バイオーム実現に向けての取り組み

環境傾度バイオーム
複雑で多様な生態系の維持と環境との相互作用の正確な理解は地球温暖化など環境問題の
解決にとって不可欠である。環境傾度バイオームは、地球上の温度・湿度などの傾度をチ
ャンバー内に再現したいわば「ミニ地球」であり、十分に制御された環境下で生態系の応
答を観察・測定することにより、環境変化に対する生態系応答の仕組みを明らかにするこ
とを目的とする施設である。
寒帯林
図1
温帯林
亜熱帯林
熱帯林
環境傾度バイオームの概念図(長さ200m、幅50m、高さ40m)
(温度・湿度などの環境制御装置、人工降雨器、人工太陽、水循環の解明のための大型ラ
イシメータ、各種モニタリングデバイスなどを設置予定)
図2
完成時のイメージ(英国に既設の「エデンプロジェクト」と呼ばれる大温室群)
(ただし、
「エデンプロジェクト」は環境教育用に建設されたもので、各気候帯毎に独立し
たチャンバーで構成されており、
「環境傾度バイオーム」のように隔壁なしで地球の環境傾
度を再現したものではない。隔壁を取り除くことによって初めて環境変化による植物の移
動や隣接した気候帯境界における生態系のせめぎあい(生存競争)の実態を観察すること
が可能となる。
)
環境傾度バイオーム実現に向けての取り組み
1.平成12年4月:「バイオーム研究会」の立ち上げ
バイオームの実現に関わる建設技術、環境制御技術、利用法、観測・計測技術等を検討す
るため、バイオームに関心を持つ産・学の有識者から成る「バイオーム研究会」を立ち上
げ、定期的(2~3ヶ月毎)に研究会を開催。(平成18年10月現在までに20回開催。
研究会での講演要旨をまとめた「バイオーム研究」No.1,No.2 を発行。)
2.平成13年10月:バイオーム 1/100 模型の製作と実験
住友財団からの環境研究助成金を受け、バイオーム 1/100 模型を製作し、環境制御に関す
る実験を開始。
(その後、環境学研究系の系長費からの財政的支援も受け、温度制御や湿度
制御の手法について検討を実施中。
)
3.平成15年7月:
「環境制御分科会」の立ち上げ
バイオーム内の環境(温度、湿度など)の制御法をより詳細に検討するため、産・学の環
境制御に関する専門家から成る「環境制御分科会」を立ち上げ、環境制御法や環境制御に
関わる省エネ対策などについて実務的な詳細検討を実施。
4.平成18年3月:バイオーム 1/10 模型設置のための区画の確保
柏キャンパスに建設された環境棟屋上にバイオーム 1/10 模型設置のための区画を確保。
5.平成19年度より:千葉県との地域連携によるバイオーム計画の推進
バイオームに関心を持っていただいている千葉県との地域連携で、「かずさアカデミアパー
ク」内の「かずさDNA研究所」に「東京大学大学院新領域創成科学研究科かずさ地球環境
研究拠点」を設置し、千葉県との共同研究を実施開始。
(研究費分担(予定)
:千葉県 20,000
千円(研究費、ポスドク(2名程度)雇用費用等)
、東大 1,000 千円(賃料、光熱費等))
平成19年度研究実施項目
①「生物資源の有効利用に関する共同研究」:新領域生命系で担当予定。
②「ゲノム科学を応用した地球環境動態共同研究」
:新領域環境系で担当予定。
③「植物のゲノム情報を活用した育種活性化共同研究」:新領域環境系で担当予定
6.平成20年度以降:千葉県との連携の継続強化と国・民間企業への連携拡大
千葉県との地域連携を継続・強化すると共に、国や民間企業も取り込んだ形で、5年間数
億円規模のプロジェクトにすることを構想。これらの資金でバイオーム 1/10 模型あるいは
必要に応じてバイオーム 1/5 模型などバイオームのプロトタイプ模型を製作し、環境制御・
省エネ対策やバイオームの利用法についての検証・確認実験を行い、最終的な目標である
環境傾度バイオーム実現のためのハードルをすべてクリアしていく予定。