18 1998 年,当時の米国副大統領アル・ゴア氏によっ てデジタルアース構想が提唱された。デジタルアース とは,インターネットで繋がれたコンピュータ上にお ける地球上の自然的・社会的事象を,空間的な参照情 報をもつデジタルデータとして備えた仮想世界のこと を指す。デジタルアースに対する国際的関心は高く, 1999 年からデジタルアース国際シンポジウムが開催さ 図−1 NASA World Wind れている。本年は日本において開催された,さらに は,デジタルアース日本学会も設立されている。 デジタルアースにおいて,サイバー空間におけるデ ジタル地球儀がそのベースとなるであろう。莫大な地 球規模のデータを閲覧するためには,当然,そのブラ デ ジ タ ル ア ー ス ウザが必要となるが,NASA(National Aeronautics and Space Administration)により,3 次元デジタル 地球儀NASA World Wind が開発され,フリーウェ 図−2 地形データと衛星画像による3次元表現 アとして公開されている( h t t p : / / w o r l d w i n d . a r c . nasa.gov,図−1) 。本フリーウェアはデジタルアー スのためのものとは銘打ってはいないものの,これら の技術が役立つことが予想される。 NASA World Wind には,デジタル地形データに 人工衛星画像がマッピングされており,3 次元的な表 示を可能としている(図−2) 。米国内ならば,1m 解 像度のオルソ空中写真まで用意されている(図−3) 。 衛星画像としての数種の色合成されたLANDSAT 7 図−3 オルソ空中写真 や,さらにはMODIS による災害情報も閲覧可能であ る(図−4) 。同梱されているデータのみではなく,イ ンターネット経由により,N A S A や U S G S(U . S . Geological Survey)のサーバにおける多種多様なデ ータを取り込むことができる。例えば,気象情報など は,時系列に閲覧可能であり,特定の情報を表示する こと(図−5)に加え,アニメーション表示も見ること ができる。また,経緯度線,国境,国旗,地名,ラン 図−4 MODIS による災害情報 ドマーク等も重ね合わせ表示ができ,地名やランドマ ークによる検索も可能である。 今後,インターネット上に分散している膨大なデー タを統合して閲覧できる可能性が高まり,地球規模の グローバルな問題から地域のローカルな問題までの解 決へ向けて,地球市民間の相互コミュニケーション が,ますます深まると期待されている。その情報共有 へのデジタルアースの貢献が確実に予想される。 図−5 地表面温度の表示 (東京大学 布施孝志) THE JOURNAL OF SURVEY 測量 2005. 6 49
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