スポーツ傷害予防のためのストレッチ

1.スポーツ障害
2008.10.25.
平成20年度 沼田市スポーツ医科学講演会
● 外傷:1回の外力で発生,急性外傷
スポーツ傷害予防のためのストレッチ
・・・捻挫,骨折,靭帯損傷,筋挫傷など
● 障害:使い過ぎによる発生,慢性外傷
・・・疲労骨折,シンスプリント,テニス肘,オスグッドなど
*予防のためには?
上牧温泉病院 リハビリテーション課
群馬県カヌー協会
理学療法士 中川 和昌
① 怪我しないための身体つくり (+技術,メンタル,戦術)
② 負担部位のケア+非使用部位の活性化
→ 正しいフォーム,姿勢
③ 環境の整備 (テーピング,サポーター,他)
○ 自己管理能力もアスリートに必要不可欠な能力
3.ストレッチの効果
2.ストレッチングとは
“STRETCH – モノに対して伸張を加える
1.脳の緊張状態の軽減 → 精神ストレス緩和
2.中脳への神経刺激 → 安定ホルモン分泌
3.正常な筋の伸張性の獲得
筋緊張↓
<広義のストレッチング>
○動きに関連する筋や関節構成全体に対する伸張刺
激
○筋,腱,関節などを能動・他動的に引き伸ばす動作
筋 腱
節
ば
筋緊張の調節
パフォーマンス改善
ストレッチングの目的=身体の柔軟性を向上すること
*スポーツにおけるストレッチング
治療として
身体コンディショニングの一部
パフォーマンス向上
ウォーミングアップ
筋・腱障害予防
筋肉痛緩和
1.発痛物質・痛覚増強物質の除去
2.筋エネルギーの合成促進
循環↑
4.ストレッチの種類
筋疲労軽減
5.ストレッチの取り入れ
1) ウォーミング・アップ
Stretching
運動準備,神経−筋の協調性向上,障害予防
2) クールダウン
静的
動的
随意的筋収縮 (−)
持続的伸張
筋の損傷が少なく安全
随意的筋収縮 (+)
柔軟体操,伸張反射
筋の損傷の危険性
Static Stretching
Direct Stretching
(圧迫,マッサージ etc…)
etc…
Dynamic Stretching
Ballistic Stretching
PNF Stretching
etc…
筋肉痛の防止,疲労の軽減
3) 運動の休息時
筋緊張亢進を予防,筋力・筋持久力維持
4) トレーニング
柔軟性の拡大・向上
5) 治療手技
拘縮組織や,短縮筋に対する伸張
1
ウォーミングアップ
種目
目的
Jog,自転車 etc…
10分程度
Static Stretch
10分程度
心拍数↑,血流↑,深部筋温↑
呼吸率↑,関節液の粘性↑,発汗↑
体調,身体の動きをチェック
温まった筋肉の保護
動かせる可動域の確保
弾みをつけて動的な伸張
Ballistic Stretch
5∼10分程度
適度な反射・興奮性増大
*強すぎる刺激=筋損傷の危険性
専門的動作のアップ
ウォームアップドリル
競技に関連する神経−筋の調節
10分程度
6.ストレッチの基本的原則
クーリングダウン
種目
ダウン (Jog,専門動
作)
5∼10分程度
Static Stretch
10∼20分程度
アイシング
30分程度
目的
血中乳酸の分散
心拍数,呼吸,血流等の安定
高揚している筋の興奮性の低下
反射誘発しないように,ゆっくりと
*筋に対して安全に実施する
負担のかかる部位,損傷部位等
の炎症を抑える
*状況に応じて先ず実施する
7.評価/検査・測定
タイトネステスト
1) 時間
20∼60秒 (Bob Anderson)
興奮抑制には最低10∼20秒 max 90秒(逆に血流↓)
一般的には30∼60 sec×3∼5 set (10∼20 rest)
2)) 頻度
持続・非持続は様々 − 継続した実施を心がける
3) 呼吸を止めない
4) 強い痛みを伴わない
股関節内転筋群
ハムストリングス
下腿三頭筋
× There is no gain without no pain.
5) 伸びている筋を意識する・させる
6) 姿勢・保持・固定
腸腰筋
関節弛緩性テスト
大腿四頭筋
8.ストレッチ介入の実際
○ 対応時期: 試合前,試合中,試合後,宿舎等
○ 競技・ポジション特性: 必要な可動範囲を確認
○ 柔らかくなれば良い,という訳ではない
*東大式7点法
・安定性(固定)と運動性(動作) → 使える筋肉に!
○ 個別か集団か?
・個別: より各個人に合わせたストレッチ方法の選択
身体能力 + その他の因子 (学習能力・性格,等)
依存性=自己管理能力の低下
・集団: 選手個人における自己管理能力の向上
集団で実施する時の注意 (各個人への説明)
方法の確認 (代償動作)
2
介入効果
ストレッチング指導
中学生サッカー選手107名 6か月間の介入効果
君へ
フィードバック用紙作成
選手への個別指導
指導者への報告
*本日行った測定の結果,あなたがケガの予防の
ために注意した方がよい点(筋肉が硬い部分)には
色が塗ってあります。具体的な予防法としては,練
習前後のストレッチングが基本となります。主なスト
レッチングは1∼17の絵を参考にして下さい。あなた
にとって,特に重要なストレッチングは○を付けてあ
りますので,家でも実施して下さい。(お風呂上りが
効果的!)
*すでにケガをしている人で,練習後にアイシング(冷やすこと)が必要な人には,下の□に
V印がついているので,以下の方法でアイシングをして下さい。
□アイシングをした方がよい
<アイシングの方法>
コールドパック(アイスノンのようなもの)かビニール袋に氷を入れたものを,痛みのある部
位にあてる。コールドパックはタオルで包む。最初は冷たくて,痛い感じがするかもしれませ
んが,4∼5分位でだんだんと慣れてきます。その後,冷たい感じ(痛み)がなくなってくるので
15∼30分位冷やす。ただし,途中で感覚がなくなったら,直ちに冷やすのをやめる(凍傷をお
こすことがある)。感覚があればできるだけ冷やすことを続ける。
2
3
1
定期的なチェック
○ 実施状況
○ 修得状況
(正確な実施)
20秒×5回
各脚20秒×5回
各脚20秒×5回
腸腰筋
大腿四頭筋
ハムストリングス
各脚20秒×5回
9
7
6
20秒×5回
8~10回
8
14
各脚20秒×5回
13
11
15
16
各脚20秒×5回
17
20秒
20秒×5回
股関節内転筋群
各脚20秒×5回
各方向5
回
各方向10回
12
10
各腕10秒
左右10秒
群馬県におけるメディカルサポート
高校野球:H.14年度∼
高校サッカー:H.16年度∼
中学サッカー:H.16年度∼ (前橋地区)
高校バスケットボール:H.20年度∼
高校野球におけるサポート
クーリングダウンとしての
ストレッチング (3回戦以上)
○ 投手:パートナーストレッチング
Man to Man
○ 野手:セルフストレッチング
Man to Group
初回
単位(°)
5
4
20秒
◆継続者53名:paired t-test(初回と中間・最終の比較)
下腿三頭筋
右
10.0 ± 8.5
中間
最終
7.5 ± 4.0 **
7.1 ± 4.2 *
左
10.3 ± 8.7
右
147 8 ± 9.3
147.8
93
148 5 ± 8.6
148.5
86
7.3 ± 4.4 *
148 2 ± 6.5
148.2
65
左
147.7 ± 10
149.0 ± 7.3
148.4 ± 6.3
右
73.9 ± 8.8
72.5 ± 7.4
76.5 ± 8.4 *
左
73.5 ± 9.4
73.0 ± 7.9
76.2 ± 7.8 *
右
39.4 ± 4.8
39.9 ± 6.6
44.3 ± 7.0 **
左
39.7 ± 4.8
40.7 ± 7.7
45.3 ± 7.7 **
右
27.7 ± 6.5
28.2 ± 9.6
35.4 ± 6.7 **
左
25.9 ± 6.8
27.5 ± 8.2
20
秒
7.2 ± 4.1 *
33.6 ± 6.4 **
*:p<0.01,**:p<0.001
9.ストレッチ実施・指導上の注意
1) 伸びている筋肉を意識する
伸張感に伴う疼痛(心地よい?)
オーバーストレッチ−筋損傷(遅発性筋肉痛症状)
筋・腱以外の他の軟部組織をも伸張してしまう危険性
2) 出来る限り筋の走行に沿って実施する
3) 代償動作,固定部と動作部のチェック
特にセルフストレッチングにおいて
4) 筋温を暖めておく
循環を促進した状態で実施する事が前提
大腿後面(ハムストリングス)
3
大腿前面 ① (腸腰筋)
大腿前面 ② (大腿四頭筋)
*膝の痛み
に注意!
*伸ばしている所(腸腰筋)以外に余計な力,
負担がかかっている事が多いので注意する!
殿筋群
股関節内転筋群
下腿後面 (下腿三頭筋)
○ ヒラメ筋
4
体幹
肩前方 (大胸筋)
肩後方 (棘下筋,小円筋)
上腕
* 過度の動き,
肩の疼痛に注意!
上肢 その他
お疲れ様でした!
選手が最高のパフォーマンスを発揮できるように,
効果的なストレッチを指導してあげて下さい!
質問等がございましたら,
以下のアドレスに御連絡下さい↓
○ 腋窩部
○ 手指屈筋群
[email protected] (病院)
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