シリーズ 一緒に考えましょう! いじめの根絶 ∼ 我が子をいじめの加害者にしないために ∼ 立科町教育相談員 岩上起美男 人は誰でも犯罪者になる可能性がある、 と言われています。特別な人間だけが犯 など、子どもが起こす反社会的な問題行 だけではなく、万引きや窃盗、器物損壊 こ の 点 に つ い て は、 ﹁いじめ加害行為﹂ があります。 ち﹂は、大人の犯罪気質と共通するもの うな幼児性の残存する子どもの﹁心の育 の﹁いじめ加害行為﹂の要因で、このよ そん かい 罪 を お か す の で は な く、 ﹁犯罪の衝動﹂ 動すべてに共通します。子どもの非行は、 せっ とう は、誰の心の奥底にも横たわっているの も っ と 自 分 を 温 か く 見 つ め て ほ し い、 しょう どう だそうです。 我が子をいじめの加害者にしないため に、ひいては、 ﹁犯罪の衝動﹂を抑えら もっと自分に親身にかかわってほしい、 そして、もっと自分を無条件に愛してほ れる大人に育てるために大切なことは、 を取り締まるような したがって、犯罪 ちょうばつ しゃ ざい ばっ きん 対応、すなわち、懲罰や謝罪、罰金など、 子映像メディア漬けの生活にしないこと せ、先回りの指示をしないことです。電 うった しかしながら、圧倒的大多数の人は犯 罪をおかすことはありません。犯罪者に しい、という親や教師への切なる訴えな 乳幼児期から溺愛や放任をしないことで 行為の責任と反省を求めるだけの指導で です。努力したときには心から褒め、い す。我が子を信頼して、任せることは任 でき あい な る 可 能 性 を 秘 め な が ら も、 生 涯 に わ のです。 あや たって、ほとんどの人は人を殺めたり、 うば は、いじめの加害児童・生徒に寄り添う けないことをしたときには、理由や事情 人に暴力をふるったり、人の金品を奪っ 支 援 は で き ま せ ん。 ﹁いじめ加害行為﹂ をしっかり聴いたうえで、親としての切 ふん べつ 動﹂を抑える分別があるからです。 づ したがって、犯罪をおかしてしまう人 の気質には、感情統制力が乏しく、 ﹁犯 の責任と反省を厳しく問う指導と同時に、 なる思いを込めて本気で叱ることです。 そ ぼう けつ じょ たりはしません。なぜなら、 ﹁犯罪の衝 罪の衝動﹂をコントロールできず、生命 その子が﹁いじめ加害行為﹂をせざるを そして、常々、 ﹁犯罪の衝動﹂を自覚し、 ほ を尊重する意識の低さや規範意識の欠如、 得ない心情や事情を共感的に理解しよう 辛うじて犯罪をおかしていない偶然に、 し てき き 粗暴性向、激情爆発タイプ、意志が弱く、 としなければ、子どもの非行はいっそう ゆう わく さらに、次ページの図︵ ﹁階層の欲求﹂ アブラハム・マスロー︶のような、衣食 かい そう が、親が正直に、誠実に生きることです。 げるのはまことにおこがましいことです かろ 誘惑されやすい、という傾向が指摘され ほっと胸をなで下ろしている身が申し上 さが、非常に似ていることです。 じめ行為に走らせる﹁心の育ち﹂の未熟 ﹁衝動﹂を抑えられない性 共通点は、 格など、大人の犯罪気質と、子どもをい エスカレートしてしまいます。 ています。 このような﹁大人の犯罪﹂と﹁子ども のいじめ加害行為﹂には、決定的に異な る点と非常に似通った点があります。 住や安全、無条件の愛情、信頼、承認、 によるのに対して、児童・生徒の﹁いじ 人権感覚が身に付いていないこと。攻撃 に応じた善悪の判断力や人間関係構築力、 教師の細やかな配慮によって、日々、ご 足することです。多くの子は、親や家族、 いる﹁人間としての基本的な欲求﹂を充 集団への所属感など、人間誰もが持って め加害行為﹂は、不安や不満、苛々、寂 的で、粗暴であること。自己中心的であ く自然に充足されていますので、さほど 感情をコントロールできないこと。人 を思いやる気持ちが乏しいこと。成長期 しさなどの成長上の問題を抱えている子 ること。自省心が低いこと。さらに、大 案ずることはありません。だが、もし雨 明らかに異なるのは、大人の犯罪のほ が よく せい へき とんどが、生活や我欲、性癖、気質など ど も か ら 大 人 へ の メ ッ セ ー ジ で あ り、 人に対する根深い不信感などが、子ども いら いら ﹁S S ︵危険信号︶であることです。 O﹂ 広報たてしな 2012年11月 18
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