これまでのように
どこかに就職したら 30 年 40 年そこでということではなくて、日本の中で流動化していく
ような社会でないと、日本はダメだと思っています。そのときに九州にいろんな働く場所
がある。そういう産業構造にしていかなければいけないと思います。
鎌田会長)
特に非製造業を中心にして、若手の人材が東京にまだまだ流出が続いている
という状況、これも問題ではないかと思いますね。
矢田学長)
私の役割として、敢えてお二人がふれなかったお話をします。いま谷局長が
農商工連携の話をされました。南九州の山間地、離島や過疎地帯をどうするかという議論
のときに、木を切って、自分で加工して材木にし、これを熊本とか福岡に直売する。これ
は一つの組織がやっている。つまり、農・工・商連携よりも農・工・商の一体化で、1+2
+3=6次産業です。農業、林業、水産業がそれぞれ独立して国際競争するとなかなか勝て
ない。しかし、したたかに生き残っている地域は、特定の単位で 1 と 2 と 3 を一体として
経営する。また、過疎地帯であっても、先行的に通信網を整備し、一次産品やその加工産
品をネット販売する。人が動かなくても、物が動いて、金が入ってくる。私はこれも農商
工連携で、過疎地帯でもっとも有効に働くのだろうと考えています。
それからいわゆる「二地域居住」が提案されていますが、都会の人間にとってはかなり
都合のいい戦略なんです。我々はその流れも活用しますが、多世代の近隣居住、簡単に言
うと、スープの冷めないところに三世代が住んでいるのがうまくいっている。だから「多
世代近隣居住」している集落は強固に残ります。それから同一世帯内の多産業就業、家族
の働き手が少しづつ稼いで、合わせた収入で家族で生活する。こういう根っこが生えてい
る地域をどう作るかというところが重要です。エコノミスト的発想で経済性中心でいくと、
どうしても過疎地帯は負けていく。それからもう一つは新たな公ということで、NPO を重
視していますが、伝統的なコミュニティといいますか、祭り、神楽、山笠、ああいうとこ
ろを通じて子育てをやっていく。「伝統的なコミュニティの再生」を「新たな公」の政策の
中心の一つにして、根っこから崩れそうな集落をいろんな手立てで再生できないか。ここ
がうまくいかないと、九州もアジアの光を受けた北部九州だけが活性化していく。地域格
差がどうにもならない。そこのところが国土形成計画の大きな仕事だろうし、こういった
ことを積極的に提案したいと思っています。
谷局長) いま NPO とかあるいはコミュニティのお話もありましたけども、コミュニティ
ビジネスの育成によるコミュニティの活性化というのもこれからの検討課題の一つではな
いでしょうか。通常のビジネスと違って、また学長から広い意味で教えを受けたいのです
が、かなりこれまでとは違ったプレーヤーというのですか、あるいはその活動というのを
皆で支援するということが活性化につながってくるのかなという気がします。
矢田学長)
中央官庁でいろいろ仕掛けてくる政策と、地元で起きているいろいろなこと
をどこかで結び付けていかなければと考えています。わりと現実を知らないで、大きなマ
クロ的なところで仕掛けてくる。しかし、ひょっとしたら農商工というのは過疎地帯に最
もフィットするという話だと思いますね。
産
業
振
興
司会)
次のテーマであります「産業振興」についてお尋ねします。谷局長は、九州の産業振興
について様々な施策や取り組みを展開されておられます。特に重点的に取り組んでおられ
ることは何でしょうか。また九州の将来に向けて、戦略的に振興すべき産業についてはど
のようにお考えでしょうか。
谷局長)
戦略的にいろんな産業の振興を考えていかないといけないのですけども、とり
あえず先導的な産業というか、あるいは国際競争の中で日本を引っ張っていく、あるいは
九州を引っ張っていくようなリーディングインダストリー的な位置付けとして力を入れて
いるのは、具体的にいえば先ず 3 つのクラスター計画があります。一つは「九州シリコン
クラスター計画」、半導体関係です。それから環境関係、「九州地域環境・リサイクル産業
交流プラザ」
(K-RIP)ですね。それから今年の 9 月に協議会が設立されましたが、
「九州地
域バイオクラスター計画」。これからの健康産業に特化した活動、機能性食品に特化したバ
イオクラスター。この 3 つの産業クラスターがあります。また、これはクラスターではな
いのですけれども、当然のことながら自動車関連産業の集積、それからその波及効果とい
うのをなるべく九州全域に広げていく。自動車と半導体関連のインターフェースという意
味では、組み込みソフト。これは必ずしも自動車だけではないのですけども、特に自動車
が核となった従来の九州産業集積の強みを生かした取り組み。大きな市場化が視野に入っ
てきたロボット産業の振興も重要な課題の一つです。それから最近では、エネルギー関係
も九州というのはなかなか先進的な取り組みが進められています。最近の注目すべき、我々
として力を入れたいと思っていますのはソーラーですね。太陽光発電が従来の結晶シリコ
ン系ではない薄膜のタイプのものが、九州で 5 社くらい製造工場があります。これから世
界的にもソーラーというのは非常に熾烈な国際競争になると思っていますが、その競争を
勝ち抜く上で計測・評価等の面で国際標準化の主導権を日本がとっていくことが必要だと
思います。是非九州から主導権を発揮できないかと考えています。
個別にはそういう取り組みをしているのですが、九州の特に製造業あるいは先端的な製
造業は、より付加価値をどんどん九州全体としては高めていかないといけない。そういう
ことになりますと、自動車なんかであるならば、九州で自動車を組み立てているとか製造
工場だけがあるということだけではなくて、次世代型の自動車をどうするかという研究開
発機能みたいなものもどんどんやっていかないといけません。それから部品は名古屋なり
東京から持ってくる、そしてこっちで組み立てているということでは、こっちに波及効果
が生じないというか、厚みのある関連企業群の集積が進まないので、是非そういう意味で
は域内で調達しないといけない。調達率を上げるだけではなくて、いろんな要素がありま
すけど、そういう意味でも先ほどちょっと出たインフラの整備というのは非常に大事だと
思っています。経産局的にはそういうことですが、繰り返しになりますけども、実は先ほ
どから出ていた九州の特性みたいな農業ですね。それから実はいろんな健康福祉分野など
では九州というのは就業者数の対全国比 20 パーセント近いシェアがあって、いろいろな先
進的な取り組みがなされています。半導体とか自動車とか製造業のほうは、私にいわせる
とソフト的なところが若干弱いのですけども、意外と医療・福祉だとかいうところでは非
常にサービス産業が強い。先ほど言った農業も農業産出額が 20 パーセント近くあるのです
けども、食品加工の場合は 12~13 パーセントしかない。製造業だけではなくて、九州の有
力産業の一つとして農業の付加価値を上げることが必要であり、またそれは可能ではない
かと思います。
司会)
鎌田会長、将来の九州の産業を考えたときに、自動車と半導体産業の更なる発展
など大きなポイントが幾つかあると思います。特に重要視されておられる産業振興につい
ての問題は何でしょうか。またアジアと九州の関係についても、どのようにお考えでしょ
うか。
鎌田会長)産業振興については、確かに自動車や半導体が九州の産業をリードしています
が、今お話があったように、地場企業からの部品の供給がまだまだ低く、3 割くらいではな
いかという状態のようです。ですから九州の産業振興という場合には、地元調達率を上げ
ていくことが非常に重要であると思います。これは自動車に限らず、半導体関係でも言え
るのではないでしょうか。九州の中小企業の皆さんは、部品生産に参入するのには非常に
厳しいといわれます。品質の問題、納期の問題、あるいは価格の問題が非常に厳しい。し
かも参入するためには設備投資が必要であるけれども、バブル不況の厳しい経験から、リ
スクを考えると、なかなか投資に踏み切れないと。この点は自動車など完成品メーカーの
ほうでも、生産の計画など地元に示してもらったらどうでしょうか。また銀行など資金を
供給する側も単なる融資ではなくて、少しリスクを負担するような協力もいるのではない
かと思います。
それから問題点としては、県の壁というのが大きいように思います。また、縦割り行政
の弊害も気になります。例えば、この前東京の代々木公園で九州観光物産展が行なわれた
のですが、その観光物産展は九州観光推進機構ではやれないというんです。なぜかという
と、観光推進機構には観光の予算をつけているのであって、物産のことはやれないと言う
わけですね。
さらに言えば、産業振興に関わる団体が多すぎるということもあります。もう少し整理
統合すべきではないでしょうか。多すぎるために効率を阻害している面もあるように思い
ます。
アジアとの関係については、昨年 11 月の 26 日、27 日に、熊本で環黄海経済・技術交流
会議の第7回会合をやりました。九州、韓国、中国と順番に開催して、3巡目に入ってい
るわけですが、この会議について評価できる点は多いと思います。例えば中国の商務部の
皆さんだとか、韓国の産業資源部の人たちと親しくなり人脈ができていく。これはやっぱ
り大きいと思うんですね、九州にとって。それから韓国、中国の状況、情報、さらには九
経連の会員であるとか皆さんに伝えられるというメリットもあります。
さらには、東アジア共同体のことを考えているのですが、これが単なる夢物語じゃなく
て、環黄海経済・技術交流会議のような取り組みが、東アジア共同体に向けての推進の何
か核になれるんじゃないか、とも考えています。皆さんの中にそういう認識も生まれてい
るように感じました。ただし、それが本当の核になるためには、この三国の協力関係をも
っともっと強化しなければならないし、協力関係を強化するためには、商習慣の違いです
とか、知財管理の問題等々まだまだ問題も多いなということです。
それから、九州では、環黄海だけではなくて、ベトナムだとかタイ、カンボジアといっ
た東南アジアからさらにインドまで、もう少し広いアジア地域との交流についても、皆さ
ん非常に関心を持ってきています。そういうことでアジアとの交流については今後益々強
化し、積極的に取り組んでいこうと思っているところです。
司会)
次に矢田学長にお尋ねしますが、当センターの今年度事業であります自動車産業
と半導体産業の融合による次世代カーエレクトロクス産業創造調査委員会の委員長をお願
いしておりますが、この産業分野を含め、東アジア地域との産業連関の必要性と展望につ
いてはどのようにお考えでしょうか。
矢田学長) 私もこちらに来て 25 年、そのうち 15 年くらいはいろんな委員会の委員長を
させていただきました。出てくる委員のメンバーが非常に専門的な方で、私は基本的に 8
割か 9 割方勉強して楽しんでいます。ただいろんなレポートを書いて終わるのはもったい
ないという思いもあって、「一委員会一プロジェクト」ということにこだわって、確実に実
現可能なプロジェクトを提案することにしています。典型的なものは北九州市の委員会で
エコタウンを提案したこと。もう一つは、九州地方整備局の委員会で「走りやすさマップ」
というのを開発してもらって、いま全国のブランドになっています。そういう幾つかの委
員会起源のヒット商品があります。
それでは今回いったい何なんだろうなと思って考えています。もちろん車と半導体集積
を前提に、それをつなぐカーエレクトロニクスというところの拠点にならなければいけな
いというのが基本的な狙いなのです。そのためには一つは人材育成。これは時代の要請で、
北九州学術研究都市もその体制が整備されつつあります。若い人が情報と車の両方を分か
って新しいソフトを開発できる。これはかなりいけるのかなと思っています。もう一つは
カーエレクトロニクスの先端研究拠点にするという案があるのですが、10 年後の会社のト
ップシークレットをやっているので、共同研究センターは可能かなという議論が出ている。
しかし、ITSの実験道路を作り、これを核にカーエレクトロニクスの研究センターをつ
くるのがいいのかも知れないと思っています。要するに車だけハイテクをやっても、道路
そのものをハイテクにしないといけない。その研究は企業ではなくて、インフラ整備の主
体の側の問題となります。その実験開発の拠点を作る。それをメーカーが集積している北
部九州にできないかなということです。
国土形成計画の広域計画につきましては、日中韓台の産業連関、つまり環黄海産業連関
がほぼでき上がりつつあります。これは市場メカニズムで非常にうまく動くだろうと思っ
ています。競争ももちろん含みますけれども。そういうものを含めて、九州はいくつかの
アイランド構想を提案できると思います。カーアイランド、シリコンアイランド、それか
らフ-ドアイランド、観光というよりも景観、文化、医療を含めたより広い概念であるヒ
ーリングアイランド、知識産業の集積としてのインテリジェントアイランドなどが提案で
きます。こうして「アジアとの連動」、「三層の自立圏」、「ネットワーク」、「アイランド構
想」、この辺を軸に計画づくりが進んでいます。計画というのは具体的なプロジェクトのた
めの指針であると同時に、九州のミッションを示します。
谷局長)
会長、学長から、特に会長から縦割り行政の弊害みたいな話がありました。それから学
長からも ITS は本当に進むでしょうかという問いかけがありました。各府省の連携につい
て申し上げれば、去年から今年にかけて、甘利経産大臣が主導して制定した企業立地促進
法だとか地域資源活性化法、これらは全部で六省が相乗りでやっていまして、行政のワン
ストップサービス化を非常に強く意識しています。多分まだ現場サイドで改善すべき点が
あると思いますけれども、そういう意識は随分出てきています。日本の場合やっぱりスピ
ード感が、これからものすごく国際競争を考えるときに大変重要なファクターになってき
ます。縦割りの弊害はいろいろあるのですけど、時間がかかるというのは、いろんな意味
から大変大きなマイナスですから、スピーディにやるということを心掛けていかないとい
けない。そういう動きが出てきているということは少しご紹介しておきたいと思います。
ITS などは正に関係府省の連携の中身によってその進展には大きな差が出てくると思いま
すので、私共としては十分心して取り組んでいきたいと思います。
矢田学長)
谷局長)
北部九州では比較的広い土地が確保できます。
私の頭の中では縦割り行政の弊害なんかと繋がっているんですけど、まず実践
してみるというのがこれからものすごく大事だと思うんですね。その点で九州というのは
非常にいい成功モデル・先進モデルに取り組みやすいんじゃないかと考えています。土地
の問題とか関係者間の利害調整といった面でも3大都市圏より優位性があると思います。
いろんなことを、自動車なんかも含めて。そういう意味では本当に九州発というのでし
ょうか、さっきスピード感の話をしましたが、やれるじゃないかというのを九州で見せる
のがまた、オールジャパンというか、中央サイドのいろんなスピードをあげる意味で重要
なんですね。
もう一点だけ。先ほど産業論的な視点で言いましたけども、プレーヤーという面から見
ると、オールジャパンベースでもそうなんですけども、やはり地域の中堅、中小、あるい
は零細パワー、小規模のものを含めて、そういう数の上で大勢をしめている、いわゆる中
小企業にやっぱり頑張っていただかないと、なかなか最後は地域の活性化ということに繋
がらないわけですね。そういう意味で先ほどは関連産業という視点で言いましたけども、
部品調達なんかはまったくそこに繋がっていくわけですけれども、単に中央のというか本
州の大企業を引っ張ってきておしまいということではなくて、そういった動きと地域の中
堅、中小企業との連携が、これからの地域政策の追求する一つの大きな方向だろうなと考
えています。
鎌田会長)
縦割り問題に関しては、ワンストップということがいろんなところでやられ
ているのは、非常に結構なことだと思います。例えばベトナムでもワンストップと繰り返
し言っていますし、スピードのある対応をしますよとしっかり言っていますから、日本も
それに負けないように、ワンストップなり、スピードアップなりしなければいけないと思
います。
それとアジアとの関係で、部品のやり取りが非常に盛んになってきて、工程内の分業が
どんどん進みつつあります。日本の自動車等のメーカー側もはっきりそのことを意識され
て、アジアに進出している工場に対するマザー工場を目指すということをおっしゃってお
られます。こうした動きから最近の九州の産業、特に製造業は、新しい段階に入っている
な、という感じを強く持っています。いい傾向だなと思っています。
矢田学長)
国も含めて、要するにどう古いシステムから新しいシステムに変えるかとい
うのが改革ですが、そこまではいいのですが、システムを作っても動かないのは日本の改
革の特徴です。プレーヤーの育成が非常に遅れている。大学もそうです。法人化して活性
化するかと思ったら、法人化のシステムを活用できる学長は少ない。システム論の政策は
進むのですが、プレーヤー論になると非常に厳しい。そういう点では今回の九州圏広域地
方計画では、人材育成をかなり重視しています。
それは、産むこと、育てること、義務教育、そして高等教育、研究者育成、専門家育成、
そしてリタイア後まで、一貫して九州がどうケアできるか。その辺のところを出したいと
思います。文部科学省、経済産業省、厚生労働省と人材育成については縦割りになってい
ます。それをどう連携していけば一貫性のものができるか詰めたいと思います。やっぱり
プレーヤーの育成というのが重要です。これがうまくいったら大学もうまくいくし、あら
ゆるシステム改革もうまくいくんです。九州では中央から連れてくるしかないという発想
がどこかであるんですね。東京やアメリカで出来上がったものをつれてくるしかないとい
う思い込みが強い。一時的には効果があるんですが、やっぱり九州発信のいろんな専門家
が育つようにする。そこができて初めて自立なんだろうと思います。そこで人材育成のと
ころをかなり細かく分析して、戦略を練る。東京へいくのは、少しは一流になろうという
意識がある。みんな吸引される。その逆手になる戦略をやれれば、自立できるんだと思い
ます。インフラとシステム作りのところだけの政策はかなりやりやすいのですが、プレー
ヤー作りのところは非常に厳しい。そこに相当知恵を出したら、ブロック間競争、社会環
境づくりでかなり有利になるだろうと思います。そこが一番大きな課題かなと思っていま
す。
谷局長)
プレーヤーとか人材育成というのは、いつも一言で「人材」という括りで議論
されるのですが、各論に入った瞬間に何か実態を反映していない点もあるのではないかと
思っているのですが。
少し定量的な視点も入れながら、どういう人材をこれから活用していかなければいけな
いのかとか、あるいはここは足りているんだとか、なんかそういう、具体的な検討が必要
なのではないでしょうか。
矢田学長)
それから身体を張ってやっている人たちはあちこちいるんですよ。そこが見
えないで、また東京から持ってくる。よくやっている人材を発見して、相互に連携して足
りないところだけ重点投資をしていくということをやらないと、既存のガンバリ屋をあま
り評価しないで、有名人というブランドだけで動いている。
鎌田会長)数年前、九州経産局が整備局と共同で「東九州軸産業戦略」を策定した際に、
九州全体の産業連関分析をやりましたよね。ああいうことをきちっとやって、連携が悪い
部分を明確にして、それは何故か細かく分析して、いろいろな方策を考えるのは非常に重
要なことでしょうね。まだまだ本当に九州は産業連関がよくありませんのでね。道路整備
が遅れているというインフラの問題もあるのですけど、人材の面でも本当に今おっしゃっ
たようなことがあるんだなという気がします。
谷局長) 産業連関的には、とにかく福岡との相関が強い。後は宮崎・鹿児島間が強くて、
あとはまったく弱い。
矢田学長)
産業連関というのは主としてものの連関を金銭的に表現したもので、サービ
ス産業が 6 割の話で産業連関はなかなか役立たない。知識の移動が非常に決定的で、それ
は定量的には計れない。デザインだの、研究だのは“質”が大事なんです。これが出てこ
ないんです。値段では出てきますが、質の問題では出てこない。おそらく連関表というの
はサービス関係と知識関係のところで再開発しないといけない。
鎌田会長)
そのあたりは矢田先生なんかにお願いしたいところですが、サービス業をも
う少し細かく分析し、分類していただく必要がありますね。
矢田学長)
介護をやる人とデザインとかコンテンツを開発する人とはほとんど連関はな
い。一括してサービス経済化といっていると、最後まで政策はできないと思います。
谷局長)
そうですね。サービス業でもそれをちょっと紹介します。福祉だとか医療が対
全国シェア的には高いのですけども、それ以外の例えば IT サービスの関係がどんどん今ウ
ェイトが低くなっている、実は。必ずしもソフトウェアではなくて IT サービスです。対全
国シェアで 20 パーセントくらい半導体を作っていますからハードは強いのですね。しかし
半導体みたいなものを使いながら、いろんな新しい通信技術だとか新しいネットワーク技
術だとか、携帯を使って云々かんぬんというのが弱い。基本的には工場中心なんですけど
も、そこでどんどんものを作っているわけですが、ものはたくさんつくっている九州の IT
サービスのシェアがどんどん落ちている。そういうことを考える人材が少ない。
矢田学長)
ものを売る人、これは「もの産業」に付随するんです。これにものを運ぶ人
を加えると「流通産業」になる。ところが知識をつくるのは全然違う種類なんです。原料
が知識で付加価値を加え、製品も知識です。これは「もの」ではないのですがサービスと
はいえないんです。知識産業です。それから人が人のケアをする、介護とか医療、これが
本当のサービス産業です。こういった販売、流通、知識、役務の大雑把に4つのサービス
産業があるのに、一括してサービスと言う。前の二者はものを作っている限りは絶対必要
なんです。その辺はもう少し詰めて、戦略を練らないと有効的ではない。
鎌田会長)
谷局長のおっしゃったことに関連しますが、IC、IT でも「何をつくるか」が
最高の頭脳だと思うんですよね。頭脳なき IC アイランドと言われてきて、我々は設計開発
拠点を作ってきました。それで終わったと思っていたら、いやそうじゃないんだと。これ
もやっぱり何を作るかは東京で決まって、それを設計しているだけであって、やっぱりこ
れは下請けの部品作りじゃないかと。
矢田学長)
システム部品を作っている。
鎌田会長)
やっぱり何をつくるか。何と何を融合してアプリケーションとするのか、そ
ういうところの頭脳部門はまだやっぱり九州は弱い。
谷局長)
そうですね。そこはそう思います。
日本全体がそうですね。
鎌田会長)
谷局長)
そうですね。
先程からアジアの話がいろいろ出てきているんですけども、これからどんどん
国際的な産学連携だとか、それから今いろいろアジアから留学生とかたくさん来ているわ
けですけども、そういう人達の域内定着化というのか、あるいはそういう人たちのネット
ワークをどう維持発展させていくのか。まさに人材ということでもあるし、一方でアジア
との関係強化というときに、人口の割合からすると非常にアジアからいろんな留学生が来
たりしているわけですけども、それが九州の経済と何か、あるいは九州とアジアとの経済
連携強化に繋がっているのかというとまだだと思います。今評価するのはまだ早いかもし
れませんが、そういったことも視野に入れる必要がある。それから国際産学連携というか、
韓国との間に学生フォーラムとかございましたですけども、そろそろいろんな形での産学
連携、日本の企業と企業はいろいろやっているかもしれないですけど、相互に日本なり韓
国が別々に産学連携をやるのじゃなくて、マルチでどんどんやっていくみたいなことを、
これからは分野やテーマによってやったらいいのですね。こういうのも中央ペースでやっ
ていると、時間がかかっちゃいますから、どんどん九州発でそういう取り組みをやってい
く、実践していったらいいなと思っています。そういうアジアの中におけるいろんな産学
連携、あるいは若手人材の育成というのを、アジア大で考え実践していくと。今大分そう
いう考えはあるんだと思うんですけどね。
司会)
では、最後に九州の活性化に関しまして、九州活性化センターが担うべき役割等
について、お考えやご示唆等がございましたら、お聞かせいただければ幸いです。
鎌田会長) 私は活性化センターの会長でもありますが、設立後 20 年になったということ
で、活性化センター自身がこの 20 年間の活動を一度総括する必要があるのではないかと思
います。どう評価されているのか、何をやるべきなのか、といったところですね。調査研
究あたりに非常に力が入っており、それも必要なんですが、既にある大学の研究シーズだ
とかニーズなんかをもう少し取り上げて、それを産業技術化するような、そういう面にも
う少しウェイトを置いてもいいんじゃないかなと思います。
矢田学長)
先ほど鎌田会長が官庁縦割りみたいなところがあると指摘されましたが、同
時に、九州は一つといいながら、横割りというか 7 県ばらばらです。九州全体を考える企
業としては九電と JR しかない。今経済団体、地域戦略会議、道州制など、九州の一体化戦
略をどんどんやっているので、ある面では活性化センターがそれをサポートするシンクタ
ンクの役割をきちっと果たせないかなと期待しています。いろんなデータを集めていろん
な人を集めながら、九州が一体的に成長するにはどういう戦略があるのかと次から次へと
提起していく。日本のシンクタンクは結構育っていますが、地域のシンクタンクになると、
九州経済調査協会がそこそこ頑張っている以外はなかなかない。しかも県ごとにちょっと
したシンクタンクがあるだけです。九州一体としてのシンクタンクが必要です。だからシ
ンクタンク連合をやってもいいし、大学のそういう地域政策者たちを集めた連合をやって
もいい。政策提起をして、実行するプレーヤーにどんどん問題提起できれば、考える人と
やる人とがどこかで連携しないといけない。やる人だけずーっと走っていると、いつの間
にか次の戦略のタマがなかったということがあります。いま留学生問題をきちんと分析す
れば、いろんな提案が出るんですが、誰がいつどうやって分析するのかはっきりしない。
各大学が今までの延長でやっていますので飛躍がない。はっきり九州として戦略提起があ
れば、一学長として協力する気は十分あります。いくつかの重要課題についてまとめて戦
略提起できないかなという感じはしています。
鎌田会長)
是非その戦略、政策提言が欲しいですね。
矢田学長)
そうですね。
谷局長) 我々経産局サイドから言わせていただくと、元々出来たときは 80 年代の円高不
況の中で、今から振り返ると九州はかって構造不況業種と呼ばれた鉄鋼とか造船とか石炭
とかそうした産業が主力であったわけです。そして80年代後半にセンターをつくられて、
いろんな調査をベースに、当時は通産省ですけども、役所のいろんな施策も活用していた
だきながらというところで、私は過去の役割については大変深く評価しています。ただ、
今もお話がありましたけども、時代は変わってきているわけで、これまでは調査研究とい
うか、それが中心だったんですけども、これからは今日もいろんな話が既に出てきている
と思うんですが、少し具体的な政策提言といいますか、情報発信的機能を強化して頂きた
いという気がします。そういうところがきちっとできているシンクタンクがあるかという
となかなかありません。それぞれ経済団体であったり何とかというのはあるのですけど。
もう少しニュートラルというのでしょうか、産官学をつなぐ、それから、まさに九州は一
つという下に県域を超えてというのでしょうか、そういう是非政策提言型の集団に変わっ
ていく、そういう機能を少し強化していただくというのが、いま時代が求めていることか
なという気がいたします。
司会)
どうもありがとうございました。